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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 E2
管理番号 1244634 
審判番号 不服2007-23373
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-24 
確定日 2008-10-10 
意匠に係る物品 パチンコゲーム機 
事件の表示 意願2006- 26475「パチンコゲーム機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本件意匠登録出願の手続の経緯
(1)本件意匠登録出願
本件意匠登録出願は平成18年9月29日の出願であり,本願意匠は,願書及び添付図面の記載によれば,意匠に係る物品を「パチンコゲーム機」とし,その形態を願書及び添付図面に記載のとおりとし,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下,「当該部分」という。)を表示部上に現れる保留表示に関する部分としたものである。(別紙第1参照)。
(2)拒絶理由
審査官は,平成19年4月27日付で拒絶理由を通知した(平成19年5月11日発送)。その拒絶理由は要旨以下のとおりである。
すなわち,「本願の意匠は,意匠に係る物品をパチンコゲーム機とし,当該物品の正面上寄り中央に設けられた液晶表示画面下端左寄りの任意に区画された範囲内に,保留表示のため,略楕円と星型を組み合わせ模した同様の図柄を並列に4つ表わしたものと認められます。
物品の液晶表示部に表示される図形等が意匠を構成する要素として認められるための要件としては,物品の液晶表示部に表示される図形等がその物品の成立性に照らして不可欠のものであること(要件1),物品の液晶表示部に表示される図形等がその物品の自体の有する機能(表示機能)により表示されているものであること(要件2),物品の液晶表示部に表示される図形等が変化する場合において,その変化の態様が特定したものであること(要件3)の3つの要件が必要とされますが,本願意匠は,パチンコゲーム機における遊技開始後の一定の条件下において表示される図柄であって,遊技の進行を受けて表示される自立的でない(物品自体の機能を発揮させるための不可欠な操作や機能を選択するための初期画面などの表示ではない)ものですから,付随的な利便性に不可欠であるとしても,未だにその物品の成立性に照らして不可欠なものとまではいうことはできず,意匠法第2条に定義する意匠を構成しないものと認められ,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものと言わざるを得ません。」との拒絶理由を通知した。
(3)出願人(請求人)の意見
出願人(請求人)は,平成19年6月15日付意見書において,要旨以下のように主張した。
(ア)保留表示について
保留表示は本物品にとって不可欠な機能における表示である。保留表示は,入賞口に遊技玉が入賞した際に変動状態が開始されるため,変動中の入賞を保留し,当該保留状態を遊技者に知らせるためのものである。本機能は本物品に不可欠な機能である。
(イ)液晶表示等に関するガイドラインについて
ガイドラインでは,「要件1:物品の表示部に表示される図形等が,その物品の成立性に照らして不可欠のものであること」とされているが,「ガイドラインでは要件1について,ここでいう「不可欠」とは,「その物品の使用目的の一部の機能を果たすために不可欠なもの」も含むことが明記されている。また,各種機能の状態を表示するためのもの(バッテリー残量表示,受信状態表示,各種レベルゲージ表示等)も物品の成立性に照らして不可欠なものとして認められている。このような表示が認められて,本願意匠の保留表示が認められないのは不当であると言わざるを得ない。
要件1?3と本願意匠を照らし合わせると,本願意匠は要件1,2を満たしており,かつ変化の態様も特定していることから要件3も満たすものである。従って全ての要件を満たす本願意匠は,工業上利用できる意匠であると判断される。
仮に当該ガイドラインに例として記載されている初期メニュー画面のみが工業上利用できる意匠であると判断されるのであれば,その根拠は不明である。そのような記載はガイドラインには一切明記されておらず,かつ掲載されている初期メニュー画面は,「例」として掲載されているにすぎない。
加えて,初期メニュー画面とは到底認めがたい多くの画面の意匠が既に登録されていることからも明らかである。
(4)拒絶査定
審査官は,平成19年4月27日付けで通知した理由により,平成19年7月19日付で拒絶をすべき旨の査定をし(平成18年12月8日発送),以下の付記をした。
