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審決分類 審判 査定不服  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 D3
管理番号 1306431 
審判番号 不服2015-10257
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-02 
確定日 2015-10-13 
意匠に係る物品 照明器具 
事件の表示 意願2014- 3039「照明器具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,平成26年(2014年)2月14日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面によれば,意匠に係る物品を「照明器具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由の要旨は,本願意匠が,その出願の日前の他の意匠登録出願であってその出願後に意匠公報に掲載された下記の意匠登録出願の願書の記載及び願書に添付した図面に表された意匠の一部と同一又は類似するものと認められるので,意匠法第3条の2の規定に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,平成26年(2014年)1月9日に意匠登録出願され,同年10月20日に日本国特許庁発行の意匠公報に記載された意匠登録第1509576号(意匠に係る物品:天井直付け灯)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であり,引用意匠及び引用意匠の本願部分に対応する部分(以下,「引用部分」という。)の形態は,同公報に掲載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1 意匠の認定
(1)本願意匠
本願意匠の認定にあたっては,正面図に表れているものを「底面」,平面図に表れているものを「正面」,右側面図に表れているものを「右側面」として以下表記する。

ア 本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「照明器具」である。

イ 本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願部分は,照明灯を天井に固定するための基台部(以下,「基台部」という。)の底面右端に揃えて配設された照明カバーの,右端から約1/4の部分(以下,「照明部分」という。)と,照明部分の長手方向の幅と同じ長さの,照明部分から基台部にかけて延長した基台部底面,底面から正面側と背面側に傾斜した面(以下,「基台部分傾斜面」という。),及び基台部右側面の一部分(以下,「基台部分」という。)である。

ウ 本願部分の形態の基本的構成態様
断面視略逆薄蒲鉾状とした照明部分と,断面視略逆薄等脚台形状の底面,正面側及び背面側の傾斜面,並びに基台部右側面の一部である基台部分から構成されるものである。

エ 本願部分の形態の具体的態様
(ア)照明部分は,断面視略逆等脚台形状とした基台部分の底面の短手方向の幅より僅かに狭いものとし,照明部分の正面側及び背面側に基台部底面が僅かに見えているものであり,
(イ)照明部分の高さ(断面視逆蒲鉾形状の円弧頂点から底辺までの長さ)を,照明部分の短手方向の幅(断面視逆蒲鉾形状の底辺の長さ)の約3/11とし,照明部分の正面側及び背面側垂直面の高さ(断面視逆蒲鉾形状の左右辺の長さ)を,照明部分の高さの約1/3として,
(ウ)照明部分の正面側及び背面側垂直面(逆蒲鉾形状の垂直面部分)の略全面を,断面視略凹状とし,
(エ)照明部分の全面(照明部分が基台部分に接している面を除く)が透光性を有する素材で構成されているものである。

(2)引用意匠
ア 引用意匠の意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は,「天井直付け灯」である。

イ 引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用部分は,基台部の底面右端に揃えて配設された照明カバーの,右端から約1/4の照明部分と,照明部分の長手方向の幅と同じ長さの,照明部分から基台部にかけて延長した基台部底面,基台部分傾斜面,及び基台部右側面の一部分である。

ウ 引用部分の形態の基本的構成態様
断面視略逆薄蒲鉾状とした照明部分と,断面視略逆薄等脚台形状の底面,正面側及び背面側の傾斜面,並びに基台部右側面の一部である基台部分から構成されるものである。

エ 引用部分の形態の具体的態様
(ア)照明部分は,断面視略逆等脚台形状とした基台部分の底面の短手方向の幅より僅かに広いものとし,基台部分底面は照明部分に隠れて見えないものであり,
(イ)照明部分の高さ(断面視逆蒲鉾形状の円弧頂点から底辺までの長さ)を,照明部分の短手方向の幅(断面視逆蒲鉾形状の底辺の長さ)の約2/7とし,照明部分の正面側及び背面側垂直面の高さ(断面視逆蒲鉾形状の左右辺の長さ)を,照明部分の高さの約1/2として,
(ウ)照明部分の正面側及び背面側垂直面(逆蒲鉾形状の垂直面部分)の略全面を,断面視略凹状とし,
(エ)照明部分の右端部に設けられた右側面カバー部を除いた全面が,透光性を有する素材で構成されているものである。

2 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比
(1)両意匠の共通点
上記両意匠の認定に基づき,両意匠の共通点を以下に列挙する。
(A)本願意匠の意匠に係る物品は「照明器具」であり,引用意匠の意匠に 係る物品は「天井直付け灯」であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(B)両意匠部分は,共に基台部の底面右端に揃えて配設された照明カバーの,右端から約1/4の照明部分と,照明部分の長手方向の幅と同じ長さの,照明部分から基台部にかけて延長した基台部の一部分であるから,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通する。
(C)両意匠部分は,断面視略逆薄蒲鉾状とした照明部分と,断面視略逆薄等脚台形状の底面,並びに正面側及び背面側の傾斜面の一部である基台部分から構成される形態の基本的構成態様が共通する。
(D)両意匠部分は,照明部分の正面側及び背面側側面(逆蒲鉾形状の垂直面部分)の略全面を,断面視略凹状としている点が共通する。

