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審決分類 |
審判 B3 審判 B3 |
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管理番号 | 1153557 |
審判番号 | 無効2006-88009 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-05-19 |
確定日 | 2007-02-19 |
意匠に係る物品 | 前掛け眼鏡 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1205256号「前掛け眼鏡」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1205256号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の主張の要点 1.請求の趣旨 請求人は、「意匠登録第1205256号は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として検甲第1号証の1ないし3,検甲第2号証、甲第1号証、及び甲第2号証を提出している。 2.請求の理由 (1)手続の経緯 意匠登録第1205256号は、意匠登録出願人を株式会社トライ-アングルとし、平成15年5月16日に意匠登録出願され、平成16年3月26日に意匠権の設定の登録がなされたものである。 (2)無効事由 無効理由1.意匠登録第1205256号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、意匠法第48条第1項第3号に該当し無効とすべきものである。 無効理由2.本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号又は第3号に該当し、意匠法第48条第1項第1号により無効とすべきである。 無効理由3.本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号又は第3号に該当し、意匠法第48条第1項第1号により無効とすべきである。 (3)無効原因 (ア)請求人は、平成14年8月頃に本件登録意匠と同一の意匠にかかる前掛け眼鏡を創作し、卸業者である関眼鏡株式会社と商談を開始した。平成14年8月24日及び平成15年1月16日にはFAXで打合せを行い(検甲第1号証の1及び同第1号証の2)、その後、眼鏡の意匠が決定された(検甲第1号証の3)。その眼鏡は、関眼鏡株式会社を介して、平成15年3月頃より販売が開始された、“Decot”ブランドのものである(甲第1号証及び甲第2号証。)。 (イ)平成15年4月頃、請求人と被請求人は商談し、被請求人は、この前掛け眼鏡の取引を開始することを決めた。そのとき、被請求人は、この眼鏡について特許出願することを請求人に提案し、請求人は、既に関眼鏡株式会社を通じて販売しているものであり、新規性を喪失しているため特許は取得できないと思いながらも、被請求人が特許出願することについては承諾した。 被請求人は、意匠登録出願(意願2003-13525号)をし、創作者は、真の創作者である請求人山崎清ではなく、被請求人会社の社員である笠島善男であった。 (ウ)このように、本件意匠登録は、創作者でないものであって、意匠登録を受ける権利を承継しない者がなした意匠登録出願に基づくものである。 また、本件登録意匠は、その意匠登録出願前から請求人によって生産・販売されていた前掛け眼鏡と同一である。 さらに、本件登録意匠は、本件意匠登録の出願前に頒布された刊行物に記載されている前掛け眼鏡と同一である。 第2.被請求人の主張の要点 1.答弁の趣旨 被請求人は、「本件審判の請求を却下する、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張している。 2.理由 (1)本件審判を請求する利益について 本件意匠権は、平成18年7月31日放棄により消滅し、請求人は、本件審判を請求する利益を有しないから、本件審判の請求は却下されるべきである。(なお、被請求人は、創作の経緯、本件登録意匠が出願前に新規性を喪失している事実については言及していない。) (2)意匠登録を受ける権利の譲渡について 本件登録意匠については、被請求人が請求人の承諾の下に当該前掛け眼鏡の産業財産権を取得するため、当該登録を受ける権利を譲り受けて意匠登録出願したものである。被請求人が特許庁に産業財産権を取得するための手続を採ることについては、請求人も、これを承知していた(検甲第2号証添付の別紙「調停申立書」の紛争の要点の欄・第6項参照)。被請求人と請求人との話合いは、同業他社によって本件前掛け眼鏡が模倣されないようにしたいという趣旨であったことは明らかである。その趣旨に照らせば、特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願をして模倣盗用を防ぐための何らかの措置を特許庁に手続することについて合意したことは疑いのない事実である。 また、特許を受ける権利を承継して特許出願をした出願人は、最初の拒絶査定の謄本の送達を受けるまでは何時でも、当該特許出願を意匠登録出願に変更することができるのであるから(意匠法第13条第1項)、特許を受ける権利に限って譲渡し、意匠登録を受ける権利は譲渡していないという議論は無意味であって、請求人の主張が失当であることは明らかである。