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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1221380 
審判番号 不服2009-22595
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-18 
確定日 2010-07-27 
意匠に係る物品 コンセント 
事件の表示 意願2007- 28350「コンセント」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、平成19年10月16日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品が「コンセント」であり、その形態が願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.原審の拒絶理由の要旨
本願意匠に対し、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ、意匠法第3条第2項の規定に該当するとして原審が通知した拒絶の理由は、要旨以下のとおりである。
コンセントにおいて、全体がフラッシプレート部とコンセント筐体部とからなり、フラッシプレート部の短辺側視を緩やかな弧面状とし、コンセント筐体部には、2個のコンセントを連設したものが、本願出願前に公然知られている【意匠1】。また、使用態様に於いて横長長方形状となるフラッシプレート部の表面に浅溝で左右上下に各2個の矩形状の区画を形成し、上下の区画が左右の区画に挟まれた態様としたものが公然知られている【意匠2】。さらに、コンセントを平行プラグ対応としたものが公然知られている【意匠3】。
本願意匠は、その出願前公然知られた上記【意匠1】ないし【意匠3】に基づいて一の意匠としたまでのものに過ぎないから、極めて容易に創作することができたものと認められる。
【意匠1】(別紙第2参照)
特許庁総合情報館が1997年10月 9日に受け入れた
大韓民国意匠公報 1997年 8月20日 第97頁所載
コンセントの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH11044244号)
【意匠2】(別紙第3参照)
特許庁特許情報課が2007年 8月30日に受け入れた
中華人民共和国意匠公報 2007年 7月25日07-30号
コンセント(公開番号CN3673685D)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH19006173号)
【意匠3】(別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1193874号の意匠

3.審判の請求理由の要旨
【意匠2】は、フラッシプレート部において、縦框状部分はコンセント部の短手方向に表れ、横框状部分は長手方向に表れる態様であるのに対し、【意匠1】及び【意匠3】は、縦框状部分はコンセント部の長手方向に表れ、横框状部分は短手方向に表れる態様である。また、正面に表れる区画部分において、本願意匠は、コンセント部が1つ、フラッシプレート部の横框状部分が2つ、縦框状部分が2つの計5つの区画で構成される態様であるのに対し、【意匠1】は、フラッシプレート部の前面に対してくぼんで形成されるコンセント部と、横框状部分及び横框状部分にかけ渡って設けられる桟とで構成される枠部とで構成される部分が1つ、縦框状部分が2つの計3つの区画で構成される態様であり、【意匠2】は、コンセント部が2つ、フラッシプレートの横框状部分が2つ、縦框状部分が2つの計6つの区画で構成される態様であり、【意匠3】は、コンセント部が1つ、フラッシプレート部の横框状部分が2つ、縦框状部分が2つの計5つの区画で構成される態様である。また、【意匠2】は、フラッシプレート部において、縦框状部分はコンセント部の短手方向に表れ、横框状部分は長手方向に表れる態様であるのに対し、【意匠1】及び【意匠3】は、縦框状部分はコンセント部の長手方向に表れ、横框状部分は短手方向に表れる態様であり、その具体的態様が大きく異なることから、【意匠1】乃至【意匠3】を当業者がありふれた手法により寄せ集めることは容易ではない。
また、本願意匠は、【意匠1】乃至【意匠3】には示されない、側面視においてフラッシプレート部がゆるやかな凸弧状に形成されている態様を備えている以上、【意匠1】乃至【意匠3】を仮に寄せ集めたとしても、本願意匠の側面視においてフラッシプレート部がゆるやかな凸弧状に形成されている態様は得ることができないものである。
そして、框組状の構成態様において、【意匠1】乃至【意匠3】は、コンセント部の短辺:横框状部分の短辺:縦框状部分の短辺の比が略1:0.4:0.4、略1:0.36:0.56、略1:0.68:0.45とコンセント部の比率が高くコンセント部が目立ちやすい態様であり、本願意匠のコンセント部がそれほど目立たない態様(同比が略1:0.75:0.9)とするためには、コンセント部の短辺:横框状部分の短辺:縦框状部分の短辺の長さの比に着目して、その比をそれぞれの部材の占める割合等を変化する必要があり、新たな創作が必要となるものである。
さらに、縦框状部分が短手方向、横框状部分が長手方向に表れる態様である【意匠2】をベースに【意匠2】のコンセント部を【意匠3】のコンセント部に置換することを考えた場合、【意匠2】はコンセント部が略横長長方形であり、【意匠3】のコンセント部は縦長長方形状であることから、【意匠3】のコンセント部を【意匠2】に組み込む場合には、まずコンセント部の向きを90°回転させる必要があり、また差異点ホに示すようにコンセントプラグ差込部において、本願意匠は、略ニの字形状の平行孔が形成された態様であるのに対し、【意匠3】は略倒ニの字形状の平行孔と略砲弾状の孔を結合した孔と、その下方に設けた略砲弾状の孔を有する態様であることから、本願意匠のコンセント部の態様を得るためには、更に孔の形状を変えるという新たな創作が必要となるものである。
以上に示したように、【意匠1】乃至【意匠3】をありふれた手法により寄せ集めることは容易でないものであって、仮に寄せ集めたとしても本願意匠の構成態様は得られず、本願意匠の態様を得るためには、【意匠1】乃至【意匠3】を寄せ集めた上で、複数の創作のステップが必要となるものであることから、本願意匠は、【意匠1】乃至【意匠3】に基づいて容易に創作できた意匠ではなく、創作性を有する意匠である。

