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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D9
管理番号 1300600 
審判番号 不服2014-25003
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-05 
確定日 2015-05-12 
意匠に係る物品 家具脚用キャップ 
事件の表示 意願2013- 22492「家具脚用キャップ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成25年(2013年)9月27日の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「家具脚用キャップ」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって,「床面等との接地部が球面により形成されているために,床面に対して脚が傾斜しても,垂直脚と同様の接地状態が確保される。床面等との球形の接地部の表面がフェルトにより覆われる。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,本体の床接地部にフェルトを覆ったものです。
本願意匠が属する家具脚用キャップの分野において,本体の床接地部にフェルトを覆うことは,例えば,下記公知意匠1や公知意匠2に見受けられるように,本願の出願前よりありふれた造形手法です。
本願意匠は,本願出願前に公然知られたものと認められる公知意匠3の態様をほとんどそのまま用い,上記ありふれた造形手法に基づき,単に,本体の床接地部にフェルトを覆ったに過ぎないので,当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
なお,本願意匠の嵌合凹部は,平面視,星形多角形に表れていますが,そのような嵌合凹部は,例えば,下記公知意匠4に見受けられるように,当該分野においてありふれた態様であるから,本願意匠の嵌合凹部の態様においても,格別評価すべき創作を見出すことはできないと判断しています。

【公知意匠1】 (別紙第2参照)
特許庁発行の登録実用新案公報記載
実用新案登録第3046022号
【図1】【図2】で表された,アジャストボルト用のアダプタの意匠

【公知意匠2】 (別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1406444号の意匠
家具脚用キャップの意匠

【公知意匠3】 (別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1181399号の意匠
幼児いす用高さ調整具の意匠

【公知意匠4】 (別紙第5参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
平成 8年特許出願公開第131284号
【図7】に表れた,星形多角形状の嵌合凹部の態様 」

第3 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「家具脚用キャップ」であり,本願意匠の形態は,次のとおりである。
基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,上部の略円筒状部と,下部の球形を一部切り欠いた部分(以下「略変形球状部」という。)を一体としたものであって,略円筒状部の上面に設けられた開口部が略変形球状部の中心付近まで深く形成されたものである。
また,具体的態様として,以下の点が認められる。
(B)略円筒状部と略変形球状部の構成態様について
正面から見て,略円筒状部の横幅と略変形球状部の最大横幅の比は約2:3であり,略円筒状部の縦幅と略変形球状部の縦幅の比は約4:7である。
(C)フェルト部について
略変形球状部の下端から,その約2/5の高さを占める範囲に,暗調子のフェルトで覆われた部分(以下「フェルト部」という。)が形成されており,フェルト部とそれ以外の部分の外側の境界線は正面視水平状であり,面一致状に表されている。
(D)開口部の態様について
開口部は,平面視略8角星形状であって,縦幅全長の約3/4の深さに達しており,8つの凸稜線と8つの凹稜線,計16の稜線が開口部内部に表されている。

2 創作非容易性の判断
この種物品において,(A)の基本的構成態様を有するものは,公知意匠3に見られるように,本願の出願前に公然知られている。しかし,公知意匠3(本願意匠の向きに合わせて認定する。)の略円筒状部と略変形球状部の構成比率は,横幅比が約5:7,縦幅比が約2:5であって,本願意匠の構成比率とは異なっており,公知意匠3の開口部は円形状であって中央にボルトが配されていることから,本願意匠の開口部とは形状が大きく異なっている。そして,公知意匠3の球形を一部切り欠いた部分(略変形球状部)には,上下略中央に境界線が形成されているものの,境界線から下方がフェルトであるかは不明であり,かつ暗調子に表されてはいない。そうすると,公知意匠3のみに基づいて,本願意匠が容易に創作することができたとはいえない。
一方,家具脚用キャップの分野においては,床接地部に暗調子のフェルト部を形成すること自体は,公知意匠1及び公知意匠2に見られるように本願の出願前に既にありふれているということができる。しかしながら,本願意匠では,フェルト部の範囲を略変形球状部の下端から約2/5の高さにまで設けることにより,床面に対して脚が傾斜したときにもフェルト部が床面に接するように創作されているのであって,床接地部にフェルトを覆うことが公知意匠1及び公知意匠2に見受けられるように本願の出願前よりありふれているとしても,当業者が本願意匠のフェルト部を創作できたということはできない。
そして,公知意匠4は,アジャスタボルト用のアダプタの上面に形成された,ボルトの頭部を入れる開口部(アダプタ本体の凹所(3c))の形状が表された意匠であるところ,その開口部の形状は略12角星形状であって浅いものであり,本願意匠に見られる,略8角星形状で深いものではないので,当業者が,この公知意匠4に基づいて,又はこれを応用して,本願意匠の開口部を創作することが容易であるとはいい難い。
そうすると,原審の拒絶の理由で引用された,公知意匠1ないし公知意匠4に基づいて,当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-04-30 
出願番号 意願2013-22492(D2013-22492) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D9)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 香苗 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 正田 毅
小林 裕和
登録日 2015-05-29 
登録番号 意匠登録第1527513号(D1527513) 
代理人 川岡 秀男 
代理人 山川 雅男 

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