• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    B1
審判    B1
管理番号 1151752 
審判番号 無効2006-88014
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2007-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-06-08 
確定日 2007-01-11 
意匠に係る物品 アンダーショーツ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1183343号「アンダーショーツ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由

請求人は、「登録第1183343号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求める、と申し立て、その理由として、審判請求書の請求の理由の項に記載のとおりの、概要以下の主張をし、立証として、甲第1号証の1及び2、甲第2号証ないし甲第8号証を提出した。
登録第1183343号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証の1に記載のアンダーショーツの意匠(以下「甲号意匠」という。)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条同項柱書きの規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法第48条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。(以下、「無効理由1」とする。)
また第2に、本件登録意匠は、甲号意匠に基づいて、これと、例えば甲第3号証ないし甲第5号証に記載されたようなありふれた態様の取付具の意匠を組み合わせて構成したにすぎず、当業者であれば容易に創作することができた意匠であり、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができない意匠であるから、同法第48条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。(以下、「無効理由2」とする。)
即ち、本件登録意匠と、甲号意匠である平成14年(2002年)7月8日発行の日本スポーツ工業新聞(なお請求書では「日刊スポーツ工業新聞」と記載されているが、「日本・・・」の誤記と認める。)第9面に掲載のアンダーショーツの意匠とは、(ア)ハイレグ・ビキニタイプかローライズ・ビキニタイプかの差異、(イ)サイドスラップが略横「8の字」状接続具を介して取り付けられているか、直に縫いつけて取り付けられているかの差異、があるが、(ア)は両タイプともありふれており、(イ)の略横「8の字」状接続具も従来から普通にみられるもので、いずれの差異も需要者の注意を惹かず、これに対し、両意匠の共通点である、本体の前身頃と後身頃の左右上端を、透明な細幅サイドストラップで繋いだ所謂ビキニタイプとするものである点、この透明な細幅サイドストラップがテープ状である点は、本件登録意匠の願書の記載、或いは甲第8号証の被請求人に係る文書の記載に照らしても主要な特徴というべきで、また需要者の注意を惹くところでもあるから、両意匠は類似する。また、これら差異についての本件登録意匠の態様には、いずれも創作上の困難性はなく、本件登録意匠は当業者であれば容易に創作できた意匠というべきである。

第2.被請求人の答弁

請求人のいうハイレグかローライズかの違いは、需要者が購入時に選択するための大きな要素であり、また基本的な構成要素に係る顕著な差異である。また身頃部分の形状の違いが大きく評価されるべきことは、意匠登録第1226853号(乙第3号証)が本件登録意匠とは別個に登録されていることからも明らかである。また略横「8の字」状接続具の有無は、切断事故を生じ難くさせるもので、信頼性や強靱性、という美感を与えている。従って両意匠は、全体として類似しない。また当業者が容易に創作をすることができた意匠にも該当しない。

第3.当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年8月27日に意匠登録出願をし、平成15年7月11日に意匠権の設定の登録がなされたもので、意匠に係る物品を「アンダーショーツ」とし、その形態は、願書及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとするものである(別紙第一参照)。なお願書に、「本願意匠に係る物品は、水着の下に着用するアンダーショーツに関するものである。」「本意匠のサイドストラップ部分は透明である。」と記載されたものである。

2.甲号意匠
請求人が提出した甲号意匠は、本件登録意匠の出願前の平成14年(2002年)7月8日発行の日本スポーツ工業新聞の第9面右下の、「newスイムショーツ、新製品両サイドが透明、ひもビキニも安心、NEW CREATION CO.,LTD」と記載された広告欄において、斜め前方と斜め後方の2方向からの写真(別紙第二参照)により表されたアンダーショーツの意匠であり、その形態は、当該写真版、及びこれに関連する記載により表されたとおりである。

3.無効理由1(意匠法第3条第1項第3号に該当するとの理由)の検討
まず本件登録意匠と甲号意匠が類似するか否かについて検討する。
本件登録意匠と甲号意匠とを対比するに、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態について、(1)下腹部を覆う縦長略逆台形状の前身頃と、これよりやや幅広の、臀部を覆う縦長略逆台形状の後身頃が下端で連続し、前身頃と後身頃とが上端左右でそれぞれ、細幅テープ状のサイドストラップで繋がれた基本的構成態様のものである点、さらにその具体的な態様について、(2)サイドストラップが透明である点、が共通する。

