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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B2
管理番号 1234820 
審判番号 不服2010-21131
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-21 
確定日 2011-03-22 
意匠に係る物品 靴下 
事件の表示 意願2008- 18923「靴下」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、平成20年7月24日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品が「靴下」であり、その形態が願書及び願書添付の図面代用見本に現されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.原審の拒絶理由の要旨
本願意匠に対し、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ、意匠法第3条第2項の規定に該当するとして原審が通知した拒絶の理由は、要旨以下のとおりである。
本願の意匠は、靴下に係る創作であるが、当該物品分野において、任意箇所をメッシュ状とすることは、本願出願前より極めて普通に行われているところ(例えば、参考意匠2参照)、本願の意匠は、ありふれた靴下の意匠(例えば、参考意匠1参照)における、つま先部(例えば、参考意匠3参照)及び足裏部分(例えば、参考意匠2参照)を上記メッシュ状としたまでのものであって、この程度では、容易に創作できたものと認められる。
参考意匠1(別紙第2参照)
意匠登録第0593011号の意匠
参考意匠2(別紙第3参照)
意匠登録第0593012号の意匠
参考意匠3(別紙第4参照)
特許庁特許情報課が2007年8月2日に受け入れた
大韓民国意匠商標公報2007年3月12日07-14号
ドッボソン(登録番号30-0442853)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH19435040号)

3.審判の請求理由の要旨
本願意匠は、靴下の任意箇所をメッシュ状にするという技術思想に意匠登録を求めているのではなく、特定の箇所をメッシュ状にした形態(全体の形状乃至全体のデザイン)に意匠登録を求めている。
参考意匠1ならびに参考意匠2の全体形状は古くからあるソックスの形状であり、此の点でかかる全体の形状がありふれたソックスの形状であるという点は首肯することができる。しかし、参考意匠1ならびに参考意匠2がそれぞれ独立の意匠登録になっているのも事実である。この参考意匠1及び参考意匠2がそれぞれ独立の意匠で登録されているのは、ありふれた全体の形状の中で、模様等が異なっており、これがために意匠感(美観)が異なるためである。
こうした登録例を引用文献としてあげながら、両者の差異に目を瞑り、参考意匠3の全体の形状はもとより、メッシュを形成する位置等が本願意匠とは異なるにもかかわらず、参考意匠1ならびに参考意匠2とこの参考意匠3とから、本願意匠の創作性が容易であると認定された原審は、物品の形状、模様もしくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美観を起こさせるものを保護するという意匠法の趣旨に違背するものといわざるを得ない。
拒絶査定は取り消されるべきものであり、この出願はこれを登録すべきものとする、との審決を求める。

