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審決分類 |
審判 F5 |
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管理番号 | 1179123 |
審判番号 | 無効2005-88008 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-04-27 |
確定日 | 2008-06-17 |
意匠に係る物品 | 発光ダイオード付き商品陳列台 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1194646号「発光ダイオード付き商品陳列台」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1194646号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申立及び理由の要点 1.請求理由 審判請求人(以下、請求人という。)は、「登録第1194646号意匠(以下、本件登録意匠という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由として、本件登録意匠は甲第1号証及び同第2号証の刊行物に記載された意匠と同一であるか又は類似するものであるから、意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項第1号の規定によりその意匠登録は無効にされるべきものであるとして、審判請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 請求人の主張は、概ね次のとおりである。 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、平成14(2002)年12月13日に出願され、平成15(2003)年10月1日に登録査定がなされ、平成15(2003)年11月28日に設定登録されたものであり、意匠に係る物品が「発光ダイオード付き商品陳列台」であって、その形態は願書に添付された図面のとおりである。 (2)証拠の意匠の説明 甲第1号証の2及び同第2号証の2の商品カタログに記載された型番「CXDZ-3」の意匠(以下、「引用意匠」という。)は、意匠に係る物品が「発光ダイオード付き商品陳列台」であって、その形態及び色彩は商品カタログの写真のとおりである。 (2-1)そして、この商品カタログが、中華人民共和国における「発光ダイオード付き商品陳列台」の製造販売会社である「浦江県誠興電子電器有限公司」の発注を受けて、中華人民共和国の広告製作会社である「義鳥市金典広告有限公司」により、2002年4月10日に製作された刊行物である事は、「義鳥市金典広告有限公司」作成に係る甲第1号証の1の証明書により明らかである。 (2-2)さらに、この商品カタログが本件登録意匠の出願日である2002年12月13日以前に公然と頒布された事実は、「浦江県誠興電子電器有限公司」作成に係る甲第2号証の1の証明書により明らかである。 例えば、この商品カタログは中華人民共和国の広州市で開催された「広州交易会」会場内で一般参加者に対して公然と頒布された。この「広州交易会」には世界各国から交易関係者等が参加しており、この商品カタログが当交易会会場内の「浦江県誠興電子電器有限公司」自社ブースで、2002年4月27日にアメリカ合衆国の企業「PASSION ENTERPRISE」に配布され、また、2002年10月25日にはドイツの企業「NEW CHINA IMPORYT EXPORT」に配布された事実が証明されている。また、例えば、この商品カタログは「浦江県誠興電子電器有限公司」の自社工場内で2002年9月5日に日本の企業「YUMEX CO., LID.」に配布された事実が証明されている。 以上の事実から、引用意匠が本件登録意匠の出願前に外国において頒布された刊行物に記載された意匠であることは明らかである。 (3)本件登録意匠と引用意匠との対比 本件登録意匠と引用意匠とは、意匠に係る物品が共通し、その形態について、(ア)頂面円周部にアールを設けた略円柱状の商品陳列台の展示部中央に、商品陳列台内下部に設置された複数の発光ダイオード(LED)の光照射用の円形窓を設け、更に商品陳列台の最上部全面に、円形窓に対応する部分が透明であるか又は開口された円形展示板を設置している点、及び(イ)商品陳列台の直径と高さの比率、商品陳列台と円形展示板と光照射用円形窓の直径の比率についてほぼ共通する。 