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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1296084 
審判番号 不服2014-6936
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-14 
確定日 2014-12-16 
意匠に係る物品 包装箱用板紙 
事件の表示 意願2013- 6914「包装箱用板紙」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成25年(2013年)3月28日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装箱用板紙」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとするものであり,本願意匠が類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁発行の意匠公報に記載の,意匠登録第1144557号(意匠に係る物品,包装用箱)の意匠であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比

本願意匠の意匠に係る物品は「包装箱用板紙」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「包装用箱」であるが,双方とも商品を収納し,箱に組み立てた状態ではそのまま店頭での陳列にも使用できる包装箱であるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,本願意匠については,引用意匠に合わせた向きで組み立てた状態のものとして比較する。

まず,共通点として,
(A)全体は,平面視略横長八角形とする略直方体からなり,上面から正面にかけて開口可能とするカットライン(以下,「カットライン部」という。)を設け,上下面に表れるフラップ(以下,「フラップ部」という。)の凹凸を利用したスタッキングを可能とする構成である点,
(B)カットライン部は,上面の半分とそれに繋がる正面の上から約2/3までを開口可能とするために設けられたカットラインと,カットラインにより開口する正面の上から約2/3の位置に略H形状をした指差し込み部(以下,「指差し込み部」という。)を設けた点,
(C)フラップ部は,上面については短辺側のフラップを外側に形成し,凸面となっており,下面については長辺側のフラップを外側に形成し,上面フラップと嵌合するように短辺側は凹面の構成である点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)カットライン部の態様について,本願意匠の上面中央には,開口時に指掛け部となる略ハ形状の切れ込み部からなる折り曲げ部(以下,「折り曲げ部」という。)を設けており,本願意匠のカットラインは,まず上面中央から短辺側フラップに沿うように円弧状に形成し,その後直線状に上面から側面の左右両辺上を通り,左右両端に形成した指差し込み部まで連続して繋がっているのに対して,引用意匠の上面中央には,本願意匠のような折り曲げ部はなく,上面中央から側面の左右両辺上を通り,上から約2/3まで直線状にカットラインを設け,指差し込み部は開口可能な正面中央部分に1つだけ形成している点,
(イ)フラップ部の態様について,本願意匠のフラップ部は,上面側の凸面の形状及び下面側の嵌合する凹面の形状は,略半円形状となっているのに対して,引用意匠のフラップ部は,短辺側の両端が丸みを帯びた略等脚台形状となっている点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)のカットライン部の態様及び共通点(C)のフラップ部の態様は,商品を収容しつつ店頭での陳列も可能な包装用箱として,本願意匠の出願前に数多く見られる態様であり,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであって,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)のカットライン部の態様の違いによって,本願意匠の開口部には上面左右に曲線と直線が出現することで,陳列時にも開口部の稜線が目立つ態様となっているのに対して,引用意匠の開口部は全て直線で構成することで,無機質な印象を与えるものであり,開口時の印象が大きく異なっている。また,本願意匠の場合は上面中央の折り曲げ部及び正面の左右両端に設けられた指差し込み部によって,上面側から(上方向から)も正面側から(下方向から)も開口可能であるのに対して,引用意匠の場合は上面側に切れ込みがなく,開口の際は正面に1つだけ設けられた指差し込み部からまずは左右方向に引っ張り,そこから上方向へ開口することとなり,本願意匠と引用意匠とでは開口方法も異なることから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
また,相違点(イ)のフラップ部の態様の違いについては,略半円形状で丸い印象の本願意匠の態様と,略等脚台形状で角張った印象の引用意匠のものでは,別異な印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
そして,この相違点(ア)及び相違点(イ)は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美観を起こさせるものと言うことができる。

3.両意匠の類否判断

上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は大きく,また一定程度ではあるものの相違点(イ)が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。


第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,審決のとおり結審する。
別掲
審決日 2014-12-03 
出願番号 意願2013-6914(D2013-6914) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
江塚 尚弘
登録日 2015-01-09 
登録番号 意匠登録第1517187号(D1517187) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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