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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1216243 
審判番号 不服2009-19719
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-14 
確定日 2010-04-27 
意匠に係る物品 情報通信用コンセント 
事件の表示 意願2007- 13969「情報通信用コンセント」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、平成19年5月25日に意匠登録出願されたものであって、その意匠(以下、「本願意匠」という)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品が「情報通信用コンセント」であり、その形態は願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.原審の拒絶理由の要旨
原審において、本願意匠を拒絶すべき理由として意匠法第3条2項の規定に該当するとし、要旨以下のとおり通知をしたものである。
本願意匠は、意匠に係る物品が「情報通信用コンセント」であって、その形態は、全体が、正面側筐体を略縦長直方体形状とし、筐体背面側に取付金具及び接続機構を形成したものであって、筐体正面に、同軸コネクター1個とモジュラーコネクター2個を形成したものと認められる。本願意匠の出願前に、全体が、正面側筐体を略縦長直方体形状とし、筐体背面側に取付金具及び接続機構を形成したものであって、筐体正面に、同軸コネクターを形成したものが公然知られている【意匠1】(別紙第2参照)。また、同様に筐体正面に、同軸コネクター1個とモジュラーコネクター2個を形成したものが公然知られている【意匠2】(別紙第2参照)。
そうして、当業者であれば、上記【意匠1】及び【意匠2】に基づいて一の意匠とすることは容易に想到できるものと認められるから、本願意匠は格別の意匠の創作をしたものとは認められない。
【意匠1】
特許庁意匠課が2004年8月13日に受け入れた、「ビル・マンション共同受信用2条配線システム2600MHzシステム」第15頁に所載の「同軸コネクター」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC16039689号)
【意匠2】
特許庁特許情報課が2006年2月16日に受け入れた、2005年12月7日発行の大韓民国意匠商標公報(CD-ROM番号:2005-62)に記載された、意匠登録第30-0400903号の中央に表された「コンセント」の中央右側に表された3段組のコネクター部分の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH17554536号)

3.審判の請求理由の要旨
意匠1と意匠2とを寄せ集めることについて検討すると、正面側接続部において、意匠1は上方と下方に略円形状の凹凸形状が表れるテレビ受信用端子部が略縦長方形状で一体的に形成される態様であり、意匠2は、上方に略円形状の凹凸形状が表れるテレビ受信用端子部と、中央及び下方に略矩形状であって上下に切り欠きを有する2つのスライドカバー付きの電話用端子部とを備える態様である。これによって、意匠1と意匠2とを寄せ集めることによって得られる態様は、上方と下方に表れる略円形状の凹凸形状が表れるテレビ受信用端子部と、中央に表れるスライドカバー付きの電話用端子部とを備える態様であって、本願意匠の上方に略円形状の凹凸形状が表れるテレビ受信用端子部と、中央に略矩形状であって上下に切り欠きを有するスライドカバー付きの電話用端子部と、下方に略逆凸字状に表れるスライドカバー付きのインターネット用端子部と、を備えた態様を得るためには、下方の端子部をインターネット用端子部にする必要があるところ、意匠1及び意匠2のいずれにもインターネット用端子部は見当たらず、意匠1と意匠2とを単に寄せ集めるだけでは本願意匠は創作し得ないものである。
また、仮に中央にインターネット用端子部を設けたとしても、意匠1には、下方に背面側に突出して略立方体形状に表わされる端子コード接続部と見受けられる部分が存在することから、電話用端子部の背面側の端子部を設けることが困難であるところ、本願意匠は、背面側の電話用端子部が背面側のテレビ受信用端子部及び背面側のインターネット用端子部と干渉しないように背面視で左寄りに配されることによって需要者にコンパクトで使い勝手の良い印象を与えるのであって、意匠1及び意匠2を用いても本願意匠の構成態様を得ることは困難である。
よって、本願意匠は、この物品分野に属する通常の知識を有する当業者が意匠1及び意匠2に基づいて容易に創作をすることができない意匠であって、創作性を有する意匠であることは明らかである。

4.当審の判断
本願意匠が拒絶の理由で示した引用意匠に基づき、容易に意匠の創作ができたか否かについて、請求人の主張も参酌し、以下検討する。
(1)本願意匠
本願は、意匠に係る物品を「情報通信用コンセント」とし、その形態は、左右側面に取付用の嵌合部を設けた縦長直方体状の筐体の正面部に3種の接続端子を縦一列に設け、背面側にそれぞれに対応する接続部を設けたものであって、正面側接続端子は、縦長長方形状の前面パネル部の上段に円形状のテレビ受信用端子部を設け、中段にスライドカバーを有する略矩形状の電話用端子部を設け、下段にスライドカバーを有する略逆凸字形状のインターネット用端子部を設けたもので、背面側接続部は、上段のテレビ受信用端子部に略縦長直方体状のケース部を設け、そのケース部を背面視斜め右下方に傾け、下方に円筒状の同軸接続部を設け、中段の電話用端子接続部は、背面視左寄りに細い縦長直方体状に形成し、下段のインターネット用端子接続部は後方に大きく突出した略直方体状のケース部を設けたものであり、左右の取付用嵌合部は、前面側に縦長矩形状の突起部を上下に配し、後方側は上段に正面視略隅丸倒凹字状、中段及び下段に長方形状の切り欠き部を有する正面視略隅丸矩形状の前面側より大きめの突起部を配したものである。
(2)創作容易性の判断
情報通信用コンセントの意匠において、まず、(a)前面パネル部を縦長長方形状とし、上段に円形状のテレビ受信用端子部、中段に略矩形状の電話用端子部を設け、下段に略矩形状のインターネット用端子部を設けて一列に配した形状は、例えば、参考意匠1とした、特許出願公開2006-236955号の【図7】の意匠(別紙第3参照)に明らかなように、本願出願前に既に見受けられるものである。しかし、その形状について、意匠1は同軸コネクターのみであり、意匠2は縦に3つに分割された態様であって、別々の筐体からなるものであるから、これらを組み合わせても、そのような前面パネルの形状とはならず、本願意匠の前面パネル部は、意匠1と意匠2に基づいて、容易に想到できたものとはいえない。次に、(b)側面部の形状について、本願意匠の取付用嵌合部の形状は、意匠1の取付用嵌合部の態様ではなく、この種の情報通信用コンセントを含む各種のコンセントの分野においても、本願意匠の出願前には他に見受けられない形状である。さらに、(c)背面部の形状についても、本願意匠の該形状は、上記と同様に他に見受けらない形状である。
そうすると、本願意匠は、前面パネル部については、上記のとおり、本願出願前の公知意匠に見受けられるが、側面部や背面部の形状は、本願の出願前に知られていたものではないから、新規な態様といえ、特に側面部の取付用嵌合部の形状は、制約の多い接続部からなる背面部と違い、任意に成形できるものであり、そこに本願意匠の主要な創作があったものと認めることができる。
以上のとおりであるから、本願意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。
5.むすび
したがって、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり、同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-04-09 
出願番号 意願2007-13969(D2007-13969) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原田 雅美小林 裕和 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2010-05-14 
登録番号 意匠登録第1389798号(D1389798) 

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