そして、この共通するところは、両意匠の形態全体に及び、とりわけ(ア)の態様は、両意匠の特徴を最もよく表すところであり、形態全体にまとまりを与えて全体の基調を形成し、これに(イ)の共通性も加わって両意匠の同一性又は酷似性を看者に強く印象付けており、これらの共通点は、両意匠の同一性又は類似の判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものである。 一方、両意匠の差異点として、(ウ)商品陳列台の背面について、本件登録意匠には願書に添付した背面図にあるとおりスイッチと電源コンセントが表されているのに対し、引用意匠は正面上部から撮影された写真版によるものであるため、背面の詳細が明らかとなっていない点、(エ)同様の理由により商品陳列台の底面についても、本件登録意匠には願書に添付した底面図にあるように、三角形状に表された三つの円形滑り止め、中央部に表された商品の使用説明等の必要事項を記載するための略長方形状の枠部分、三個毎に三列に平行に並べられた計9個の円形空気取り入れ穴等が表されているのに対し、引用意匠では底面の詳細が明らかとなっていない点、(オ)本件登録意匠には願書に添付した平面図にあるように、中央に設置された7個の発光ダイオードが表されているのに対し、引用意匠ではその一部しか表されておらず、且つ発光している状態のものが写っている点がある。 しかしながら、(ウ)の点については、この種商品の分野においてスイッチ又は電源コンセントを商品の側面に設けることは普通に行われており、又、これらの形態もありふれたものであるため、引用意匠において背面の詳細が明らかでないとしても、前述のとおりの、(ア)の共通点に(イ)の共通性も加わった両意匠の特徴的で強いまとまりに対しては、これを覆して別異のまとまりを形成するには到底至らず、差異として同一性又は類否の判断を左右するものではない。 又、(エ)の点についても、この種意匠において底面について需要者が購入時に底面の態様に注意を向けることは殆どないことから、底面の態様は看者の注意を惹くほどのものではなく、さらに甲第1号証の2及び同第2号証の2の商品カタログの場合のように、この種意匠の商品カタログにおいては意匠の底面部分は開示されていないことが普通であることからも、この種意匠の底面部分は、意匠の主要部とはいえず、底面における差異点は、両意匠の同一性又は類否の判断を左右するものではない。 更に(オ)の点については、甲第1号証の2及び甲第2号証の2の商品カタログで「CXDZ-3」の商品概要に「LED:7pcs」と記載されているため、引用意匠が7個の発光ダイオードを使用していることが容易に想到でき、又、発光ダイオードは発光を前提とするものであるから、これらの差異は、両意匠の同一性又は類否の判断を左右するものではない。 以上のことから、これらの差異点が同一性又は類否の判断に及ぼす影響は、共通点のそれを到底凌ぐには至らず、全体の基調を形成し、看者に強い同一性又は類似性を印象付けている両意匠は、全体として明らかに同一であるか又は類似するものである。 (4)むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、その出願前に外国において頒布された刊行物に記載された意匠と同一であるか又は類似するものであり、意匠法第3条第1項第2号又は第3号の意匠に該当するにも拘わらず意匠登録を受けたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定によりその意匠登録は無効にされるべきである。 2.弁駁 被請求人の答弁書に対し、請求人は弁駁書の記載のとおり弁駁し、証拠方法として、甲第5号証ないし甲第10号証を提出した。 請求人の反論は、概ね次のとおりである。 (1)甲第1号証の2及び甲第2号証の2のカタログにおける「中華人民共和国輸出輸入企業資格」の記載が虚偽であるとの、被請求人の主張について 乙第1号証記載のとおり、「誠興電子電器有限公司」がこの資格を正式に取得したのは2002年9月24日であるが、中国ではこの正式の資格がなければ一切輸出入の業務ができないというものではなく、正式取得までの間は資格を有する関連貿易会社を介して輸出入の業務を行うのが一般的である。 