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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 H7
管理番号 1200346 
審判番号 不服2008-13194
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-23 
確定日 2009-07-14 
意匠に係る物品 携帯電話機 
事件の表示 意願2006- 2422「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2006年(平成18年) 2月 3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書および願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「携帯電話機」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書の記載および願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 原審の引用意匠
原審において,拒絶の理由として引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,2005年 9月 9日の大韓民国への出願を基礎にパリ条約による優先権を主張し,2006年(平成18年) 2月16日に意匠登録出願され,2006年(平成18年)10月 6日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1286695号の意匠であって,意匠に係る物品は,「携帯電話機」であり,その形態は,願書の記載および願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断
1.両意匠の対比
本願意匠と引用意匠を比較すると,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,その形態については,主な共通点と差異点が以下のとおり認められる。
(共通点)
(1)基本的構成態様として,筐体全体は,略縦長矩形薄板状に形成されており,正面部の態様について,上からスピーカー部,表示部,ファンクションキー部,テンキー部およびマイク部を設け,両側部の態様について,各種のスイッチ部や接続部などを小区画として複数個設けた点。
(2)具体的な構成態様として,表示部の態様について,縦長でそのまわりに小幅の余白部を設けた点,ファンクションキー部の態様について,中心に大きめなメインファンクションキーを配し,その左右に対称形でかつ平行な略横筋状のサブファンクションキーを配した点,テンキー部の態様について,縦方向に四段の略横筋状に構成されており,その1段は3個のキーを均等に配した点,筐体の背面部の態様について,平面視断面が略薄い台形状をなしており,これが背面部において縦方向に左右対称な2条の筋模様として表れている点。

(差異点)
(ア)筐体の態様について,本願意匠は,背面部とそれ以外の2ピース的な構成になっており,背面部以外は平面視左右下側の隅部を丸くした態様の筐体となっているのに対して,引用意匠は,平面視上下対称で3ピース的な構成となっており,正面部と背面部がそれぞれ平面視略台形状・略逆台形状の断面をなしており,また,これを正面視すると,本願意匠は,上下左右がすべて直線的な矩形状をなしているのに対して,引用意匠は,四隅が隅取りされた態様となっており,さらに,筐体の正面の態様について,本願意匠は,表示部の周辺を略「U」字状に囲み,テンキー部を略逆「U」字状に囲む態様の区画が設けられているのに対して,引用意匠では,表示部・ファンクションキー部・テンキー部を左右方向に同幅で正面上部のスピーカー部と正面下部のマイク部でその幅がやや狭くなる左右対称の縦筋状の2本線で区画されている点。
(イ)正面上部のスピーカー部の態様について,本願意匠は,その中央に細い横筋状のスピーカー孔部が設けられているのに対して,引用意匠は,横長長方形状のスピーカー孔部が右寄りに設けられており,その左側には略正方形状の区画部が設けられている点。
(ウ)その引用意匠に係る正面上部の略正方形状の区画部は,背面にまで続いており,背面の同部にはカメラレンズ部が設けられているのに対して,本願意匠にはそれがない点。
(エ)ファンクションキー部の態様について,本願意匠は,中心のメインファンクションキーが略隅丸正方形を基調とするものであって,その左右のサブファンクションキーは左右上下に計4個配設されているのに対して,引用意匠は,メインファンクションキーが円形を基調としたものであって,その左右のサブファンクションキーは左右上中下に計6個配設されている点。
(オ)テンキー部の態様について,本願意匠は,ファンクションキー部とテンキー部の間に余白部があり,そこにテンキーの一つとほぼ同形のキーのようなものが設けられているのに対して,引用意匠は,余白部もキーのようなものもない点。
(カ)正面下部のマイク部の態様について,本願意匠は,マイク孔部が余白部の右隅に形成されているのに対して,引用意匠では,これが余白部の中央に形成されている点。

2.両意匠の類否判断
次に,以上の共通点および差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討する。
共通点(1)の態様は,単なる表示部,操作キー等の配置を示すに過ぎず,概括的な共通性であって,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて微弱であるという他ない。また,共通点(2)の態様も携帯電話機の意匠においては,いずれの態様もそれぞれよく見られる態様であり,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響も限定的なもので,微弱であるといわざるを得ない。
これに対して,差異点(ア)は,携帯電話機という手にとって比較的間近で使用する物品では,見る者の注意を惹く筐体全体にわたる具体的構成態様に係るものであって,かつ,本願意匠については先行意匠にはあまり見られない本願意匠のみに係る特徴というべき態様であり,これらの差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいものである。さらに,これに,スピーカー部の態様に係る差異点(イ),カメラレンズ部の有無に係る差異点(ウ),ファンクションキー部の態様に係る差異点(エ),テンキー部の態様に係る差異点(オ),そして,マイク部の態様に係る差異点(カ)という形態全体に及ぶ差異点が加わって,差異点全体が相まって奏する意匠的効果は,前記の共通点が及ぼす影響を凌駕して,両意匠の類否判断を決定付けており,両意匠をして別異の感を生じせしめているといい得るものである。

3.小括
以上のとおりであって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,この一致点は,両意匠の類否判断の前提となるに過ぎないものであり,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱であるのに対して,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,差異点が共通点を凌駕しており,両意匠は,意匠全体として観察した場合には,類似するということはできない。


第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原審の引用意匠をもって意匠法第9条第1項の最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとすることはできないものであって,原審の拒絶の理由により本願意匠は,意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないものであるとすることはできない。

また,当審においてさらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論の通り審決する。
別掲
審決日 2009-06-29 
出願番号 意願2006-2422(D2006-2422) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松尾 鷹久内藤 弘樹 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
淺野 雄一郎
登録日 2009-07-31 
登録番号 意匠登録第1368551号(D1368551) 
代理人 大村 昇 
代理人 安島 清 
代理人 佐々木 宗治 
代理人 小林 久夫 
代理人 高梨 範夫 

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