一方、差異点として、(a)本件登録意匠は、全体がピンクの布地で表され、周縁がこれよりやや淡いピンクで等幅状に縁取られているのに対し、甲号意匠は色彩が明らかでなく、また周縁とその余の部分とに特に濃淡差が認められない点、(b)前身頃、後身頃の左右両側縁の形状について、本件登録意匠は、前身頃が下寄りでごく浅い凹曲状で、後身頃が全体として緩やかな凸曲状で、下端近くで凹曲状に反転して自然に前身頃と連続する態様であるのに対し、甲号意匠はその詳細が明らかでない点、(c)腰回りに対する股上寸法が、本件登録意匠は甲号意匠より相対的に長いと認められる点、(d)本件登録意匠は、サイドストラップの両端が、略横「8の字」状接続具、即ち、略同形のやや縦長の楕円環が横に2つ連なった形状の金具(以下「8の字金具」とする)を介して前後の身頃と繋げられているのに対し、甲号意匠はこの8の字金具が認められない点、が主にある。

そこで上記の共通点と差異点を全体として検討するに、共通点(1)の基本的な構成態様は、ショーツの分野においては例えば、実開昭49-109719号、実開昭58-42102号、実開昭59-73301号、或いはBoutiques International,Dessous Mode International(フランス)発行の雑誌「Fashion Daily News.」2巻21頁掲載のアンダーショーツ(2001年9月10日特許庁意匠課受入、公知資料番号HB13019935、別紙第三の写真1)、KaufhofWarenhaus AG(西ドイツ)発行の「KleinePreise-GroBes」8頁所載のアンダーショーツ(1995年2月8日特許庁意匠課受入、公知資料番号HD07000508、別紙第三の写真2)、German Patent Office発行のドイツ意匠公報(発行日1996年11月25日)22巻6098頁掲載のアンダーショーツ(意匠課公知資料番号HH10006138、別紙第三の写真3)にみられるように、ショーツの一つの類型ともいえるほどに一般的にみられる態様であり、また(2)の共通点についても、確かに一応の共通性を印象付けるものであるが、アンダーショーツのサイドストラップに関しては、従来から様々の素材が用いられており、前掲事例(別紙第三の写真1)に見られるように、内部に装飾材を封じ入れてはいるものの、透明素材を用いたものも従前にもみられるところであり、また下着の分野においては、ストラップ部分を透明とすること自体は、例えば、実開昭55-71129号、実開昭63-177921号、特開2001-316912号、特開2001-316901号、にみられるように、従来から普通に認められるところであり、格別新たなものではなく、また両意匠においては、サイドストラップが透明であることにより、差異点(d)が視覚上の差異として浮上しており、これらを考慮すると、両意匠の共通点のみで類否を決定づけることができず、差異の類否に及ぼす影響も比較考量せざるを得ない。

そこで差異点について検討するに、(a)の点は、本件登録意匠の縁取りの濃淡差もさほど顕著なものでなく、またこの種の縁取り部分に本件登録意匠のような同系色の濃淡差が現れることは極く普通であるから、甲号意匠において色彩が明らかでなく、また仮に該部に濃淡差がないとしても、差異として類否に影響を及ぼすほどのものではない。
また(b)の点も、本件登録意匠の凸曲、凹曲の態様は、この種のショーツにおいて極普通にみられる範囲のもので、引用意匠においてその詳細な凸曲、凹曲の態様が明らかでないとしても、差異として類否判断を左右するまでには至らない。 また(c)の差異についても、両意匠共に、ショーツの分野で極普通に見られる股上寸法の範囲内のものであり、また両意匠共に、この寸法自体には特徴がなく、その差異が類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして(d)の差異、即ち8の字金具の有無という点について検討するに、本件登録意匠に認められる8の字金具は、さほど大きいものでなく、またそれ自体は、甲第3号証(意匠登録第1135005号)、甲第4号証(意匠登録第1110587号)にも認められるように、ストラップの中間部分に挿通されてストラップの長さを調節する調節具として、従来から広くみられるもので、また甲第5号証(実用新案登録第3083216号)の「6b」にもみられるように、ストラップの連結具として使用されることも考えられるところである。
しかしながら、下着も含む各種衣類の分野においては、仮に金具自体は小さくても、それが外観に現れる場合、その種類や形状、位置、大きさ等が全体の美感に大きな影響を及ぼす場合があることは否定できないところであり、とりわけ両意匠のように、全体の基本的な形状が極めて類型的ともいえる場合は、看者はこの種の金具にも強く着目すると考えられる。そして本件登録意匠は、サイドストラップが透明であることから、これから透けて、横8の字状の極めて大きな部分、即ち、1本の縦軸を除く、2本の縦軸と上下の2連の円弧の部分がそのまま外観上現れることとなるのであるから、この8の字金具の存在は、看者の視覚を極めて強く捉えると認められ、また構造上の重要な部分でもあるから看者は使用時にも特に注意を払うと認められ、上記のとおり全体の基本的構成態様が周知である両意匠にあっては、この有無が類否に及ぼす影響は極めて大きいと判断せざるを得ない。