しかも、本件意匠に係る前掛け眼鏡に関する「特許を受ける権利」、「実用新案登録を受ける権利」、および「意匠登録を受ける権利」は、何れも、本件請求人による本件意匠出願前における製造販売事実によって消滅していたのであるから、権利の実体はなく、その譲渡行為自体が無効だったのである。したがって、請求人は被請求人に対し「特許を受ける権利」は譲渡したが、「意匠登録を受ける権利」は譲渡していないとする請求人の主張自体、失当である。 第3,請求人の弁駁の要点 (1)被請求人は意匠権を放棄しているが、放棄前の権利は依然として有効な形で存在している。したがって、請求人は審判請求の利益を有している。 (2)特許を受ける権利と意匠登録を受ける権利とは、特許法と意匠法という個別の法律に基づいて発生する権利であり、意匠登録を受ける権利の譲渡について創作者が同意していない以上、特許を受ける権利を譲渡したからといってそれがそのまま意匠登録を受ける権利の譲渡を認めたことにならない。 意匠法13条1項は、特許出願から意匠登録出願への出願形式の変更を認める旨を規定しているに過ぎない。変更後の意匠登録出願にかかる意匠について登録を受けるには、意匠登録を受ける権利についても譲渡されていることが必要である。而して、本件登録意匠にかかる意匠登録を受ける権利は、請求人から被請求人に譲渡されていないものであるから、本件登録意匠は、いわゆる冒認出願に基づくものであり、無効にされるべきものである。 被請求人が、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けて出願していれば、本件意匠についても有効な意匠登録を受けることが可能であったはずであり、請求人が批請求人に対して特許を受ける権利を譲渡した時点では、意匠登録を受ける権利は実体が存在していたといえる。 第4.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠登録出願人を株式会社トライ-アングルとし、平成15年5月16日に意匠登録出願され、平成16年3月26日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1205256号の意匠であり、その意匠権は、平成18年7月31日放棄により消滅したものである。 2.本件審判請求は却下すべきものか否かについて 被請求人は、本件意匠権は、平成18年7月31日放棄により消滅し、請求人は、本件審判を請求する利益を有しないから、本件審判の請求は却下されるべきである旨主張する。 しかし、意匠法第36条で準用する特許法第98条第1項第1号の規定によれば、意匠権の放棄による消滅は、その登録によってその以後につき効力を生ずるものである(東京高判昭和53年4月26日・審決取消訴訟集昭和53年209頁・昭和52(行ケ)161参照)。したがって、意匠権が放棄により消滅した場合、放棄の時から意匠権は消滅するが、意匠権の設定の登録から放棄までの期間は、意匠権が存在しているのであり、登録無効とは違い、「意匠権は、初めから存在しなかったものとみなす」(意匠法第49条)ものではない。 また、意匠登録無効審判は、意匠権の消滅後においても、請求することができる(意匠法第48条第3項)。 したがって、被請求人の主張は採用することができない。 3.無効理由について (1)本件登録意匠の意匠法第3条第1項第2号又は第3号該当性 甲第1号証によれば、昭和シェル石油株式会社が平成15年3月20日に発行した通信販売カタログ「EXTENSION157」の第19頁には、「B.デコット 偏光クリップオングラス」の意匠が記載されており、その意匠は、本件登録意匠と同一の意匠と認められる。又、甲第2号証によれば、株式会社JAFサービスが平成15年4月18日に発行した通販用カタログ「CATALOGSHOP2003年初夏号」には、「デコット クリップオン偏光グラスセット」(商品番号418-5403)の意匠が記載されており、その意匠は、本件登録意匠と同一の意匠と認められる。 したがって、本件登録意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠(「ディコット クリップオングラス」の意匠)であり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当する。 4.むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当し、同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、意匠法第48条第1項第1号に該当する。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-08 |
結審通知日 | 2006-12-13 |
審決日 | 2007-01-04 |
出願番号 | 意願2003-13525(D2003-13525) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(B3)
D 1 113・ 15- Z (B3) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 杉山 太一 |
登録日 | 2004-03-26 |
登録番号 | 意匠登録第1205256号(D1205256) |
代理人 | 高島 敏郎 |
代理人 | 戸川 公二 |