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審決分類 審判    L6
審判    L6
管理番号 1162282 
審判番号 無効2007-880002
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-15 
確定日 2007-07-23 
意匠に係る物品 建築用格子材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1193489号「建築用格子材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1193489号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求の趣旨及び理由
1.請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由を審判請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。その要点は以下のとおりである。
登録第1193489号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、その出願前に公然知られた甲第1号証の意匠と類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条の規定に違背して登録されたものである。
本件登録意匠と甲第1号証の意匠とを対比すると、意匠に係る物品については共通し、その形態についは、以下に示す共通点と相違点とが認められる。
[共通点]
(1)「一定の断面形状で長手方向に連続する中空材であって、背面側に設けた取付部と、それの前面側に突出するよう設けた目隠し部とからなり、取付部にあっては、内部に背面に向け開口するチャネル状空間を形成した側断面視で縦長のチャネル状に形成し、目隠し部にあっては、内部に横倒しの長三角形状の空間を形成した側断面視で中空の横長の三角錐状に形成して、それの基端を取付部の全面で上下の中央部に接続させた」全体の基本構成の点。
(2)取付部の前後幅に対する取付部から目隠し部の突出長さの比率を略1:3としている点。
[相違点]
(1)取付部の形態について、本件登録意匠では、一対の係止片の各先端に、内側に屈曲する折曲壁を設けているのに対し、甲第1号証の意匠では、この折曲壁を有していない点。
(2)取付部の内部に、甲第1号証の意匠では、内奥部の一対に対向する部位にビスホールを設けているのに対し、本件登録意匠ではこのビスホールを有していない点。
(3) 取付部に対する目隠し部の接続が、本件登録意匠では、一体に連続成形されることで接続しているのに対し、甲第1号証の意匠では、目隠し部の基端部を、取付部の嵌合溝内に嵌入させて、ねじ釘による連結・結合により接続させている点
そこで、上記の共通点および相違点を勘案して両意匠の類否を検討すると、共通点(1)は、両意匠の骨格を成すものであるとともに、両意匠の支配的基調を成形するものであり、これに共通点(2)の共通性が加味されることで、観察者に共通の美感を起こさせるとともに、両意匠間に強い類似性をもたらしている。
これに対し、相違点(1)、及び、相違点(2)の差異については、本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ないものであり、局所的徴差に止まり、両意匠の類否を左右するものではない。
また、相違点(3)の差異は、観察者には通常見えない中空の目隠し材の内部における構造についての差異であるから、全体を観察したときに、類否に影響をもたらすものではない。
さらに、これらの相違点に係る態様が相俟って表出する視覚効果を勘案しても、前記共通点から惹起される両意匠の圧倒的な類似性を凌ぐ視覚効果は認められない。
したがって、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。
第2.被請求人の答弁の趣旨及び答弁の理由
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるとし、その理由として答弁書に記載のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む)を提出した。その要点は以下のとおりである。
(1)反論1
甲第1号証の意匠に関する「インターラインEX]は、インターラインアダプター(取付部)と本体パネル(目隠し部)とから分割されてなるもので、インターラインアダプターは、共通のインターラインアダプターに対して寸法や形状の異なる本体パネルを必要に応じて選択する構成になっている。したがって、観察者が甲第1号証意匠を見る場合、直接に製品を見ることはできない。観察者は断面図(あるいは断面を含む斜視図)を見ることになり、ここから製品がどのような形態かを知るのである。断面には否応なくインターラインアダプターと本体パネルとが分割され、両者が結合ネジで結合されている状態が示されていることから、観察者は好むと好まざるに拘らず、甲第1号証意匠はインターラインアダプターと本体パネルの2つの意匠を結合したものであることを知ることになる。
インターラインなるルーバーシステムは、本体パネルだけでも内装用として、専用アダプターと結合すれば外装用としても使用できるという製品なのであり、需要者は初めからインターラインアダプターと本体パネルとが分割されていることを理解したうえで購入するものであるから、本件登録意匠とは全く異なる。
