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審決分類 |
審判 判定 属さない(申立不成立) E3 |
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管理番号 | 1163861 |
判定請求番号 | 判定2007-600008 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-02-01 |
確定日 | 2007-08-15 |
意匠に係る物品 | 剣道用甲手 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1184737号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「小手(剣道用甲手)」の意匠は、登録第1184737号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1.請求の趣旨及び理由並びに弁駁の理由 請求人は、イ号図面並びにその説明書に示す意匠(以下「イ号意匠」という)は、登録第1184737号意匠(以下、本件登録意匠という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として判定請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法としてイ号意匠が、被請求人の実施にかかるものである、との証明に関するもの、を提出したものである。 (1)その主張の大要は、以下のとおりである。 (A)本件登録意匠の説明 本件登録意匠は意匠に係る物品を「剣道用甲手」とし、その形態上の特徴は、従来の甲手布団(小手布団)の先端部分は、筒部と直線的に縫合されているところ、左側面図及び右側面図に表されているように、甲手布団の先端部分は筒部と曲線的に縫合されていることである。これは、左側面図と右側面図で、甲手布団の縫い目応対して、筒部の基端部が斜めになって縫合されていることから明らかである。 (B)イ号意匠の説明 被請求人の発行した「2006年版 武道具総合カタログ 45ページ」に掲載されている「応じ鎧小手 心」の意匠(以下、「イ号意匠」という)は、同ページ右下に記載されているように、小手布団の先端部分に、筒部がカーブの形状を持って縫合されている。 (C)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 両意匠は、意匠に係る物品が「剣道用甲手(小手)」であることで一致している。そして、形態上の特徴が、甲手布団の先端部分が筒部と曲線的に縫合されていることも一致している。 (D)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 従来の甲手布団(小手布団)の先端部分は、筒部と直線的に縫合されてきたところ、これを、機能性を尊重して曲線状に総合したのが本件登録意匠であるが、イ号意匠は明らかにその特徴を有している。 (E)むすび したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。 (2)さらに、請求人は、答弁書に対して弁駁書を提出して以下のように主張する。 (a)本件登録意匠の説明について 意匠法の定義は「物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美観を起こさせるもの(2条1項)」となっており、本件登録意匠は小手布団の先端部形状が曲線的となって、甲手頭と縫合しているところが特徴である。意匠公報の写真正面図は、甲手布団が曲がって筒状となり基端部が見えにくいが曲線を示していることは目視できる。左側面図、右側面図の写真を参照し、甲手筒部を展開すれば明らかである。 被請求人は、「曲線的な縫合」というのは正面図において表されなければならないのであるが、…と述べているが、意匠の特徴部分が、正面図に表れていなければならないという決まりはなく、特徴部分が左側面図によく現れていれば、それは意匠上の特徴となりうるのであり、被請求人の主張は失当である。 (b)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明について 1).第1の理由について イ号意匠(2006 年カタログ・P45)のカーブ形状と、本件登録の曲線的カーブ度の違いはあるが、被請求人の答弁書(p3第1の理由5行目)に「顕著なカーブ形状の縫合をする」と記されていることから小手布団の先端部形状が曲線的に縫合されていることは明白である。 又、筒部の濃淡模様は、各メーカーとも革製・布製(織刺)・人工皮革の材質や縫い方によって違いが生じるものである。 2).第2の理由について 被請求人発行のカタログ「1996年度武道」の「幸龍 家紋入」甲手の写真(乙第1号証)を見るかぎり、甲手布団の曲線形状は本件意匠のカーブ形状とは明らかに相異曲線に見受けられる。つまり、本件登録意匠は出願時において、公知または周知とはいえない。従って被請求人の主張は妥当ではない。 (c)むすび 本件登録意匠は、請求人自らも剣道を愛好し長年の経験によって考案したものである。手首動作に支障がなく、機能性を重視する為に商品化している。 知的創作物として審査官の妥当な判断で、意匠法第18条の規定により登録されている。 第2.答弁の趣旨及び理由 被請求人は、イ号図面並びにその説明書に示す意匠は、意匠登録第1184737号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める、と申し立て、その理由として判定請求答弁書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として乙第1号証の書証を提出したものである。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成14年9月6日の意匠登録出願に係り、平成15年7月25日に登録の設定がなされたものであり、その願書の記載及び願書に添付された図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「剣道用甲手」とし、形態を願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に現されたとおりのものである(別紙第1参照)。 2.イ号意匠 本件判定請求の対象とされるイ号意匠は、判定請求書に添付されたイ号意匠並びに説明書によれば、意匠に係る物品が「2006武道具総合カタログ」第45頁所載の記載によると「小手」であり、その形態を写真版写しに現されたとおり(同誌該当頁には8個の小手の意匠が表されており、請求人はその中のどの意匠がイ号意匠かという点について具体的に特定していないため、請求書のなかにおいて「同頁右下に記載されているように、小手布団の先端部分に、筒部がカーブの形状をもって縫合されている。」