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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201115172 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1268312 
審判番号 不服2012-2837
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-14 
確定日 2012-12-11 
意匠に係る物品 アルミ箔の収納箱 
事件の表示 意願2011-8587「アルミ箔の収納箱」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,2011年(平成23年)4月14日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「アルミ箔の収納箱」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。D-D部分拡大図に示す一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である」としたもの(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願当該部分の意匠」ともいう。)である。(別紙第1参照)

第2 当審の拒絶の理由
本願意匠に対して,当審が通知した拒絶の理由は,以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ,意匠法第3条第2項の規定に該当します。


本願の意匠は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「アルミ箔の収納箱」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合については,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,その記載内容によると,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。D-D部分拡大図に示す一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である」としたもの(以下,本願について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠」という。)であり,具体的には,物品全体が倒四角柱状の有蓋箱体であって,本願意匠は,その開蓋状態で,平面視で箱体本体の上面側の開口部に見える左右フラップ部分であり,当該部分は,本体左右側面の上辺中央において突設した部分を本体内側に折り曲げた状態のものであって,詳細には,フラップ折れ辺(折れ位置または側面の上辺)中央の位置に,倒立へんぺい台形状の切り込みが入れてあり,この折れ位置にてフラップを本体内側に折り曲げると,当該切り込みがへんぺい台形状の本体外方への突出片(小凸部)となって,収納箱の蓋体内側に引っ掛かるようにしたものであって,フラップ部分は,一辺が本体側面の幅(本体奥行き)の約2分の1の長さの,正方形(本体内側角部を角丸にしていない)であって,その結果,フラップの前後には,本体側面の幅の約4分の1長さの透き間ができるようにした態様です。
しかしながら,本願意匠が属する,この種の収納箱の分野において,本体が倒四角柱状の箱体であって,本体左右側面の上辺より突出した部分を本体内側に折り曲げてフラップとして,フラップ折れ辺の位置に倒立へんぺい台形状の切り込みを入れ,小凸部としたものは,引用意匠1に表れており,フラップの横幅長さ(本体奥行き方向長さ)を本体側面の幅長さよりも短くし,手前側(正面側)に透き間を設けたものは,引用意匠2に,また,箱体蓋ちょうつがい側(奥側)に透き間を設けたものが,引用意匠3に認められ,フラップ状部分の形状を,内側角部を角丸にせず角張らせて略正方形にしているものは,引用意匠4に表れており,本願の出願前から普通に見受けられるものといえます。
そして,これらの態様を組み合わせることについては,本願出願前から種々の態様が存在することを考慮すれば,この種の意匠の分野における当業者であってみれば,格別の創意を要するものとは認められません。したがって,本願意匠は,本願出願前から公然知られた引用意匠1のフラップ部分を,引用意匠2と3に表れている態様とし,その形状を引用意匠4にしたものに過ぎず,当業者ならば容易に創作することができたものと認められます。


引用意匠1
特許庁発行の公開特許公報記載
平成10年特許出願公開第1142号の図1及び図4並びに関連する記載に表された「帯状巻取資料の引出用容器体」の意匠中,本願意匠に該当する部分。

引用意匠2
特許庁発行の公開実用新案公報記載
昭和60年実用新案出願公開第18923号の第1図,第2図,第4図及び第5図,並びに関連する記載に表された「ロール巻きシート材の収納容器」の意匠中,本願意匠に該当する部分。

引用意匠3
意匠登録第1128377号の意匠中,本願意匠に該当する部分。

引用意匠4
特許庁普及支援課が,2011年5月12日に受け入れた,大韓民国特許庁発行の大韓民国意匠商標公報2011年3月22日11-06号
「包装用箱(登録番号30-0592368)」の意匠中,蓋部の両短辺縁
部中央のフラップ部分。
(公知資料番号第HH23409982号)」

第3 請求人の主張
上記拒絶の理由の通知に対し,請求人は,おおむね以下のとおり主張をした。
本願意匠の創作容易性について
(1)拒絶理由通知書では,引用意匠1を基礎とし,引用意匠2ないし4を概念的にとらえ,本願意匠は,創作容易と判断しているが,意匠としての具体的な構成態様をとらえるべきであり,引用意匠1に引用意匠2ないし4を具体的に組み合わせ寄せ集めてみても,本願意匠を導き出すことはできず,また4件もの引用意匠を引用しなければならないほどであるから,本願意匠は,引用意匠1ないし4に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。

