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審決分類 |
審判 補正却下不服 図面(意匠の説明を含む) 取り消す D7 |
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管理番号 | 1212843 |
審判番号 | 補正2009-500009 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2009-07-06 |
確定日 | 2009-12-08 |
意匠に係る物品 | 携帯揺りかご |
事件の表示 | 意願2008- 10343「携帯揺りかご」において、平成21年3月30日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.本願の手続の経緯 (1)本願は、平成19年(2007年)10月22日に「域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)」にした出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う平成20年4月22日の意匠登録出願であり、願書の【意匠に係る物品】の記載を「携帯揺りかご」とし、願書に添付した写真として、【斜視図】を記載した。(出願当初の意匠につき、別紙第1参照。) (2)特許庁長官名による平成20年10月10日付け(発送日平成20年10月14日)の手続補正指令書(方式)で、この出願は、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図が出願時に添付されず、法令に定める要件を満たさないので、手続の補正をすべきことを命じた。 (3)出願人は、平成20年11月13日付け(受付日平成20年11月13日)で、手続補正書を提出し、願書に添付した写真に【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】及び【底面図】を追加した。(補正後の意匠につき、別紙第2参照。) (4)特許庁審査官は、平成21年3月30日付け(発送日21年4月7日)で、平成20年11月13日付手続補正書に対して、次の理由で、意匠法第17条の2第1項の規定により、補正の却下の決定をした。 この補正は、出願当初意匠全体が開示されておらず一の意匠が特定されなかったものを新たに特定させる新規な事項を含むものであり、意匠の要旨を変更するものと認められる。 2.請求の趣旨及び理由 請求人は、「意願2008-10343について、平成20年11月13日付けでした補正に対して、平成21年4月7日(発送日)にした補正の却下の決定を取り消す。」との審決を求め、その請求の理由を、要旨以下のように主張した。 (1)平成20年11月13日付手続補正書により追加された各写真に現された形態を検討すると、出願当初、底面図は表れていないが、本願意匠に係る物品は「携帯揺りかご」であり、通常は、床上に置かれた状態で使用されるものであることから、底面の模様については、意匠の認定に大きな影響を与える部分ではない。 そうすると、この種の物品に係る意匠としての形態上の常識を踏まえると、前記補正は、当業者が出願当初に表わされたものから当然に推定できる範囲内のものであり、なんら意匠の要旨を変更するものではない。 (2)むすび 本願について平成20年11月13日付けでなされた補正は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものではなく、原決定は理由がなく、取り消されるべきものである。 3.当審の判断 以下、補正の却下の決定の当否について検討する。 本願の出願当初の意匠は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した写真によれば、意匠に係る物品を「携帯揺りかご」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形態」という。)を、願書に添付した写真の【斜視図】により現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 そして、その出願当初の意匠についてみると、形態につき、【斜視図】は、揺りかごを正面側のやや右上方向から見た斜視状態であり(なお、【斜視図】における揺りかごの左側に表れる面を、正面側として、補正後の意匠における【正面図】に対応させて、それぞれ揃えて認定する。)、揺りかごの正面側、平面側及び右側面側の態様を表したものである。 