このような事情から「誠興電子電器有限公司」も2002年3月にこの資格の申請をし、初審を通過したため、資格の正式取得を見越して資格取得の記載をしたに過ぎず、このように正式取得を待つことなく、申請後にその旨をカタログ等に記載することも中国においては珍しいことではない。 この資格取得に係る事実については、被請求人提出の乙第3号証の証明者により、甲第5号証の1として立証する。以上により、当該カタログにおける記載が虚偽という性質のものでないことが明らかであり、被請求人の主張は、当該カタログが本件登録意匠の出願前である2002年4月10日に制作された刊行物であることの信憑性に何ら影響を与えるものではない。 (2)「金典広告有限公司」法人代表である金承宝氏の証明に係る甲第1号証の1は偽造である疑いが濃いものであり、それは本件登録意匠の出願日以前に頒布された刊行物であることを立証するものではないとの、被請求人の主張について 被請求人は、甲第1号証の1の信憑性に疑義を与えるべく人民政府僑務弁公室作成の証明書を乙第2号証として提出しているが、この「人民政府僑務弁公室」が何を根拠に伝聞形式の証明をするのか不明であり、またこのような伝聞形式で請求人の証拠を否定されるのは心外である。 そこで、請求人は再度、甲第1号証の1の証明者本人に、先に作成した甲第1号証の1の信憑性について確認し、それが偽証でないことの確認を得た。(甲第7号証の1) (3)「広州交易会」の展示ブースは「誠興電子電器有限公司」に対して与えられていないことを証明した乙第3号証により、甲第2号証の1には信憑性がなく、それは、本件登録意匠の出願前に「誠興電子電器有限公司」のカタログが公然と頒布された事実を証明するには足りないとの、被請求人の主張について 乙第3号証のとおり、「誠興電子電器有限公司」に対して直接、「広州交易会」の展示ブースが与えられたことはない。これは「誠興電子電器有限公司」が自社ブースではなく、他の会社の展示ブースを通して出展していたからに他ならない。このような形での出展の事実は、被請求人提出の乙第3号証の証明者でもある「浦江県対外貿易経済協力局」の馬栄兆氏自身が証明している(甲第5号証の1)。 更に、自社ブースにおいて「誠興電子電器有限公司」の出展を許可した「中華人民共和国非鉄金属輸出輸入総公司江蘇省支社」によるその事実の証明書を提出する(甲第8号証の1)。 この点に関し、請求人が請求の理由の中で「自社ブース」と記載し、甲第2号証の3の訳文で「当社展示ブース」と記載したのは適切な表現ではなかった。しかしながら、甲第2号証の1の記載から明らかなように証明書の原本では「広交会交易館内」となっており、「自社ブース」や「当社展示ブース」の記載は一切ない。これはあくまで翻訳文作成に起因する誤記であり、「誠興電子電器有限公司」が、「広州交易会」内の展示ブースで出展した事実を証明する甲第2号証の1に誤りはない。従って、被請求人の主張は失当である。 請求人は甲第2号証の1の事実を補足するため、該カタログの頒布先であるドイツ企業「NEW CHINA IMPORYT EXPORT」の証明書(甲第9号証の1)により、該カタログの頒布の事実を立証する。 (4)更に、請求人は、請求人の主張、立証を補足するため、日本企業「COMNET CO, LTD.」に宛てた関連貿易会社のインボイス及びパッキングリストの写しを提出する(甲第10号証の1、甲第10号証の2)。 これらの日付は本件登録意匠の出願日前の2002年11月25日であり、そこには、甲第1号証の2及び甲第2号証の2の商品カタログに記載された本件登録意匠にかかる製品番号である「CXDZ-3」の記載があることから、本件登録意匠がその出願日前から公然と取引の対象となっていたことがわかる。 以上のとおり被請求人の答弁書における主張はいずれも失当であり、請求人の主張、立証に影響を与えるものではない。 第2.被請求人の答弁及び理由の要点 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由として、答弁書に記載のとおりの反論をし、乙第1号証ないし乙第3号証を提出し、さらに、請求人の弁駁に対し、第2回目の答弁書を提出し、同答弁書に記載のとおりの反論をし、乙第4号証及び乙第5号証を提出し、証拠方法提出書により、乙第6号証を追加して提出した。 被請求人の反論は、概ね次のとおりである。 1.