と右下の「応じ鎧小手図」の図面を指して主張するので、当審においてその8意匠のなかで先頭から4番目「5mm応じ鎧総紺革」の意匠がその図に一番近い意匠であると想定してその写真版をイ号意匠として検討する。)のものである(別紙第2参照)。 なお、写真版写し中には隠れて不明確な部分もあるが、他の小手図から想定できる範囲で認定し、対比する。 3.両意匠の比較検討 両意匠は、意匠に係る物品がともに剣道用の「甲手(小手)」であることから物品が共通し、その形態には、主として以下の共通点と差異点が認められる。 すなわち、共通点は、全体を「甲手頭」を主とするミトン状の甲手部と「甲手布団」で構成される甲手(小手)で、基本的構成態様を(あ)「甲手頭」を親指部分が分かれた二股状の甲部とし、その下に横細長クッション状の「生子」を設け、厚手の布状に平行横線状に表した刺し子の「甲手布団」との間を手首部を被う「筒(中腕)」で繋ぎ、甲手頭の内側を薄手の布状のもので「手の内」を形成して袋状にし、甲手布団の内側を甲手紐で編み上げた点、具体的構成態様を(い)甲手頭面に線状を略T字状に構成した刺繍を縫い込み、縦に凹湾曲させた筒の側面に、同長さの太縦線状を等間隔・並列に構成した刺繍縫い込みをした点、(う)甲手布団の筒側ほぼ中央部(甲の中央部)を僅かに凹湾曲に切り込んで筒部と繋いだ点、(え)甲手頭の二股部から甲手布団側への延長線上の甲手布団下側端部あたりをやや深く凹湾曲状に切り欠いた点、(お)甲手布団の筒側及び両側面側の内側面に補強様のやや幅のある布状のものを略倒立コの字状に表した点、である。 一方差異点は、(ア)本件登録意匠は甲手頭二股部周りに細かい水玉模様を施した布状のものを、周囲を略大きなギザギザ状にして設けたのに対して、イ号意匠にはそのようなものは設けられていない点、(イ)本件登録意匠は甲手頭親指部ほぼ中央に太線状の刺繍を縫い込んだのに対して、イ号意匠にはそのような刺繍は施されていない点(ウ)本件登録意匠は筒部中央部で上下の布状素材を変え、下側を暗調子の素材とし、上側をやや明調子(甲手頭、生子と同様の調子)としたのに対して、イ号意匠は同素材とした点、(エ)本件登録意匠は甲手布団に設けた補強様の布状のものをそれ以外の甲手布団の暗調子とは換えやや明調子とし、周りを雲形のような模様としたのに対して、イ号意匠はほぼ同様な布状のもので、周りを直線状にした点、が主として認められる。 そこで上記の共通点と差異点につき、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かの判断に及ぼす影響について、以下に検討する。 まず、共通点につき、この種の剣道用甲手の分野においては、全体形状を上記共通点(う)を除く各共通点で構成され、表された態様のものは本件登録意匠出願前より広く行われている(例えば、特許庁意匠課1995年2月17日受入の刊行物「スポーツ用品総合カタログ」第795頁所載の「剣道用こて」の意匠(特許庁意匠課資料番号第HC07005039号)、同課1999年7月27日受入の刊行物「武道カタログ」第10頁所載の「剣道用甲手」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC02025983号)等)(別紙第3参照)ことから格別特徴的な態様とすることはできず、共通感を印象付ける効果は大きいものとはいえない。 共通点(う)については、手首等のための機能的な効果があるとしても、その湾曲形状にして繋いだ態様は極僅かな湾曲の態様であって意匠全体の中にあっては極僅かな部分にすぎず、その共通点が類否判断に与える影響は微弱な程度のものにすぎない。 そうすると、これらの共通点のみで、直ちに類否を決定付けられるまでには至らず、やはり、差異点が類否判断に及ぼす影響を比較考量せざるを得ない。 そして差異点につき、(イ)及び(ウ)の点は、この種分野において通常行われている程度のものであり、この程度の改変の差異であれば、格別特徴的なものともいえないことからすれば、類否判断に与える影響は少ないといわざるを得ない。 しかしながら、本件登録意匠は剣道用甲手における部分的差異といえども、差異点(ア)の細かい水玉模様を施した甲手頭の布状部分及び差異点(エ)の暗調子の甲手布団に設けた補強様の布状のものをその暗調子とは異なる甲手頭等と同様のやや明調子(青灰色調)とし、縁部を雲形のような模様で表した態様は本件登録意匠出願前には見いだし難く、その略雲形模様で区画された補強様布状のものを表した甲手布団自体が全体に占める割合も多いことから、そこに表された模様等が両意匠の差異に占める割合は大きくならざるを得ず、そのような態様を表していないイ号意匠とは明らかに別異の態様を表したものと言わざるを得ない。 そうしてこれら共通点と差異点を総合すれば、共通点に係る態様が両意匠の基本的な構成態様を表したものであり、その余の共通点とが相俟ったとしても両意匠にのみ共通する独自の特徴として大きく評価できない以上、その特徴は、差異点(ア)及び(エ)に係る本件登録意匠にのみに表された模様形状等の差異は、両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすものとせざるを得ず、共通点が相俟った効果を考慮しても、差異点は共通点を凌いで両意匠の類否判断を決定付けるに十分で、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。 なお、請求人は、両意匠の形態上の特徴が、甲手布団の先端部分が筒部と曲線的に縫合されていることが一致している点であり、その点をことさら強調して主張するが、意匠の場合にはあくまでも全体の形態による対比観察、つまり全体観察をし、対比検討しなければならないことからすれば、その共通点をのみ捉えてその点に特徴があるから両意匠が類似するとまでいうことはできない。そして、両意匠全体についての当該共通点を含む共通点及び差異点についての対比、検討した結果については上記したとおりであるから請求人の主張は採用することができない。 以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2007-08-02 |
出願番号 | 意願2002-24234(D2002-24234) |
審決分類 |
D
1
2・
113-
ZB
(E3)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
前畑 さおり 樋田 敏恵 |
登録日 | 2003-07-25 |
登録番号 | 意匠登録第1184737号(D1184737) |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 佐々木 功 |