(2)両意匠の相違点
次に,両意匠の相違点を以下に列挙する。
(a)本願部分は,照明部分を略逆等脚台形状とした基台部分の底面の短手方向の幅より僅かに狭いものとし,照明部分の正面側及び背面側に基台部底面が僅かに見えているものとしているのに対し,引用部分は,照明部分を略逆等脚台形状とした基台部分の底面の短手方向の幅より僅かに広いものとし,基台部分底面は照明部分に隠れて見えないものとしている点が相違する。
(b)本願部分は,照明部分の高さ(断面視逆蒲鉾形状の円弧頂点から底辺までの長さ)を,照明部分の短手方向の幅(断面視逆蒲鉾形状の底辺の長さ)の約3/11とし,照明部分の正面側及び背面側垂直面の高さ(断面視逆蒲鉾形状の左右辺の長さ)を,照明部分の高さの約1/3としているのに対し,引用部分は,照明部分の高さ(断面視逆蒲鉾形状の円弧頂点から底辺までの長さ)を,照明部分の短手方向の幅(断面視逆蒲鉾形状の底辺の長さ)の約2/7とし,照明部分の正面側及び背面側垂直面の高さ(断面視逆蒲鉾形状の左右辺の長さ)を,照明部分の高さの約1/2としている点が相違する。
(c)本願部分は,照明部分の全面(照明部分が基台部分に接している面を除く)が透光性を有する素材で構成されているのに対し,引用部分は,照明部分の右端部に設けられた右側面カバー部を除いた全面(照明部分が基台部分に接している面を除く)が,透光性を有する素材で構成されている点が相違する。

3 類否判断
両意匠の意匠に係る物品,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通しているから,以下,両意匠部分の形態の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価し,判断する。

(1)共通点の評価
まず,共通点(C)について,断面視略逆薄蒲鉾状とした照明部分と,断面視略逆薄等脚台形状の正面側及び背面側の傾斜面の一部である基台部分から構成されるという基本的構成態様から成る照明器具は,請求人主張のとおり,引用意匠の出願前にすでに多く存在しており,この形態が引用部分の特徴的な形態であるとはいえないから,この共通点(C)が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さいものである。
そして,共通点(D)について,照明部分の正面側及び背面側側面(逆蒲鉾形状の垂直面部分)の略全面を断面視略凹状としている形態は,引用意匠の出願前には見られない特徴的な形態ではあるが,凹形状の窪みの程度が大きくなく,照明器具を点灯したときには照明カバー内部からの光によって凹形状が見にくくなることから,この共通点(D)も,両意匠部分の類否判断には大きな影響を与えないものである。

(2)相違点の評価
相違点(b)の,照明部分の高さ,短手方向の幅,並びに照明部分の正面側及び背面側垂直面の高さの比の相違については,両意匠部分全体を見たときには,断面視略逆蒲鉾形状という共通性の中に埋没する程度の僅かな相違であるから,看者に与える視覚的印象は弱いため,この相違点(b)が両意匠部分の類否判断に与える影響も小さいものである。
そして,相違点(c)の,照明部分右側面が透光性を有する素材で構成されているか否かの相違については,本願部分のように照明部分右側面を含めた照明部分全面が透光性を有する素材で構成される形態は,本願出願前から普通に見られる形態であって,本願意匠部分のみがもつ特徴的な形態ではないから,この相違点(c)が両意匠部分の類否判断に与える影響も小さいものである。

しかし,相違点(a)の,本願部分が,照明部分を基台部分の底面の短手方向の幅より狭いものとしているのに対し,引用部分は,照明部分を基台部分の底面の短手方向の幅より広いものとしている点は,両意匠部分全体を観察したときには,本願部分は,照明部分の正面側及び背面側の外側に,基台部底面の一部が見えていることにより,スリムな照明部分であるとの印象を看者に与えているのに対して,引用部分は,基台部底面が隠れていることにより,幅広な照明部分であるとの印象を看者に与えていること,及び本願部分は,点灯時に照明部分の正面側及び背面側側面(逆蒲鉾形状の垂直面部分とその上端部分)から照射される光が,基台部分傾斜面にあたりにくい構造であるのに対して,引用部分は照明部分の正面側及び背面側側面から照射される光が,基台部分傾斜面にあたりやすい構造であるという相違であり,使用者がこの形態の相違による照明効果の相違を強く認識できることから,この相違点(a)が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きいといえる。

(3)小括
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通しており,さらに,形態の基本的構成態様が共通しているものの,その形態の共通点が両意匠部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対して,形態の相違点(a)が両意匠部分の類否判断に与える影響は大きく,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲,並びに形態の共通点及び相違点を総合的に評価すると,形態の各相違点,特に相違点(a)が生じさせる視覚的効果が,共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせていることから,本願部分は引用部分と類似せず,両意匠は類似しない。


第4 むすび

以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条の2の規定により意匠登録を受けることができない意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

したがって,本願は登録すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-09-29 
出願番号 意願2014-3039(D2014-3039) 
審決分類 D 1 8・ 16- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 久保田 大輔
江塚 尚弘
登録日 2015-10-23 
登録番号 意匠登録第1538705号(D1538705) 
代理人 松井 重明 
代理人 村上 加奈子 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 村上 加奈子 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 松井 重明 

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