また、本体パネルをインターラインアダプターに嵌入すれば当然のことながら2つの部材の合わせ目が視認されるわけであるから、「観察者には通常見えない内部構造」ということはできない。
インターラインアダプター(取付部)の背面中央に形成された嵌合溝は隅角部が直角になっている凹状であるのに対し、これに嵌合される断面が二等辺三角形状の本体パネル(目隠し部)の基部の両側は傾斜しているから、嵌合溝と本体パネル基部との間には必然的に隙間が形成されることになる。したがって、甲第1号証意匠が2つの部材から構成されていることは断面によらなくても明らかである。
本件登録意匠と甲第1号証意匠との類否を判断する場合、一体意匠と別体結合意匠とは基本的構成態様として認識すべきである。しかし、たとえ、これが具体的構成態様であるとしても、その場合は、基本的構成態様に基づく類似性を凌駕するほどの差異であることは明らかである。
以上のように、本件登録意匠と甲第1号証意匠とは互いに取引において相紛れることのない非類似の意匠である。
(2)反論2
請求人は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証をそれぞれ提示しているが、いずれも発行日につき明記がなく、上記年月に発行されたものと認めることはできないから、本件審判請求において提示された甲第1号証?甲第4号証は発行日が不明であり、証拠方法として採用すべきではない。
よって、本件審判は成り立たない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成15年5月9日に出願され、平成15年11月7日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1193489号の意匠であって、登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品は「建築用格子材」であって、その形態は願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである(別紙1参照)。
2.甲号意匠
甲号意匠は、東京都千代田区永田町2-12-14所在の株式会社エービーシー商会が販売していた、外装用目隠しルーバー「IL-S1506EX(IL-V1506EX)」の意匠であって、その形態は、何れも同社が頒布した、カタログ「CEILING SYSTEM、内外装ルーバー/照明ボックス、ルーバーシステム」(甲第1号証)75頁所載の図面、電子カタログ(CD-ROM版)「Metallic Building Materials、2001金属建材電子カタログ」(甲第2号証)に収録された図面、カタログ「アルウィトラ事業部設計価格表」(第3号証)23頁所載の図面、に表されたとおりのものである(別紙2参照)。
3.甲号意匠の公知性について、
被請求人は、甲第1号証ないし甲第4号証は、何れも発行日が不明であり、証拠方法として採用すべきではない旨主張するので、甲号意匠の公知性について検討する。
先ず、甲第2号証の電子カタログに付属したパンフレット3頁の下から2行目には、「本CD-ROM版データは一部を除き2001年4月1日現在のものです。」との記載があり、甲第3号証の「アルウィトラ事業部設計価格表」の表紙のほぼ中央には、「本価格表は2002年4月1現在の価格です。」との記載があることから、甲号意匠は、少なくとも両日付の間において継続的に販売され、本件意匠登録出願前に公然知られていたものと認められる。なお、甲第2号証に付属したパンフレットの裏表紙に記載されている「010806」の数字、及び、甲第3号証の裏表紙に記載されている「020307」の数字については、前記の記載、及び、カタログ作成における一般的慣行によれば、それぞれ「2001年8月6日」、「2002年3月7日」の作成日を意味すると解するのが自然であると認められる。
4.本件登録意匠と甲号意匠との比較検討
そこで、本件登録意匠と甲号意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点、及び、差異点がある。
すなわち、両意匠は、主たる共通点として、
(1)横長の長尺状としたものであって、背面側を開口したチャネル状取付部と、その前面側基板部上下中央から前方に大きく突出した目隠し部から構成されたものである点、
(2)チャネル状取付部について、縦幅を前後幅のほぼ2倍とし、開口部側上下には、等幅とした相互向き合うリップ片(係止片)を設けており、目隠し部との結合部付近を除きほぼ同じ厚みとし、各曲がり部は直角状とした点、
(3)目隠し部について、平面状とした上下両面を、前端で鋭角状に接合した態様の、上・下対称形状としたものである点、
(4)目隠し部の前後幅について、取付部の前後幅のほぼ3倍とし、目隠し部後端の縦幅については、基板部の縦幅の1/3強とした点、
(5)目隠し部の内部について、その上・下面側を平板状体に形成する中空部を設けた点、
(6)リップ片の縦幅について、上・下何れも取付部縦幅のほぼ1/4とした点、
がある。
一方、両意匠は、主たる差異点として、
(ア)取付部の基板部と目隠し部の結合態様について、甲号意匠は、基板部前面側に凹陥状部を設け、別体成形した目隠し部を嵌め込み結合したものであるのに対して、本件登録意匠は、基板部と目隠し部を一体成形状としたものである点、
