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審決分類 審判    E3
管理番号 1219808 
審判番号 無効2009-880011
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-27 
確定日 2010-07-07 
意匠に係る物品 ゴルフボール 
事件の表示 上記当事者間の登録第1160059号「ゴルフボール」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1160059号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申立て、その理由として、大要以下の主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む)を提出した。
登録第1160059号意匠(以下「本件登録意匠」という。)は、その出願前に頒布された特開平7-289662号公報の図12に記載された意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであって、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、意匠登録を受けることができないものである。従ってその登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とすべきものである。
すなわち、本件登録意匠と引用意匠とは、ゴルフボールの形状について、とりわけ、略正二十面体の頂点に計12個の五角形ディンプルを配設し、各仮想区画線上と各エリアとに計三百数十個の六角形ディンプルをランドをおいて稠密に配設していることが形態上の特徴を強く表象するとともに、形態の基調を形成して、共通する美感を起こさせるところとなっている。一方両意匠には差異点として、(1)本件登録意匠は、ディンプルが球表面の十の球面三角形エリアと十の球面略三角形エリアの区画に基づいて配設されているのに対し、引用意匠は二十の球面三角形エリアに基づいて配設されている点、(2)本件登録意匠では六角形ディンプルが320個であるが、引用意匠では350個である点、(3)本件登録意匠はランド幅が0.8mmであるのに対し、引用意匠は0.0?2.5mm(例えば0.5mm)である点、があるが、いずれの差異も微差というべきで、共通点による美感の共通性を超えて美感を別異とするほどのものではない。従って両意匠は類似し、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものであるから、その登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、大要以下の主張をした。
本件登録意匠は六角形ディンプル間に、2本の細線によって現れる幅広のランド部が存在しているのに対して、引用意匠は、1本の細線を介して隣接する六角形ディンプルが密に配設されており、両意匠は視覚的に異なる。そして本件登録意匠の2本の細線によって示される幅広のランド部の存在は、取引者、需要者がが最も注意を惹く部分で、本件登録意匠の要部をなし、本件登録意匠と引用意匠とが非類似であることは明らかで、本件登録意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当しない。

第3.当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成13(2001)年3月2日の米国意匠特許出願に基づく優先権の主張がなされて、平成13年5月23日に意匠登録出願がされ、平成14年10月18日に、登録第1160059号として意匠権の設定の登録がなされたものであり、意匠に係る物品を「ゴルフボール」とし、その形状を、意匠登録出願の願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである。(別紙第1参照)

2.引用意匠
本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するとして請求人が提出した引用意匠は、本件登録意匠の出願日(優先日)前の平成7年(1995)11月7日公開の公開特許公報(甲第1号証)に記載された、特開平7-289662号の【図12】に示されたゴルフボールの意匠である。(別紙第2参照)

3.本件登録意匠と引用意匠の対比、検討

そこで本件登録意匠と引用意匠を対比する。
本件登録意匠と引用意匠とは、ゴルフボールの形状において、基本的構成態様を、ゴルフボールの表面全体に、主として六角形の浅い凹状のディンプルが、隣接するディンプル同士、互いに一定幅のランド部を共有して、密に配設された形状としている点で共通する。そしてその具体的な態様について、ディンプル配設につき、ボール表面が、20の球面略正三角形の仮想エリアに区画され、区画された各エリアの頂点に当たる位置に、計12個の略同大の五角形のディンプルが配され、その余の面を略同大の六角形のディンプルが埋め尽くす態様で仮想エリアに基づいて規則的に配されて、球面全体に、ディンプルが、均質な調子のハニカム網状を呈するよう表されたものであり、各五角形ディンプル間に配された六角形ディンプルの数が、概ね5個程度である点、が共通する。

なお、引用意匠について、当該公報の【図12】は、ランド部が1本線で示されている。しかしながらこの【図12】は、発明の実施例を示す【図9】のゴルフボールの別例として示された図面であり、そしてその【図9】は、ディンプルとランド部の関係が【図11】のとおりであることが示されており、従って、【図9】の別例として、【図9】と同様の図面表現で、また【図9】【図11】と同じ説明符号を用いて示された【図12】についても、ディンプルとランド部の関係は、【図11】に示されたとおりと解すのが自然であり、また少なくとも明細書の記載から、優にそのように解することができるものであり、【図12】によって示される引用意匠のランド部も【図11】に示されたとおりであると認める。