ところで、意匠登録を受けようとする場合、意匠法第6条第1項は、「意匠登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。」と規定し、同条第2項は、「経済産業省令で定める場合は、前項の図面に代えて、意匠登録を受けようとする意匠を現した写真、ひな形又は見本を提出することができる。」と規定している。そして、意匠法第6条に規定による願書に添付する写真の提出について、意匠法施行規則第4条第2項は、「写真を提出するときは、様式第7によらなければならない。」と規定し、意匠法施行規則様式第7において、備考4は、「その他は、様式第6の備考2、3、6、8から12まで、14及び18から23までと同様とする。」と規定し、意匠法施行規則様式第6において、備考8は、「立体を表す図面は、正投影図法により各図同一縮尺で作成された正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図をもって一組として記載する。」と規定し、備考14は、「8から10までの図面だけでは、その意匠を十分表現することができないときは、展開図、断面図、切断部端面図、拡大図、斜視図、画像図その他の必要な図を加え、」と規定している。 そうとすれば、意匠登録を受けようとする場合には、本来意匠法第6条等の規定に則り、正面図等の一組の写真を提出しなければならないものであって、本件に係る出願当初の意匠は、【斜視図】の写真により現され、正面図等の一組の写真が揃わないことは明らかであり、その記載不備について手続補正指令書(方式)によって手続の補正をすべきことを命じたものである。それに対して、出願人は、手続補正書により、【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】及び【底面図】の写真を追加して手続の補正をした。 その補正後の意匠(別紙第2参照)についてみると、形態につき、出願当初に現された【斜視図】の写真に加えて、新たに【正面図】、【背面図】、【左側面図】、【右側面図】、【平面図】及び【底面図】の写真を追加し、そこでは、願書の記載及び願書に添付した写真により、揺りかごを90度ずつ視点を回転させて【正面図】等の6方向から見た態様と、やはり【斜視図】によって揺りかごの正面側、平面側及び右側面側の態様を表したものである。 そこで、出願当初の意匠と補正後の意匠について対比すると、出願当初の【斜視図】によって表される揺りかごの正面側、平面側及び右側面側の態様については、補正後の意匠の【正面図】、【右側面図】、【平面図】及び【斜視図】によって表される揺りかごの正面側、平面側及び右側面側の態様と、同一と認められる(なお、出願当初の意匠と補正後の意匠とは、全体に付される明暗の階調が、補正後の意匠が出願当初の意匠よりやや明調子となっているが、形状に何ら相違するところはなく、かご部とその上部に覆い被さるカバー部との明暗調子の二層構成にも変わりはなく、ましてや、階調差が解像度や撮影条件等に伴って生じる程度の僅かな相違に過ぎないものであり、要旨の認定に影響を与える程のものではなく、相違点として取り上げるまでもない。)。 一方、出願当初の【斜視図】によって表されていない態様が、補正後の意匠によって表される内容表現の相違点については、(A)出願当初の意匠は、底面側の態様は、底に隠れて表されていないのに対して、補正後の意匠は、【底面図】により表し、(B)出願当初の意匠は、揺りかごを正面側のやや右上方向から見た斜視状態であって、揺りかごの正面側、平面側及び右側面側の態様を表したものであるが、斜視状態からは裏に隠れて見えない態様、すなわち、背面側及び左側面側の態様(揺りかごの左右両側面側が湾曲面となって【斜視図】から見える部分を除く)は、出願当初の意匠に表されていないのに対して、補正後の意匠は、当該態様を【背面図】、【左側面図】及び【平面図】によって表した点の相違が認められる。 ところで、この種揺りかごは、幼児を入れて揺り動かすかごで、通常床上に置かれて使用されるものであって、斜視状態において視覚的に見える態様が主要部を構成し、需要者の注意を引き、両意匠の要旨を形成するものと認められる。 そうした場合、上述の出願当初の意匠と補正後の意匠との同一態様は、両意匠とも通常使用される斜視状態において、かご部の上部がシート状カバーで覆い被せられて構成され、そのかご部を、左右両側面側が湾曲面状とする横長で下方に僅かに窄むやや深めのものとし、カバー部を、上端が上方へ膨らむ略円弧状で、正面側から見て山型状の左右対称状とし、カバー部の右側面側に、上部に寄せてほぼ奥行(正面側と背面側との幅方向)いっぱいに開口した略楕円形状の窓部を形成した態様が視認されるものであり、その態様は、揺りかごの主要部分を表し、特に、上端が略円弧状で、正面側から見て山型状のカバー部の右側面側に、上部に寄せて略楕円形状の窓部を形成する態様は、幼児を入れて覆い尽くすカバー部と幼児を出し入れする窓部を備えて、需要者の注意を引いて、両意匠の特徴を共有することになるから、出願当初の意匠と補正後の意匠の両意匠の要旨は共通しているものと言える。 