答弁 (1)甲第1号証の2(商品カタログ)及び甲第2号証の2(商品カタログ)の説明記事について 2002年4月10日に「金典広告有限公司」が制作した旨主張している甲第1号証の2及び甲第2号証の2の商品カタログ中にある「誠興電子電器有限公司」の説明記事の本文第3行目に、「誠興電子電器有限公司」が中華人民共和国輸出輸入企業資格を有する趣旨の説明が記載されているが、乙第1号証によると「誠興電子電器有限公司」がその資格を取得したのは2002年9月24日であることが証明されているのであり、その日以前に同公司が輸出輸入企業資格を有する旨の甲第1号証の2(商品カタログ)及び甲第2号証の2(商品カタログ)の上記記載は虚偽である。 (2)甲第1号証の1の証明書(「義鳥市金典広告有限公司」が作成した添付商品カタログが本件登録意匠の出願前に製作された刊行物である事の証明書)について 乙第1号証によると、甲第1号証の1の証明書である「金典広告有限公司」の法人代表である金承宝の証明は、甲第1号証の1の証明書に記載の商品カタログが実際に2002年4月10日に制作したものであるか否かを確認することなく当該証明書を発行した旨が記載されており、以上によると、甲第1号証の1の証明書は偽造である疑いが濃いものであり、本件登録意匠の出願日である2002年12月13日以前に頒布された刊行物であることを立証するものではない。 (3)甲第1号証の2(商品カタログ)及び甲第2号証の2(商品カタログ)の頒布事実について 被請求人提出の乙第3号証によると、「浦江県誠興電子電器有限公司」に対し2002年より現在まで「広州交易会」の展示ブースを与えていない旨が証明されており、したがって、甲第2号証の1(「浦江県誠興電子電器有限公司」作成に係る添付商品カタログが本件登録意匠の出願前に公然と頒布された刊行物である事の証明書)には信憑性がなく、本件登録意匠の出願前に「誠興電子電器有限公司」の該商品カタログが公然と頒布された事実を証明するには足りないものである。 したがって、本件審判請求の趣旨には理由がない。 2.弁駁に対する第2回目の答弁 (1)請求人の、中国では「中華人民共和国輸出輸入企業資格」がなければ一切輸出入の業務ができないというものではないとの主張について 「輸出入経営資格管理関連規定」には、「企業の輸出入経営資格は登記或いは承認した経営範囲に従い」と規定されており、資格者であっても、輸出できる範囲が登記又は承認の範囲に限定されている(乙第4号証、特に乙第4号証の1)にもかかわらず、無資格者が無限定に輸出できると解釈するのは極めて不合理であり、「輸出入経営資格管理関連規定」にも反するものであって、信憑性はない。 (2)請求人の、「中華人民共和国輸出輸入企業資格」の取得前に資格を有する関連貿易会社を介して輸出入の業務を行うのが一般的であるとの主張について その主張は不合理であり、妥当性を欠き、しかもその事実が証明されていない。 (3)請求人が、この資格の申請から正式な取得までには長期間を要する旨述べていることについて この資格は、申請日から10日以内に許可又は不許可が決められる(乙第4号証、特に乙第4号証の2)のが実情であり、請求人の主張は事実に反する。 (4)請求人の、輸出輸入企業資格の正式取得を待つことなく、申請後にその旨をカタログに記載することも中国においては珍しいことではないとの主張について 中華人民共和国広告法に規定があり(乙第4号証、特に乙第4号証の3)、輸出輸入企業資格を取得する前に取得したかのようにカタログに表示することは、真実でなく且つ合法的であるべきとする規定に反しており、全く信憑性に欠けるものである。 (5)請求人の、輸出の際に必要となる税務署への納税(増値税)証明書(甲第6号証)からも、「誠興電子電器有限公司」が資格を正式に取得した2002年9月24日以前から本件登録意匠に係る製品を輸出していた事実は明らかであるとの主張について 増値税証明だけでは、輸出事実及び輸出時に納めた税金であることも証明できないし(乙第4号証、特に乙第4号証の4)、また、「誠興電子電器有限公司」が資格を正式に取得する以前の2002年1月16日から本件登録意匠に係る製品を輸出していたとの主張は、2002年3月にこの資格の申請をしたとの主張と照らし合わせても不自然であり信憑性に欠けるものである。したがって、甲第6号証は、本件登録意匠の出願前に「誠興電子電器有限公司」の該商品カタログが公然と頒布された事実の立証を補足する資料たり得ない。また、該商品カタログにおける掲載が虚偽でないことを裏付ける資料としても全く役に立たない。 (6)金承宝氏自身の再度の作成に係る証明書(甲第7号証の1)について 該商品カタログが作成されたことを示す客観的事実の裏付けのないものであり、甲第1号証の1は依然として信憑性がない。 (7)甲第2号証の1の証明書(「義鳥市金典広告有限公司」が作成した添付商品カタログが本件登録意匠の出願前に製作された刊行物である事の証明書)の信憑性について (7-1)甲第5号証の1の証明書について 馬栄兆氏の当該証明権限の有無が不明で、当時の地位も明らかでなく、出展事実の証明としては全く十分でなく、甲第2号証の1は信憑性がないことに変わりがない。特に、別の会社を通して広州交易会に出展したことがありますとの記載はあるものの、当該別会社を具体的に特定していないし、何時の広州交易会であるのかも特定しておらず、その他公的機関の認証もなく、信憑性を欠いている。 (7-2)甲第8号証の1の証明書について 甲第8号証の1において言及している広州交易会は、2002年秋季の広州交易会であり、その会期は2002年10月25日から10月30日までとしているが、甲第2号証の1では、アメリカ合衆国の企業「PASSION IMPORT EXPORT」への配布日を2002年4月27日としている。この点においても、甲第2号証の1は、依然として信憑性はない。 (7-3)甲第9号証の1の証明書について ドイツ企業「NEW CHINA IMPORT EXPORT」の証明書では、頒布されたカタログが如何なるものか特定できない。 (8)日本企業「COMNET CO., LID.」に宛てた関連貿易会社のインボイス及びパッキングリストの写し(甲第10号証の1及び甲第10号証の2)について 内容自体に信憑性はない。 (9)さらに、被請求人は、証拠方法提出書により乙第6号証を追加し、「金典広告有限公司」が商品カタログを製作したこと(甲第1号証の1)について、登記簿謄本によれば、同有限公司の経営範囲には「印刷」が含まれておらず、したがって発注先印刷業者が明記された発注書並びに納品書が必要であるが、これらの証拠が提出されていないから、信憑性を欠くと反論した。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成14(2002)年12月13日に出願され、平成15(2003)年11月28日に意匠権設定の登録がなされた、意匠登録第1194646号の意匠であって、願書の記載及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「発光ダイオード付き商品陳列台」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照) すなわち、全体を略短円柱状とし、上方円周部をアール状に形成し、頂面に円形展示板を配し、それらの中央に円形凹部を形成して、7個の発光ダイオードを七曜様に凝縮させて配置し、周面にスイッチと電源コンセントを設け、底面に、三角形状頂点位置に三つの円形滑り止めと、中央部に略長方形状の枠部と、三個毎に三列に平行に並べた計9個の円形空気取り入れ孔を、設けたものである。 2.引用意匠 請求人が本件登録意匠の無効の理由として引用した意匠は、「浦江県誠興電子電器有限公司」の商品カタログ(甲第1号証の2及び甲第2号証の2)に記載された型番「CXDZ-3」の意匠であるが、被請求人は、請求人提出の同カタログは、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物ではない旨、反論している。 そこで、同カタログは、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物であるかについて検討する。 (A)「浦江県誠興電子電器有限公司」が頒布したとする商品カタログ(甲第2号証の2)は、「義鳥市金典広告有限公司」製作に係る商品カタログ(甲第1号証の2)と同一であるのかについて 〈1〉提出された両商品カタログを比べると、甲第1号証の2とした商品カタログは全8頁であるのに対し、甲第2号証の2とした商品カタログは全6頁と少なく、アダプターと変圧器の商品写真を掲載した2頁分が見あたらない。しかし、それ以外の頁はすべて同一であり、共に、型番「CXDZ-3」の商品写真が掲載された発光ダイオード付き商品陳列台の商品写真頁、及び、発光ダイオード付き商品陳列回転台の商品写真頁と、商品番号頁、そして、表紙頁、会社概要記載頁、裏表紙頁が存在する。