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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服201010279 | 審決 | 意匠 |
不服20039525 | 審決 | 意匠 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1226478 |
審判番号 | 不服2010-10280 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-14 |
確定日 | 2010-10-26 |
意匠に係る物品 | 包装用缶 |
事件の表示 | 意願2008- 13298「包装用缶」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は、平成20年5月28日の意匠登録出願であって、物品の部分について意匠登録を受けようとするもので、その意匠は、意匠に係る物品を「包装用缶」とし、その形態を願書及び願書添付の図面に記載されたとおりとするものであり、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である」としたものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。 2.原審の拒絶理由 本願意匠に対し、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとして、原審が通知した拒絶の理由は、以下のとおりである。 この意匠登録出願に係る包装用容器の分野において、容器本体部、蓋部を用途に応じて適宜組合せること、同一形状の極く小さな円形状の孔によって表裏を複数穿たれた肉薄板状の円形状を包装用容器の蓋部とすることは、本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法である。 この意匠登録出願の意匠は、本願出願前に公然知られたものと認められる容器本体部の意匠(意匠1のノズル部を除く容器本体部の模様を除く形状のみの意匠)、本願出願前に周知形状である同一形状の極く小さな円形状の孔によって表裏を複数穿たれた肉薄板状の円形状を包装用容器の蓋部として単にほとんどそのまま組み合わせたものの肩部より開口部側を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分としたに過ぎないので、容易に創作できたものと認められる。 【意匠1】(別紙第2参照) 特許庁総合情報館が1989年1月20日に受け入れた「QEDAUDIOACCESSORIES」第16頁所載、包装用噴霧器缶の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HD01008594号)。 なお、原査定においては、参考意匠として、次の3つの意匠が提示されている。 【参考意匠1】(別紙第3参照) 意匠登録第889520号の包装用容器の抽出口の意匠。 【参考意匠2】(別紙第4参照) 意匠登録第1025332号の包装用容器の蓋の意匠。 【参考意匠3】(別紙第5参照) 意匠登録第1097061号の包装用容器の抽出口の意匠。 3.請求人の主張 これに対して、請求人は、審判を請求し、概ね次のとおりの主張をした。 (1)本願意匠の要旨 (イ)基本的構成態様 本願意匠は、瓶形状の上部を要部とする部分意匠であり、円筒形の胴部に続く肩部と、肩部に続くカール部が形成されている口部とを有する金属製の薄板材から一体成形される容器本体と、口部を閉塞するとともに同一形状の極小さな円形状の孔によって表裏を複数穿たれた肉薄円形板状で、金属製の薄板材から一体成形される蓋体といった基本構成として捉えることができる。 (ロ)具体的構成態様 本願意匠の蓋体は、カール部の容器半径方向外側全体及び容器半径方向内側のカール部中心より上方部分を覆う嵌着部と、この嵌着部の内周縁から延在された水平部分とを有する。カール部は、縦断面が略円形状に形成され、嵌着部の外周端部をカール部の容器半径方向外側の下端部に巻き込むように成形することで、カール部に嵌着部を嵌着している。 (2)本願意匠が登録されるべき理由 (イ)本願意匠では、縦断面が略円形状のカール部に対して、蓋体の嵌着部の外周端部をカール部の容器半径方向外側の下端部に巻き込むように縦断面円弧状に成形し、カール部の外側で蓋体と容器本体とを固定しているため、蓋体の水平部分をカール部の中心よりも上方に配置することができる。 このような嵌着形状は、意匠1及び参考意匠1?3を含め他に見受けられず、公然知られていたものとは言えない以上、本願意匠が容易に想到できるとは認めることができない。 (ロ)本願意匠と意匠1とでは、機能及び構造が全く異なるため、商慣行上、このような公知形状の転用は行われておらず、本願意匠の属する分野における当業者が意匠1に接しても、その公知形状を採用して本願意匠を創作するのは容易とはいえない。 (ハ)本願意匠は、肩部が直線状に円錐形状となっており、その肩部の上端に直接的に縦断面略円形状のカール部が接続されており、蓋体の嵌着部はそのようなカール部に沿って縦断面円弧状に形成されている。