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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1306409 |
審判番号 | 不服2015-441 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-08 |
確定日 | 2015-09-09 |
意匠に係る物品 | 蓋付きカップ |
事件の表示 | 意願2013- 10026「蓋付きカップ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,パリ条約による優先権を主張した優先日が2012年11月7日(アメリカ合衆国)の平成25年(2013年)5月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「蓋付きカップ」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2011年8月8日 受入日 特許庁意匠課受入2011年8月12日 掲載者 株式会社ニトリホールディングス 掲載ページのアドレス http://www.nitori-net.jp/shop/goods/goodsimg.aspx?goods=7910307 に掲載された「飲料容器」の意匠の蓋部の当該部分意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23019290号) (以下,引用意匠において本願意匠の本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」という。)であって,その形態は,同頁の写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 (1)意匠に係る物品 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「蓋付きカップ」で,引用意匠は,「飲料容器」であるが,両意匠は,いずれもカップの飲み口の付いた蓋部分であり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 次に,本願実線部分と引用相当部分(以下,「両部分」という。)の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲については,本願実線部分は,カップの上方に取り付けられた,内側にねじ用の溝が切ってある,回転して開閉する蓋部であるのに対して,引用相当部分は,カップの上方に取り付けられた,左右に小さな水平片の摘み部を有する,蓋部分であるが,いずれも上方に飲み口部分を設けた蓋部分であるから,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (3)形態 両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 なお,両部分を対比するため,引用相当部分の正面側の向きを本願実線部分の背面図の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。 (3-1)共通点 (A)全体を,正面側寄りの左右中央部分を徐々に細く窄めて高く形成して飲料用の飲み口とした偏平で上面が斜状の略円錐台形状の蓋部としたもので,周側面に立ち上がり部(以下,この部分を「側壁部」という。)を設け,飲み口から背面側の側壁部に向かう上面を傾斜面とし,側壁部の正背面視を凸弧状として側壁部から略S字状に立ち上がって飲み口まで緩やかな曲面が連続している点, (B)飲み口を偏平な略楕円形状とし,頂部に小型円形孔部を3個並列させている点, において主に共通する。 (3-2)差異点 (ア)側面視における正面側の最大の高さと背面側の側壁部の高さの比率について,本願実線部分は,約1:0.37で背面側の側壁部が高いのに対して,引用相当部分は,約1:0.15で背面側の側壁部が低い点, (イ)上面の形状について,本願実線部分は,飲み口から背面側側壁部にかけての傾斜面を緩やかな凹弧状に形成しているのに対して,引用相当部分は,傾斜面が略平坦状である点, (ウ)カップとの嵌合部の態様について,本願実線部分は,側壁部の内側にねじ用の溝を切っているのに対して,引用相当部分は,カップの中に収まった蓋体の下端部が視認できないが,カップとの境界部の側壁の平面視左右に小型長方形状の水平片の摘み部を設け,摘み部によって引き上げて開くと推認される態様である点, (エ)正面側の側壁の態様について,本願実線部分は,下方寄りがやや外側に膨出しているのに対して,引用相当部分は,上端部から下端部まで弧状の曲面が連続した態様である点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)両意匠の意匠に係る物品は,共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も共通する。 (2)両部分の形態について 共通点全体として両部分の形態の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の形態の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の意匠の類否判断を決定付けるものである。 (2-1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)は,全体の基本構成に係るものであるが,全体を,正面側寄りの左右中央部分を徐々に細く窄めて高く形成して飲料用の飲み口とした偏平で上面が斜状の略円錐台形状の蓋部としたもので,周側面に側壁部を設け,飲み口から背面側の側壁部に向かう上面を傾斜面とし,側壁部の正背面視を凸弧状として側壁部から略S字状に立ち上がって飲み口まで緩やかな曲面が連続した態様は,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)についても,飲み口を偏平な略楕円形状とし,頂部に小型円形孔部を3個並列させている態様が共通しているが,それは細部に係る態様で目立つものとはいえない態様であるうえ,他の飲み口を設けた蓋付きのカップの意匠にも見られる,さほど特徴のない態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 (2-2)差異点 すなわち,まず,差異点(ア)の側面視における正面側の最大の高さと背面側の側壁部の高さの比率については,背面側の側壁部が高い本願実線部分の態様と,背面側の側壁部が低い引用相当部分の態様とでは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の上面の形状についても,差異点(ア)と同様に,飲み口から背面側側壁部にかけての傾斜面に緩やかな凹弧状を形成している本願実線部分と,傾斜面が略平坦状である引用相当部分とでは,両意匠を斜め上方から見た場合の印象が異なり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)のカップとの嵌合部の態様については,細部に係る部分的な差異ではあるが,内側にねじ用の溝を切っている本願実線部分と,小型長方形状の水平片の摘み部を設けた引用相当部分とでは,需要者が使用する場合に着目する部分であり,両部分を外側から見た蓋部の印象に影響を与えるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 そして,差異点(エ)の正面側の側壁の態様については,部分的な差異といえるものではあるが,下方寄りがやや外側に膨出している本願実線部分と,上端部から下端部まで弧状の曲面が連続した態様である引用相当部分とでは,側面視した場合の印象が異なるもので,その差異は無視することができず,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 (3)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両部分の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-08-24 |
出願番号 | 意願2013-10026(D2013-10026) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子、内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 宮田 莊平 |
登録日 | 2015-10-16 |
登録番号 | 意匠登録第1538061号(D1538061) |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 井野 砂里 |
代理人 | 工藤 由里子 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 松下 満 |