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審決分類 |
審判 L3 |
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管理番号 | 1160532 |
審判番号 | 無効2006-88013 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-06-01 |
確定日 | 2007-06-18 |
意匠に係る物品 | フェンス用パネル |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1270674号「フェンス用パネル」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1270674号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申立て及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む)を提出した。 1.無効の理由の要点 本件登録意匠(意匠登録第1270674号の意匠)は、下記の理由1及び2により意匠法第3条に規定する要件を満たしておらず、意匠法第48条により無効とすべきである。 2.本件登録意匠を無効とすべき理由 理由1:本件登録意匠は、その出願日前に公知の意匠と類似である。 (1)本件登録意匠の構成 ア.全体が長方形をなし、ほぼ垂直に配列された8本の縦材と該縦材にほぼ 直交するように配設された3本の横材とからなる格子パネルである。 イ.横材は板形状をなし、その端部に縦材を貫通させている。 (2)甲第1号証の意匠の構成 甲第1号証の意匠は、平成14年(2002年)4月に頒布された朝日スチール工業株式会社発行のカタログ「朝日エバニューフェンス」(甲第1号証)に掲載されたエバニューフェンスの「NDメッシュパネル」と称するフェンス用パネルの意匠である。 A.ほぼ垂直に配列された複数本の縦材と該縦材にほぼ直交するように配設 された複数の横材とからなる格子パネルである。 B.横材は板形状をなし、その端部に縦材を貫通させている。 (3)上記A、Bの構成は、上記ア、イの構成とほぼ同一であることは明白であり、本件登録意匠が甲第1号証の意匠と類似であることは明らかである。 念のため、相違点1について、縦材の全体を食い込ませるか、半分程度食い込ませるかの差は、両者を非類似とするものではない。相違点2について、目の大きさに相違はあるが、両者共にフェンス用パネルにおいては一般的な大きさであるから、共通点を凌駕して非類似とする相違ではない。 理由2:本件登録意匠は、公知となった形状、模様若しくは色彩又はこれ らの結合に基づいて容易に創作をすることができたものである。 上記相違点1、2は共に、必要に応じて適宜選択される構成の相違にすぎない。したがって、本件登録意匠は、甲第1号証の公知意匠から容易に創作できたものであることは明らかである。 第2.被請求人の答弁及び答弁の理由 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1.意匠法3条1項3号に該当しないことについて 請求人が挙げた甲第1号証の意匠は、縦材と横材の形状、縦材と横材の組合せ構成、格子の目の大きさについては開示されているが、上下左右端は描かれていないから、物品「フェンス用パネル」に係る意匠全体ではなく、「フェンス用パネル」に係る意匠の一部分である。 そして、この種物品「フェンス用パネル」の分野においては、設置場所、用途等により縦横比、左右上下端の形状等が様々に変更されるものであり、「フェンス用パネル」という物品の特性等によってほぼ定型化されているとは到底いうことはできない。 従って、甲第1号証の意匠は、本件登録意匠と共通点及び差異点を意匠全体として総合的に観察して、それらが両意匠の類否の判断に与える影響を評価することができない、即ち、類否判断ができないものであるから、そもそも本件登録意匠の新規性の有無の判断の基礎となる資料とすることができないものである。 2.意匠法3条2項に該当しないことについて 本件登録意匠の創作のポイントは、甲第1号証の意匠から到底想到し得るものではない横材と縦材の連結部の構成態様により、全体として凹凸感のないすっきりとした印象を看者に呈しているところにあるといえ、本件登録意匠には高い創作性が認められるのである。 請求人は、本件登録意匠は甲第1号証の意匠から容易に創作できたものであると主張するのみであり、本件登録意匠が甲第1号証の意匠から容易に創作できたことが、「当業者にとってありふれた手法であることを示す具体的な事実」を一切提示していない。 第3.当審の無効理由通知 審判長は、被請求人に対して、次のとおり、無効理由を通知した。 「本件の意匠登録は、合議の結果、以下の理由によって無効とすべきものと認められます。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から30日以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出して下さい。 理 由 本件登録意匠は、下記に示すように、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当せず、同法同条同項の規定に違反してなされたものであるので同法第48条第1項第1号に該当し、その意匠登録は無効とすべきものです。 記 本件登録意匠の添付図面の記載内容について、縦材と横材の接合部の個所において表された内容が整合していないので、横材と縦材の接合部の構成態様が不明である。すなわち、正面図によると、縦材の直径の幅がそのまま前面に表れており、平面図及び底面図によると、縦材前面側の全体、又は、ほぼ全体が隠れており、図面の内容が整合していない。 また、願書の意匠に係る物品の説明の欄に記載された大きさによると、その縦横の比率は、4.5:10となるのに対し、願書に添付された図面に表されたものの縦横の比率は、約8.7:10となっており、意匠全体の構成比率が整合していない。 したがって、本件登録意匠は、一の意匠を特定することができないため、未だ具体的なものとは認められず、工業上利用することができる意匠に該当しない。 なお、被請求人が提出した平成18年8月7日付けの「審判事件答弁書」に添付された乙第2号証中、「横材に嵌め込み用貫通孔」の図面によると、本件登録意匠の接合部の態様は、縦材の直径の幅の一部が横材から露出して表れているが、本件登録意匠の正面図の内容とも、平面図及び底面図の内容とも異なっている。 」 第4.無効理由の通知に対する被請求人の対応 当審において、上記無効理由を通知し、意見書を提出する機会を与えたが、被請求人からは、何らの応答がない。 第5.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成17年5月6日の意匠登録出願に係り、平成18年3月24日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「フェンス用パネル」とし、その形態は、願書に添付された図面に記載されたとおりのものである(別紙参照)。 2.本件登録意匠の形態について 当審において通知した無効の理由のとおり、本件登録意匠は、添付図面の記載によれば、縦材と横材の接合部の構成態様が、正面図によると、縦材の直径の幅がそのまま前面に表れており、平面図及び底面図によると、縦材前面側の全体、又は、ほぼ全体が隠れていることから、図面の内容が整合せず、不明である。 また、願書の意匠に係る物品の説明の欄に記載された大きさによると、その縦横の比率は、4.5:10であるのに対し、願書に添付された図面に表されたものの縦横の比率は、約8.7:10であるから、意匠全体の構成比率も整合していない。 したがって、本件登録意匠は、願書及び添付図面の記載からは、一の意匠を特定することができず、未だ具体的な意匠を表したものとは認められないから、工業上利用することができる意匠に該当しないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項柱書の工業上利用できる意匠に該当せず、その意匠登録は、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第48条第1項の規定により、その意匠登録を無効にすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2007-04-18 |
結審通知日 | 2007-04-20 |
審決日 | 2007-05-07 |
出願番号 | 意願2005-13136(D2005-13136) |
審決分類 |
D
1
113・
14-
Z
(L3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 早瀬 ふみ |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
越河 香苗 山崎 裕造 |
登録日 | 2006-03-24 |
登録番号 | 意匠登録第1270674号(D1270674) |
代理人 | 高橋 清 |
代理人 | 川瀬 幹夫 |
代理人 | 小谷 悦司 |