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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1299409 
審判番号 不服2014-21593
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-24 
確定日 2015-03-25 
意匠に係る物品 包装用容器本体 
事件の表示 意願2013- 15039「包装用容器本体」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)7月2日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器本体」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。A-A断面図を含めて部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠に類似するとして引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成19年(2007年)11月26日)に掲載された,意匠登録第1315955号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠の本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分(以下,「引用相当部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品について

本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器本体」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」であるが,引用意匠には包装用容器本体も含まれるため,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。

(2)本願実線部分と引用相当部分(以下,「両意匠部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲

まず,両意匠部分の用途及び機能について,いずれもシャンプー等を入れて販売等において包装用容器として使用されるものであるため,両意匠部分の用途及び機能は一致する。
次に,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲について,両意匠部分は包装用容器本体のうちの上方開口部を含むキャップ取付け部及び背面側を除いた半周側面部分であるため,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。

(3)両意匠部分の形態について
本願実線部分の向きに合わせて,両意匠部分の形態の認定を行う。

まず,両意匠部分の共通点として,正面視において左側の外形線を外側方向へ弧状に膨らませ(以下,「膨出部」という。),右側の外形線を高さ方向における略中央部で内側方向へ凹ませた(以下,「凹み部」という。)左右非対称の形態であり,平面視においては略横長楕円形状とした点,

が認められる。

他方,相違点として,

(ア)膨出部の膨らみ方について,本願実線部分の膨出部は,キャップ取付け部の左肩口から略紡錘形状に張り出しており,その張り出し幅はキャップ取付け部の横幅と同程度であるのに対して,引用相当部分の膨出部は,キャップ取付け部の左肩口から緩やかな略弧状に張り出しており,その張り出し幅はキャップ取付け部の横幅の約半分程度となっている点,

(イ)稜線の有無について,本願意匠の斜視図1及び斜視図2に見られるように,本願実線部分の膨出部には稜線が表れており,その稜線はキャップ取付け部の側方から膨出部の外側方向への張り出しに沿うように湾曲した態様となっており,膨出部が最も張り出した辺りが最も稜線が絞り込まれるような構成となっているのに対して,引用相当部分には本願意匠のような稜線が存在していない点,

(ウ)凹み部の態様について,本願実線部分の凹み部はキャップ取付け部の右肩口から略いかり肩状に張り出し,そこから略鉛直方向に外形線を形成しており,内側方向への凹み具合がわずかな程度であるのに対して,引用相当部分の凹み部はキャップ取付け部の右肩口から略なで肩状に張り出し,そこから略S字状に外形線を形成しており,右方向への張り出し幅の約半分程度の内側方向への凹み具合となっている点,

(エ)側面視形状について,本願実線部分はキャップ取付け部と接する部分に略円弧状の肩部が設けられており,これによりキャップ取付け部の横幅よりも幅広の側面視形状となっているのに対して,引用相当部分はキャップ取付け部と接する部分に肩部がなく,そのためキャップ取付け部と同程度の横幅の側面視形状となっている点,

が認められる。

2.両意匠部分の形態の評価

以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。
まず,共通点である全体の態様は,本願意匠の出願前に数多く見られる態様であり,この共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであって,これらの共通点は,全体としてみても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対して,相違点(ア)の膨出部の膨らみ方の違いは,包装用容器の使用時に最も注意を払う部分に関する違いの1つであって,引用意匠はキャップ部等の態様から使用時には容器自体を手に持って,それを傾けつつ押しながら中身を出すように使用するものであり,そのために容器自体の横幅はさほど幅広くしていないものであるのに対して,本願実線部分は意匠に係る物品の説明にもあるように,手動のポンプを取り付けて使用し,容器自体は持たずに置いた状態で使用するものであるから,持ちやすさよりも置いて使用する際の安定感が求められているものであり,そのために引用相当部分よりもかなり突出した膨出部となっているのであって,使用方法の違いから生じる膨出部の膨らみ方の違いは看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
次に,相違点(イ)の稜線の有無についても,包装用容器の使用時に注意を払う部分に関する違いであって,置いた状態で使用される本願意匠は,斜め上方から観察される機会も多く,その際に本願実線部分の広い範囲に表れる稜線は,いわゆるキャラクターラインとも呼べる特徴的なものであって,この稜線の有無による両意匠部分の違いは看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きいものである。
さらに,相違点(ウ)の凹み部の態様の違いは,本願実線部分よりも引用相当部分の方がめりはりのある外形線となっており,これも使用方法の違いから生じる凹み方の違いであるため看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きいものである。
そして,相違点(エ)の側面視形状の違いは,上記相違点(ア)ないし(ウ)と比べれば全体的にはわずかな違いではあるものの,やはり看者に別異な印象を与えるものであって,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。

3.類否判断

上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も一致している。しかし,両意匠部分の形態については,共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱であるのに対して,相違点(ア)ないし(ウ)によって,本願実線部分は重心が低くどっしりとした印象であるのに対して,引用相当部分は縦長でほっそりとした印象を醸し出しており,これらが類否判断に及ぼす影響は大きく,また相違点(エ)が他の相違点と相まって生じる視覚的効果も一定程度あるから,これら相違点の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから需要者に別異の美感を起こさせており,両意匠部分は類似するものではなく,したがって,両意匠は類似しないものと認められる。


第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。


よって,審決のとおり結審する。
別掲
審決日 2015-03-13 
出願番号 意願2013-15039(D2013-15039) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
江塚 尚弘
登録日 2015-04-24 
登録番号 意匠登録第1524886号(D1524886) 
代理人 新井 全 
代理人 岡▲崎▼ 信太郎 
代理人 野口 和孝 

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