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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1299408 |
審判番号 | 不服2014-19428 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-29 |
確定日 | 2015-03-24 |
意匠に係る物品 | 天井直付け灯 |
事件の表示 | 意願2013- 23145「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1.本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)10月3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「天井直付け灯」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」(以下,本願において意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁総合情報館が1994年12月7日に受け入れた,発行日1994年10月31日,国際事務局意匠公報,第4377ページ所載の蛍光ランプの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH07022825号)における,本願実線部分に相当する部分(以下,「引用相当部分」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3.当審の判断 1.本願意匠及び本願実線部分と引用意匠及び引用相当部分の対比 (1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「天井直付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品の原文は,「Lamp unit for interior lighting」(室内照明用のランプユニット)であるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,建物等の室内に設置されて室内を照らすための照明器具という点で共通する。 (2)本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分と引用相当部分(以下,「両意匠部分」という。)は,ともに室内を照らすための照明器具における発光側の部分,すなわち光源を実装するケーシングと光源を覆う透光カバーの発光側の部分に係るものであるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 なお,本願実線部分においては,端部カバー中央の端部近傍に表れる略円形状の破線部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分とされている。 (3)両意匠部分の形態 両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 なお,以下,対比のため,本願実線部分の図面における正面,平面等の向きを,引用相当部分にもあてはめることとする。 <共通点> 両意匠部分は,基本的構成態様として, (A)全体は,ケーシング,透光カバー及び左右一対の端部カバーで構成され,ケーシングは,正面視において左右方向に横長な略平板状のものであって,上下に細帯状の縁部(以下,「細帯状縁部」という。)を有するものであり,透光カバーは,側面視が略かまぼこ形状の曲面部分を有し,ケーシングの上下の細帯状縁部の間に前方に突出するように設けられるものであり,端部カバーは,ケーシングと透光カバーの形状に合わせた,側面視が略かまぼこ形状の曲面部分と略長方形の平坦面部分とを組み合わせた略倒凸字形状であって,透光カバーの左右両端に設けられるものである点, 具体的構成態様として, (B)細帯状縁部の上下方向の幅とケーシングの上下方向の幅の比率が,約1:7である点, において共通する。 <相違点> 両意匠部分は,具体的構成態様として, (ア)ケーシングと,透光カバー及び端部カバーとが接合する態様について,本願実線部分では,細帯状縁部の左右両端が透光カバーの左右両端よりも左右方向に延在して端部カバーと接合し,正面視において,細帯状縁部,透光カバー及び端部カバーの継ぎ目が略倒凸字状に看取されるのに対して,引用相当部分では,細帯状縁部の左右両端が透光カバーの左右両端と同一線上に位置して端部カバーと接合し,正面視において,細帯状縁部,透光カバー及び端部カバーの継ぎ目が鉛直線状に看取される点, (イ)本願実線部分の端部カバーは,正面視の左右両端部が平滑であるのに対して,引用相当部分の端部カバーは,正面視の左右両端部に段差部分を有している点, (ウ)本願実線部分の透光カバーの上下両縁と細帯状縁部の間には,略V字状の溝が形成されているのに対して,引用相当部分の透光カバーの上下両縁と細帯状縁部の間には,そのような溝がない点, (エ)透光カバー及び端部カバーの略かまぼこ形状の曲面部分が,本願実線部分では,曲率の大きい弓状部分と,当該弓状部分の上下両縁に滑らかに連続する曲率の小さい略直線状の立ち上がり部分とで構成されているのに対して,引用相当部分では,曲率の大きい弓状部分について看取されるものの,略直線状の立ち上がり部分を備えているかどうか不明な点, (オ)正面視における全体の縦横比が,本願実線部分では約1:12であるのに対して,引用相当部分では約1:6である点, において相違する。 2.両意匠部分の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠部分の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)両意匠の意匠に係る物品 両意匠は,意匠に係る物品について,建物等の室内に設置されて室内を照らすための照明器具という点で共通する。もっとも,引用意匠は,室内の天井に直に設置されるものかどうかが明らかではないが,室内を照らすための照明器具を天井に設けることは,ありふれた使用方法といえるから,引用意匠に係る物品が天井に直付けするものであるかどうか不明という点が,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,ごく微弱なものといえる。 (2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両意匠部分は,用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲において,共通しており,この共通点は,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。 (3)形態についての共通点の評価 天井直付け灯は,埋め込まれる等して天井に設けられるものであって,需要者の多くは,床面上から天井を見上げることにより,その形態を観察するものであり,需要者の関心は,天井直付け灯としての機能を発揮する発光部分,すなわち透光カバー周辺に向けられるといえるから,両意匠部分の類否判断を検討するにあたっては,本願の斜視図のように,下から見上げた状態での透光カバーやその周辺の態様を最も重視するべきである。 共通点(A)は,ケーシングが略平板状であり,透光カバーと端部カバーとが略かまぼこ形状の曲面部分を有し,透光カバーの上下に細帯状縁部が設けられているという態様についてのものであるが,当該態様は,この種物品の先行意匠にいくつか見られるものであって,両意匠部分のみに見られるものではないから,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,それほど大きなものではない。 また,共通点(B)についても,共通点(A)と同様に,この種物品の先行意匠にいくつか見られるものであるから,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点(A)及び(B)を総合しても,これらの共通点が両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (4)形態についての相違点の評価 これに対して,両意匠部分の具体的構成態様に係る相違点(ア)は,需要者の関心を集める透光カバーの端部付近についてのものであり,本願実線部分では,ケーシングの細帯状縁部が透光カバーの端部よりも延在して端部カバーと接合するから,当該細帯状縁部が全体のほぼ全長にわたって滑らかな印象をもって観察されるのに対して,引用相当部分では,ケーシングの細帯状縁部が透光カバーの端部と同一線上に位置して端部カバーと接合するから,当該細帯状縁部に鉛直線状の継ぎ目が観察されることになるので,相違点(ア)は類否判断に大きな影響を与えるといえる。 また,相違点(イ)は,端部カバーを斜視した際にきわだって観察されるものであるから,全体に対して占める割合は小さいものの,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。 そして,相違点(ウ)及び(エ)は,いずれも,下から見上げた状態では視認しづらいものではあるが,需要者の関心を集める透光カバーの全長にわたる範囲で観察されるものであるから,それぞれ,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。 一方,相違点(オ)は,本願実線部分の全体の長さが,引用相当部分のそれよりも約2倍長いというものであるが,室内を照らす照明器具において,全体の長さだけを異ならせたバリエーションとし,それ以外の形態を統一させた一連の商品としてデザインすることは,ありふれた手法といえるから,相違点(オ)が両意匠部分の類否判断に与える影響は,ごく微弱なものといえる。 加えて,相違点(ア)ないし(エ)があいまった視覚的効果を考慮すると,両意匠部分全体として観察した場合,相違点における両意匠部分の形態が看者に与える印象の違いが大きく,共通点のそれを凌駕している。 そうすると,本願実線部分が引用相当部分に類似するということはできない。 (5)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品について共通し,両意匠部分は,用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲がほぼ共通するものの,形態においては,共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響が大きなものではないのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいか又は一定程度あり,両意匠部分全体として観察した場合,相違点があいまって生じる視覚的効果は,共通点が生じさせている共通感を凌駕しているので,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。 第4.むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-03-09 |
出願番号 | 意願2013-23145(D2013-23145) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
綿貫 浩一 刈間 宏信 |
登録日 | 2015-04-03 |
登録番号 | 意匠登録第1523016号(D1523016) |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |