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審決分類 審判    J7
審判    J7
管理番号 1211344 
審判番号 無効2008-880020
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-01 
確定日 2010-02-10 
意匠に係る物品 貼り薬 
事件の表示 上記当事者間の登録第1322072号「貼り薬」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由、弁駁の要点
請求人は、「登録第1322072号意匠登録を無効とする、との審決を求める。」と申し立て、証拠方法として、甲第1号証、甲第2号証を提出した。
1.無効理由
(1)本件登録意匠は、出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(登録意匠第1189179号)に係る登録意匠に部分的に含まれている意匠(形態)に類似する意匠であるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。
(2)本件意匠は濃淡青色を部分的に配合したことに創作性ありと認められるとしても、この創作性は当業者にとっては、日本国内又は外国において公然知られた色彩に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたと認められる程度のものである。したがって、本件意匠は意匠法第3条第2項に該当する意匠である。
したがって、本件登録意匠は同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。
2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件意匠の新規性について
(ア)剥離シートの左右対称位置にある2本の背割線による中央分離帯部分の形態は、正面視、中央部がくびれ、その上下両方向にかけて放物線を描くように湾曲し、その全体形状は大略「きね」状に成り、前記2本の背割線の外側には左右の剥離シートの端縁部が見える構成であるから、本件意匠に係る部分意匠は、すでに引用意匠に係る全体意匠の中に存在する部分形態そのものである。
(イ)本件意匠に係る部分意匠には、中央分離帯部分と左右の剥離シートの端縁部の帯状部分において、それぞれ青色が施され、しかも前者の青色は濃く後者の青色は淡いツートンカラーに成るものであるけれども、この程度の青色の濃淡の配色はデザイン上ありふれた単純な態様であるから、この程度の部分意匠に係る本件意匠は、引用意匠が有する無地無模様に成る形態の中央分離帯部及び左右対称の2本の背割線を介しての左右剥離シートの周端縁部から成る部分意匠とは類似する意匠といわなければならない。けだし、この程度の着色による部分意匠の構成態様では、その創作性はきわめて低いものであるからである。引用意匠にあっては、その全体の構成態様は専ら線によって表現されているが、この構成態様の中にあっては、もし必要があれば各部に任意の色彩を自由に表現する余地を100%有しているものであるから、いわゆる装飾模様として表現されているもの以外は、青色の濃淡二色による部分的な使い分けだけの本件意匠の程度では、引用意匠とは別異の新規な創作体を、その実体が有していると認めることは到底できないし、看者が最も注目する中央分離帯部分における青色の濃淡のこの程度の表現だけでは、新規なデザインの創作によるものと把握することはできない。
また、本件意匠の前記背割線の外側の剥離シートの端縁部に見られる帯状部分は、背割線に沿っている極めて狭巾の帯線であるから、例えば意匠登録第1189189号意匠(甲第2号証)の正面図において見られる左右の太巾線とは実質的に変わらず、それ自体の創作性はきわめて低い。
以上の理由から、本件意匠に係る部分意匠は、引用意匠との間で、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当する新規性を欠如した意匠であるいうべきものである。
(2)本件意匠の創作性について
仮に、本件意匠は濃淡青色を部分的に配合したことに創作性ありと認められるとしても、この創作性は当業者にとっては、日本国内又は外国において公然知られた色彩に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたと認められる程度のものである。したがって、本件意匠は、引用意匠に係る形態と同一の形態に、周知の濃淡青色の配合を加味した程度であるから、意匠法第3条第2項にいう創作容易な意匠であると認めることができる。
3.むすび
以上の理由から、本件意匠に係る部分意匠は、引用意匠との間で、意匠法第3条第1項第3号又は同法第3条第2項の規定に該当する登録要件を具備しない意匠であるから、同法第48条第1項第1号に該当する意匠として、その意匠登録は無効とすべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、との審決を求める。」と答弁し、証拠方法として、乙第1号証?乙第17号証を提出した。
1.答弁の理由
(1)請求人の主張に対して
請求人は、「本件意匠に係る部分意匠は、すでに引用意匠に係る全体意匠の中に存在する部分形態そのものであるといわねばならない」と主張するが、本件登録意匠は、剥離シートの中央分離帯を形成する背割り線を含む形状と、中央分離帯の内側を濃い青色に着色するとともに、背割り線の外側に位置する左右の剥離シートの中央よりの部分を帯状に薄い青色(水色)に着色して、色分け波状模様を表したものであり、そのような形状及び模様は引用意匠には含まれていないことは明らかであるから、請求人の上記主張は誤りである。
また、請求人は、本件登録意匠において、中央分離帯部分と左右の剥離シートの端縁部の帯状部分がツートンカラーに成るものであり、「この程度の青色の濃淡の配色はデザイン上ごくありふれた単純な態様といえるものである。」と主張する。しかし、請求人は、本件登録意匠における中央分離帯とその左右の帯状部によって構成された2色の色分け波状模様からなる具体的な形態から離れて、故意に構成態様を単純化、抽象化して単なる濃淡の配色と言っているに過ぎないから、このような請求人の主張も誤りである。この種の貼り薬の分野においては、本件登録意匠における左右対称の略正弦波状の中央分離帯とその左右の波状帯状部についての2色の色分け波状模様の態様は、決してありふれたものとは言えず、むしろ従来になかった斬新な美感を表現しているものである。したがって、この模様の有無は類否判断に決定的な影響を与えるものである。また、請求人は、「この程度の着色による部分意匠の構成態様では、その創作性はきわめて低い」と主張しているが、このような主張は全く主観的で根拠がない。むしろ、本件登録意匠の中央分離帯とその左右の帯状部についての2色の色分け波状模様の態様が従来存在しなかったことからするとその創作的価値は高いというべきである。
さらに、請求人は、本件登録意匠の剥離シートの端縁部に見られる帯状部分が、甲第2号証の正面図において見られる左右の太巾線とは実質的に変わらない構成態様と主張するが、まず甲第2号証の意匠においては、その意匠に係る物品の説明に「切断線を示す太線が・・・印刷されている」と記載されているように、太巾線ではない。さらに、本件登録意匠における中央分離帯の左右の剥離シートの端縁部に表されているのは太線ではなく帯状部であって、これが「実質的に変わらない構成態様」でないことは一見すれば明らかである。したがって、請求人の主張は誤りであるし、本件登録意匠の帯状部について「それ自体の創作性は極めて低い」という主張も根拠がない。
(2)本件登録意匠と引用意匠の類否について
(ア)構成態様と美感の違い
本件登録意匠と引用意匠とを対比すると、両者では、剥離シートの中央分離帯を画する背割り線の中央部が括られた左右対称の略正弦波状の形状については共通するものがあるが、それは一部の共通点に過ぎず、両意匠には本件登録意匠に表された模様について顕著な相違がある。すなわち、本件登録意匠では、中央分離帯の内側を濃い青色に着色するとともに、背割り線の外側に位置する左右の剥離シートの中央寄りの部分を帯状に薄い青色(水色)に着色して、全体として顕著な色分け波状模様を表した点が基本的構成態様に含まれるとともに、外観上看者の注意を惹く特徴である。これに対して、引用意匠にはかかる特徴的構成は全く見ることができない点で相違がある。
本件登録意匠のように、部分意匠として登録を受けようとする領域全体に顕著な2色の色分け波状模様が表されている意匠と、そのような構成が全くない引用意匠とでは、需要者に与える美感は全く異なったものであるから、当然類似しないというべきである。
(イ)本件登録意匠の模様の創作的価値
本件登録意匠の色分け波状模様は、剥離シートの最も目立つ部位である中央分離帯全体を濃く着色し、その左右を帯状に薄く着色するという斬新な構成によって、意匠の美感に強い影響を与えている点で創作的価値が高いが、同時にこの構成が物品の使い勝手に影響する側面でのデザイン創作に関わっている点でも創作的価値が高いものである。本件登録意匠の意匠に係る物品の説明において、「使用者は、本物品の剥離シートを剥がした後でも、露出した膏薬部と左右の剥離シートの境界をより視認し易くなり、患部に適切に当てがい貼付し易くなる。」と記載されているように、デザイン上の創意工夫に基づいているのであり、本件登録意匠における色分け模様は、美的創作の面からもデザイン上の創意工夫の面からも創作的価値が高い。
以上述べたように、本件登録意匠における色分け模様は、意匠の美感に与える影響が大きく、また創作的価値も高いものである。したがって、その模様を全く有しない引用意匠との差異は決定的であるから、両者は需要者に与える美感を異にする類似しない意匠である。
2.むすび
上記のように、本件登録意匠は引用意匠に類似しない意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当しない意匠である。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成19年7月13日に出願され、平成20年1月18日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1322072号の意匠であって、願書の記載及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「貼り薬」とし、その形態を願書及び同図面記載のとおりとし、実線で表された部分について、意匠登録を受けたものである(別紙第1参照)。
2.請求人が無効の理由として引用した意匠
甲第1号証の意匠は、本件登録意匠の出願前である平成15年11月5日に発行された意匠公報意匠登録第1189179号に記載された意匠であって、当該公報によれば、意匠に係る物品が「貼り薬」であり、その形態は当該公報の説明及び図面に記載されたとおりのものである(以下、「引用意匠」という。別紙第2参照)。
3.本件登録意匠と引用意匠との対比
本件登録意匠と引用意匠とを対比すると、意匠に係る物品は、いずれも「貼り薬」であり、共通する。
本件登録意匠の意匠登録を受けた部分と引用意匠の対応する部分とは、角丸長方形の基布の片面に貼着した剥離シートを2本の背割線により縦に略1/3分割した中央分離帯部及び、その左右両端に接している左右の剥離シートの端縁部分であって、その用途及び機能、ならびに物品の部分としての位置、大きさ、範囲が共通する。
そして、両意匠の部分の形態については、主として、以下の共通点及び差異点が認められる。
(1)共通点
両意匠は、背割線を、中央に括れのあるものとし、上下両方を拡張して互いに外側へ僅かに弧状とし、中央分離帯部と左右の両剥離シートの縁とが密接している点が共通する。
(2)差異点
両意匠は、(A)本件登録意匠は、左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部(以下、「左右の剥離シートの帯状部」と言う。)を設けているのに対し、引用意匠は同部位に帯状部を設けていない点、(B)本件登録意匠は中央分離帯部の剥離シートを青色とし、左右の剥離シートの帯状部を水色としているのに対し、引用意匠は中央分離帯部の剥離シートと左右の剥離シートとがいずれも透明である点に差異が認められる。
4.本件登録意匠と引用意匠との類否判断
以上の共通点と差異点とを総合して、両意匠の類否を全体として検討する。
両意匠の共通点である、背割線の形状については、両意匠の部分の形態全体の基調を奏する態様ではあるが、中央に括れのある背割線を設けた態様のものは、公開実用新案公報昭61-203020号第7図、登録意匠第1129245号、登録意匠第1129605号等の各意匠にもみられ、本件登録意匠の背割線の形状と共通する形状に形成したものが引用意匠のほかにも、意匠登録第1189189号の意匠(甲第2号証、意匠1、別紙第3参照)に見受けられるから、本件登録意匠と引用意匠の背割線は、両意匠のみに共通する新規の態様とはいえない。したがって、背割線の態様についての共通点を以て、直ちに両意匠の類否判断を決することはできない。
これに対し、両意匠の左右の剥離シートの中央分離帯部に接する縁部における差異点(A)について、本件登録意匠のように左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設けた点は、背割線の外側に縁状の模様が視認されることから、縁部に帯状部がなく、背割線のみから構成されている引用の意匠とは異なる印象を与え、かつ、本件登録意匠の出願前には、左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設ける態様が公然知られているとはいえず、帯状部を設けたことにより、背割線の部位を容易に視認することが可能である点も考慮すると、この差異は、類否判断に影響を与えるものである。
なお、請求人は、「本件意匠の前記背割線の外側の剥離シートの端縁部に見られる帯状部分は、背割線に沿っている極めて狭巾の帯線であるから、例えば意匠登録第1189189号意匠の正面図において見られる左右の太巾線とは実質的に変わらず、」と主張し、その立証として、意匠登録第1189189号の意匠(甲第2号証)を示すが、同意匠にみられる太幅線は、中央分離帯側に設けられたものであり、かつ本件登録意匠のように上下両端まで達している態様ではないことから、意匠1に示す太幅線の態様と本件登録意匠の左右の剥離シートの帯状部の態様とは異なるものである。
差異点(B)の両意匠における彩色の有無は一見して目立つ差異であり、特に、本件登録意匠に施された彩色は、中央分離帯部、左右の剥離シートの帯状部ともに、接する部位とは互いに明確に異なる明度であるため、中央分離帯部、左右の剥離シートの帯状部ともに視認性が高く、全体が透明な引用意匠とは異なる印象を与えるものである。また、左右の剥離シートの帯状部に彩色をし、中央分離帯部よりも明調子とした態様は、本件登録意匠出願前には公然知られていない態様であるから、この差異は看者の注意を惹き、類否判断に影響を与えるものである。
そうすると、両意匠の共通点よりも差異点の方が両意匠の類否判断に与える影響が支配的であり、両意匠の模様、色彩の差異点が相まって奏する意匠的効果は、類否判断を左右すると言わざるをえない。
以上のとおり、両意匠は意匠に係る物品が一致し、本件登録意匠の意匠登録を受けた部分と引用意匠の対応する部分の位置、大きさ、範囲と、用途、機能が共通するが、両意匠の形態においては差異点が共通点を凌駕し、意匠全体としては美感が異なるものであるから、類似するものではない。
5.本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠の背割線の形状については、引用意匠及び甲第2号証の意匠に示すとおり、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであり、中央分離帯部分を青色とすることも、意匠2(別紙第4参照)のように本件登録意匠出願前に見受けられるものである。しかしながら、左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設け、その帯状部を中央分離帯部よりも明調子とした態様は本件登録意匠の出願前には公然知られているものではない。
そうすると、背割線の形状が公然知られたものであり、色彩自体は周知のものであっても、左右の剥離シートの中央分離帯部の上下全長に接する部位に帯状部を設けること及び配色をどのように施すかについては創意工夫を要するものといわざるを得ず、本件登録意匠は、引用意匠に係る形状と同一の形状に、周知の濃淡青色の配合を加味した程度であるという請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件登録意匠は、公然知られた形状及び配色によって容易に創作することができたものとは認められない。
6.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、請求人の提出した証拠及び主張によっては、意匠法第3条第1項第3号及び同法第3条第2項の規定に違反して登録されたものと言えないものであるから、同法第48条第1項第1号により本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-06-01 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-24 
出願番号 意願2007-19198(D2007-19198) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (J7)
D 1 113・ 121- Y (J7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉虫 伸聡小林 裕和 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 並木 文子
鍋田 和宣
登録日 2008-01-18 
登録番号 意匠登録第1322072号(D1322072) 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 牛木 理一 
代理人 黒川 朋也 
代理人 佐藤 英二 

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