それゆえ、請求人は、本件登録意匠にはあまり関わりのない商品写真頁を除いたものを、甲第2号証の2として提出したと推認され、両商品カタログは、同一のものと認められる。 (B)当該商品カタログは、本件登録意匠出願前の2002年10月25日に頒布されたのかについて 〈2〉甲第8号証の1及び2によれば、2002年秋季の「広州交易会」が、2002年10月25日から10月30日まで開催されたこと、及び、その会期中、「浦江県誠興電子電器有限公司」は、他の会社の展示ブースを通して「広州交易会」に出展していたことが認められる。 〈3〉また、甲第9号証の1及び2によれば、2002年10月25日に、ドイツの企業「NEW CHINA IMPORYT EXPORT」が、「広州交易会」会場(中華人民共和国広州市流花路展示会場内)にて、「浦江県誠興電子電器有限公司」の「商品カタログ(訳語:製品目録)」3部を取得したと認められる。 これに対して、被請求人は、「甲第8号証の1において、証明者が言及している広州交易会は、2002年秋季の広州交易会であり、その会期は2002年10月25日から10月30日までとしているが、甲第2号証の1では、アメリカ合衆国の企業「PASSION IMPORT EXPORT」への配布日を2002年4月27日としている」とし、「この点においても、この2002年4月27日に配布されたとの事実の記載は誤りであり、甲第2号証の1は、依然として信憑性はない」旨主張するが、アメリカ企業への配布場所が広州交易会であっても、他の期間の広州交易会であることも考えられ、また、アメリカ企業への配布はドイツ企業への配布と何ら関係が無く、配布の日が異なることがドイツ企業へ当該商品カタログが配布されたとの認定をくつがえすものではない。 (C)2002年10月25日に頒布された当該商品カタログは、型番「CXDZ-3」の意匠が掲載されたものであるのかについて 〈4〉ドイツの企業が、商品カタログ(訳語:製品目録)3部を取得したことを証明する甲第9号証の1及び2には、商品カタログ(訳語:製品目録)自体、あるいは、そのカタログ写しは添付されていない。 しかしながら、甲第9号証の1の証明書には、その商品カタログ(訳語:製品目録)の内容説明が、「注2」として記載されており、同記載によれば、その記載内容は、甲第1号証の1において、「注3」として記載されている商品カタログ(訳語:製品目録)の内容説明と同一である。そして、甲第1号証の1の「注3」の説明は、甲第1号証の2の商品カタログについてのものであるから、これら一連の証拠が何を立証しようとしているかを勘案すれば、甲第9号証の1の証明書が示す商品カタログは、甲第1号証の1の証明書が示す商品カタログと同一であると考えるのが、妥当である。したがって、ドイツ企業が商品カタログ(訳語:製品目録)を2002年10月25日に取得したことを証明する甲第9号証には、取得した商品カタログの添付はないものの、そのカタログは、甲第1号証の2として提出された商品カタログと同一であると推認される。 よって、2002年10月25日に頒布された商品カタログは、型番「CXDZ-3」の意匠が掲載された商品カタログであると認められる。 なお、被請求人は、登記簿謄本によれば、「金典広告有限公司」は印刷業務を行っていないから、甲第1号証の1、すなわち、「金典広告有限公司」が2002年4月10日に当該商品カタログを製作したとする証明は信憑性を欠く旨主張するが、印刷会社は特定できないとしても、甲第1号証の1と、再証明である甲第7号証の1によれば、当該商品カタログが「金典広告有限公司」により「浦江県誠興電子電器有限公司」のためにデザインされ、発注されて、製作されたことは認められ、「浦江県誠興電子電器有限公司」により頒布されたという認定をくつがえすものではない。 以上のように、型番「CXDZ-3」の意匠が掲載されている商品カタログは、本件登録意匠の出願前の2002年10月25日に頒布された刊行物と認められる。 3.両意匠の対比 本件登録意匠と引用意匠を対比すると、物品について、両意匠は発光ダイオード付き商品陳列台であるから一致し、形態においては、以下の共通点及び相違点が認められる。 まず、両意匠は、全体を平たい略短円柱状とし、上方円周部をアール状に形成し、頂面に円形展示板を配し、展示板中央に、円形凹部を形成して中に7個の発光ダイオードを密着させて配置した、光照射用円形窓を形成した基本的態様、そして、具体的態様においては、全体の高さと直径の比率構成、並びに、陳列台本体と円形展示板と光照射用円形窓の直径の比率構成が、共通する。 