4.当審の判断
本願意匠が、容易に意匠の創作をできたものか否かについて、以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「コンセント」とし、その形態は、左右の縦框部と上下の横框部で略扁平H字状に構成した正面視略横長長方形状の板状のフラッシプレートの横長長方形状中央部に略二の字状のコンセントプラグ差込口を横方向に2個配したコンセント部(以下、「コンセント部」という。)を設けたもので、正面部の区画構成は、縦框部を短手方向に左右に2つ、横框部を長手方向に上下に2つ配し、コンセント部と合わせて5つの区画部で構成され、コンセント部の短辺:横框部の短辺:縦框部の短辺の比が略1:0.75:0.9であり、コンセント部の縦横比を約1:2.4とし、縦框部と横框部及びコンセント部との区画線部に細い溝部を設け、フラッシプレート部の側面部は中央部を前面に弧面状に膨出させた略倒横長かまぼこ形状とし、コンセントプラグ差込口周囲に小型略かまぼこ形状の浅い凹状部を上下対称状に形成したものである。
(2)創作容易性の判断
コンセントの意匠において、まず、フラッシプレート部について、(a)全体を横長長方形状とし、左右に浅溝を介して縦框部を設け、左右を3つに分割し、中央部を横長長方形状のコンセント部とし、その上下に横框部を設けたコンセントは、【意匠2】に見られるように、本願出願前に既に公然知られた態様である。しかし、その形状について、【意匠2】は、長手方向に弧状となり、左右縦框部の側縁部に縦方向に装飾部が設けられているので、本願意匠とは異なるものである。また、【意匠1】は、短手方向を緩やかな弧面状としたものであり、長手方向に框部を設けているが、短手方向には框部を設けておらず、框部と見える部分は、中央部をコンセント部用に浅くくぼませた残りの部分であるから、本願意匠のフラッシプレート部とは構成が異なり、【意匠3】も長手方向の框部で短手方向の框部を挟む構成であるから、本願意匠の構成とは相違し、【意匠1】と【意匠2】及び【意匠3】を組み合わせても、本願意匠のようなフラッシプレート部の形状とはならない。よって、本願意匠のフラッシプレート部は、【意匠1】と【意匠2】及び【意匠3】に基づいて、容易に想到できたものとはいえない。次に、(b)コンセント部の形状について、本願意匠のコンセント部のプラグ差込口の形状は、略二の字状であるから、【意匠3】の態様ではない。しかしながら、略二の字状の平行な孔部を有するプラグ差込口を二連連接した態様は、コンセントの分野においてありふれた態様といえるものである。さらに、(c)コンセント部の縦横比についても、本願意匠の縦横比は、約1:2.4であるから、【意匠1】乃至【意匠3】とはやや異なるが、この種のコンセントの分野において、本願意匠のコンセント部の縦横比程度のものは普通に見られるありふれた態様であるといえる。
そうすると、コンセント部の周囲に框部を有するフラッシプレート部の態様は、本願出願前の公知意匠にも見受けられるが、本願意匠のフラッシプレート部の縦框部と横框部による具体的な態様は、本願の出願前に知られていたものではないから、新規な態様といえ、コンセント部の態様は従来から知られていたものであったとしても、フラッシプレート部において本願意匠の主要な創作があったものと認めることができる。
以上のとおりであるから、本願意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。

5.むすび
したがって、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり、同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-07-09 
出願番号 意願2007-28350(D2007-28350) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 北代 真一
樋田 敏恵
登録日 2010-08-06 
登録番号 意匠登録第1396256号(D1396256) 

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