すなわち,「出願人は,意見書において,保留表示は,入賞口に遊技玉が入賞した際に変動状態が開始されるため,変動中の入賞を保留し,当該保留状態を遊技者に知らせるためのものであり,保留表示機能は本物品に不可欠な機能である旨主張するが,保留表示は,パチンコゲーム機に内在する複合機能ではなく,パチンコゲーム機の機能のうち,遊技開始後の一定の条件下において起こりうる1つの状態であって,本願意匠は,その際に表示される図柄であって,遊技の進行を受けて表示される自立的でない(物品自体の機能を発揮させるための不可欠な操作や機能を選択するための初期画面などの表示ではない)ものですから,付随的な利便性に不可欠であるとしても,未だにその物品の成立性に照らして不可欠なものとまではいうことはできず,意匠法第2条に定義する意匠を構成しないものと認められ,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものと言わざるを得ません。」と付記した。
2.請求人の主張
請求人は,審判請求理由において,要旨以下のように主張する。
(1)保留表示について
保留表示は本物品にとって不可欠な機能における表示である。保留表示は,入賞口に遊技玉が入賞した際に変動状態が開始されるため,変動中の入賞を保留し,当該保留状態を遊技者に知らせるためのものである。本機能は本物品に不可欠な機能である。
(2)液晶表示等に関するガイドラインについて
ガイドラインでは要件1について,ここでいう「不可欠」とは,
(あ)物品に内在されている主たる機能を果たすために不可欠なものであって,当該図形等が表示されなければその物品が成立しない関係にある場合
(い)物品に内在されている機能が複合する場合であって,物品の表示部に表示される図形等が,その物品の使用目的の一部の機能を果たすために不可欠な図形等であると認められるとき
以上(あ)(い)が明記されている。(い)の例示として,ストップウォッチ機能を内在する腕時計の時間計測表示を,「物品の表示部に表示される図形等」として表す場合が記載されている他,多様な表示機能を有する物品の成立性に照らして不可欠なものとなり得る例示として,バッテリー残量表示,受信状態表示,各種レベルゲージ表示等が挙げられている。
本来パチンコゲーム機は入賞や大当たりを目的に行うものであるから,入賞を知らせる保留表示は単に「遊技開始後の一定の条件下において起こりうる1つの状態」に過ぎないわけではなく,機能上不可欠な表示である。当該不可欠な表示でありながら,例えばある操作により必ず表示される表示ではないが,それは本物品がゲーム機であることに起因するに過ぎない。仮にある操作により必ず表示されるとすれば,逆にゲーム機としての機能が損なわれることは言うまでもない。
本物品には上記(あ)における「主たる機能を果たすために不可欠なもの」が複数有り,保留表示は主たる機能を果たす不可欠な表示の1つである。
同ガイドラインでは,認められない例示として表示画面全面に表される背景のみを挙げているが,本願意匠における保留表示が認められない根拠とはなり得ない。むしろ本願意匠における保留表示は,機能的にはバッテリー残量表示等に近いものである。
3.当審の判断
(1)本願意匠
本願意匠は,願書及び添付図面の記載によれば,意匠に係る物品を「パチンコゲーム機」とし,その形態を願書及び添付図面に記載のとおりとし,本願意匠の当該部分を表示部上に表れる保留表示に関する部分とし,当該部分を一組の図面,「センター飾り部の拡大斜視図」,「センター飾り部の拡大正面図」,および,「A-A,B-B間の拡大正面図1」ないし「A-A,B-B間の拡大正面図16」において実線で表すとともに,当該部分とその他の部分との境界を一点鎖線で記載し,また,「A-A間のB-B拡大参考正面図」において,当該部分を網点部として記載したものである(別紙第1参照)。
本願意匠の当該部分は,パチンコゲーム機の正面中央上寄り中央に設けられた液晶表示画面下端左寄りに表示される保留表示に関する部分である。当該部分の全体は,略横長長方形状で,4個の保留表示の図形について略楕円形状を斜めに傾けたものとし,それらを横に並列に配置した態様のものである。
略楕円形状の4個の保留表示の図形は,願書の意匠の説明によれば,「「A-A,B-B間の拡大正面図1」ないし「A-A,B-B間の拡大正面図16」に示すように,各保留表示が独立して,繰り返し動くものであり,「A-A,B-B間の拡大正面図2」ないし「A-A,B-B間の拡大正面図16」は,保留表示が動いた状態である」旨記載されている。したがって,「A-A,B-B間の拡大正面図1」は,各保留表示の初期状態を記載したものであり,電源を投入しゲームを開始して,パチンコ玉が1つも入賞していない場合は「A-A,B-B間の拡大正面図1」の図形が表示されているものと認められる。また,願書の意匠の説明によれば,「「A-A,B-B間の拡大正面図2」ないし「A-A,B-B間の拡大正面図16」は,保留表示が動いた状態である」旨記載されている。したがって,保留表示の図形の変化態様は,各保留表示の図形が上下に位置を変化するだけのものと認められる。
(2)本願意匠の保留表示の図形は意匠を構成する要素に該当するか
意匠は物品の形態であることから,本願意匠の保留表示の図形も物品そのものが有する特徴又は性質から生じる形態でなければ意匠を構成する要素ではない。より具体的にいえば,一般的に,液晶等表示部に表示される図形等は,(要件1)その物品の成立性に照らして不可欠のもの(その物品の使用目的の一部の機能を果たすために不可欠なものも含む)であり,(要件2)その物品自体の有する機能(表示機能)により表示されているものであり,(要件3)変化する場合において、その変化の態様が特定したものであれば,意匠を構成する要素と認められる。