そして上記の共通点は、以下のとおり、両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものである。
即ち、この種のゴルフボールにおいては、ディンプルは円形であることが極く一般的であり、ディンプルが多角形であることは、それ自体が、ゴルフボールとしての形態的特徴を極めて強く表すものである。そして両意匠はいずれも、五角形ディンプルを一部に含む主として六角形ディンプルが、隣接するディンプル同士、互いに一定幅のランド部を共有して、密に配設された形状としている点で、極めて強い形態的特徴を共有している。しかもこの形態的特徴は、視覚的効果においても、点在する五角形ディンプルと、その余の面を埋め尽くす多数の六角形ディンプルとが、ボールの表面全体に均質な調子のハニカム網状を呈して表れるものであって、これがディンプル総数の近似性、即ち五角形ディンプル間に、概ね、5個程度の六角形ディンプルが並ぶという共通性と一体となって、ゴルフボールとしての共通する形態的基調を決定付け、圧倒的に観る者の視覚を捉えるものとなっている。
従って両意匠の共通点は、その影響のみで両意匠の類否を決定付けるに十分といえるほどの、極めて大きな影響を、類否判断に及ぼすものである。

一方、両意匠には差異点として、(a)20の球面略正三角形の仮想エリアについて、本件登録意匠は、そのうちの10のエリアが球面正三角形で、残る10のエリアが球面変形正三角形であるが、引用意匠は、20のエリアがすべて球面正三角形である点、(b)ランド部の幅について、本件登録意匠は引用意匠よりやや幅が広い点、が主として認められる。

そこで上記の差異点が類否判断に及ぼす影響を検討する。
まず差異点(a)は、具体的には、本件登録意匠は、20のエリアのうちの10のエリアについて、五角形ディンプルを結ぶ3本の仮想ライン上に、それぞれ5つの六角形ディンプルが並び、残る10のエリアについて、3本の仮想ラインのうち2本のライン上に4つ及び5つの六角形ディンプルが並び、残る1本のラインについて、このラインと鋭角状に交差する方向に略5つの六角形ディンプルが並ぶ構成となっているが、引用意匠は、20のエリアがすべて、3本の仮想ライン上にそれぞれ5つの六角形ディンプルが並ぶ構成となっているもので、これにより両意匠には、ディンプル配列の若干の違い、12個の五角形ディンプル相互の間隔の広狭差の有無、ディンプル総数の違いが生じている。
しかしながらこれらの差はいずれも、例えば図面上に五角形ディンプルを結ぶ仮想ラインを描いた上で対比して初めて認識できる程度のものであり、ボール表面を一見しただけではほとんど差異として看て取れず、いずれの差異も、両意匠に共通するゴルフボールとしての強い形態的基調に吸収される微差というほかなく、差異として類否判断に及ぼす影響は極めて微弱である。
そして差異点(b)は、両意匠の備える、主として六角形のディンプルが、隣接するディンプル同士、互いに一定幅のランド部を共有して、密に配設されているという共通する強い形態的特徴のなかでみられる、ランド部の僅かな幅差に止まり、しかも、引用意匠に係る明細書の記載にも、ランド部の幅が、0.0?2.5mm位の範囲で適宜設定できる旨の記載がなされており(【発明の詳細な説明】の項の【0011】)、その幅が本件登録意匠独自の特徴とは認められず、従って、差異点(b)が類否判断に及ぼす影響も、極めて微弱なものと判断せざるを得ない。

なお、引用意匠に関して、当該公報(甲第1号証)の【図11】においては、ディンプルの中央に円形のラインが、また放射方向に6本のラインが示されている。しかしながらこれらのラインは、ディンプルを六角形にしたことにより必然的に生じる範囲のごくわずかな面変化のラインが図面上表現された程度のものと認められ、両意匠の実質的な差異として引用意匠を特徴付けるものとは認められず、【図11】の上記各ラインについても、差異として類否判断を左右するものとはいえない。

そして両意匠の共通点と差異点を総合して形態全体として検討すると、両意匠の差異点は、上記のとおり、いずれも類否判断に及ぼす影響が極めて微弱で、差異点が総合されたとしても、到底、共通点が形成するゴルフボールとしての全体の形態的基調を覆し、両意匠を別異の意匠に特徴付けるには至らず、両意匠においては、共通点の類否に及ぼす影響が差異点を圧倒し、両意匠は意匠全体として類似する。

4.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は引用意匠に類似し、引用意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠であるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであり、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2010-02-08 
結審通知日 2010-02-12 
審決日 2010-02-25 
出願番号 意願2001-14771(D2001-14771) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (E3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原田 雅美 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 市村 節子
杉山 太一
登録日 2002-10-18 
登録番号 意匠登録第1160059号(D1160059) 
代理人 佐々木 定雄 
代理人 伊東 忠重 
代理人 大貫 進介 
代理人 伊東 忠彦 
代理人 山口 昭則 
代理人 松原 等 

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