ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 J7 |
---|---|
管理番号 | 1130939 |
審判番号 | 無効2005-88005 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2006-03-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-03-24 |
確定日 | 2006-02-09 |
意匠に係る物品 | 薬液封入用灌注器の栓 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1175561号「薬液封入用灌注器の栓」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1175561号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.請求の趣旨及び理由の要旨 請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。 意匠登録第1175561号意匠(以下、本件登録意匠という)は、本件意匠登録出願前に日本国内で頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 また、本件登録意匠は、本件意匠登録出願前に本件意匠の属する分野における通常の知識を有するものが、日本国内において公然知られた意匠に基づいて容易に創作できたものにすぎず、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 本件登録意匠は、甲第2号証意匠に比べてその栓本体の円筒体構成に相違する点を有するにしても、当該相違構成は、従前きわめてありふれた構成であって、創作性を有せず、意匠的要部足り得ないので、この点のみを相違構成とする本件登録意匠は、甲第2号証意匠と類似するものといわざるを得ない。 また、本件登録意匠は、甲第2号証意匠及び甲第4号証ないし甲第6号証意匠に基づいて容易に創作できたものである。 すなわち、栓本体の筒体構成を下部を絞って小径部とした複雑な筒体2段構成ではなく、上下連なった筒体単純構成とした点に相違する構成が存するが、栓本体の筒体2段構成を採るか、筒体単純構成を取るかについては、甲第4号証ないし甲第6号証に示すように、筒体単純構成がありふれたものであり、甲第7号証ないし甲第11号証等において栓本体の筒体2段構成もありふれていることからして、単なる置換の問題にすぎず、よりシンプルで原点回帰ともいうべき筒体単純構成に変更したにすぎない本件登録意匠は甲第2号証の意匠に、通常の一般的で選択自在な変更を加えたものにすぎず、当業者をもってすればこれらの意匠に基づいて容易に創作することができたものにすぎない。 したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号若しくは同法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきである。 〔証拠〕 (1)甲第1号証 意匠登録第1175561号公報 (2)甲第2号証 「新薬と臨牀」第45巻第9号別冊 (3)甲第3号証 比較図 (4)甲第4号証 意匠登録第569070号の類似4公報 (5)甲第5号証 意匠登録第898718号の類似5公報 (6)甲第6号証 意匠登録第989089号の類似2公報 (7)甲第7号証 意匠登録第1067332号公報 (8)甲第8号証 意匠登録第1030531号公報 (9)甲第9号証 意匠登録第931484号の類似3公報 (10)甲第10号証 意匠登録第929550号公報 (11)甲第11号証 意匠登録第1120344号公報 2.被請求人の答弁 当審は、被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても被請求人からは、何ら応答がなかったものである。 3.無効の理由の通知 そこで当審は、合議の結果、「本件登録意匠は、平成13年9月4日に特許庁が発行した意匠登録第1120344号公報(請求人の提出した甲第11号証)所載、輸液容器の上部に表されたキャップ様の栓部分の意匠に類似し、その出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、意匠登録を受けることができないものであり、その登録は意匠法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきと認めます。」との無効の理由を通知し、期間を指定して意見書の提出を求めたが、その期間を経過しても被請求人及び請求人の何れからも、何ら応答がなかったものである。 4.当審の判断 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、当該登録原簿及び出願書面の記載によれば、平成14年8月8日の意匠登録出願に係り、平成15年4月18日に設定の登録がなされた登録第1175561号の意匠であって、意匠に係る物品が「薬液封入用灌注器の栓」であり、その形態は、願書に添付された図面に表されたとおりのものである。(別紙1参照) (2)引用意匠 当審が無効の理由の通知で示した意匠は、本件登録意匠の出願前平成13年9月4日、特許庁が発行した意匠登録第1120344号公報(甲第11号証)所載、輸液容器の上部に表されたキャップ様の栓部分の意匠(以下、引用意匠という)であって、その形態は同公報に表されたとおりのものである。