原審においては,「保留表示は,パチンコゲーム機に内在する複合機能ではなく,パチンコゲーム機の機能のうち,遊技開始後の一定の条件下において起こりうる1つの状態であって,本願意匠は,その際に表示される図柄であって,遊技の進行を受けて表示される自立的でない(物品自体の機能を発揮させるための不可欠な操作や機能を選択するための初期画面などの表示ではない)ものですから,付随的な利便性に不可欠であるとしても,未だにその物品の成立性に照らして不可欠なものとまではいうことはできず,意匠法第2条に定義する意匠を構成しないもの」と認定判断された。
そこで検討するに,願書の「意匠の説明」の記載によれば,本願意匠の図形は,保留表示に関するものであり,パチンコゲーム機の色々な機種のうち保留機能を有するパチンコゲーム機においてパチンコ玉が入賞し保留となっている状態を表示するためのもので,パチンコゲーム機の物理的状態ないしは作動状態を表示するためのもので,各種のレベル表示に相当するものである。そして,保留機能を有するパチンコゲーム機は,一般に「保留機」と称されるパチンコゲーム機の機種となっており,この保留機能を有するパチンコゲーム機においては,保留状態を表示する機能は,物品の使用目的の一部の機能と認められる(原審の「保留表示は,パチンコゲーム機に内在する複合機能ではない」との認定は誤りである。)。したがって,本願意匠の保留表示の図形は,その物品の使用目的の一部の機能を果たすために不可欠なものであって,その物品の成立性に照らして不可欠なものと認められる。
以上のとおり,本願意匠に係るパチンコゲーム機は,保留状態を表示することも使用目的の機能とするものである。それゆえ,本願は,その表示機能により表示される図形を,一組の図面,「センター飾り部の拡大斜視図」,「センター飾り部の拡大正面図」,および,「A-A,B-B間の拡大正面図1」ないし「A-A,B-B間の拡大正面図16」に表し,また,「A-A,B-B間の拡大正面図1」ないし「A-A,B-B間の拡大正面図16」にその変化の態様を特定して理解できるように記載したものである。そして,「A-A,B-B間の拡大正面図1」は,各保留表示が変化しない状態を記載したものであり,パチンコ玉が1つも入賞していない場合は「A-A,B-B間の拡大正面図1」の図形が表示されるものであるから,本願意匠の保留表示の図形は,パチンコゲーム機の電源が入っている場合は,パチンコ玉が入賞していない場合でも常に表示されている図形と認められる。したがって,本願意匠の保留表示状態の図形は,本願意匠に係るパチンコゲーム機自体の有する表示機能により表示されているものである(原審の「保留表示は,・・・パチンコゲーム機の機能のうち,遊技開始後の一定の条件下において起こりうる1つの状態であって,本願意匠は,その際に表示される図柄であって,遊技の進行を受けて表示される自立的でないもの」との認定は誤りである。)。
さらに,本願の各図面に表された図形は,4個の略楕円形状の図形がそれぞれ上下に位置を変化する状態を全て記載したものであり,保留状態を表示するという機能が共通し,かつ相互に形態的関連性が認められる。したがって,その図形の変化の態様が特定しているものである。
以上のように,本願意匠の当該部分の形態である,保留状態を表示する図形は,(1)保留機能を有するパチンコゲーム機においては,その物品の使用目的の一部の機能を果たすために不可欠なもの,すなわち,その物品の成立性に照らして不可欠なものであり,(2)パチンコゲーム機以外の器機から情報を受けて表示されるものではなく,その物品自身の有する機能(表示機能)により表示されるものであり,(3)図形の変化の態様が特定しているものである。
したがって,本願意匠の保留状態の表示図形は,物品が有する特徴ないし性質から生じる形態であり,意匠を構成する要素と認められる。
(3)小括
以上のように,本願意匠の保留状態の表示図形は,意匠法第2条に定義する意匠を構成するものと認められる。したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するものである。
4.むすび
以上のように,本願の意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当し,原査定の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2008-09-29 
出願番号 意願2006-26475(D2006-26475) 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (E2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 樋田 敏恵
並木 文子
登録日 2008-10-24 
登録番号 意匠登録第1345136号(D1345136) 
代理人 日高 一樹 
代理人 渡邉 知子 
代理人 高木 祐一 
代理人 中野 佳直 
代理人 重信 和男 
代理人 清水 英雄 

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