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審決分類 |
審判 K8 |
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管理番号 | 1149885 |
審判番号 | 無効2006-88005 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2007-02-23 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-02-20 |
確定日 | 2006-10-20 |
意匠に係る物品 | 農業用送気ファン |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1195021号「農業用送気ファン」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1195021号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 請求人の申し立て及び請求の理由 1 申し立ての趣旨 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし第9号証を提出した。 2 無効理由の要点 理由1:登録第1195021号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、甲第2号証に示す意匠(以下、「甲2号意匠」という。)に類似するものであり、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。 理由2:本件登録意匠は、その意匠登録が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対して登録されたときに該当するものであり、同法第48条第1項第3号の規定により、その登録は無効とされるべきである。 3 本件登録意匠が無効とされるべき理由1について 本件登録意匠と甲2号意匠の類否を考察すると、ガードの線材の本数や形状の多少の変更、モーターの取付け部位などの差異は、視覚的にさほどの差異を感じさせるものではないのに対し、両意匠に共通する基本的構成態様と胴体部の長さ、両閉口面の同心円状ガードおよびスタンド脚部の具体的構成態様とが結合して、全体として共通する形態的特徴を表出し、共通する美感を与えているものであるから、両意匠は類似するものである。 第2 被請求人の答弁および理由 1 答弁の趣旨 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の内容 2-1 意匠登録の無効理由1に対する反論 甲第2号証の2「風来坊」のスタンドタイプの製品の記載は、被請求人の従業員が渡辺パイプ株式会社との打ち合わせの上で2002年に印刷され、頒布されたものであることを認める。 請求人が主張する本件登録意匠の基本的構成態様および各部の具体的構成態様のガード部、脚部、送気ファン等の構成について認める。 甲第2号証に示す意匠の基本的構成態様およびガード部の構成説明について争い、他の基本的構成態様および各部の具体的構成態様についての認定は認める。 本件登録意匠と甲2号意匠との対比について、基本的構成態様の対比の結論および各部の具体的構成態様の対比における本件登録意匠との共通点の認定は争う。 本件登録意匠と甲2号意匠との類否判断について、具体的構成態様の共通性に関しての認定は認め、具体的構成態様の相違性および両意匠の類否については争う。 第3 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠は、2003年(平成15年)2月21日に被請求人が出願し、同年11月28日に登録査定され、その後、設定の登録がなされた意匠登録第1195021号の意匠であり、願書の記載および願書に添付した写真によれば、意匠に係る物品を「農業用送気ファン」とし、その形態は、願書に添付した写真に示すとおりである。(この審決に添付した「図面第1」参照。) 2 甲2号意匠 甲2号意匠は、渡辺パイプ株式会社が頒布した「グリーンハウス総合カタログ」(甲第2号証-1?3)に、「風来望、日農工業(株)」と表示して掲載した送風機の写真のうち、「スタンドタイプ」と表示したものの意匠であり、同カタログは、その記載内容からみて、2002年2月若しくは2002年内に発行頒布されたものとみなすことができる。(この審決に添付した「図面第2」。) 3 本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否かについて 3-1 本件登録意匠と甲2号意匠の対比 本件登録意匠と甲2号意匠は、いずれも農業用の送風機に係るものであるから、意匠に係る物品が同一であると認められ、両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点および差異点が認められる。 先ず、共通点として、全体は、略短円筒状の胴体部にファンおよびモーター部を内蔵し、開口部の正面および背面にガード部を取り付け、胴体部の下方に、帯状の板体により正面視倒略「コ」字形状に折り曲げた脚部を取り付けて構成した態様が認められ、具体的な態様において、胴体部の奥行きが外径の2分の1強である点、胴体部の開口部正面の縁を外側に折り曲げて細幅のフランジ状に形成している点、開口部正面のガード部は、骨組みを正面中心寄りから同心円状かつ放射状に構成し、胴体部の内側面に接して取り付けている点、脚部は、正面視横幅が左右両方の垂直部の高さの約2倍であり、上端をいずれも弧状に形成し、胴体部左右両側のやや前方寄りに取り付けている点、そして、モーター部の外径は、胴体部の外径の約5分の1である点が認められる。 