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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 K7
審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K7
管理番号 1211320 
審判番号 不服2008-11163
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-01 
確定日 2010-01-05 
意匠に係る物品 光学部品シート転写成形ロール 
事件の表示 意願2007- 11970「光学部品シート転写成形ロール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願意匠は、平成19年5月7日に意匠登録出願されたものであって、願書及び願書添付の図面によれば、物品の部分について意匠登録を受けようとするもので、意匠に係る物品が「光学部品シート転写成形ロール」であり、その形態が願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.経緯
(1)審査において、本願意匠は、特許庁発行の公開特許公報掲載の2004年特許出願公開第42475号第7頁、【図1】(b)に表された「第1転写用ロール」3の意匠(別紙第2参照)に類似するものであり意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するから、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとして、平成20年4月1日に拒絶の査定を受けた。
(2)請求人は、拒絶の査定を不服として、平成20年5月1日に審判を請求したところ、審判において、この請求を査定不服2008-11163号事件として審理し、平成21年1月19日に本件審判の請求は成り立たない旨の審決をした。
(3)これに対し、請求人は、平成21年3月4日に同審決の取り消しを求める訴えを知的財産高等裁判所に提起し、同裁判所は、平成21年(行ケ)第10051号審決取消請求事件としてこれを審理し、平成21年8月31日に同審決を取り消すとの判決を言い渡し、その後、同判決が確定した。

