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審決分類 |
審判 B2 |
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管理番号 | 1134424 |
審判番号 | 無効2005-88016 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2006-05-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-08-10 |
確定日 | 2006-03-29 |
意匠に係る物品 | 足用サポーター |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1205908号「足用サポーター」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1205908号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求の理由及び要点 審判請求人(以下、請求人という。)は、「登録第1205908号意匠(以下、本件登録意匠という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由として、審判請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。 請求人の主張は、概ね次のとおりである。 (1)本件登録意匠は、「足用サポーター」であって、平成13年6月13日に出願され、平成15年4月18日に拒絶すべき旨の査定がなされ、その後拒絶査定不服審判請求がなされた結果、平成16年2月27日に原査定を取り消し登録すべきものとするとの審決がなされ、平成16年4月2日に登録され、平成16年5月24日に公報が発行されたものであるが、意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠及び公然知られた意匠、又はこれらに類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第1号ないし第3号及び第2項に違反し、加えて、他人の業務に係る物品と混同を生じるおそれがある意匠及び物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠であり、意匠法第5条第1項第2号及び第3号に該当し、同法第48条第1項第1号により無効にすべきものである。 (2)本件登録意匠の要旨 本件登録意匠は、基本的態様として、足のかかとの周りを覆う足用サポーターであって、ほぼ一定の幅を有し、かつ所定の長さを有すると共に、両端が開口する筒状に形成した形状を有し、具体的態様として、長手方向のほぼ中央付近におけるやや屈曲した屈曲部、この屈曲部の山側の内側面に貼付けた保湿シートにより生じた段差部、長手方向両端側における口ゴム部が現れた形状を有するものと認められ、加えて、本物品は、「意匠に係る物品の説明」に記載されるように、かかと部保湿シートが接合された足用サポーターであると認められる。 (3)先行意匠が存在する事実及び証拠 [先行意匠1,2の存在] 〈3-1〉本件登録意匠は、「JA長野県」等が「A・COOP」を通して共同購入するためのカタログ「衣料品編(季節品)カタログ有効期限2000年8月21日迄」の6頁に掲載された商品名「かかとサポーター」「かかとつるつるサポーター」と同一物品で同一形態である。(甲第1号証) 〈3-2〉本件登録意匠は、「JA長野県」等が「A・COOP」を通して共同購入するためのカタログ「衣料品編(季節品)カタログ有効期限2000年12月31日迄」の8頁に掲載された商品名「かかとつるつるサポーター」と同一物品で同一形態である。(甲第2号証) [先行意匠3,4の存在] 甲第3号証及び甲第4号証で明らかなとおり、先行意匠3,4が存在している。(甲第3号証、甲第4号証) (4)本件登録意匠と先行意匠1〜4との対比及び類否判断 〈4-1〉甲第1号証及び甲第2号証(先行意匠1,2)に係わる「かかとサポーター」及び「かかとつるつるサポーター」の意匠と、本件登録意匠の前記要旨を対比すれば、両者は、基本的態様及び具体的態様において完全に一致する。さらに、甲第3号証及び甲第4号証(先行意匠3,4)も甲第1号証(先行意匠1)と同一商品であり、同一の態様を有している。そうであれば、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第1号ないし第3号及び第2項に違反するものであることは明らかである。 〈4-2〉先行意匠に係る「サポーター」は、いずれも製造業者は 「株式会社丸鶴」で、「株式会社丸鶴」は本件登録意匠と内容が同じとなる特許出願を行っているが、この先行特許出願と本件登録意匠の基本的態様及び具体的態様は一致するので、先行意匠として証拠能力を有し得る。(甲第5号証) 〈4-3〉現在「株式会社丸鶴」は存在せず、請求人である「有限会社健康家族」が実質的な業務を引き継いでいるが、「株式会社丸鶴」は、本件登録意匠の出願人(権利者)に「かかとサポーター」を一時的に委託生産させており、本件登録意匠の出願人は商品について十分に知り得る状態にあったことは明らかである。 〈4-4〉甲第7号証ないし甲第9号証を一例として提出したように、「かかとサポーター(かかとつるつるサポーター)」と同一の写真及び商品名が記載されているパンフレットが広く頒布され、よって、本件登録意匠は、「有限会社健康家族」(旧株式会社丸鶴)の業務に係る「サポーター」(物品)と混同を生ずるおそれがある意匠である。 (4-5)さらに、本件登録意匠は、屈曲部が存在しなかったら、直線上に沿った筒状で、周知のサポーターと変わらない。一方、この屈曲部は、本件サポーターが足のかかとの周りを覆う足首用であることを考慮すれば、一般的な「くつ下」の形状からも明らかなように、当然に必要となる形状、即ち、機能から生じる必然的な形状であって、この点に何も創作性を見いだすことはできない。よって、本件登録意匠の態様は、「サポーター」(物品)の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠である。 第2.答弁 これに対し、特許庁より被請求人に審判請求書を送り、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成13年6月13日に出願され、平成15年4月18日に拒絶すべき旨の査定がなされ、その後拒絶査定不服審判請求がなされた結果、平成16年2月27日に原査定を取り消し登録すべきものとするとの審決がなされ、平成16年4月2日に意匠権設定の登録がなされ、平成16年5月24日に公報が発行された意匠登録第1205908号であって、願書及び願書添付の見本によれば、意匠に係る物品を「足用サポーター」とし、その形態を同見本のとおりとしたものである。(別紙第1参照) すなわち、全体を編み地とし、両端が開口する筒状で、足のかかとを収めるための屈曲部を中央部に設け、かかと部裏側に保湿シートを貼り付けた基本的態様のものであって、具体的態様として、表側をメリヤス表編みとし、開口部を二重編みとし、屈曲部を、編み目を細かくして略円盤状となるまで増し目することにより形成し、裏側の保湿シートを略円形状とし、色彩をベージュとしたものである。 2.引用意匠 甲第1号証によるカタログ6頁所載の写真及び商品説明等の記載によれば、「絹混かかとつるつるサポーター」の意匠(以下、引用意匠という)は、本件登録意匠出願前に公然知られた意匠であって、その形態を次のとおりとしたものである。 すなわち、全体を編み地とし、両端が開口する筒状で、足のかかとを収めるための屈曲部を中央部に設け、かかと部裏側に保湿シートを貼り付けた基本的態様のものであり、具体的態様として、表側をメリヤス表編みとし、開口部を二重編みとし、屈曲部を、編み目を増し目することにより形成し、裏側の保湿シートを略円形状とし、色彩をベージュとしたものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると、物品は、共に足のかかとの周りを覆う足用サポーターであるから一致し、形態においては、以下の共通点及び相違点が認められる。 まず、両意匠は、全体を編み地とし、両端が開口する筒状で、足のかかとを収めるための屈曲部を中央部に設け、かかと部裏側に保湿シートを貼り付けた基本的態様のものであり、具体的態様として、表側をメリヤス表編みとし、開口部を二重編みとし、屈曲部を、編み目を増し目することにより形成し、裏側の保湿シートを略円形状とし、色彩をベージュとした点が、共通する。 一方、両意匠は、屈曲部の増し目の具体的態様について、本件登録意匠は、編み目を細かくして略円盤状となるまで増し目したものであるのに対して、引用意匠は、増し目をどのように挿入しているのかが不明確で、その点が相違する疑いがある。 4.類否判断 そこで、以上の共通点と、相違する可能性がある点を総合して、両意匠の類否を全体として検討すると、この種足用サポーターの意匠においては、需要者は形態全体を観察して意匠を認識するものであるが、共通するとした点は形態全体の基本的構成態様と、具体的構成態様のほとんどを占め、全体の骨格を決定しているから、看者の注意を惹き、共通する美感を起こさせるものと認められる。 これに対し、相違する可能性がある点は、両意匠の共通する美感を変更するものではない。 すなわち、引用意匠の増し目の具体的態様が明瞭ではないことから、かかと部を構成する屈曲部の増し目の状態が相違する可能性があるが、この部位は全体から見れば限られたわずかな範囲を占めるに過ぎず、例え、その範囲に相違があっても、その相違が視覚に及ぼす影響は微弱であり、さらに、引用意匠も本件登録意匠と同様に、かかと部位もメリヤス表編みのままで増し目をしており、編み方の基本を変えていないので、目立たないから看者の注意を惹くものではなく、両意匠の共通する美感に影響を及ぼすことはない。 してみると、相違する可能性がある点が両意匠の共通点を凌駕することはなく、共通点は先に述べたとおり圧倒的で、美感が共通するものであるから、両意匠は類似する。 5.むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条同項柱書きの規定に違反して登録されたものであるので、その余については判断するまでもなく、その登録は無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2006-01-31 |
結審通知日 | 2006-02-03 |
審決日 | 2006-02-15 |
出願番号 | 意願2001-17190(D2001-17190) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(B2)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 杉山 太一 |
登録日 | 2004-04-02 |
登録番号 | 意匠登録第1205908号(D1205908) |
代理人 | 下田 茂 |