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審決分類 |
審判 D4 |
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管理番号 | 1189002 |
審判番号 | 無効2008-880014 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-05-12 |
確定日 | 2008-11-17 |
意匠に係る物品 | 遠赤外線暖房器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1154913号「遠赤外線暖房器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1154913号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の請求の趣旨及び理由 請求人は、「登録第1154913号意匠登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、本件登録意匠(意匠登録第1154913号の意匠)は、出願前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載された意匠と同一又は類似であること、若しくは、請求人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがあることにより、無効とされるべきであると主張し、証拠方法として、甲第1?第16号証を提出した。 [1]意匠登録の無効理由の要点 1.意匠法第3条第1項第1号・第2号違反(無効理由1) 本件登録意匠は、出願前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載された遠赤外線暖房器「サンルーム550」の意匠(甲第2号証。以下、「甲第1意匠」という。)と同一のものであるから、意匠法第3条第1項第1号・第2号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。 2.意匠法第3条第1項第3号違反(無効理由2) 本件登録意匠は、出願前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載された遠赤外線暖房器「サンラメラ600」の意匠(甲第3号証。以下、「甲第2意匠」という。)と類似のものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。 3.意匠法第5条第2号違反(無効理由3) 本件登録意匠は、請求人の業務に係る物品である遠赤外線暖房器「サンラメラ600」と混同を生ずるおそれがあるから、意匠法第5条第2号により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。 [2]本件登録意匠を無効とすべき理由 1.甲第1意匠及び甲第2意匠の公知性 甲第1意匠の形態については、平成12年10月9日付読売新聞紙上に写真が掲載されている(甲第5号証)から、本件登録意匠の出願日よりも前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載されていた。 甲第2意匠の形態については、平成9年11月9日付毎日新聞、平成10年11月8日付読売新聞、平成11年10月31日付読売新聞、平成12年12月10日付読売新聞の各紙上、平成9年冬号及び平成10年冬号の通販カタログ誌上に、いずれも写真が掲載されている(甲第6?第11)から、本件登録意匠の出願日よりも前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載されていた。 2.本件登録意匠と甲第1意匠及び甲第2意匠との対比 (a)物品の同一性 本件登録意匠と甲第1意匠及び甲第2意匠に係る物品は、いずれも遠赤外線暖房器であり、同一である(甲第1?第3号証)。 (b)意匠の同一性 本件登録意匠と甲第1意匠とは、基本的構成要素及び具体的構成要素のいずれも同一である(なお、両意匠が同一であることは、いずれもスイッチが取り付けられた枠内に「サンルーム」の表示があることからも明らかである。)。 (c)意匠の類似性 ア)本件登録意匠と甲第2意匠の比較 両者の角が丸い直方体形状の筐体の前面に発熱ユニットと輻射面を覆う格子状ガード(縦に密で横に疎)を装着し、底部左右に前後に張り出した2個の取付脚を取り付け、前面右上部にスイッチ2個を配置した基本的構成要素はいずれも同一である。次に具体的構成要素のうち、格子状ガードが前面の中央部に配置され、下及び左右に筐体の表面を見せていること、格子状ガードの上部は筐体の背面側の枠に接着しており、上部に筐体の表面は見えないこと、取付脚の前後に合計4個のキャスターを有していること、スイッチが枠内に2つ横並びで設置されていることは共通である。 両者の差異点は具体的構成要素について、本件登録意匠については、甲第2意匠の格子状ガードの凹みがないこと、スイッチが取り付けてある枠の形が違うこと、以上が差異点として挙げる。 イ)共通点と差異点の評価 人目を惹く正面形状の基本的構成要素及び具体的構成要素において一致が見られることから、これらをもって意匠の類否判断を分ける要部と認めるのが相当である。 なお、具体的構成要素において若干の差異点を見出すことができるが、それらは、美感上は僅かの違いに過ぎず、看者に格別強い印象を与えるほどのものではない。 3.類否の結論 したがって、本件登録意匠と甲第1意匠は同一であり、本件登録意匠と甲第2意匠は類似するものというべきである。 4.本件登録意匠が請求人の業務に係る物品と混同するおそれがあること 請求人は、昭和61年から「サンラメラ」の商標登録を有し、「サンラメラ」という商品名で遠赤外線暖房器を販売し、そのうち出力が600ワットの商品を「サンラメラ600」という名称で平成9年より販売を開始し(甲第12?15号証)、甲第2意匠に係る物品である(甲第3号証)。 