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審決分類 |
審判 補正却下不服 物品(物品の説明を含む) 取り消す F4 審判 補正却下不服 図面(意匠の説明を含む) 取り消す F4 |
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管理番号 | 1165613 |
審判番号 | 補正2006-50020 |
総通号数 | 95 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2007-11-30 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-30 |
確定日 | 2007-06-04 |
意匠に係る物品 | 包装用押出チューブ |
事件の表示 | 意願2006- 540「包装用押出チューブ」において、平成18年6月26日及び平成18年7月11日にした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.本件出願の手続の経緯 (1)本件出願は、意匠法第10条の2第1項の規定による(原出願を意願2005-4463号(出願日平成15年7月28日)とする。)平成18年1月16日の意匠登録出願である。 (2)原審において、この意匠登録出願は、3つの意匠を包含し、経済産業省令で定める物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされているものとは認められず、意匠法第7条に規定する要件を満たしていないとの理由で、拒絶すべきものであるとの拒絶理由を平成18年3月24日に通知した。 (3)これに対して、請求人(出願人)は、平成18年6月26日に手続補正書を提出し、「意匠に係る物品の説明」、「意匠の説明」、及び、「図面」全図を変更した。その後、平成18年7月11日に手続補正書を提出し、「図面」全図を変更した。 (4)原審では、平成18年6月26日の補正に対し、「意匠に係る物品の説明」の欄の「補正後の『ノズルは、管状ボディにつながった内側ボディと、これを取り巻く可撓性外側カバーからなる(参考図)』との記載は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず、」また、「『参考図』に表された図面のうち、左側の図は、この手続補正書における一組の図面に表された意匠とは別の意匠であり、右側の図は出願当初の願書の記載及び添付図面には記載されていないため」、これらの補正は、出願当初の願書の記載及び添付図面の要旨を変更するものと認められるとの理由で、意匠法第17条の2第1項の規定により、平成18年9月1日に補正の却下の決定をした。 また、平成18年7月11日の補正に対し、「『参考図』に表された意匠は、この手続補正書における一組の図面に表された意匠とは別の意匠であり、特に右側の図は出願当初の願書の記載及び添付図面には記載されていないため」、これらの補正は、出願当初の願書の記載及び添付図面の要旨を変更するものと認められるとの理由で、意匠法第17条の2第1項の規定により、平成18年9月1日に補正の却下の決定をした。 2.請求人の主張 この補正の却下の決定に対して、請求人は、平成18年11月30日に補正却下決定不服審判を請求し、要旨以下のように主張する。 この種物品における周知の「押出チューブの押出口部」には、本件出願の出願当初の第二及び第三形態の意匠(補正後の参考図に記載された意匠)に観られる凹環状溝部がなく、したがって、本願意匠のバルブの構造について、本件出願の出願当初の第一形態の意匠(以下、「甲意匠」という。)と、第二及び第三形態の意匠(以下、「乙意匠」という。)とを比較すれば、乙意匠のバルブの形状は細身で、甲意匠の骨格部に相当し、その差し引きから、「傘歯車状リング」(参考図の右側図面の上方付近の空白部分)の有無が判別される。そして、当業者であれば、乙意匠の先端部小円柱基部の周側の3つの横小楕円空白部(「立体表面の形状を表す細線」のない部分)が開口の窪みであり、当該開口部がバルブ部におけるチューブの収納剤の押出し出口であることが、理解できる。また、乙意匠にない、甲意匠の「傘歯車状リング」が、そのキャップ(被覆カバー)であり、したがって、甲意匠に、開口部がないが、「傘歯車状リング」が、乙意匠の先端円柱の基部の「傘歯車状周縁部と縦断面凹溝状リンク部」に嵌合固着されていて、容器のチューブを押すと、押出し容器(チューブ)の収納剤が、乙意匠の開口部を経由して、甲意匠のその上方内側周辺と乙意匠の先端小円柱との接する境からのみ、滲むように押し出されること(逆流しないこと)が理解される。 