(2)アルミ箔等のロール巻きを収容するこの種の収容箱において,左右のフラップ部分は,引用意匠1のように長い方が好ましいから,引用意匠2,3のように,フラップ部分の前後に透き間を設けることは,この種収納箱の当業者であれば,通常,適用し難いものである。
なお,引用意匠2の手前側の透き間は,逆台形となっているので,本願意匠の長方形状の透き間とは異なる。
引用意匠3は,ロール巻き収納箱とは関連が無く,基本形態及び用途機能も異なるものであるから,当業者であれば,引用意匠3の態様は適用し難いものであり,引用意匠1に,引用意匠3を組み合わせる動機付けは無い。
引用意匠4は,ロール巻き収納箱とは関連が無く,そのフラップ部分は,取り付け位置が全く異なっているから,引用意匠1に組み合わせ,あるいは置換することはできない。
さらに,当業者として,引用意匠4の態様は適用し難いものであり,引用意匠1に,引用意匠4を組み合わせる動機付けも無い。
したがって,引用意匠1に,引用意匠3,4を組み合わせる動機付けは無く,本願意匠は,引用意匠1ないし4に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとは到底いえない。

(3)意匠というものは,単なる構成要素の寄せ集めとしてではなく,全体としての一つのまとまりとして見るべきであるから,各構成要素に分解して取り出し,意匠の創作の容易性を判断することは妥当なものといえない。
本願意匠は,フラップ部分の形状だけでなく,箱体における位置・大きさ・範囲をも特定して一体的に形成された構成態様のものであり,この種物品分野において,本願意匠のような構成態様を有するものが,本願の出願前に見受けられないことから,単に,構成要素に分解して取り出した形状等が,それぞれ公知の形状であったとしても,それらを一つのまとまりとして見た場合,容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。

したがって,本願意匠は,引用意匠1ないし4に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえず,意匠法第3条第2項の規定に該当せず,登録されるべきものと確信する。

第4 当審の判断
以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,請求人の主張を踏まえて検討し,判断する。
(1)本願当該部分の意匠に係る形態
(A)基本的構成態様
物品全体が倒四角柱状の有蓋箱体であって,本願当該部分の意匠は,その開蓋状態で,平面視で箱体本体の上面側の開口部に見える左右フラップ部分であり,当該部分は,本体左右側面の上辺中ほどにおいて突設したフラップ部分を本体内側に折り曲げた状態のものである。
(B)具体的態様
フラップ折れ辺(折れ位置または側面の上辺)中央の位置に,フラップ幅の約2分の1幅の倒立へんぺい台形状の切り込みが入れてあり,この折れ位置にてフラップを本体内側に折り曲げると,当該切り込みがへんぺい台形状の本体外方への突出片(小凸部)となって,収納箱の蓋体内側に引っ掛かるようにしたものであって,フラップ部分は,一辺が本体側面の幅(本体奥行き)より短い長さの辺による略正方形状であって,その結果,当該フラップの前後に透き間ができるようにした態様である。

(2)各引用意匠の形態
(A)引用意匠1(別紙第2参照)
本体が倒四角柱状の箱体であって,本体左右側面の上辺より突出した部分を本体内側に折り曲げてフラップとし,フラップ折れ辺の位置に倒立へんぺい台形状の切り込みを入れ,小凸部としたものである。
(B)引用意匠2(別紙第3参照)
フラップの横幅長さを本体側面の幅長さ(本体奥行き方向長さ)よりも短くし,手前側(正面側)に透き間を設けたものである。
(C)引用意匠3(別紙第4参照)
箱体蓋ちょうつがい側(奥側)に透き間を設けたものである。
(D)引用意匠4(別紙第5参照)
フラップ状部分の形状を,内側角部を角丸にせず角張らせて略正方形にしているものである。

(3)本願意匠の創作性の容易性について
本願当該部分の意匠に係る形態のうちの具体的構成態様である,横幅を本体側面の幅より短くした略正方形状のフラップを本体側面の前後略中心に設け,その結果,当該フラップの前と後に同時にある一定程度の透き間ができている態様は,上記の意匠1ないし4のいずれにも表れておらず,本願意匠の特徴といって差し支えないものであって,容易に創作ができたものということはできない。

第5 結び
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,当審の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-11-29 
出願番号 意願2011-8587(D2011-8587) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成田 陽一小林 裕和 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 橘 崇生
遠藤 行久
登録日 2012-12-28 
登録番号 意匠登録第1461019号(D1461019) 
復代理人 多田 悦夫 
代理人 磯野 道造 

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