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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1208150 
審判番号 不服2009-8293
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-16 
確定日 2009-11-10 
意匠に係る物品 包装用瓶 
事件の表示 意願2007- 27347「包装用瓶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成平成19年10月5日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用瓶」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.原査定の拒絶の理由
これに対して,原査定では,この意匠登録出願の意匠は,「この意匠登録出願に係る包装用瓶の分野において,口部,肩部,胴部を用途に応じて適宜組合せることは,本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法であって,この意匠登録出願の意匠は,本願出願前に公然知られたものと認められる口部及び胴部の意匠(特許庁発行の意匠公報に記載された意匠登録第1140490号の意匠(以下,「意匠1」という。別紙第2参照)の口部及び胴部の意匠),本願出願前に公然知られたものと認められる肩部の意匠(特許庁発行の意匠公報に記載された意匠登録第814402号の意匠(以下,「意匠2」という。別紙第3参照)の肩部の意匠)を,単にほとんどそのまま組み合わせたに過ぎないので,容易に創作できたものと認められます」として,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められますので,意匠法第3条第2項の規定に該当する,とした。

3.請求人の主張
請求人は,審判を請求し,おおむね次のとおりの主張をした。
本願意匠は,細身かつ無装飾,平滑面をもって直立する円筒胴体の上縁部に明瞭な水平状稜線を介してから,凹凸多面体状の周面をもって上方にすぼまる多角錐台状肩部が連続し,さらにその上部が螺旋ねじのある注出口部に連続するという簡潔なデザインの一体形状のボトルです。
水平状稜線から始まる肩部と注出口部上端までの高さは,ボトル全高の5分の1強であり,多角錐台状肩部外周面の凹凸多面体状部は,具体的には三面夫々が三角形である凹陥部を六個放射状に配した多角錐台状であって,平面視では,円形外郭内に六角星形が表れる配置ですが,立体視すれば,胴部との水平稜線部から注出口部に向かって大きい三角形の稜線が急傾斜で延びることによって,六角星形の外側に生じる小さい三角形の母線が,包装用瓶の左右側面において,当該大きい三角形の外郭線からはみ出して表れるという独特な形状を形成しています。
本願意匠は,高価格の烏龍茶を入れて製造販売する包装用瓶として開発されました。内容物である烏龍茶は,平滑面状の胴部から透かして見えるとともに,上部の多角錐台状部ではキラキラと見え,高級感をもたらすデザインとして創作し,その形状に独特の意匠的工夫がなされたものです。
当該カットは,細身で平滑面状の円筒胴部とは対照的な賑やかさを呈するので看者の注意を引きます。また,肩部と胴部の境界に明瞭に表れる稜線が水平線状である点は,ボトルに鋭く潔いシャープな印象を供しています。
さらに,首部に上る縦長三角形と胴部に近い横長三角形との均衡に意匠的工夫を加えたことで,特に左右側面図にそれらの外郭がリズミカルに見え隠れするという独特な形状を実現しています。
これら具体的構成態様,形状へのデザイン的,意匠的創意工夫,特に円筒胴体上縁部の水平状稜線を構成要素とする三角形三面のクリスタルカットの意匠的工夫は,本願意匠に,従来の包装用瓶にはなかった高級感ある優美な美的印象をもたらしました。
拒絶理由では,意匠1から,口部及び胴部の意匠を摘出しています。
意匠1は意匠に係る物品を,包装用缶とし,A-A線端面図では,缶を形成する1の素材で注出口から缶体全体を形成していることが明らかですので,ここから,注出口部と胴体部のみを摘出することはできません。
あえて,拒絶理由がいうように,摘出すれば,胴部は円筒形,注出口部は,螺旋ネジのある円筒状であり,胴部については直径が缶の全高の3分の1と大きく,また注出口部直径も胴部直径の3分の1弱という大きな注出口を有していることが明らかです。
なお,摘出されなかった肩部を見れば,注出口とあわせたその高さは全高の6分の1と短いものですので,全体としてミルク缶を細くしたような素朴な印象を与えます。
次に,意匠2から,肩部の意匠を摘出しています。
意匠2は意匠に係る物品を,包装用びんとし,2つの断面図によれば,びんを形成する1の素材で注出口から瓶体全体を形成しています。肩部と胴体は滑らかに連続していますので,ここから,肩部のみを摘出することはできません。また,胴部中央には,グリップが設けられ,当該包装用びんが焼酎などの大容量容器として使用されるものであることが推認されます。
あえて,拒絶理由がいうように,摘出すれば,胴部上方から注出口部下まで上方にすぼまる凹凸多面体周面の円錐台形状であり,凹凸多面体周面は,左右三角形の稜線から胴部エリアに進出する円弧稜線を外縁とする扇形であり,そのため肩部は水平線状には表れません。むしろ,その円弧稜線の下方が胴部中央との境界円周溝まで円筒状であることが明らかに看取されます。
してみると,拒絶理由が想定する意匠と本願意匠とは,円筒形胴部と凹凸多面体周面を有する肩部そして注出口部があるという点のみが共通し,意匠全体に影響を与える肩部と胴部との境界態様,凹凸多面体周面の多角錐台形状の具体的な態様という,包装用瓶において重要な要素において,特に,各部が全体に占めるプロポーション,具体的な美観において両者には明らかな差異があります。すなわち,拒絶理由が想定する意匠と,本願意匠とは意匠全体として特有なまとまり感において差異がありますので,意匠法にいう「容易に意匠の創作をすることができた」という判断に導くことはできません。
意匠審査基準では,本来的に,分離可能な部品あるいは部位を前提としています。
一方,本願意匠は,意匠に係る物品を包装用瓶とするもので,プラスチック又はアルミニウム,スチールなどの一つの素材を一体成形して製造されるものです。
この実情に反して,意匠全体の美感を判断するにあたって,出願された意匠を全体として観察することなく,意匠1として完成された別の全体の意匠から肩部を勝手に除外し,口部と胴部のみを摘出し,意匠2としてこれまた別の完成された意匠から勝手に肩部のみを摘出した上で,摘出した分離不可能な部位を言葉のみで再構成して,これを引用し,創作容易であるという判断をすることは,意匠法3条2項が予定したものではありません。
拒絶理由では,「この意匠登録出願に係る包装用瓶の分野において,口部,肩部,胴部を用途に応じて適宜組合せることは,本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法です」と記載されています。
しかしながら,包装用瓶の分野に属する出願人にとって,ボトルの新規デザインを開発するにあたって,「口部,肩部,胴部を用途に応じて適宜組合せる」ということが普通に行われているということを知りません。
したがって,本願意匠が,まったく美観上あるいは美感上の相違がある2つの意匠(意匠1及び意匠2)から,摘出できない部位を恣意的に摘出して,仮想の引用意匠を創作した上で,本願意匠を,包装用瓶の分野の者にとって,創作容易であると判断することはこれを肯定することはできません。
以上のとおりであるから,本願意匠は意匠法第3条第2項に該当するとして,意匠法第3条の規定により意匠登録をすることができないものであるとした原査定は理由がなく,不当です。

