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審決分類 審判 補正却下不服  図面(意匠の説明を含む) 取り消す F4
管理番号 1170638 
審判番号 補正2006-50016
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2006-09-11 
確定日 2007-06-25 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2004- 33314「包装用容器」において、平成17年11月28日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。
理由 1.本願意匠
本願意匠は、英国特許意匠商標局への2004年4月30日の出願を第一国出願とする、パリ条約に基づく優先権の主張を伴い、平成16年(2004年)11月1日に意匠登録出願されたものであって、願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「包装用容器」(出願当初は「包装用容器の蓋」:後記〔第3次手続補正〕)とし、登録を受けようとする部分を実線で描いて現し、その形態を【別紙第1】(出願当初の図面による)に示す、次のとおりとするものである。
すなわち、本願意匠は、瓶状の容器体の上端口部に被せる「蓋体」部分の形状に係る部分意匠であって、同部分の形態を、口側を楕円形とし、底側を小円形状にしぼった態様の変形杯形を呈する大小2つの杯様体を逆さまにして、上を小杯、下を大杯として一体に積み重ね、そのつなぎ目に境界線を形成し、同境界線より下部の大杯の拡開傾斜角度を小杯よりわずかに拡げ、小杯の底に当たる上面部に円形の縁取り線を設けた構成態様とするものである。
2.本願出願後の手続の経緯
(1)第1次拒絶理由通知:平成17年4月28日付け
底面図が他図と一致しないとして、意匠法第3条第1項柱書を適用。
(2)〔第1次手続補正〕:平成17年8月10日
A-A断面図(正面図中央縦断面図)を追加することに伴う補正。(本補正は、後に却下が確定。)
(3)第2次拒絶理由通知:平成17年8月23日付け
刊行物掲載意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA15008583号)を引用して、意匠法第3条第1項第3号を適用。
(4)意見書:平成17年11月28日
上記(3)の第2次拒絶理由通知に対する、第3条第1項第3号に該当しない旨の意見書。
(5)〔第2次手続補正〕:平成17年11月28日
平面中央B-B断面図(平面図中央横断面図)を追加することに伴う補正。
(6)[第一次補正の却下の決定]:平成17年12月22日付け 上記(2)の〔第1次手続補正〕に対して、出願当初の願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められるとして却下した決定。(確定)
(7)〔第3次手続補正〕:平成18年4月5日
意匠に係る物品を出願当初の「包装用容器の蓋」から「包装用容器」に変更し、意匠の説明の欄の記載を一部変更・追加する補正。
(8)【第二次補正の却下の決定】:平成18年6月6日付け
上記(5)の〔第2次手続補正〕に対して、出願当初の願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められるとして却下した決定。
(9)審判請求:平成18年9月11日
上記(8)の決定に対する取り消しを求めた本件審判請求。
3.平面中央B-B断面図に現された意匠
上記(5)の手続補正書添付図面に記載された意匠の形態は、【別紙第2】に示す、次のとおりとするものである。
すなわち、平面中央B-B断面図に現された意匠は、前記1で認定した本願意匠の構成態様のものの内側に、その小円形底部から蓋体全体よりやや長い「薄い肉厚の円筒状体」を一体に垂下させた構成態様とするものである。そして、同円筒状体は、容器本体の口内に挿入されるものである。

4.原審の補正の却下の決定の理由 原審が行った本件【第二次補正の却下の決定】の理由は、以下のとおりである。((A)ないし(C)の項番を付して、項分け記載する。)
平成17年11月28日付け手続補正書により、
(A)「平面中央B-B断面図」を追加する補正をしたが、蓋内側の形状は出願当初の願書の記載及び添付図面には表されておらず、
(B)当該部分の補正後の形状は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず、
(C)また、当該部分は、本願意匠の要旨の認定に影響を及ぼす部分であることから、
上記手続補正書による補正は、出願当初の願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められる。
よって、意匠法第17条の2第1項の規定により、本手続補正を却下すべきものと決定する。
5.請求人の主張の骨子と証拠方法
上記補正の却下の決定の取り消しを求める本件審判請求人の主張の骨子は、以下のとおりである。また、請求人は、同主張の証拠方法として第1号証ないし第6号証を提出した。

補正の却下の決定の理由に説示された事項(A)、(B)、(C)を争点とし、各取り消し事由を述べる。
(1)(A)の説示については、当初の記載事実と関連して、補正後の蓋内側の如何なる部分が要旨変更となるのか、具体的に指摘されていないが、普通に当初の添付図面を観察すればその根拠となる表現が認められる。
(2)(B)の説示については、判断主体が、いわゆる当業者であるから、当初の添付図面の記載から当業界において周知の「ダブルキャップ構造」として当然その態様を推認できる程度のものである。
(3)(C)の説示については、本願意匠は包装用容器の蓋体部に係る部分意匠であるから、その外周面に要旨があり、また内部について前記推認できる態様以上の表現を超えるものでないから、本願意匠の要旨を変更する訳がない。