4.当審の判断
本願意匠が、容易に意匠の創作をできたものか否かについて、以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「靴下」とし、その形態は、全体の正面形状を略L字状とする編み地からなる袋状の短い丈の靴下であって、上方に伸縮性のある履き口部(以下、「履き口部」という。)を設け、その下方に足首を覆う足首部(以下、「足首部」という。)及び足の甲を覆う甲部(以下、「甲部」という。)を設け、L字状の角部を踵部(以下、「踵部」という。)とし、下方の先端部につま先部(以下、「つま先部」という。)を設け、つま先部と踵部の間の足裏部側に土踏まず部(以下、「土踏まず部」という。)が設けられている。全体をやや暗い灰色とし、履き口部は伸縮性の大きいリブ編み状で、足首部より横幅が狭く、足首部から全体にかけてメリヤス編み状とし、つま先部と土踏まず部に荒い斜め格子の略網状のメッシュ部(以下、「メッシュ部」という。)を設け、つま先部のメッシュ部は、つま先部全体を上下に覆う形状とし、土踏まず部のメッシュ部は、つま先部と踵部の間の略中央に正面視略横長長方形状に形成したものである。
(2)本願意匠と参考意匠の対比
1)参考意匠1は、短い丈の靴下で形状が本願意匠とほぼ共通するが、薄手で編み地が細かく、全体が明るい灰色で、履き口部の幅が足首部とほぼ同様で、足首部から甲部にかけて模様編み状とし、土踏まず部にはメッシュ部を有するが、つま先部にはメッシュ部が設けられておらず、メッシュ部の網状が斜め格子であるが細かい。2)参考意匠2は、短い丈の靴下で形状が本願意匠とほぼ共通するが、薄手で編み地が細かく、全体が明るい灰色で、履き口部の幅が足首部とほぼ同様で、足首部から甲部にかけてメッシュ状とし、足首部側面には細い縦帯状のメリヤス編み状部を残し、縦方向に小さな灰色及び紺色の略b字状模様を配し、土踏まず部にはメッシュ部を有するが、つま先部にはメッシュ部が設けられておらず、メッシュ部の網状が斜め格子であるが細かい。3)参考意匠3は、足カバー状の靴下で、足首部や甲部がないもので、全体が白色で、つま先部の上部側のみをメッシュ部としたもので、足の甲寄りは細かい網状のメッシュ状が左右に略三角形状に表れ、つま先側は荒い網状の斜め格子となっている。
(3)創作容易性の判断
まず、(a)本願意匠と参考意匠1及び参考意匠2は、いずれも短い丈の靴下の意匠であるが、全体形状は従来から普通に見受けられる短い丈の靴下であり、格別特徴のないものといえる。また、土踏まず部にメッシュ部を有する靴下も参考意匠1及び参考意匠2より以前に既に見受けられる態様である。そうすると、参考意匠1及び参考意匠2は、土踏まず部のメッシュ部の存在だけではなく、足首部や甲部の具体的な態様を含めて登録されたものであることが伺える。参考意匠1は、足首部から甲部にかけて模様編み状としていて、本願意匠とは異なり、参考意匠2は、足首部から甲部にかけてもメッシュ状とし、足首部側面には細い縦帯状のメリヤス編み状部を残し、縦方向に小さな灰色及び紺色の略b字状模様を配しており、その具体的態様が本願意匠とは異なり、さらに、土踏まず部のメッシュ部の具体的な態様についても、本願意匠はメッシュ部の編み目が太めで大きな網状の斜め格子であるのに対して、参考意匠1及び参考意匠2はメッシュ部の編み目が細く細かい網状の斜め格子で異なり、参考意匠1の靴下に参考意匠2のメッシュ部を組み合わせたとしても本願意匠の土踏まず部のメッシュ部の態様とはならない。次に、(b)つま先部のメッシュ部について、参考意匠3のつま先部のメッシュ部は、つま先部の上部側のみをメッシュ部とし、足の甲寄りの部位は細かい網状のメッシュ状が左右に略三角形状に表れ、つま先側は荒い網状の斜め格子としたもので、その態様が本願意匠のつま先部の態様とは大きく異なり、参考意匠1及び参考意匠3を組み合わせても、本願意匠のつま先部の態様を導き出すことはできず、意匠1ないし意匠3を組み合わせても、本願意匠の土踏まず部及びつま先部のメッシュ部の態様を導き出すことはできず、本願意匠を容易に創作することができたとはいえない。
そして、本願意匠のつま先部のメッシュ部は、つま先部全体を上下に覆う形状とし、本願意匠の独自の特徴をなすものであり、また、つま先部及び土踏まず部のメッシュ部の態様は、編み目が太めで大きな網状の斜め格子で、本願の出願前に知られていたものではなく、従来のものに見られない新規な態様といえ、このようなメッシュ部をつま先部及び土踏まず部に有する本願意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。

5.むすび
したがって、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり、同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-03-04 
出願番号 意願2008-18923(D2008-18923) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 樋田 敏恵
北代 真一
登録日 2011-04-15 
登録番号 意匠登録第1414025号(D1414025) 
代理人 杉本 勝徳 

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