4.当審の判断
本願意匠の円柱状でその周面に雄ネジを形成した注出口部と円柱状胴部の間に位置する肩部の形状に着目すると,その形状は,底面に外接する円が胴部円柱の底面と同じ大きさの円となる六角星形錐(すい)台(平面上の「六角星形」と,この中心から垂直方向にある点とを結ぶ直線によって作られる立体を「六角星形錐」とし,その底面に平行な平面で切り,頂点を含む部分を除いた立体を「六角星形錐台」とする。)と,その約半分の高さであって,胴部円柱の底面と同じ大きさの円を底面に持つ円錐とを互いの底面が重なるようにしてできる相貫(そうかん)体(立体と立体が互いに交わってできた立体を「相貫体」とする。)である。
これに対して,意匠2の肩部付近の形状は,胴部円柱と六角錐との相貫体に,六角星形錐台を重ねた相貫体である。
言い換えれば,肩部を構成する面の内,六角星形錐台を構成する面以外の面(請求人のいう,本願意匠の「六角星形の外側に生じる小さい三角形」の部分,及び,意匠2の「扇形」部分。)は,本願意匠のものは,円錐面で凸曲面(この箇所の水平断面が正円の一部)であって,意匠2のそれは,平面(この箇所の水平断面が正六角形の一部)である。
よって,本願意匠の肩部の形状と意匠2の肩部の形状は,明らかに異なり,原審の拒絶の理由でいうところの「意匠1の口部及び胴部の意匠,意匠2の肩部の意匠を,単にほとんどそのまま組み合わせたに過ぎない」とは認められない。
以上のとおり,原査定の理由では,拒絶とすることはできないが,本願意匠は,意匠1に意匠2の六角星形錐台を融合した結果できあがる形状と認められる。しかし,この分野において,口部,肩部,胴部といった部位を適宜組み合わせて創作することは,当業者に容易と言えるが,意匠2からの一部分の抽出の仕方と,それを意匠1に融合させた方法と共に,そこに,創作者の任意な選択があるため,容易とは言い難く,出願前に意匠1及び2が公然知られていたとしても,本願意匠が,これらをもって容易に創作できたものとはいえない。
なお,意匠法において意匠の創作とは,知的創作であって,意匠法第3条第2項の規定は,分離される物どうしの組替えのみを想定しているわけではなく,意匠登録出願前に,公然知られた形態の全部又は一部,又はこれらの結合に基づいて容易に創作ができたか否かが問われているのであり,実際の製品が一体成形で,部分的に形状を物理的に取り出すことができないからと言って,意匠法第3条第2項に該当しないと言う,請求人の主張は認められない。
以上のとおりであって,本願の意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。

5.むすび
したがって,本願の意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2009-10-21 
出願番号 意願2007-27347(D2007-27347) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 橘 崇生
樋田 敏恵
登録日 2009-12-18 
登録番号 意匠登録第1378208号(D1378208) 
代理人 鶴田 準一 
代理人 鈴鹿 智子 
代理人 川崎 典子 
代理人 青木 篤 
代理人 水野 みな子 

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