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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1311908 |
審判番号 | 不服2015-17270 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-18 |
確定日 | 2016-03-15 |
意匠に係る物品 | 庭園灯 |
事件の表示 | 意願2014- 24297「庭園灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)10月30日の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「庭園灯」であって,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照) すなわち,本願意匠は,(イ)全体形状は,横幅と縦の長さの比率が約1:2である略円柱形状の本体ケース部の底部に本体ケース部横幅の約2分の1の幅で,底面視十字状のスパイク部を設けてなるものであって,その本体ケース部とスパイク部の縦の長さ(高さ)比率は,約4:5であり,(ロ)本体ケース部は,上部に円板状の遮光カバー部を設け,その直下で本体ケース部の約5分の1を透光カバーで覆われた発光部を内蔵する照光部とし,(ハ)底部は,側方に略半円板状で縁寄りに小円を配した突出小片部を形成しており,(ニ)底部中央に設けられたスパイク部は,底面視,十字状でその上部約4分の1は十字柱状でその余4分3は杭状に尖った先端部に向かって徐々に斜状になっているものである。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,「本願意匠は,意匠に係る物品を「庭園灯」とするもので,その形態は,図面に表されているとおり,本体を略円柱形状体とし,その下方に水平断面視十字状のスパイク部を設けると共に,本体につき,ケース体の上部に該ケース体と略同径の透光カバー部を,上端に前記ケース体と略同径の略薄円盤状の遮光カバー部を設け,かつ,ケース体の下方に鍔部を設けたものです。 ここで,意匠の創作の観点から本願意匠を評価すると,この種物品においては,ケース体及びスパイク部に,種々の灯具頭部を略面一に組み合わせた態様は,例えば下記公知意匠1乃至3に見受けられるように,極めてありふれたものです。 そうすると本願意匠は,本願出願前から公然知られたと認められる,下記公知意匠4のケース体及びスパイク部の態様をほとんどそのまま用い,前記ありふれた態様に基づき,単に,本願出願前より公然知られたと認められる,下記公知意匠5の灯具頭部を略面一に組み合わせたにすぎず,当業者であれば容易に創作できたものと認められます。 なお,本願意匠は透光カバー部の径に対する高さ幅の長さにつき,公知意匠5と比較し僅かに短く成形されていますが,透光カバー部の径に対する高さ幅の比率を変更することがこの種物品において極めてありふれた造形手法であることを考慮すると,この程度の変化では特段の創作があるものとは認められません。」 としたものである。 公知意匠1(別紙第2参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2010年10月25日 受入日 特許庁意匠課受入2010年10月29日 掲載者 新日軽株式会社 表題 LED照明|照明|門まわり|ガーデンエクステリア|商品情報|新日軽 掲載ページのアドレス http://www.shinnikkei.co.jp/products/exterior/details/mo_shoumei_led.html に掲載された「庭園灯」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ22046989号) 公知意匠2(別紙第3参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年10月19日に受け入れた MRマンションリニューアル×LED 第5頁所載 「庭園灯」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC24020135号) 公知意匠3(別紙第4参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2012年4月24日 受入日 特許庁意匠課受入2012年4月27日 掲載者 株式会社ユニソン 表題 商品検索ページ||UNISON 掲載ページのアドレス http://www.unison-net.com/prdct/rJLY0479.html に掲載された「庭園灯」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ24000866号) 公知意匠4(別紙第5参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2011年8月29日 受入日 特許庁意匠課受入2011年9月2日 掲載者 オーデリック株式会社 表題 オーデリック株式会社|OG254228 掲載ページのアドレス http://www.odelic.co.jp/CGI/product/search.cgi?detail=OG254228_0_0 に掲載された「庭園灯」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ23024673号) 公知意匠5(別紙第6参照) 特許庁意匠課が2000年7月27日に受け入れた A施設・店舗照明カタログ(電波新聞H12.2.29 P13) 第977頁所載 「庭園灯頭部」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HN12007989号) 第3 請求人の主張の要点 これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。 