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審決分類 審判    J7
管理番号 1244653 
審判番号 無効2010-880019
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-11-22 
確定日 2011-09-21 
意匠に係る物品 感染性廃棄物処理容器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1393583号「感染性廃棄物処理容器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1393583号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。

登録第1393583号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、出願前に頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第5号証の1に記載され且つ販売により公知となった先行意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

1.本件登録意匠と先行意匠との対比
両意匠の意匠に係る物品は、何れも感染性廃棄物処理容器又は医療廃棄物容器に関するものであり、実質的に同一の物品である。その形態については、蓋と本体とから構成され、本体は、正面、背面及び左右側面の各面が、底部よりも上部が大きい逆台形状をなすことにより、全体として概略倒錐台状の角形容器を形成し、その開口部に略長方形平板状の蓋を嵌め込んだ基本的構成態様、及び各部の具体的態様につき、本体開口部に沿って、下方ヘコの字状に折り返したかような形状の縁部が形成され、該縁部から下方に向かって一定長さだけ延びるリブが正面図で見て左右に2本ずつ計4本、側面図で見て同様に4本設けられ、また、本体の正面には、上下方向に延びる2本の突起部を設け、各突起部は、上下端部が細く、中央部が太く形成されている点が共通する。また、蓋の上面中央付近には、平面視略長方形の一段盛り上がった台状部が設けられている点も共通する。
一方、各部の具体的態様につき、本件登録意匠は、蓋上面の台状部に所謂バイオハザードマーク(医療廃棄物又は感染性廃棄物であることを識別できるようにするために一般的に用いられているマーク)が付されているのに対して、甲第1号証乃至甲第4号証に記載の「ECOPAIL20」の意匠では、そのマークを確認できない点(なお、実際の商品の蓋上面にはバイオハザードマークが付されている)と、「ECOPAIL20」の意匠では商品ラベルが貼付されている点が相違する。

2.本件登録意匠と先行意匠との類否
両意匠の類否を検討すると、基本的構成態様及び具体的態様ともにほぼ全ての部分が共通しており、相違点は、蓋上面のバイオハザードマーク及び商品ラベルの有無のみである。バイオハザードマークは上記のとおり一般的に用いられているありふれたマークであるし、比較的目立たない蓋の上面に表示されている。また、商品ラベルは、販売時には基本的にどの容器にも貼られるものであり、本質的に容器の意匠を構成するものではない。従って、これらの相違点は、いずれも類否判断に与える影響は微弱であり、到底、相違点が共通点を凌駕するものではない。
以上より、本件登録意匠と甲第1号証乃至甲第5号証の1に記載の「ECOPAIL20」の意匠とは、意匠に係る物品が一致し、その形態についても類否判断を左右するところにおいて共通しているから、両意匠は類似するものである。

3.むすび
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきである。

第2.被請求人の答弁及び理由
当審は、期間を指定して被請求人に答弁書の提出を求めたところ、期間内には応答がなされなかった。

第3.審尋
当審は平成23年4月7日付で、請求人に対して審尋をしたところ、請求人は平成23年4月25日付回答書を提出した。
被請求人は、この回答書に対し、平成23年6月2日付上申書(上申書には、請求人提出の回答書に添付された資料4をカラー複写し、A部及びB部を示す指示線を施した写真並びに意匠登録第1393583号【正面図】にA部及びB部を示す指示線を施した図面を添付。)を提出し、請求人が提出した平成23年4月25日付回答書に添付された資料4(商品「ECOPAIL20」の撮影写真)の正面図のA部、B部は、本件登録意匠の正面図のA部、B部と異なる旨主張した。

第4.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、2009年(平成21年)11月11日の出願に係り、2010年(平成22年)年7月2日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1393583号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「感染性廃棄物処理容器」とし、その形態は願書の記載及び願書に添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.引用意匠
請求人が、本件登録意匠がその出願前に頒布された刊行物に記載され、販売により公然知られた意匠に類似する意匠であるとして引用した意匠は、以下のとおりである。