(イ)中空部について、甲号意匠は、目隠し部後端のやや手前に中空部を前後に分割する縦方向の隔壁を設け、その隔壁の前面側にはタッピングホールを形成する対の向かい合う小弧状突部を設け、基板部と目隠し部の結合部近傍をやや肉厚状としているのに対して、本件登録意匠は、肉厚をほぼ均一とし、甲号意匠が有する隔壁、小弧状突部、肉厚部に相当するものがない点、
(ウ)基板部と目隠し部との前面側接合部について、甲号意匠は、断面をV字状とした極く幅の狭い溝が表れているのに対して、本件登録意匠は、これに相当するものがない点、
(エ)基板部背面側について、甲号意匠は、側断面視矩形状に突出した凸部が存在し、更に、その上下中央には、基板部を貫通し先端を目隠し部隔壁にねじ込み、取付部と目隠し部を固着するネジの頭部が一定間隔で表れているのに対して、本件登録意匠は、これらに相当する何れのものも存在しない点、
(オ)基板部背面側上下両隅部について、甲号意匠は、タッピングホールを形成する対の向かい合う小弧状突部を設けているのに対して、本件登録意匠はこれに相当するものがない点、
がある。
そこで、両意匠を意匠全体として観察し、これら形態上の共通点及び差異点が、類似するか否かの結論(以下、「類否判断」という。)に及ぼす影響について検討する。
先ず、前記共通点に係る(1)の点は、全体の概略に関するものであるが、(2)の点は、取付部の基本的構成態様に関するもの、(3)の点は、目隠し部の基本的構成態様に関するものであり、これら(1)ないし(3)の共通点に係る構成態様は、圧倒的に広い部位を占める縦方向の周面形状全体の骨格を構成するものであり、(4)の主要各部の構成比に関する共通点と共に、訴求力の強い共通した視覚的まとまりを生じさせるものであるから、(1)ないし(4)の構成態様を併せ持った点は、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。(5)の点については、圧倒的に広い部位を占める縦方向の周面形状に対して、側端面方向からのみ視認される実質的に内部構造に相当するものであり、また、(6)の点については細部形状の構成比率に関するものであり、これらは両意匠の共通感を強める効果はあるものの、類否判断に及ぼす影響は僅かである。
これに対して、差異点は、意匠全体として観察すると微弱なもので、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない
すなわち、(ア)及び(イ)の差異点について、これらは類否判断に及ぼす影響は僅かとした(5)の点と同様に、圧倒的に広い部位を占める縦方向の周面形状に対して、側端面方向からのみ視認することができる、成形方法ないし製造方法に起因する実質的に内部構造に相当する微弱なものであり、また、甲号意匠に対する本件登録意匠の構成態様は、成形上における設計変更程度のもので、格別着目される程のものではなく、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。
(ウ)の差異点については、前面側に関するものではあるが、注視しなければ気が付かない程度の視覚的に微弱な細溝にすぎず、類否判断に及ぼす影響は極く僅かにすぎない。
(エ)の差異点については、背面方向から視認することができるものではあるが、リップ片に対して奥まった部位における差異であって、(1)ないし(3)の共通点に係る構成態様に対して、相対的に微弱な差異であり、また、本件登録意匠において、甲号意匠に存在する側断面視矩形状に突出した凸部とネジ頭部を廃した点に関しては、(ア)及び(イ)において指摘した、成形方法ないし製造方法に起因する設計変更により、不要なものを単に廃した程度のものにすぎず、格別着目されるほどのものではないから、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。
(オ)の差異点については、縦方向の周面形状としては奥まった部位における微小な差異であって、しかも、壁体の組立方法に起因する通常行う設計変更程度のもので、格別着目される程のものではないから、類否判断に殆ど影響を及ぼすものではない。
このように、両意匠の差異点は何れも類否判断に及ぼす影響は僅かであり、また、これら差異点の相まった効果を総合したとしても、(1)ないし(4)の共通点に係る構成態様が相まって生じさせる訴求力の強い視覚的まとまりを陵駕し、別異の視覚的まとまりを生じさせるまでに至っているとは到底言い難いものであり、その他にも共通する点があるから、本件登録意匠は、甲号意匠に類似するものとせざるを得ないものである。
5.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、その出願前公然知られた甲号意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同法3条第1項の規定に違反するにも係わらず登録されたものであって、その登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2007-05-18 
結審通知日 2007-05-23 
審決日 2007-06-11 
出願番号 意願2003-12863(D2003-12863) 
審決分類 D 1 113・ 111- Z (L6)
D 1 113・ 113- Z (L6)
最終処分 成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2003-11-07 
登録番号 意匠登録第1193489号(D1193489) 
代理人 瀬川 幹夫 
代理人 新関 和郎 

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