一方、具体的な態様についての差異点として、(1)開口部正面のガード部の態様について、本件登録意匠は、ガード部の前面が胴体部よりもやや前方に突出し、骨組みの同心円状部分および放射状部分の本数が甲2号意匠よりも多いのに対し、甲2号意匠は、ガード部の前面が胴体部の前端よりもわずかに奥まっている点、(2)開口部背面のガード部の骨組みの態様について、本件登録意匠は、正面中心寄りから同心円状かつ放射状に構成しているのに対し、甲2号意匠は、放射状のみであって上半部のものを薄い細長の板状としている点、そして(3)開口部正面のガード部に対するモーター部後端の位置について、本件登録意匠は、ガード部の内側であるのに対し、甲2号意匠は、ガード部の前面よりも前方にわずかに突出している点が認められる。 3-2 本件登録意匠と甲2号意匠との類似性についての判断 以上の共通点および差異点を総合し、意匠全体として両意匠の類似否類似すなわち類似性について以下考察する。 先ず、形態の全体について共通するとした前記態様は、両意匠の形態の全体の骨格的態様を構成するものであって、胴体部の下方に帯状の板体により正面視倒略「コ」字形状に折り曲げた脚部を取り付けた態様は形態の全体に与える影響が大きいから、両意匠の類似性についての判断に与える影響も極めて大きいと言える。 そして、具体的な態様における前記各共通点のうち、ガード部について共通しているとした前記態様は、すでに両意匠のほかにも見受けられ両意匠にのみ共通する点とは言えないが、脚部を正面視横幅が左右両方の垂直部の高さの約2倍とし、上端をいずれも弧状に形成して胴体部左右両側のやや前方寄りに取り付けた態様は、この種送風機の分野においては、本件登録意匠の出願前に甲2号意匠のほかには見受けられず、両意匠にのみ共通する点と言えるものであり、胴体部の開口部正面の態様および胴体部の構成比についての前記共通点を相まって、両意匠の形態に共通する特徴を形成していると言うべきである そして、これら共通点にかかる態様が相乗して生じる視覚的な効果により、両意匠が形態の全体として類似しているとの印象を与えていると認められる。 一方、前記各差異点を検討すると、差異点(1)については、この種物品分野において、ガード部を胴体部よりも前方に突出して形成した仕様のものがすでに普通に見受けられるところ、開口部正面のガード部の前面を胴体部よりもやや前方に突出して形成した態様のものは、例えば、1998年3月3日にアメリカ合衆国特許庁発行のオフィシャル・ガセット第1号1208巻第904頁に記載された送風機の意匠、2002年4月30日にドイツ連邦共和国発行の「GESAMTPROGRAMM The complete Programm」第4頁に記載された換気扇の意匠等が知られ、また、本件登録意匠の開口部正面のガード部の前面は、単に胴体部よりもやや前方に突出して形成した態様にすぎないものであるから、本件登録意匠のみに格別のものとは言い難い。そして、ガードの骨組みの同心円状部分および放射状部分の構成本数を多少変更することも普通に行われることであるから、これらの差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響はそれほど評価できないと言うべきである。差異点(2)については、甲2号意匠がガード部の骨組みの上半部のものを薄い細長の板状としているのに対し、寧ろ本件登録意匠のものは、単に正面中心寄りから同心円状かつ放射状に形成した態様にすぎず、この種ガード部の骨組みとしては格別新規の態様に形成されたものとは言い難いから、その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱に止まり評価できない。差異点(3)については、モーター部をガード部の内側に取り付けたものはすでに多数見受けられ、本件登録意匠のみに格別のものとは言い難く、また、モーター部は、前記のとおり、いずれもその外径が胴体部の外径の約5分の1であって全体から見れば限られた部分の構成態様にすぎないものであり、一方、甲2号意匠のものの突出の程度はわずかであって、形態の全体に与える影響は軽微に止まるものであるから、その差異が差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱に止まり評価できない。そして、これら差異点にかかる態様を総合した場合に生じる視覚的な効果を考慮したとしても、両意匠の類似性についての判断を左右するほどの意匠的効果は認められない。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、両意匠の類似性についての判断に与える形態の共通点および差異点の影響は、差異点よりも共通点の与える影響が支配的であるから、意匠全体として互いに類似するものであって、甲2号意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠であることは前記のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するものである。 4 むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して意匠登録がなされたものであるから、無効理由2について審理するまでもなく、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2006-08-03 |
結審通知日 | 2006-08-07 |
審決日 | 2006-09-07 |
出願番号 | 意願2003-4226(D2003-4226) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(K8)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
伊勢 孝俊 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 上島 靖範 |
登録日 | 2003-11-28 |
登録番号 | 意匠登録第1195021号(D1195021) |
代理人 | 戸島 省四郎 |
代理人 | 西 義之 |
代理人 | 畠 豊彦 |