また、蓋体の水平部分は、カール部の中心よりも上方で、且つ、カール部の上端よりも下方に配置されており、蓋体の嵌着部の上部は、水平部分よりも上方に突出し、円板状の水平部分の周囲に、嵌着部の上部がリング状に隆起するような従来にない新規な形状に構成されている。 このため、本願意匠は、需要者の視覚を通じて全体としてシャープな印象を与えつつも、蓋部付近にあっては丸みを帯びた美感を奏するものとなっている。 また、蓋体の水平部分に形成される孔も円形状であり、その孔が、水平部分の中央部分の大きな割合を占めるように構成していることにより、特に蓋体近傍において滑らかで丸みを帯びた美観が強調されるため、本願意匠が、容器口部を下に向けて内容物を小孔から吐出する形態の容器であることを考慮すれば、内容物の吐出性をより際立たせるような外観とすることで、需要者の視覚を通じて機能的な美感を起こすものとなっている。これらの観点からすると、本願意匠は容易に創作できるものではない。 (ニ)本願意匠の容器本体では口部にカール部を形成して、そのカール部に蓋を嵌着するように構成されているが、吐出口を有する蓋としては参考意匠1?3にもあるようにいくつもの種類があり、そのような蓋を容器本体に嵌着する嵌着形状には、容器の目的に応じた創作者の創作性によって初めて行われるのである。本願意匠では、外観性、密封性、内容物の吐出性を考慮することで、初めて本願意匠の形状に決定ないし創作したものである。よって、カール部に蓋を嵌着するにあたり、蓋体に形成される水平部分をカール部の高さに近づけた構成を有する本願意匠は、公知意匠を単にそのまま表したものでも、寄せ集めたものでも、商慣行上の転用でもなく、金属製容器本体の口部に金属性蓋体を嵌着させて、粉末の調味料を包装する包装用缶を創作するという創作性があって初めてなされるものであり、容易に創作できたものとは認められない。 4.当審の判断 そこで、請求人の主張を踏まえ、本願意匠が意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するかについて、以下検討する。 (1)本願意匠の形態 本願意匠は、略円筒形の本体胴部に続く肩部、肩部に続く口部、及び口部を覆うと共に複数の吐出孔を有する蓋部の部分意匠に係り、容器本体と蓋部は、それぞれ金属製の薄板材の一体成形によるもので、容器本体側について、肩部は、直線状に口部へとつながり、口部は、外周を、口部内側から外側へ、縦断面視略円形に巻かれたカール部とし、平面視において円形に現れる口部内径を、本体胴部直径の略2分の1とするもので、一方の蓋部について、本体口部との嵌着部は、本体口部のカール部に沿って、外側から縦断面視略4分の3円形状に巻き、カール部に嵌着させたもので、本体口部を覆う水平部の位置を、カール部の縦断面視中心より上方に配置させ、水平部の吐出孔は、蓋部上面の外周から一回り内側に、同一の小円形状の孔を16個、正五角形を形成するように配した態様としたものである。 (2)本願意匠の創作容易性の判断 そこで、本願意匠が公然知られた意匠や周知形状に基づいて容易に創作されたものであるかを、以下検討する。 (イ)本願意匠と意匠1との対比 意匠1の肩部は、僅かに湾曲状に膨出しているのに対し、本願意匠は、直線状に円錐形状とした態様となっている。 さらに、口部外周のカール部は、縦断面視略円形の本願意匠とは異なり、逆さU字状とし、口部内径は、本体胴部直径の略4分の3とするもので、本願意匠の略2分の1より大きい。 (ロ)蓋部の態様について 本体口部のカール部に蓋体を嵌着させ、口部を水平部で覆う態様とすること自体は、本願出願前よりよく見受けられる態様であるが、水平部の位置を、カール部の縦断面視中心より上方に配置させた態様とすることについては、出願前の公知例は無く、この種物品分野においてありふれた態様とすることはできない。 また、蓋部に吐出孔として、同形の小円孔を複数設けることは、この分野において、極一般的に見受けられるところではあるが、本願意匠のように、外周から一回り内側に、同一の小円形状の孔を16個、正五角形を形成するように配した態様とすることに対して、本願出願前の公知例は無い。 以上の点から、蓋部における、水平部の位置の態様に加え、吐出孔部の小円孔の態様については、他に周知形状にも公然知られた意匠にも例はなく、本願独自の態様であり、常套的な改変に留まるということはできないうえ、また、本願意匠と意匠1とでは、肩部の態様、本体口部のカール部の態様、及び口部の大きさの態様が異なっているのであるから、本願意匠は、出願前に公然知られた形状に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。 5.結び したがって、本願意匠は、意匠法第3条第2項に該当しないので、原審の拒絶理由によって本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2010-10-12 |
出願番号 | 意願2008-13298(D2008-13298) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
北代 真一 樋田 敏恵 |
登録日 | 2010-11-05 |
登録番号 | 意匠登録第1402794号(D1402794) |
代理人 | 綾田 正道 |