甲第1号証に表された意匠は、平成20年5月26日、株式会社日報アイ・ビー発行の刊行物「週刊循環経済新聞 平成20年5月26日号」第69頁右欄2段目の写真「ECOPAIL20・50の段積み」中で、上に積まれた2個の容器の意匠(医療廃棄物処理容器「エコペール」の意匠)であり、右欄4段目の写真「ECOPAIL20・50・70」にあっては、3つの容器のうち左側に配置された容器の意匠である。そして、第69頁右欄1段目に「廃プラスチックのマテリアルリサイクルを具現化した画期的商品で、販売も起動に乗っている。」と記載され、同2段目には「今までは取り外しにくかった重ねてある空の容器を、ハンドリングがしやすいように容器外部に溝を付けるなど、実用新案申請中の創意工夫が施されている。」と記載されている。
なお、引用の新聞記事中に記載された「起動」は「軌道」の誤記と認め、容器外部の「溝」は容器外部の2本の「筋条突起」を意味していると認める。
甲第2号証に表された意匠は、株式会社日本ビジネス出版発行の業界専門誌「環境ビジネス 2008年8月号」第66頁左下に記載された写真の中の3つの容器のうち左側に配置された容器の意匠である。第66頁左欄11?14行目に「エコペール」は現在、月間6?7万缶を売上げ、引き合いのある企業に断りを入れなければならないほどの人気商品となった。」と記載されており、同第67頁中欄12?15行目には、「対応策として、容器外部にわずかな溝を加えた。このことで、真空状態を防ぎ、取り外しの問題をクリアした。」と記載されている。
なお、引用の記事中に記載の容器外部の「溝」は、甲第1号証と同様に、容器外部の2本の「筋条突起」を意味していると認める。
甲第3号証に表された意匠は、株式会社エムシービー発行のカタログ「取扱商品力タログ2008 vol.2」第2頁左上方に記載された「ECOPAIL20」の容器の意匠である。本カタログには発行日について明示的な記載はないが、表紙のタイトル中の「2008 vol.2」の記載、及び裏表紙の左下隅の「会社概要(平成20年10月現在)」の記載により、2008年(平成20年)10月以降作成され、遅くとも2008年度中には発行・頒布されたものと認められる。
甲第4号証に表された意匠は、株式会社エムシービー発行のカタログ「取扱商品力タログ2008」表紙裏頁左方に記載された医療用廃棄物容器(商品の全面中央部に貼付されたラベルに「ECOPAIL」と書かれている)の意匠である。本カタログには発行日について明示的な記載はないが、表紙のタイトル中の「2008」の記載、及び裏表紙の左下隅の「会社概要(平成20年5月現在)」の記載により、2008年(平成20年)5月以降作成され、遅くとも2008年度中には発行・頒布されたものと認められる。
甲第5号証の1に表された意匠は、株式会社エムシービー発行のカタログ「取扱商品力タログ2009 vol.1」第2頁左上方に記載された「ECOPAIL20」の容器の意匠である。同頁左下方には、「新機能搭載」として、「ECOPAIL20」の容器の意匠が複数個重ねられた状態の写真と「本体に突起を付けることにより梱包時の真空状態を防ぎ容器を引抜き易くしてあります。(ECOPAIL20のみ)」とする文章が記載されて、本体正面に設けられた上下方向に延びる2本の筋条突起について説明がなされている。ところで、甲第5号証の1のカタログには発行日について明示的な記載がないため、裏表紙の左下隅の「会社概要(平成21年1月現在)」の記載により、2009年(平成21年)1月以降に作成されたと認められるものの、本件登録意匠の出願日である2009年(平成21年)11月11日より前に発行・頒布されたかどうか必ずしも明らかではない。しかしながら、この種のカタログは、一般に頒布を目的として作成されるものであるから、通常は、作成され次第、そう日を置かずに頒布されるに至ったと考えるのが自然であるところ、甲第5号証の1のカタログ裏表紙の「会社概要」に代表取締役として「本田知己」の記載があり、同氏が株式会社エムシービーの代表取締役を平成21年2月24日に退任したことから、この日よりも前に作成されたことは明らかであり、遅くとも、本件登録意匠の出願前(2009年(平成21年)11月11日前)迄には発行・頒布されたものと認められる。
そして、これら甲第1号証ないし甲第5号証の1に表された意匠は、商品名を「ECOPAIL」あるいは「エコペール」として、何れも同じ「エコペール」の称呼を用いて同一人(株式会社エムビーシー)が販売する商品に係る意匠であることから、これら各号証に表された意匠は同一又はバリエーションの意匠と認められる。

当審は、甲第1号証に表され、販売により公然知られた意匠を引用意匠とし、以下、本件登録意匠と引用意匠の類否を検討する(別紙第2参照)。
なお、引用意匠の形態は、甲第1号証に記載された写真に現されたとおりのものであるが、併せて請求人が提出した平成23年4月25日付回答書に添付された資料1(甲第1号証の広告原稿データを印刷したもの)を参酌する(別紙第3及び別紙第4参照)。