一方、出願当初の意匠と補正後の意匠との内容表現の相違点については、(A)の揺りかごの底面側の態様の相違について、確かに揺りかごの底面側の態様は出願当初の意匠に表されてはいないが、もともと揺りかごの底面側は、通常の使用の状態において殆ど目にしないところであり、かつ、揺りかごの意匠全体からみれば限られた一部分であり、さらに補正により表れる底面側の態様も、底面を補強する技術的なリブ構造を表すだけであり、底面側の態様は需要者の注意を殆ど惹くものではないことから、出願当初に表していない底面図を補正により表すことは、揺りかごの底面側の一部分について、在るべき底面側の態様の不足した図を単に補充して、新たな態様を付加することなく不明確なところを具体的なものに明確にしたというべきであり、両意匠の要旨の認定に影響を与える程のものではない。 また、(B)背面側の態様及び左側面側の態様の相違について、背面側の態様につき、補正後の意匠は、正面側と背面側とが対称に表れるが、出願当初の意匠についても、【斜視図】によれば、かご部の左右両側面側が、湾曲面状となり、カバー部の上端も略円弧状となって、正面側から両側面側を繋いで背面側へと滑らかに回り込むことになり、加えて、その回り込む態様に伴うように立体表面に陰となる濃淡を表していることから、出願当初の意匠にあっても、背面側が正面側と対称に表れるものであることは、十分推認できるものである。また、左側面側の態様についても、やはり背面側の態様と同様に、かご部の左側面側の湾曲面状の態様、カバー部上端の略円弧状の態様、立体表面に表される陰の濃淡の態様から、カバー部を正面側から背面側へと滑らかに繋がる湾曲面状とすることは容易に見て取ることができ、かつ、カバー部の右側面側にある窓部が左側面側に形成されないことが、左側面側に見える一部カバー部や右側面側の窓部から覗ける揺りかごの内部態様からも容易に推し量ることもできることから、出願当初の【斜視図】において、左側面側の態様は、正面側から背面側へと滑らかに繋がるよう既に表されているものというべきである。したがって、出願当初に表れていない背面側の態様及び左側面側の態様を、補正により表したとしても、図面の不足により未だ具体化しなかったものを、この種揺りかごの分野において当然に導き出せる同一の範囲において、単に不足した図を補充して具体的なものに明確にしただけであるから、両意匠の要旨の認定に影響を与える程のものではない。 したがって、出願当初の意匠と補正後の意匠とは、それぞれの意匠の要旨は共通とするものであり、一方の両意匠の相違点については、(A)の揺りかごの底面側の態様の相違について、揺りかごの一部分について不明確なものを具体的なものに明確にしたものであり、また、(B)背面側の態様及び左側面側の態様の相違について、いずれの態様も、図面の不足により未だ具体化しなかったものを、不足した図を補充して具体的なものに明確にしたものであるから、出願当初の意匠と補正後の意匠とは、実質的に同一意匠であると認められ、補正後の意匠は、出願当初の意匠の要旨を変更するものではない。 以上のとおりであり、平成20年11月13日付けでした手続の補正は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の要旨を変更するものとは認められない。 4,むすび したがって、平成20年11月13日付手続補正書による補正を、意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした原審における決定は不当であって、取り消しを免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2009-11-20 |
出願番号 | 意願2008-10343(D2008-10343) |
審決分類 |
D
1
7・
1-
W
(D7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宗 裕一郎、淺野 雄一郎 |
特許庁審判長 |
遠藤 行久 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 市村 節子 |
登録日 | 2010-02-12 |
登録番号 | 意匠登録第1382413号(D1382413) |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 水野 勝文 |