一方、両意匠は、(あ)発光ダイオード配置部について、本件登録意匠は、円形凹部を開口状態とし、発光ダイオードを円形に7個配置したのに対して、引用意匠は、円形凹部の上部が開口状態のままなのか、あるいは透明な覆いがあるのかが不明で、発光ダイオードの具体的な配列も、斜視状態の写真によるので不明である点、(い)周面について、本件登録意匠はスイッチと電源コンセントを設けたのに対し、引用意匠は背面側が写っておらず、その有無が不明である点、(う)底面について、本件登録意匠は三つの円形滑り止めと、略長方形状の枠部、そして計9個の円形空気取り入れ孔を設けたのに対し、引用意匠は底面部は隠れていて、それらの有無が不明である点、(え)色彩について、本件登録意匠は形状のみが表されたものであるのに対し、引用意匠は色彩を結合させており、また、(お)円形展示板について、本件登録意匠は透明と特定していないのに対して、引用意匠は透明あるいは透光性を有するものである点が、相違する。 4.類否判断 そこで、以上の共通点と相違点を総合して、両意匠の類否を全体として検討すると、この種の意匠においては、需要者は形態全体を観察して意匠を認識するが、特にその使用目的上、上面の態様について関心を持つものである。したがって、共通するとした点は両意匠の形態全体に係り、意匠全体の骨格を決定していると共に、需要者の関心の高い上面の態様にも及んでいるから、意匠全体として需要者に共通する美感を起こさせるものである。 これに対し、相違点は、両意匠の共通する美感を変更するものではない。 すなわち、(あ)発光ダイオード配置部について、開口状態であるか否かは、通常の使用態様である点灯状態の引用意匠を見ても明らかなように、上部の覆いの有無は視認し難く、また、その部位は展示板の中央にあるから、上に商品が展示されてしまえば視認し難く、それはそこに配された発光ダイオードの配列についても同様であるから、これらの相違は看者の注意を惹かず、共通する全体の美感を変更するものではない。 (い)周面については、本件登録意匠のスイッチと電源コンセントはそれ自体小さく、視覚効果上格別なものはなく、また、ありふれた形状及び配置でもあり、看者の注意を惹かず、共通する全体の美感を変更するものではない。 (う)底面については、通常の使用態様で目にする部分ではなく、看者の注意を惹くことはなく、共通する全体の美感を変更するものではない。 (え)色彩については、引用意匠の態様も、一面に色彩を施すだけのありふれた彩色の態様であり、また、(お)円形展示板の透明か否か等の相違についても、同様に、透明あるいは透光性としたり、不透明としたりすることは、灯部周辺部位においてありふれた態様であり、その点が相違するとしても、圧倒的な形状の共通性に希釈されてしまい、両意匠の共通する全体の美感に影響を及ぼすことはない。 また、これら相違点の相まった効果を勘案しても、相違点が両意匠の共通点を凌駕することはなく、共通点は先に述べたとおり圧倒的で、両意匠は全体として美感が共通するものであるから類似する。 5.むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、意匠法第48条第1項第1号に該当する。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2006-07-03 |
結審通知日 | 2006-07-06 |
審決日 | 2006-07-19 |
出願番号 | 意願2002-37014(D2002-37014) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(F5)
|
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
梅澤 修 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 樋田 敏恵 |
登録日 | 2003-11-28 |
登録番号 | 意匠登録第1194646号(D1194646) |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 岡野 光男 |
代理人 | 土屋 良弘 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 後藤 晴男 |
代理人 | 小池 恒明 |
代理人 | 平井 昭光 |