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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5
管理番号 1201892 
審判番号 不服2008-29138
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-14 
確定日 2009-07-21 
意匠に係る物品 電気ポット 
事件の表示 意願2007- 7343「電気ポット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意願2007-007345を本意匠とする関連意匠の意匠登録出願として2007年(平成19年) 3月23日に出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書および願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「電気ポット」であり,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)」は,願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2 原審の引用意匠
原審において本願意匠が類似するとして引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前に国内において頒布された刊行物である日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:2004年(平成16年) 4月19日)に記載された意匠登録第1237231号(意匠に係る物品,湯沸かし及び保温用電気ポット)の意匠であり,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 請求人の主張
請求人は,拒絶査定を不服として,請求の趣旨「原査定を取り消す。本願の意匠は登録すべきものとする,との審決を求める。」との審判を請求し,請求の理由として,概略次のように述べた。

1.本願意匠と引用意匠との相違点
(1)操作部の構成
両意匠の操作部の構成を比較すると,本願意匠は,手前スイッチ部中央に位置する「給湯スイッチ」は,平面図に表れているとおり,U字形状(馬蹄形状)の操作パネルに囲まれるように配置されており,周囲の操作パネルと給湯スイッチは,明らかに別部材で構成された独立した部材であるのに対し,引用意匠は,半円形状の島全体を操作部パネルとした一体部材であり,その中央に給湯スイッチではなく,ワッペンのような模様があり,その中に四角い液晶画面が設けられたという基本的構成が異なる。
また,この種物品の公知意匠を確認すると,手前スイッチ部中央に「表示部」を設けている意匠が大半である。
(2)表示部の位置
本願意匠は,平面図に表されているとおり,手前スイッチ部中央の給湯ボタンの左横に表示部を設けているのに対し,引用意匠は,操作部の中央のワッペンのような模様の中に液晶画面として表示部が設けられており,手前スイッチ部中央に「表示部」を設けている意匠が大半であることから,看る者は,本願意匠の「給湯ボタン」と,引用意匠の「ワッペンのような模様・液晶画面」とを,本願意匠の表示部が中央ではなく,給湯ボタンの左横に設けられていることなどから,違いを識別できる。
(3)操作部の面積比率
本願意匠は,平面図および斜視図に表れているとおり,給湯スイッチは蓋側に片寄って設けられ,U字形状(馬蹄形状)の操作パネルの先端前方にも,操作ボタンを有しているのに対して,引用意匠は,ワッペンのような模様が大きく比率を占め,操作パネル先端には操作ボタンもない上,他に何等のボタンも入り込めない狭い部分となっている点が異なる。
(4)正面部と側面部の部材
本願意匠の正面部と側面部は,部材の切り替えのない同一部材で外周側面を形成しているのに対して,引用意匠の正面部と側面部は,正面部材と側面部材が別部材である点が異なる。
(5)蓋部の開閉レバー
本願意匠は,上面に位置する蓋開閉レバーに3つの小さな凹みを設けているのに対して,引例意匠は,蓋開閉レバー部に一つの大きな横長楕円形の窪み形状を設けている点が相違する。また,本願意匠の蓋部開閉レバーの長さは,給湯スイッチに対し約2倍の細長さであり,スリムな印象を与えるのに対して,引用意匠の蓋部の開閉レバーの長さは,ワッペンのような模様の表示部と略同等であり,異なる印象を与えるものである。
(6)半楕円形
本願意匠は,給湯スイッチの蓋側ライン辺が蓋と操作部とを分ける直線に平行であるのに対して,引例意匠は緩やかに下降する円弧状となっている。
(7)全体観察
全体観察を行った場合も,「操作部の構成」,「正面の給湯部付近の構成」,「操作部の面積比率」の構成態様の違いは,需要者の目に付くものであり,両意匠に全く異なる印象を与えている。
2.結論
本願意匠および引用意匠を比較すると,一般的な共通点はあるものの,特徴点や全体観察において創作ポイントである具体的構成態様について全く相違していると云わざるを得ないものであることから,意匠法第3条第1項第3号の規定には該当しない。


第4 当審の判断
そこで,本願意匠と引用意匠を比較すると,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態については,主として以下のとおりの共通点と差異点がある。
両意匠は,本体部について略楕円柱状の前側を切り欠く柱状とし,上部前側先端に丸みを持たせた態様で厚みのある突出部を庇状に形成し,突出部の下面先端付近には給湯部を設け,本体部上面は全体として平面視逆「卵形」状・側面視緩やかな凸面状をしたものであって,本体部上面の先端部には区画を設けて給湯スイッチなどを配した操作部を設け,その余の大半を蓋部とし,その蓋部の先端寄り中央に平面視逆「盾地」形状の蓋部開閉レバーを設け,同じく蓋部の後端中央には蓋と本体部をつなぐヒンジを設け,本体部の蓋部の下側に半円弧状のハンドルを設け,本体部前面の右端部に縦長な水量ゲージを設けた構成態様が共通している。
一方,両意匠には,上面の操作部が,本願意匠は,中央上側に略盾地形状の給湯スイッチを設け,その前側から左右両側にかけて略「U」字状の区画を形成し,4つの円形状のスイッチなどを設けているのに対して,引用意匠は,操作部の中央に略盾地形状の区画を設け,その中に横長矩形状の表示部を設け,その略盾地形状の区画の左右両側に大小の円形状のスイッチなどを設けている点,蓋部の形状について,本願意匠は,2条の左右対称形をした稜線があるのに対して,引用意匠は,これがない点,蓋部開閉レバーの態様について,本願意匠は,3つの小円状の凹み部を設けているのに対して,引用意匠は,1つの大きな横長楕円形の凹み部を設けている点,本体部の高さと径の構成比率が,本願意匠は,やや細長いのに対して,引用意匠は,ずんぐりとしている点,突出部を除く本体部前面の態様について,本願意匠は,縦長の凹面状としているのに対して,引用意匠は,略平坦面としている点,本体部前面の表面の態様について,本願意匠は,底部を除いて継ぎ目のない態様となっているのに対して,引用意匠は,本体部前面の左右両側面と突出部との境界付近に略縦長矩形状の継ぎ目が設けられ,この部分の内側が暗調子とされている点,などに差異がある。
以上の主な共通点および差異点が両意匠に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討すると,共通するとした構成態様は,この種物品において極めてありふれた構成態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定されたものとならざるを得ないから,この共通性をもって両意匠の類否判断を決定することはできない。これに対して,差異点としてあげた態様は,最も目に付き易い部位に係るものであるとともに,この種物品を使用する際に極めて高い頻度で触れる部位に係るものであるから,これらの差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいものであるということができる。また,この差異点に係る本願意匠の態様は,本願出願前にはあまり見られない態様で,本願意匠の特徴を形成しているものであるから,これらの差異点が相まって生じている両意匠の異なる印象は,共通点を凌駕しているものということができる。
したがって,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点が及ぼす影響を上回っており,意匠全体としてみた場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。


第5 むすび
以上のとおりであって,原審の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとは言えず,同条同項柱書の規定によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,さらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-06-11 
出願番号 意願2007-7343(D2007-7343) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 行久斉藤 孝恵 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 淺野 雄一郎
杉山 太一
登録日 2009-08-07 
登録番号 意匠登録第1369132号(D1369132) 

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