本件登録意匠は甲第2意匠と類似しているから、請求人の業務に係る物品である「サンラメラ600」と混同するおそれがある。また、本件登録意匠については、「サンラメラ600」と同一の媒体を使い、方法も酷似しているのであって(甲第2、第3号証、第5?第11号証)、名称と形態の類似性とも相まって、両者に混同を惹起させるおそれがあった。 [3]結語 したがって、本件登録意匠は、出願前に公知となった甲第1意匠と同一であること、又は、出願前に公知となった甲第2意匠と類似であること、若しくは、請求人の業務に係る物品である「サンラメラ600」と混同するおそれがあることにより無効とされるべきである。 第2.被請求人の答弁 被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても、被請求人からは、答弁書の提出がなかったものである。 第3.当審の判断 [1]無効理由1(意匠法第3条第1項第1号・第2号違反) まず、本件登録意匠と甲第1意匠とが同一か否かを検討し、意匠法第3条第1項違反の当否について判断する。 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成13年8月17日の出願に係り、平成14年8月16日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1154913号の意匠であって、願書の記載及び願書に添付した写真によれば、意匠に係る物品を「遠赤外線暖房器」とし、その形態を、願書に添付した写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 2.甲第1意匠 甲第1意匠は、株式会社エヌ・ジー・シーが遅くとも平成13年末までに発行した通販カタログ『いいモノいい出会い』、「VOL.50、2001WINTER保存版」(甲第2号証)所載、1頁に遠赤外線輻射熱式暖房器「サンルーム550」として現されたものの意匠である。しかしながら、同遠赤外線輻射熱式暖房器と同一機種に係るものの意匠が、甲第5号証の平成12年10月9日付読売新聞、8頁広告ページに記載の遠赤外線輻射式暖房器「サンルーム550型」として現されている事実を考慮すると、甲第1意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内において公然知られた意匠であり、その形態を当該カタログに現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 3.本件登録意匠と甲第1意匠の同一か否かの判断 本件登録意匠と甲第1意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品がともに遠赤外線暖房器であって一致し、形態については、(ア)筐体部背面の態様について、本願意匠は、上下部に3箇所の上下2連の横長換気口を設け、中央部に極浅い横長矩形状凹部を形成したのに対して、甲第1意匠は、背面が現れず、当該態様が不明であるとの差異点を除いて、両意匠は一致している。なお、右側の筐体前面の上方寄りに設けられた操作部のスイッチの具体的構成態様については、甲第1意匠は2連のスイッチを配しているもので、本件登録意匠は、正面側だけを観れば、写真が不鮮明でスイッチの具体的構成態様が不明である。しかし、右側面図及び平面図から観れば、本件登録意匠が2連のスイッチを配していることは明らかであり、両意匠のスイッチの具体的構成態様は一致しているものと認められる。 そうとすれば、共通点は、通常の使用の状態である斜視状態から観る範囲において視認できる全ての態様に係ってくるものであって、かつ、看者が注意を惹く主要部である放熱部等を有する前面の態様を含むものであるから、両意匠の美感を圧倒的に支配し、両意匠に意匠全体として全く一致した美感を起こさせるものである。 一方、差異点(ア)の筐体部背面の態様に関する差異は、背面が壁側に面して筐体部の裏側に隠れ、殆ど目立たないところであって、かつ、本件登録意匠の態様は、換気口等の技術的構造をそのまま表した過ぎず、特徴的な態様ではなく、看者の注意を惹くものではないから、この差異は、両意匠の美感に与える影響が極めて小さい。 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においても、共通点が差異点を圧倒的に凌駕し、意匠全体として美感が全く一致しているものであるから、両意匠は同一の意匠であると認められる。 4.小括 したがって、本件登録意匠は、甲第1意匠と同一の意匠であるから、意匠法第3条第1項第1号に掲げる意匠に該当し、同条同項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 [2]むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号に掲げる意匠に該当し、同法同条同項の規定に違反して意匠登録されたものであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、その意匠登録は無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2008-09-08 |
結審通知日 | 2008-09-11 |
審決日 | 2008-10-03 |
出願番号 | 意願2001-24214(D2001-24214) |
審決分類 |
D
1
113・
111-
Z
(D4)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
瓜本 忠夫 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 杉山 太一 |
登録日 | 2002-08-16 |
登録番号 | 意匠登録第1154913号(D1154913) |
代理人 | 水谷 彌生 |
代理人 | 喜多村 勝徳 |