6.当審の判断
そこで、請求人の各取り消し事由の主張の採否、ならびに、原審の決定の理由の妥当性について各理由部分ごとに検討し、本件補正の却下の当否について総合的に判断する。
(1)まず、(A)の理由部分については、出願当初の願書添付図面に記載された底面図(却下された〔第1次手続補正〕の底面図ではない)によれば、破線によって、蓋体に係る本願意匠を被せる容器体全体の輪郭形状が最外側に楕円形に描かれており、その内側に実線によって、やや小さな楕円形からさらに小さな円形に至る複数の楕円形等が同心状に描かれている。
そして、この底面図の実線部分と他の平面図、正面図、側面図等の実線部分とを対照すると、底面図の実線部分は、底側からみた蓋体部分の内側を描いたものであると認識することができる。そしてさらに、平面図における蓋体部分の内側に2重に描かれた楕円形及び円形に対応する底面図上の実線部分を除いて(外形線部に対応する内形線と考えられるので)考察すると、最内側から2番目の「複線状の円形部分」は、実線部分の最外側の複線状の楕円形部分の作図表現が蓋体外周壁の肉厚を現しているものと認識できることを勘案すると、「何らかの円形突状体」であると推認することができる。
そうすると、「平面中央B-B断面図」を追加する補正について、請求人の「普通に当初の添付図面を観察すればその根拠となる表現が認められる。」との主張は、概ね採用することができるものであり、反対に、原審の(A)部分における「蓋内側の形状は出願当初の願書の記載及び添付図面には表されておらず」とする点は妥当ではないといわざるを得ず、これに首肯することはできない。
なお、出願当初の底面図の描き方に基づき出願人の作図表現意図を汲み取れば、蓋体の内側の形状について上記のように認識することはできるのであるが、この底面図の描き方が部分意匠の作図表現方法として適切か否かはまた別問題である。
(2)次に(B)の理由部分については、請求人が提出した証拠方法、ならびに当審の調査による、この種物品に係る蓋体の従前の意匠に照らすところ、蓋体内側の前記「何らかの円形突状体」であると推認することができる「複線状の円形部分」は、およそ「薄い肉厚の円筒状体」であると推認することができる。そして、その円筒状体の長さ(高さ)については出願当初の図面上からは特定することはできないが、従前のこの種蓋体の意匠に照らせば、蓋体全体の高さ前後に構成することが当業者において普通であると考えられる。
そうすると、請求人の『当初の添付図面の記載から当業者において周知の「ダブルキャップ構造」として当然その態様を推認できる程度のものである。』との主張は、概ね採用することができるものであり、反対に、原審の(B)部分における「当該部分の補正後の形状は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面から総合的に判断しても導き出すことができず、」とする点は妥当ではないといわざるを得ず、これにも首肯することはできない。
(3)(C)の理由部分については、原審の(C)部分における「当該部分は、本願意匠の要旨の認定に影響を及ぼす部分である」とする点は、本願意匠において、蓋体の内側も要旨の認定に一定の影響を及ぼす部分であるとはいえるが、請求人が主張するとおり、本願意匠においてはその外観形状が内側形状より優先する要旨であるというべきであって、内側形状は相対的に比重が軽い要旨である。
また、内側形状については、「平面中央B-B断面図」の追加によって得られる構成態様の要旨は、上記(1)、(2)の検討によれば、出願当初の図面から当業者が普通に推認することができる範囲内のものであり、そうであれば、「平面中央B-B断面図」を追加する補正は、出願当初に概ね現されていた本願意匠の比重の軽い内側部分に係る要旨を、より明確に確認する目的のものであるに過ぎないといわなければならない。
(4)そうすると、以上の各検討結果を総合すれば、本件の「平面中央B-B断面図」を追加する手続補正は、出願当初の本願意匠の要旨を変更するものではないというべきである。
7.むすび
したがって、本件手続き補正は、意匠法第17条の2第1項の規定に該当しないから、原審の補正の却下の決定は、取り消しを免れない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2007-06-04 
出願番号 意願2004-33314(D2004-33314) 
審決分類 D 1 7・ 1- W (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石坂 陽子 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 木本 直美
岩井 芳紀
登録日 2007-12-21 
登録番号 意匠登録第1320178号(D1320178) 
代理人 大川 晃 
代理人 田邉 隆 

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