請求人は、アンダーウエアの分野にあっては本件登録意匠の8の字金具は従来から普通にみられるありふれた金具で、その身頃への縫いつけ方やサイドストラップの取り付け方についても特に需要者の注意を集める要素はない、と主張するところである。
しかしながら、サイドストラップ付きのアンダーショーツにおいては、サイドストラップの両端に同形の金具を設けて身頃と繋げる手法が必ずしも出願前に一般的であったとは認められず、ましてや本件登録意匠はこれに8の字金具を選択し、また前後4箇所にほぼ同形のものを配したものであり、更に本件登録意匠はサイドストラップが透明であることから、これから透けて、この8の字金具の具体的な形状が明瞭に看者の視覚を捉えることとなるのであるから、やはりこの有無は看者、或いは需要者の注意を集めると判断せざるを得ない。

以上のとおり、この(d)に係る本件登録意匠の態様は、本件登録意匠の形態を特徴付けるに不可欠の要素というほかなく、本件登録意匠の特徴は、サイドストラップ付きのアンダーショーツにおいて、サイドストラップの全体を透明としたことに加えて、その両端に当たる位置の、前後の身頃の角部の計4箇所に、ほぼ同形の8の字金具を表したことにあると認められ、この8の字金具の具体的な形状も一体となって本件登録意匠の全体の基調が形成されていると認められるところであり、従って、この8の字金具を有しない甲号意匠とは、全体の特徴、及び基調を異にするというほかなく、両意匠は全体として類似しないというべきである。
従って、本件登録意匠は、請求人の提出した甲号意匠によっては、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するとしてその登録を無効とすることはできない。

4.無効理由2(意匠法第3条第2項の規定の該当するとの理由)の検討

請求人は、本件登録意匠は、甲号意匠の形状に、単に甲第3号証ないし甲第5号証にみられるあるふれた形状の8の字金具を組み合わせて構成した意匠にすぎず、当業者であれば容易に意匠の創作することができたものであり、本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当する、と主張する。
そこで検討するに、確かに上記のとおり、8の字金具自体は従来からみられる金具であり、またこの種の8の字金具が様々な使われ方をされることも、十分に考えられる。
しかしながら、サイドストラップ付きのアンダーショーツにおいて、サイドストラップの両端に何らかの金具を設けて前後の身頃と繋げることがその出願前に一般的であったことが、請求人の主張、及び提出した証拠によっては認められず、また構造上においても、サイドストラップと身頃との接続部分に何らかの金具を用いることが必ずしも必要、或いは不可欠のものではなく、そして本件登録意匠は、サイドストラップの中間部分には特に調節金具を用いず、サイドストラップの両端に当たる、前後身頃の上端左右の計4箇所にのみ、また4箇所すべてに、ほぼ同形の金具を表したもので、更にこれに8の字金具を選択して表したもので、これらの点にアンダーショーツの形状としての特徴が認められ、またこれらの点が本件登録意匠の全体の基調、或いは美感に与える影響は、前項で記載したとおり顕著であり、この全体の基調、或いは美感に大きく関わる8の字金具を選択し、その余の構成態様と組み合わせて本件登録意匠の態様に一体化した点について、これが容易であったとする理由を、請求人の主張、及び提出した証拠によっては認めることができず、本件登録意匠は甲号意匠に基づいて容易に創作できたものと判断することはできない。

5.むすび
以上のとおりであって、請求人の主張、及び提出した証拠によっては、本件登録意匠についてその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2006-11-14 
結審通知日 2006-11-16 
審決日 2006-11-30 
出願番号 意願2002-22893(D2002-22893) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (B1)
D 1 113・ 113- Y (B1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 正田 毅 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 市村 節子
杉山 太一
登録日 2003-07-11 
登録番号 意匠登録第1183343号(D1183343) 
代理人 山口 朔生 
代理人 舘石 光雄 
代理人 萼 経夫 
代理人 横山 正治 
代理人 森 則雄 
代理人 河西 祐一 
代理人 村越 祐輔 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