3.判決の理由の要旨
(1)類否判断の誤りについて
1)本願意匠における凹部の配列は、(ア)ロール本体部の軸方向に見ると、凹部が、一定の間隔を置いて、直線状に配列され、(イ)ロール本体部の円周方向に見ると、1条の螺旋が16周回転して、起点から終点に達するように、同一の間隔で配列され、(ウ)正面図左右に,螺旋の起点と終点が存在し、(エ)隣接する凹部同士は、互いに接することなく、ロール本体の軸方向及び円周方向で、凹部の直径とほぼ等しい距離で離隔し、(オ)ロール本体部の垂直方向から、やや傾いて配置され、(カ)ロール本体の端部における各「平坦余地部」は、ロール本体の全長のおおむね8分の1であるとの特徴がある。
本願意匠における凹部の配置上の各特徴、すなわち、凹部が螺旋状に、傾けて配列されていることに照らすならば、本願意匠は、対称でない、均衡を欠く、定型的でない、安定性を欠く、ねじれている等の印象を与え、また、凹部同士が、接触することなく、凹部の直径とほぼ等しい距離を置いて、左右及び上下(軸方向及び円周方向)に離隔していることや平坦余地部が比較的広く確保されていることに照らすならば、本願意匠は、全体として、緩慢で、ゆったりとした印象をも与え、これらの各特徴によって特有の美感を生じさせている。
2)これに対して、引用意匠における凹部の配列は、(ア)ロール本体部の軸方向に見ると、凹部同士が、軸方向及び軸と垂直方向に隣接する凹部と接触して、直線状に配列され、(イ)ロール本体部の円周方向に見ると、隣接する凹部とは、半径分だけずれて、千鳥状(ジグザグ状)に配置され、(ウ)1条の螺旋が回転するような配置はされず、ロール本体の両端に起点、終点のいずれもなく、(エ)ロール本体の端部における各「平坦余地部」は狭く、ロール本体の全長のおおむね30分の1が確保されているのみである。
引用意匠における凹部の配置上の各特徴、すなわち、凹部が軸方向及び軸垂直方向に隣接するすべての凹部と接触していることや平坦余地部が狭いことに照らすならば、引用意匠は、密集した余裕のない印象を与え、また、ロール本体の軸方向の直線が強調されていることに照らすならば、全体として、機械的であるとの印象を与える。特に、各列の軸方向の最端部が、正確に描かれず、ジグザグ状を示していない部分も存在するので、意匠としてのまとまりを感じさせない。さらに、引用意匠は,全体として、変哲がなく、単調な印象を与え、美感という観点からは、格別の特徴点はない。したがって、引用意匠における類似の範囲は、決して広いものと解することはできず、むしろ、狭いものと解するのが相当である。
3)以上のとおり、本願意匠と引用意匠とは、略円柱状のロール本体部からなること、ロール本体部の外周面に、同径の小円形状の凹部を平坦余地部を残して多数形成していること、凹部は、ロール本体部の軸方向に沿って規則的に、全周にわたり配置されていることなどの基本的な構成態様において共通する部分があるものの、凹部の具体的な配列において、上記のような相違があり、その相違により、看る者に対して、美感上の相違を生じさせている。
したがって、本願意匠は,引用意匠と類似しない。換言すれば、引用意匠の類似の範囲は狭いものであって、本願意匠は、その類似範囲に含まれるものとはいえない。
(2)審決の理由及び本訴における被告の主張について
1)審決は、差異点を5つ挙げるものの、それらは、いずれも、「僅かな差異」であると判断する。すなわち、差異点(a)については、凹部が1条の螺旋状に形成されているとしても、「僅かな差異」というべきであり、差異点(b)については、凹部が1つずれたことによる平坦面の形状のみに着目すべきでなく、凹部の集合を全体として観察すると「僅かな差異」というべきであり、差異点(c)については、凹部の集合を全体として観察すると、「僅かな差異」というべきであり、差異点(d)については、起点、終点は、注視して探せば発見できる程度のものであって、「僅かな差異」というべきであり、差異点(e)については、本願の凹部が接して配置されていない点は、微差にすぎないというものである。
要するに、凹部については、全体の集合のみを対比の対象にすべきであって、凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではないとして、類似するとの結論を導いている。しかし、審決は、「引用意匠」における「意匠としての特徴」や「類似の範囲」について、何らの説明することなく結論を導いており、凹部相互の配置関係を対比の対象にすべきではない点の論証がされているとは到底いえない。また、その結論も上記のとおり誤りがある。
2)被告は、成形ロールの分野においては、凹部の形状が、円形状でないものも存在するから、本願意匠と引用意匠とは、凹部の円形状を選択した点に共通の特徴があり、その点を重視すべきであると主張する。しかし、被告の主張は、以下のとおり失当である。仮に、凹部の円形形状を選択した点に、本願意匠と引用意匠の共通点があることを前提としたとしても、そのことが、本願意匠と引用意匠との類否の判断に当たって、凹部の配列などその他の特徴点を考慮に入れるべきでないことの根拠にはならない。
また、被告は、成形ロールにおける意匠の類否は、成形ロールそのものが起こさせる全体的な美感の観点から判断すべきであり、そのような観点に照らすならば、凹部間の平坦部の差異に着目すべきではなく、凹部の集合体として観察するのが相当であると主張する。しかし、被告のこの点の主張も失当である。すなわち、専ら機能的な理由により、凹部の配置が制約を受け、特定の配置、間隔しか選択できないような事情が存在するような場合には、凹部の特定の配置等に特徴があったとしても、その特徴を考慮すべきでないということができるが、本願意匠及び引用意匠において、そのような特段の事情は、主張、立証がされていないから、被告の主張は採用の限りでない。 確かに、成型ロール等の機械の分野において、その需要者が、凹部の配置等によって惹起される美感等を重視して、当該製品を購入するか否かを決定する例は、少ないであろうことは容易に推認されるが、そのような実情があったとしても、類否の判断に当たり、成形ロールの全体の形状のみを考慮に入れるべきであって、凹部の配置、間隔、パターン等の特徴を考慮に入れるべきではないとする根拠にはならない。
さらに、被告は、見方を変えさえすれば、本願意匠は、複数条のより斜め方向の螺旋に沿った凹部の規則的な配列と見ることも可能であり、引用意匠も、複数条の斜め方向の螺旋に沿った凹部の規則的な配列と見ることも可能であることに照らすならば、本願意匠が1条の螺旋配列という特徴を有し、引用意匠がその特徴を欠くという差異は、美感上わずかなものであると解すべきであると主張する。しかし、被告のこの主張も失当である。すなわち、本願意匠と引用意匠の両者とも、複数の螺旋を見ることが可能であるのは、異なる列の凹部がずれて、規則的に配置されていることによるものであって、そのような見方ができるからといって、本願意匠と引用意匠の類否の判断において、前記で認定した本願意匠の凹部の配列上の特徴点(とりわけ1条の螺旋がねじれるように配列されているという特徴点)に基づく美感上の相違を考慮すべきでないとする根拠にはなり得ない。

4.当審の判断
したがって、前記判決は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当審の審決を拘束するものであり、同判決の主文及び理由に基づき、本願意匠は、原査定で引用した意匠と類似するものとはいえないから、意匠法第3条第1項第3号の意匠には該当せず、その拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
なお、本願意匠は、同日に出願されていた意匠登録出願2007年11929号を本意匠とする、関連意匠登録出願であったが、本意匠は、既に拒絶すべきものとする審決が確定しており、当審において、願書に記載された本意匠に類似する意匠とは認められず、意匠法10条第1項の規定に該当しないとして、拒絶の理由を通知したものである。
これに対し、平成21年12月3日の手続補正書により、本願の「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされ、当審の拒絶の理由は既に解消されており、当審の拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審においてさらに審理した結果、本願意匠については、他に拒絶の理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-12-16 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-19 
出願番号 意願2007-11970(D2007-11970) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K7)
D 1 8・ 3- WY (K7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉虫 伸聡小林 裕和 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 並木 文子
鍋田 和宣
登録日 2010-02-05 
登録番号 意匠登録第1381952号(D1381952) 
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所 

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