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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1209857 
審判番号 不服2008-10803
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-28 
確定日 2010-01-07 
意匠に係る物品 輪ゴム 
事件の表示 意願2007- 8951「輪ゴム」拒絶査定不服審判事件についてした2009年(平成21年) 1月 6日付の審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10036号,平成21年 7月21日判決言渡)があったので,さらに審理した結果,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1.本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする2007年(平成19年) 4月 4日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書および願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品が「輪ゴム」であり,その「形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合(以下,「形態」という。)」が願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照)


第2.手続の経緯
1.原審(審査)において,本願意匠は,その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠,すなわち,「特許庁発行の登録実用新案公報記載 実用新案登録第3011858号 考案の名称を「三角ゴム」と表記の第1図に記載の意匠」に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとして,2007年(平成19年) 9月25日付で拒絶の理由が通知され,2008年(平成20年) 3月26日付で拒絶をすべき旨の査定がされた。

2.本件拒絶査定不服審判請求人(以下,「請求人」という。)は,この査定を不服として,2008年(平成20年) 4月28日に拒絶査定不服審判の請求をした。

3.原審(第一次審判)は,これを拒絶査定不服審判事件2008- 10803号として審理し,本願意匠は,その出願前に国内において頒布された刊行物に記載された意匠,すなわち,「特許庁発行の公開実用新案公報昭61-144057号記載第1図,第4図および関連する記載によりあらわされた「包装用ゴムバンド」(第1図記載のゴムバンドの切り込みを変更し第4図の切り込みとしたゴムバンド)の意匠」(別紙第2参照)に類似するため,意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するとして,2008年(平成20年)10月 8日付で拒絶の理由を通知し,2009年(平成21年) 1月 6日付で「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。

4.これに対して,請求人は,2009年(平成21年) 2月14日に上記審決の取消を求める訴えを知的財産高等裁判所に提起し,同裁判所は,平成21年(行ケ)第10036号審決取消請求事件としてこれを審理し,平成21年 7月21日に「特許庁が不服2008- 10803号事件について平成21年 1月 6日にした審決を取り消す。」との判決を言い渡し,同判決は,確定した。


第3 判決の理由の要旨
審決を取り消すとした判決の理由は,要旨以下のとおりである。

1.取消事由1(本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,意匠全体から観れば一部位における僅かな程度の差異であるとの認定の誤り)および取消事由2(本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,輪ゴムの分野において従前からみられる態様であるため,格別看者の注意を惹くものではないとの認定の誤り)について
(1)本願意匠の周側面には,その環状体の周側面幅に対して2分の1程度でかつ上記環状体の円周の4分の1より僅かに小さい寸法の開口が四つ設けられている。これに対し,引用意匠の周側面には,その環状体の周側面幅に対して3分の1程度でかつ上記環状体の円周の約8分の1の寸法の開口が四つ設けられている。
本願意匠も引用意匠も,その開口部の「位置,範囲,大きさ」は,上記認定のとおりかなり異なっており,本願意匠では,開口部が周側面において大
きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えない。そして,この開口部の「位置,範囲,大きさ」は,本願意匠および引用意匠に係る物品では,非常に目立つ部分であり,需要者の注目を惹くということができる。
(2)被告は,「環状体周側面に4つの開口を持つ輪ゴム」は,他にはほとんどみられない本願意匠および引用意匠に特徴的な構成態様であるから,需要者はまずこの点について注目すると主張するが,開口部が四つ設けられている点のみならず,開口部の「位置,範囲,大きさ」についても注目することは,前記(1)認定のとおりである。
被告は,輪ゴムの開口部の形状は,トラック型の他に,鉄アレイ型,数珠玉型,スリット型などの様々な形状がみられるから,需要者はまず,開口部の形状自体に注目すると主張するが,輪ゴムの開口部の形状にいろいろな形があるとしても,本願意匠において,需要者が,開口部の形状のみならず,その「位置,範囲,大きさ」についても注目することは,前記認定のとおりである。
また,被告は,本願意匠と引用意匠の開口部は,開口部自体の幅に対する長さの比率において,ともに約6?7倍程度で,直線部分がかなり長いトラック型であるという点で共通しているとも主張するが,需要者は,そのような点よりは,開口部が周側面において占めている「位置,範囲,大きさ」に注目するというべきである。
(3)以上によると,本願意匠では,開口部が周側面において大きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えないという,需要者に注目される大きな違いがあるということができるのであって,「本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,意匠全体から観れば一部位における僅かな程度の差異である」とか「本願意匠と引用意匠の開口部における差異は,輪ゴムの分野において従前からみられる態様であるため,格別看者の注意を惹くものではない」ということはできない。
したがって,その旨の審決の判断には誤りがあり,取消事由1,2は理由がある。

2.取消事由4(他の物品を結束した態様における本願意匠と引用意匠の共通点を総合的に勘案した場合,両意匠は全体として共通の美感を与えるとの認定の誤り)について
引用意匠によって方形体の物品を結束する場合に,引用意匠の四つの開口部にその方形体の四隅を挿入したときの引用意匠の使用態様は,一つの間隔部が一辺を形成することとなって,その間隔部は四つあるから,合計4辺と,開口部が形成する四つの辺とを合わせた合計8辺で方形体の物品の平面および底面を結束している状態となり,これらの8辺をいずれも明確に認識することができる(前記「引用意匠」図面第2図および第3図参照)。
一方,本願意匠によって方形体の物品を結束する場合,その物品が雑誌のように薄いものであるときは,本願意匠の四つの開口部に方形体の四隅を挿入すると,平面および底面方向から見れば,八角形となるものの,その形状は四角形に近く,4辺のみが目立つことになる。
また,本願意匠によって方形体の物品を結束する場合,その物品が箱のように厚いものであるときは,前記「本願意匠」図面の「使用状態を示す参考図1」のようになる。引用意匠においては,方形体側面に沿った部分で間隔部が方形体側面の上辺および下辺と平行の長方形状となる(前記「引用意匠」図面第3図参照)のに対し,本願意匠においては,間隔部は4方に伸びる輪ゴムの結節点であるにすぎない(前記「本願意匠」図面の「使用状態を示す参考図1」参照)。
以上のとおり,方形体の物品を結束する場合,その物品が雑誌のように薄いものであっても,箱のように厚いものであっても,本願意匠と引用意匠とでは,その使用形態に差異が生ずるというべきである。
以上のとおり,取消事由4は理由がある。

3.取消事由5(本願意匠は意匠登録を受けることができないとの認定の誤り)について
本願意匠では,開口部が周側面において大きな部分を占めているとの印象を与えるが,引用意匠では,開口部は周側面の一部であるとの印象しか与えないという需要者に注目される大きな違いがある上,使用形態においても差異があるから,本願意匠と引用意匠とが意匠法3条1項3号により類似するということはできない。
したがって,取消事由5は理由がある。


第4 当審の判断
したがって,前記判決は,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,当審を拘束するものであり,同判決の主文および理由に基づき,本願意匠は,原審(第一次審判)における引用意匠と類似するものとはいえないから,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当せず,その拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審においてさらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2008-12-12 
結審通知日 2008-12-15 
審決日 2009-12-24 
出願番号 意願2007-8951(D2007-8951) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斉藤 孝恵 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 遠藤 行久
橘 崇生
淺野 雄一郎
杉山 太一
登録日 2010-01-22 
登録番号 意匠登録第1380750号(D1380750) 
代理人 小笠原 史朗 
代理人 石川 達久 

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