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審決分類 審判    B2
管理番号 1134423 
審判番号 無効2005-88015
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-08-10 
確定日 2006-03-29 
意匠に係る物品 足首保温具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1111800号「足首保温具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1111800号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求の理由及び要点
審判請求人(以下、請求人という。)は、「登録第1111800号意匠(以下、本件登録意匠という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由として、審判請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。
請求人の主張は、概ね次のとおりである。
(1)本件登録意匠は、「足首保温具」であって、平成12年4月10日に出願され、平成13年4月13日に登録され、平成13年6月18日に公報が発行されたものであるが、意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠及び公然知られた意匠、又はこれらに類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第1号ないし第3号及び第2項に違反し、同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。
また、本件登録意匠は、他人の業務に係る物品と混同を生じるおそれがある意匠でもあり、意匠法第5条第1項第2号に該当し、同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。
(2)本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は、基本的態様として、足首の周りを覆う足首保温具であって、ほぼ一定の幅を有し、かつ所定の長さを有すると共に、両端が開口する筒状に形成した形状を有し、具体的態様として、外面には、長手方向に沿った二種類のデザイン線条を周方向において交互に配しかつ所定間隔毎に配した形状(模様)を有するものと認められ、加えて、本物品は、「意匠に係る物品の説明」に記載されるように、肘や脛等にはめてカバーし、それらの部分を保温或いは保護することも可能であるものと認められる。
(3)先行意匠が存在する事実及び証拠
〈3-1〉本件登録意匠は、本件登録意匠出願前に「ながの東急百貨店」において販売された商品(商品名「足くびウォーマー」で、黒と白の2色があった。)と同一形態又は類似形態であって、公然知られた意匠又はこれに類似する意匠である。(甲第1号証-1ないし2)
なお、その商品は、「ながの東急百貨店」3F呉服売場内に開設された、「株式会社丸鶴」の「健康[絹]家族コーナー」で、販売されてきた。
〈3-2〉本件登録意匠は、本件登録意匠出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠である。(甲第2号証)
甲第2号証の「印刷及び納品証明書」に添付のパンフレット(平成11年7月下旬頃受注、平成11年8月9日納品)によれば、黒色と白色(オフホワイト)の二色の「足首ウォーマー」が記載されている。
〈3-3〉本件登録意匠は、本件登録意匠出願前に「丸興工業株式会社岡谷支店」の店舗において販売された商品「足くびウォーマー」(白と黒)と同一形態又は類似形態であって、公然知られた意匠又はこれに類似する意匠である。(甲第3号証)
(4)本件登録意匠と先行意匠との対比及び類否判断
〈4-1〉甲第1号証ないし甲第3号証に係わる「足くびウォーマー」の意匠と、本件登録意匠の前記要旨を対比すれば、両者は、基本的態様及び具体的態様において完全に一致する。そうであれば、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第1号ないし第3号及び第2項に違反するものであることは明らかである。
〈4-2〉先行意匠に係る「足くびウォーマー」の製造業者は 「株式会社丸鶴」であるが、現在「株式会社丸鶴」は存在せず、本件審判請求人である「有限会社健康家族」が実質的な業務、即ち、同一の販売用パッケージデザイン等をそのまま継続する形で商品の販売・製造を引き継いでいる。表面の模様は若干異なるものの、商品「足くびウォーマー」を継承している。
甲第4号証ないし甲第7号証によるチラシ及びカタログには、甲第1号証ないし甲第3号証の 「足くびウォーマー」と同一の写真及び商品名が掲載されており、よって、本件登録意匠は、「有限会社健康家族」(旧「株式会社丸鶴」)の業務に係る物品と混同を生じるおそれがある意匠である。

