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審決分類 |
審判 補正却下不服 図面(意匠の説明を含む) 取り消す B1 |
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管理番号 | 1253411 |
審判番号 | 補正2011-500002 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-09 |
確定日 | 2011-12-28 |
意匠に係る物品 | 衣服 |
事件の表示 | 意願2009- 27212「衣服」において、平成23年11月26日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,2009年5月21日のオーストラリア連邦への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成21(2009)年11月20日の意匠登録出願であって,その意匠は,意匠に係る物品が「衣服」であり,その形態が願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。 2.手続の経緯 出願当初の願書添付の図面には,平面図及び底面図が添付されていなかったため,平成21年11月24日付けで提出した手続補正書によって,平面図及び底面図が追加された。 原審において,審査官は本願について,「この意匠登録出願の意匠は,添付図面における正面図及び背面図がその他の必要図と整合せず,一の意匠を特定することができないため,未だ具体的でないと認められます。 なお,意匠に係る物品の名称としては,『スポーツ用シャツ』若しくは『アンダーウェア』等が適切です。また,願書の意匠の説明の欄に記載された『対照』は,正しくは『対称』です。」と記載し,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない,との拒絶の理由を平成22年7月30日付けで通知したところ,出願人(本件審判請求人)は,平成22年11月26日付けで手続補正書を提出し,願書の「意匠に係る物品」の欄の記載を「スポーツ用シャツ」とし,「意匠の説明」の欄の記載を「右側面図は左側面図と対称に表れるので省略する。」に補正をし,併せて,正面図,左側面図,平面図,底面図を変更する補正をした(別紙第2参照)。 この手続補正に対し,原審は,「上記手続補正書により願書の意匠に係る物品の欄の記載及び意匠の説明の欄の記載,並びに添付図面の正面図首部,左側面図腕部,平面図及び底面図について補正されましたが,これらの補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するものです。 したがって,上記手続補正書による補正は,出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められます。」との理由により,意匠法第17条の2第1項の規定によって,却下をすべきものと決定した。 請求人は,この決定を不服として,本件審判を請求したものである。 3.請求人の主張の要旨 (1)願書及び願書添付図面について (a)添付図面の正面図首部について 添付図面の正面図首部ついては,出願当初の添付図面の正面図において,シャツの背中側の上端の首部の線が欠落していたので,この首部の線を表わす補正をした。この首部の線は,出願当初の添付図面の背面図に表わされている線であって,このことから,首部の線の欠落は,正面図を作成するときの誤記によって生じたものであり,また,出願当初の添付図面の背面図から直接的に導き出すことができる。 (b)添付図面の左側面図腕部について 添付図面の左側面図腕部については,出願当初の添付図面の左側面図において,シャツの袖の部位が省略されていたので,この袖の部位を表わす補正をした。この袖の部位は,出願当初の添付図面の正面図及び背面図に表わされているものであって,この正面図及び背面図には両袖が左右略水平に広げるように表わされており,また,パリ条約による優先権主張の基礎となるオーストラリアにおける平成21年(2009年)5月21日の出願では,この袖の部位を省略した形で意匠登録出願を行っており,これらのことから,袖の部位の省略は,左側面図を作成するときの不手際によって生じたものであり,また,出願当初の添付図面の正面図及び背面図から直接的に導き出すことができる。 (c)添付図面の平面図及び底面図について 添付図面の平面図及び底面図については,出願当初の添付図面に平面図及び底面図が添付されておらず,平成21年11月24日付けで提出した手続補正書に平面図及び底面図を添付したが,このときシャツの胴部の大きさや袖の形が出願当初の添付図面の左側面図,正面図及び背面図に表わされているものと相違していたので,これを左側面図,正面図及び背面図に表わされているものと同じように表わす補正をした。このシャツの胴部の大きさは,出願当初の添付図面の左側面図に表わされているものであって,また,シャツの袖の形は,出願当初の添付図面の正面図及び背面図に表わされているものであって,この正面図及び背面図には両袖が左右略水平に広げるように表わされており,これらのことから,シャツの胴部の大きさや袖の形の相違は,平面図及び底面図を作成するときの不手際によって生じたものであり,また,出願当初の添付図面の左側面図,正面図及び背面図から直接的に導き出すことができる。 したがって,添付図面における補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するものではない。すなわち,この補正は,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲のものに訂正するものであり,出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面等の要旨を変更するものではないと思料する。 (d)願書の意匠に係る物品の欄の記載及び意匠の説明の欄の記載について 平成22年11月26日付けで提出した手続補正書によって,願書の意匠に係る物品の名称が不適切であるとの点については,これを「スポーツ用シャツ」にする補正をすると共に,願書の意匠の説明の欄に記載された「対照」という誤記については,これを正しい表記である「対称」にする補正をした。 (2)本願意匠の補正について 仮に本願意匠が当該補正を伴って登録されたと仮定して一般公衆の利益が損なわれるものであろうか。これは何ら損なわれることはないといえる。もし,本願意匠が出願前の意匠に類似していればその点で登録性を阻止するフィルター作用が働くからである。逆にいえば公知意匠が存在しない限り,一般公衆に害はないわけであり,このような場合の補正については出願人の利益になる取扱いとしても問題はないと考えられる。 本願意匠にかかわる図面は一般公衆あるいはデザインに携わる職業の者であっても問題はないとする領域にあると考えられる。なぜなら多くの公衆に本願の意匠を描かせてもほとんど本願と同じ図面を描くからである。即ち首部,腕部(袖の部位)の存在は当たり前のものであり,しかも,出願時の図面から,その形態は推測できる範囲のものである。 近年工業所有権法の国際的ハーモナイゼーションの進展には著しいものがあり,将来的には審査の共通化等が目標とされることはよく知られたところである。とすればそのような将来情勢をにらみつつ,あるいは,そうでなくても常に国際的に首肯されうる基準の運用への努力も必要ではないかと思われる。この点まず本願意匠のファミリー出願としてのOHIM出願では本願の出願当初の図面通りの正面図,背面図,側面図で登録No.001632308-0003となっている。また,スイス出願においても本願の出願当初の図面通りの正面図,背面図,側面図で登録No.136588となっている。つまり実質ヨーロッパ全域において,本願意匠の製図法を問題なしとしている事実がある。 以上詳述のように本願意匠の補正は意匠審査基準の文言に基づいても,あるいはその精神としての一般公衆の利益と出願人の利益との衡平のバランスを失しないものであるか,我が国の社会通念上妥当なものか,あるいは国際的に妥当とされるものであるのか等を考慮しても要旨を変更するものでないとしうるレベルの補正である。 しかしながら,このような補正に対して原審は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するもので,出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められ,意匠法第17条の2第1項の規定に基づき却下をすべきものと決定するとしているが,これは本件事例に関係しない記載であって,本件のみならず,どのような補正に対しても通ずるもので,本願補正の却下の理由を示しているとはいえず不当なものである上,本願補正はあらゆる観点からしても,要旨を変更するものとすべきでないことは上述の通りである。 (3)むすび 以上のとおり,意願2009-027212について,平成22年11月26日付けでした補正に対して,平成23年3月2日になした補正の却下の決定を取り消す。との審決を求める。 4.当審の判断 まず,願書の記載について,「意匠に係る物品」の欄の記載を「スポーツ用シャツ」と補正し,「意匠の説明」の欄の記載を「右側面図は左側面図と対称に表れるので省略する。」と補正したまでで,実態に即して訂正をした範囲のものといえるもので,願書の記載についての補正が,出願当初の意匠の要旨を変更するものではない。 次に,願書添付の図面について,(a)首部については,正面図において,シャツの背中側の首回りの線が欠落していたものを補ったまでであって,誤記の訂正といえるものである。(b)左側面図腕部については,当初シャツの袖が表現されていなかったものについて袖を表したものであるが,袖があるシャツであることは,出願当初の正面図及び背面図から当然に導き出すことができるもので,袖の表現について誤った図面を他の図面と整合するように訂正したまでに過ぎず,その補正が出願当初の意匠の要旨を変更するものであるとは,いうことができない。(c)平面図及び底面図については,出願当初の願書添付の図面には記載されておらず,平成21年11月24日付けの手続補正書で追加し,平成22年11月26日付けの手続補正書でさらに訂正したものであるが,シャツの胴部の大きさは,出願当初の正面図,背面図及び左側面図に表されているものと同様であり,シャツの袖の形や長さも正面図及び背面図と同様に表されており,正面図及び背面図から導き出すことが可能であるといえるものであって,平面図及び底面図の補正も,出願当初の意匠の要旨を変更するものであるとは認められない。 そうすると,本願意匠の願書添付の図面の補正についても,誤記の修正ないしは他の図面と整合するように補正したまでであって,その補正が出願当初の意匠の要旨を変更し,同一の範囲を超えるものであるとは認められない。 以上のとおり,平成22年11月26日付けでした補正は,願書の記載及び願書添付の図面について,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲のものに訂正するものであり,出願当初の意匠の要旨を変更するものではない。 5.むすび したがって,平成22年11月26日付けの手続補正書でなされた願書の記載及び願書添付の図面についての補正は,出願当初の意匠の要旨を変更するまでのものとはいえず,この手続補正書による補正を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした原審の決定は理由がなく,取消しを免れない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2011-12-13 |
出願番号 | 意願2009-27212(D2009-27212) |
審決分類 |
D
1
7・
1-
W
(B1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
下村 圭子 橘 崇生 |
登録日 | 2012-03-23 |
登録番号 | 意匠登録第1439079号(D1439079) |
代理人 | 佐藤 嘉明 |