3.本件登録意匠と引用意匠の対比及び類否判断
(1)両意匠の対比
両意匠を対比すると、意匠に係る物品はともに医療用の感染性廃棄物処理容器に係るものであって一致し、形態については、主として以下の共通点及び相違点が認められる。
まず、共通点として、基本的構成態様において、(A)全体が本体部と蓋部からなり、本体部は、上面が開口した下窄まりの方形箱状体とし、その上面の開口部に、略長方形平板状の蓋部を嵌着した点。各部の具体的態様において、(B)本体部につき、(B-1)上面の開口部に沿って、断面を略倒「コ」字状とする縁部を形成し、その側面側の縁部の中央横幅略1/3を外方に拡幅して、手掛け部とした点、(B-2)縁部下方に、一定長さの板状リブを、各面ごと左右に2本ずつ4本、全部で16本設け、さらに、(B-3)正背面の左右側端から横幅約1/5程度内側に寄せた位置に、上下方向に長い筋条突起を、各面ごと左右に1本ずつ2本、全部で4本設け、各筋条突起は細幅で上下端部が鋭角的に収束するように形成した点、(C)蓋部につき、外周に太幅の角状縁部を形成し、この内側の上面を角状縁部の上端より一段低く形成して、中央に平面視略長方形状の低い台状凸部を設け、その周囲に略長方形状の傾斜状枠部を設けた点、が共通する。
他方、相違点として、各部の具体的態様において、(ア)蓋部につき、本件登録意匠は上面中央の台状凸部にバイオハザードマークを付したのに対して、引用意匠は台状凸部にバイオハザードマークを付していない点、(イ)本件登録意匠は、底面の長手辺寄り(正面辺側と背面側辺寄り)に、一対の板状リブを形成しているのに対し、引用意匠はこの板状リブが形成されているか否か不明である点、が認められる。

(2)両意匠の類否判断
そこで、これらの共通点及び相違点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
まず、共通点(A)は、この種物品において一般的に採用されている構成であるが、形態全体の基本的な構成態様をなし、視覚的に最も目立つものであるから、類否判断に一定の影響を及ぼすものである。また、本体部における共通点(B-1)の縁部も、通常の使用状態において最も観察されやすい部位となる開口部の全周に渡って形成されたもので、蓋部と嵌着することによって収容物を密閉し、側面側においては持ち運びの際の手掛けとしても機能することから、看者の注意を一定程度惹くものである。共通点(B-2)の板状リブは、単なる矩形板状としたものであって個々に観察する限りにおいてはさほど特徴的な形状のものとはいえないが、これらの板状リブは本体部の各面に互いに間隔を開けて設けられていることにより、斜視状態においては何れの方向から見ても縦方向に並ぶ多数の板状リブが観察できるものとなっており、この点と、新規な形状であることから看者の注意を惹く存在と認められる、共通点(B-3)の筋条突起が醸し出す印象とが相俟って、両意匠の共通性を強く意識させる効果をもたらしており、さらに共通点(C)の蓋部の外郭形状が奏する印象が加わり、形態上のまとまりを形成して、看者に強い共通感を生じさせているものであるから、両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものである。
これに対し、相違点は、以下のとおり何れも微弱な相違にとどまり、類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
すなわち、相違点(ア)のバイオハザードマークについては、アメリカのダウ・ケミカル社が開発したマークであって、我が国においては厚生労働省によってこの種の容器類に表示することが推奨されているマークであり、本件登録意匠はこのマークを線状の縁取り模様として、ありふれた配置態様で表したに過ぎないものであるから、形態上の特徴としてほとんど評価できず、類否判断に与える影響は微弱である。また、底面における相違点(イ)も、通常の使用状態である床面に載置した状態においてほとんど目につかない形状であるから、看者の注意をほとんど惹かず、類否判断に影響を及ぼすほどの相違とはいえない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態についても、共通点は類否判断に及ぼす影響が極めて大きいのに対し、相違点は何れも類否判断に及ぼす影響が微弱であり、これらの相違点が相俟った意匠的効果を考慮しても、共通点全体が生じさせている強い共通感を凌駕するほどのものとは到底認めることができないから、本件登録意匠は引用意匠に類似するというほかない。

4.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、その出願前に、頒布された刊行物に記載され、販売により公然知られた意匠に類似するものであって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、その意匠登録は、同条同項柱書の規定に違反してされたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定に該当し、その意匠登録を無効にすべきである。
よって、結論の通り審決する。
別掲
審理終結日 2011-07-20 
結審通知日 2011-07-25 
審決日 2011-08-08 
出願番号 意願2009-28062(D2009-28062) 
審決分類 D 1 113・ 111- Z (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 遥子並木 文子 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
瓜本 忠夫
登録日 2010-07-02 
登録番号 意匠登録第1393583号(D1393583) 
代理人 立石 博臣 

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