第2.答弁
これに対し、特許庁より被請求人に審判請求書を送り、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年4月10日に出願(意願2000-13045)され、平成13年4月13日に意匠権設定の登録がなされ、平成13年6月18日に公報が発行された意匠登録第1111800号であって、願書及び願書添付の見本によれば、意匠に係る物品を「足首保温具」とし、その形態を同見本のとおりとしたものである。
すなわち、外面と内面の二重編み地のもので、両端が開口する筒状で、丈を開口部幅よりも長くした基本的態様のものであり、具体的態様として、両開口部を丈に対して略垂直な平行状とし、外面に、周方向に沿って二種類の線条を、交互に、かつ、等間隔に配し、その一つの線条は膨出した縄目状とし、他方は、膨出した小矩形2個を、上下に半個ずつ互い違いとなるように連続させた線条とし、全体の色彩を白色としたものである。
(別紙第1参照)

2.引用意匠
甲第1号証ないし甲第3号証の写真及び商品説明等の記載によれば、「足くびウォーマー」(白タイプ)の意匠(以下、引用意匠という)は、本件登録意匠出願前に公然知られた意匠であり、その形態を次のとおりとしたものである。
すなわち、完全二重編みであって、両端が開口する筒状で、丈を開口部幅よりも長くした基本的態様のものであり、具体的態様として、両開口部を丈に対して略垂直な平行状とし、外面に、周方向に沿って二種類の線条を、交互に、かつ、等間隔に配し、その一つの線条は膨出した縄目状とし、他方は、膨出した小矩形2個を、上下に半個ずつ互い違いとなるように連続させた線条とし、全体の色彩を白色としたものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると、物品は、共に足首を温めるために足首に装着するものであるから一致し、形態においては、以下の共通点及び相違点が認められる。
まず、両意匠は、全体が二重編みであって、両端が開口する筒状で、丈を直径幅よりも長くした基本的態様のものであり、具体的態様として、両開口部を丈に対して略垂直な平行状とし、外面に、周方向に沿って二種類の線条を、交互に、かつ、等間隔に配し、その一つの線条は膨出した縄目状とし、他方は、膨出した小矩形2個を、上下に半個ずつ互い違いとなるように連続させた線条とし、全体の色彩を白色とした点が、共通する。
一方、両意匠は、本件登録意匠が見本によるものであるから、その見本によれば、外面の地の部分は基本的にメリヤス表編みによるが、二種類の線条の間に、極細い3本の筋状となって表れる変わり編みを配しているのに対し、引用意匠の地の部分の具体的な編み方は不明確で、その点が相違する疑いがある。

4.類否判断
そこで、以上の共通点と相違する可能性がある点を総合して、両意匠の類否を全体として検討すると、この種足用保温具の意匠においては、需要者は形態全体を観察して意匠を認識するものであるが、共通するとした点は形態全体の基本的構成態様と、具体的構成態様のほとんどを占め、全体の骨格を決定しているから、看者の注意を惹き、共通する美感を起こさせるものと認められる。
これに対し、相違する可能性がある点は、両意匠の共通する美感を変更するものではない。
すなわち、引用意匠の地の部分の具体的な編み方が明瞭でないことから、地の部分の編み方が相違する可能性があるが、本件登録意匠の地の部分の筋状は非常に細く、地とほとんど見分けがつかないほどであり、全体から見れば視覚に訴える効果はほとんどなく、一方、引用意匠も地の部分には格別な編みの特徴は見あたらず、引用意匠の地の部分の編み方が不明確であっても、両意匠の共通する美感に影響を及ぼすことはない。
してみると、相違する可能性がある点が両意匠の共通点を凌駕することはなく、共通点は先に述べたとおり圧倒的で、美感が共通するから、両意匠は類似する。

5.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条同項柱書きの規定に違反して登録されたものであるので、その余については判断するまでもなく、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2006-01-31 
結審通知日 2006-02-03 
審決日 2006-02-15 
出願番号 意願2000-13045(D2000-13045) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (B2)
最終処分 成立  
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 樋田 敏恵
杉山 太一
登録日 2001-04-13 
登録番号 意匠登録第1111800号(D1111800) 
代理人 下田 茂 

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