本願意匠の「ノズル(出口部)は、管状ボディ(チュ-ブ部)につながった内側ボディ(部)と、これを取り巻く(可撓性)外側カバー(環状被覆体)からなる(参考図参照)」ものといえ、また、このバルブの原理構造を示す「参考図」も合理的なものであることは、本件出願の出願当初の願書及び添付図面の記載から明らかである。 したがって、これら補正の却下の決定は理由がなく、取り消されるべきである。 3.当審の判断 (1)本件出願の出願当初の意匠 本件出願の出願当初の願書及び願書添付の図面によれば、出願当初の本件出願には、以下の(A)ないし(C)の3つの意匠(意匠登録を受けようとする意匠)が包含されているものと認められる。いずれの意匠も、意匠に係る物品は、「包装用押出チューブ」であり、「意匠に係る物品の説明」によれば、「蓋体にバルブ機能を有する包装用押出チューブである。」 そして、その形状は、以下の(A)ないし(C)のものと認められる。 (A)第一形態の意匠は、下部について中央部にねじ溝を有する略円柱状とし、上部について略円錐台形状(請求人のいう「傘歯車状」)とした蓋体部分を実線で表した部分意匠である。 (B)第二形態の意匠は、下部について中央部にねじ溝を有する略円柱状とし、上部について全体を細身円柱状とし、その中間に4方に矩形孔を有する略円錐台形状部を設けた蓋体部を実線で表した部分意匠である。(なお、「第二形態左側面図」の記載によれば、下部略円柱状のねじ溝が略円柱状の全体に設けられているが、「第二形態正面、右側面および平面を表す図」の記載によれば、ねじ溝は略円柱状の中央部にのみ設けられている点に不一致がある。) (C)第三形態の意匠は、下部について中央部にねじ溝を有する略円柱状とし、上部について全体を細身円柱状とし、その中間に4方に矩形孔を有する略円錐台形状部を設けた蓋体部を(4個の矩形孔部分、及び下部のねじ溝より下方部分を除き)実線で表した部分意匠である。(なお、「第三形態左側面図」の記載によれば、下部略円柱状のねじ溝が略円柱状の全体に設けられているが、「第三形態正面、右側面および平面を表す図」の記載によれば、ねじ溝は略円柱状の中央部にのみ設けられている点に不一致がある。) そして、(1)第一形態の意匠と第二及び第三形態の意匠とを対比すると、蓋体部分の上部の全体が第一形態の意匠は細身である点、及び、第一形態の意匠には4個の矩形孔がない点に差異があること、(2)蓋体はバルブ機能を有すること等を考慮すると、第二及び第三形態の意匠は、第一形態の意匠の蓋体の上部外側カバー(請求人のいう「傘歯車状リング」)を除いて、バルブ機構を形成する4個の矩形孔を有する内側ボディのみにした状態の意匠と認められる。 (2)補正後の意匠 本件出願の平成18年6月26日補正後の意匠は、意匠に係る物品が、「包装用押出チューブ」であり、「意匠に係る物品の説明」によれば、「蓋体にバルブ機能を有する包装用押出チューブである。ノズルは、管状ボディにつながった内側ボディと、これを取り巻く可撓性外側カバーとからなる(参考図)。」ものである。そして、その意匠の形状は、「斜視図」及び一組の図面(6面図)に記載されたとおりである。 また、「参考図」の左側の図として、下部について中央部にねじ溝を有する略円柱状とし、上部について全体を細身円柱状とし、その中間に4方に矩形孔を有する略円錐台形状部を設けた蓋体部を実線で表した意匠の斜視図を記載し、「参考図」の右側の図として、蓋体部の一部切欠断面として構造を示す斜視図を記載している。これらは、(1)「参考図」の右側の図の外形状の記載は、補正後の意匠と対比すると、補正後の意匠の上端部が短円筒形状であるのに対し略短円錐台形状である点、及び補正後の意匠の蓋体下端部に傾斜面部があるのに対し垂直面の構成である点に差異があるが、その他のほとんどの記載が一致しており、(2)「参考図」の右側の図の外側カバー(上方付近の空白部分)を除いた内側ボディの外形状の記載(断面を斜線で記載している。)は、上部がやや不明確であるが、左側の図と一致する。したがって、この「参考図」は、蓋体のバルブ機能が「内側ボディと、これを取り巻く可撓性外側カバーとからなる」ことを示すための参考図と認められる。 以上のように、平成18年6月26日補正後の本件出願は、一つの「包装用押出チューブ」の意匠に係るものであり、二以上の意匠を包含するものではない。 また、平成18年7月11日の補正は、主に、平成18年6月26日補正における「参考斜視図」及び一組の図面(6面図)について意匠登録を受けようとする部分以外の部分の描線を二点鎖線から破線に変更しただけのもので、この補正後の意匠は、平成18年6月26日補正後の意匠と同一と認められる。 (3)出願当初の意匠と補正後の意匠の対比 本件の出願当初の意匠と補正後の意匠とを対比すると、補正後の意匠は、出願当初の第一形態の意匠と同一と認められ、補正後の本件出願は、一の意匠に係るものであり、出願当初に包含されていた第二形態の意匠及び第三形態の意匠が削除されている。 すなわち、両意匠の意匠に係る物品は、「包装用押出チューブ」で一致し、補正後の「斜視図」及び一組の図面(6面図)の記載は、出願当初の「第一形態斜視図」及び第一形態の一組の図面(6面図)と一致している。 そして、補正後の「意匠に係る物品の説明」については、出願当初の第二及び第三形態の意匠が、第一形態の意匠の蓋体の上部外側カバー(請求人のいう「傘歯車状リング」)を除いて、バルブ機構を形成する4個の矩形孔を有する内側ボディを露わにした状態の意匠と認められるから、補正後の「意匠に係る物品の説明」における、「ノズルは、管状ボディにつながった内側ボディと、これを取り巻く可撓性外側カバーとからなる(参考図)」との記載は、内側ボディと外側カバーによって「蓋体にバルブ機能を有する」ことを明確にしたものと認められる。 また、補正後の「参考図」については、(1)この「参考図」は、蓋体のバルブ機能が「内側ボディと、これを取り巻く可撓性外側カバーとからなる」ことを示すためのものであり、(2)「参考図」の左側の図の記載は、出願当初の「第二形態正面、右側面および平面を示す図」の記載と一致し、(3)「参考図」の右側の図の外形状の記載は、出願当初の第一形態の意匠(補正後の意匠)とほとんどの記載が一致し、(4)「参考図」の右側の図の外側カバー(上方付近の空白部分)を除いた内側ボディの外形状の記載は、出願当初の「第二形態正面、右側面および平面を示す図」(「参考図」の左側の図)と一致する。それゆえ、「参考図」の左側の図は、本願意匠の蓋体のバルブ機能を構成する内側ボディを示すための参考図と認められ、出願当初においても内側ボディのみにした状態の意匠として「第二形態正面、右側面および平面を示す図」に記載されていたものであり、また、「参考図」の右側の図に記載された形状は、出願当初の記載と多少の不一致があっても、「内側ボディと、これを取り巻く可撓性外側カバーとからなる」蓋体のバルブ機能を示す参考図としては、出願当初の願書及び添付図面の記載に基づき認識できる範囲のものである。 以上のように、本件の補正後の意匠は、出願当初の第一形態の意匠と同一と認められ、この補正は、出願当初の第一形態の意匠に係る願書の記載及び願書に添付した図面からその意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる意匠の同一の範囲を超えて変更するものではない。 (4)要旨変更の有無 本件の平成18年6月26日の補正は、出願当初3つの意匠を包含していた意匠登録出願から、2つの意匠を削除した補正であるが、二以上の意匠を包含する意匠登録出願について意匠の一部を除外して残余の意匠に減縮するためには、意匠法は手続の補正の制限を設けているにとどまるから、手続の補正によらざるをえないものである(意匠審査便覧17.3参照)。また、分割の手続によらなくとも、これを例外的に補正として取り扱う(意匠審査便覧30.02参照)。そして、この補正後の意匠は、出願当初に包含されていた3つの意匠のうちの第一形態の意匠と同一であるから、この補正は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものではない。 また、本件の平成18年7月11日の補正後の意匠は、平成18年6月26日の補正後の意匠と同一であり、かつ、出願当初に包含されていた3つの意匠のうちの第一形態の意匠と同一であるから、この補正は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものではない。 4.むすび 以上のとおり、平成18年6月26日手続補正書及び平成18年7月11日手続補正書による補正を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした原審における決定は理由がなく、取り消しを免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2007-05-15 |
出願番号 | 意願2006-540(D2006-540) |
審決分類 |
D
1
7・
2-
W
(F4)
D 1 7・ 1- W (F4) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石坂 陽子 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 鍋田 和宣 |
登録日 | 2007-09-28 |
登録番号 | 意匠登録第1313641号(D1313641) |
代理人 | 大川 晃 |
代理人 | 田邉 隆 |