(別紙2参照) (3)両意匠の比較・検討 本件登録意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、主として以下の共通点、及び、差異点が認められる。なお、引用意匠については、本件登録意匠に対応させるため底面図側を、「上」として認定する。 まず、両意匠は、共通点として、 (a)上面開口概略短円筒状本体部と、本体部下端の開口部を塞ぐ内側に設けられたゴム栓部と、本体部下面側に剥離可能に結合されたほぼ円盤状のキャップ部からなるもので、本体部については、その周面上端に凸縁を設けており、円盤状キャップ部については、径を本体の凸縁部より僅かに大きくしたもので、その上面には本体周面から奥まった位置に本体部側と結合した僅かな高さの円錐台状部を設け、本体部に対してキャップ部が浮いた感を生じさせているものである点、 (b)円盤状キャップ部下面側について、周縁には傾斜段差を介して形成された僅かな高さの肉厚部を設け、中央には傾斜段差を介して形成された僅かな深さの平坦な円形凹陥部を設けている点、がある。 一方、両意匠は、差異点として、 (ア)本体部周面下端付近について、引用意匠は傾斜段差を介して径を絞った小径部分を設けているのに対して、本件登録意匠はこれに該当するものがない点、 (イ)本体部の周面上端の凸縁について、引用意匠は突出幅よりも上下幅を僅かに大きくしているのに対して、本件登録意匠は上下幅(厚み)よりも突出幅の方をやや大きくしている点、 (ウ)本願意匠は、本体部の内側にゴム栓を固定するリング状のものを填め込んでいるのに対して、引用意匠には該当するものがない点、が認められる。 そこで両意匠の共通点及び差異点の類否判断に及ぼす影響について検討すると、前記共通するとした(a)の点は、意匠全体に係わるものであるから類否判断に大きな影響を及ぼすものであり、また、(b)の点については、本件登録意匠の図面においては底面図側であるものの、この部分が載置され隠れて用いられるわけではなく、剥離する際には注視される部分でもあり、しかも、広い部位に関するものであるから、共通感を大きく強めるものである。したがって、これら(a)及び(b)の共通点に係る構成態様は、意匠全体として訴求力の強い共通した視覚的まとまりを生じさせる視覚的効果を有するものであり、類否判断に支配的影響を及ぼすものである。 これに対して、差異点に係る構成態様は、何れも類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。 すなわち、(ア)の点については、周面方向に突出した円盤状キャップ部に対して奥まったさほど目立たない部位における僅かの傾斜段差を介した小径部分の存在の有無に関する差異であって、しかも、本件登録意匠の同径とした態様はこの種意匠において普通にみられるものであるから格別着目されるものでもなく、(イ)の点については、両意匠共本体部の周面上端に凸縁を設けていることには変わりがなく、(ウ)の点については、組み立て構造の観点からみた場合は別として、外観上本体部の厚みがやや厚く視認される程度のものであるから、類否判断に殆ど影響するものではなく、これら何れの差異点についても(a)の共通する中における部分的差異であって、相まって奏する視覚効果を考慮したとしても、(a)及び(b)の共通点に係る構成態様が生じさせる訴求力の強い共通した視覚的まとまりに吸収されてしまう程度の微弱なものにすぎない。 このように、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、共通点に係る構成態様は意匠全体として視覚的訴求力の強い共通した視覚的まとまりを形成し、類否判断に支配的影響を及ぼすものであるのに対して、差異点に係る構成態様は、相まって奏する視覚的効果を考慮したとしても類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎないから、結局、本件登録意匠は引用意匠に類似するといわざるを得ないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、その意匠登録出願前頒布された刊行物に記載された引用意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条同項の規定に違反して登録されたものであるから、請求人のその他の主張を検討するまでもなくその登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2005-12-02 |
結審通知日 | 2005-12-08 |
審決日 | 2005-12-21 |
出願番号 | 意願2002-21270(D2002-21270) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(J7)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 生亀 照恵 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
山崎 裕造 岩井 芳紀 |
登録日 | 2003-04-18 |
登録番号 | 意匠登録第1175561号(D1175561) |
代理人 | 川瀬 幹夫 |
代理人 | 小谷 悦司 |