1 本願意匠が登録されるべき理由 (1)本願意匠は,透光カバー,ケースおよびスパイクを有する。透光カバーおよびケースとスパイクとを個別に単独で観察した場合,各々は,公知意匠と共通する美観の域にとどまるものと解釈し得る。しかしながら,本願意匠においては,透光カバーとケースとを加えた高さ(上下方向寸法)よりもスパイクが顕著に高い(長い)態様とされており,透光カバーとケースとを加えた高さに対するスパイクの長さの比は,1.3を超えるものである。これにより,本願意匠は,上述した美観に加えて,地面へのより安定的な固定を髣髴とさせる,強固な印象を醸し出す。このような透光カバーおよびケースとスパイクとの構成比率は,物品全体の美観を大きく決定づける要素である。しかも,本物品の流通過程において,透光カバーおよびケースとスパイクとの構成比率は,需要者の注意をことさらに惹くものである。そうすると,透光カバーおよびケースとスパイクとの構成比率こそが本願意匠の要部である。 (2)この点,公知意匠においては,透光カバーとケースとを加えた高さよりもスパイクが顕著に高いという態様は,なんら具現化されていない。公知意匠2?4においては,上述した比が0.45?0.63程度であり,透光カバーおよびケースとスパイクとを偏心させた本願意匠とは基本態様が全く異なる意匠において,上述した比がかろうじて1に届くかどうかという態様が存在するに過ぎない。このため,公知意匠は,いずれも安定的な印象が弱いものであり,醸し出す美観は,強固な印象には程遠いものである。また,公知意匠に見られる一般的な構成においては,いずれも透光カバーおよびケースの高さの方がスパイクの高さよりも高い構成比率となっていることから,スパイクを用いた固定機能としては同構成比率で十分であると言える。つまり,本願意匠は,当業者が考慮できる比率の範囲を十分に超えていると言える。したがって,公知意匠を組み合わせたとしても,上述した要部を有する本願意匠は容易に創作できるものではない。 第4 当審の判断 請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1 引用意匠 (1)公知意匠1 意匠に係る物品は,「庭園灯」であり,全体形状は,略円柱形状の本体ケース部底面に一回り大きな略円板状底板部を設け一方を短帯状に延長し,外方直近に設けた本体ケース部横幅の約3分の2幅のスパイク部に連結してなるものであり,本体ケース部の横幅と縦の長さ比率は約1:2で,本体ケース部とスパイク部の縦の長さ(高さ)比率は,約4.5:5であり,上端面に照光部を配し,スパイク部は全体が杭状に尖った先端部に向かって徐々に斜状になっているものである。 (2)公知意匠2 意匠に係る物品は,「庭園灯」であり,全体形状は,本体ケース部の横幅と縦の長さ比率が約3:8の略円柱形状の本体ケース部の底部に本体ケース部横幅の約4分の1幅のくさび状スパイク部を設けてなるものであって,その本体ケース部とスパイク部の縦の長さ(高さ)比率は,約5:3であり,本体ケース部は,上から約2分の1を透光カバーで覆われた照光部としたものであり,スパイク部は正面視,一方が垂直で他方が尖った先端部に向かって徐々に斜状になっているものである。 (3)公知意匠3 意匠に係る物品は,「庭園灯」であり,全体形状は,本体ケース部の横幅と縦の長さ比率が約1:7の略円柱形状の本体ケース部の底部に本体ケース部横幅の約2分の1幅のくさび状スパイク部を設けてなるものであって,その本体ケース部とスパイク部の縦の長さ比率は,約4.5:2であり,本体ケース部は,上約4分の1を透光カバーで覆われた照光部としたものであり,スパイク部は正面視,一方が垂直で他方が尖った先端部に向かって徐々に斜状になっているものである。 (4)公知意匠4 意匠に係る物品は,「庭園灯」であり,全体形状は,本体ケース部の横幅と縦の長さ比率が約1:3の略円柱形状の本体ケース部の底部に本体ケース部横幅の約3分の1幅のくさび状スパイク部を設けてなるものであって,その本体ケース部とスパイク部の縦の長さ(高さ)比率は,約5:3であり,本体ケース部は,上から約3分の1を透明カバーで覆われた照光部とし,本体ケース部下端底部には一方に突出小片部が配され,スパイク部は全体が杭状に尖った先端部に向かって徐々に斜状になっているものである。 (5)公知意匠5 意匠に係る物品は,「庭園灯」であり,その「頭部の意匠」であって,頭部の形状は,略円柱形状であって,上部に厚みのある円板状の遮光部を設け,その直下に横幅に対し縦の長さがやや短めの長さの透光カバーで覆われた照光部を配したものであって,下方の態様は不明である。 2 本願意匠の創作容易性 本願意匠は,意匠に係る物品が「庭園灯」であり,その形態は,前記第1のとおりのものである。 本願意匠の(イ)の本体ケース部横幅と縦の長さの比率が約1:2である略円柱形状は公知意匠1に見受けられ,本体ケース部の底部に本体ケース部横幅の2分の1の幅でのスパイク部を設けてなる態様も公知意匠3に見受けられるので,本願意匠のみに見られる独自の特徴ある態様とはいえず,また,その本体ケース部とスパイク部の縦の長さ(高さ)比率が約4:5である態様は,本体ケース部に比べスパイク部が半ばよりやや長めの態様であるといえ,そのような本体ケース部よりスパイク部が長めの態様は,公知意匠1に見受けられ,公知意匠1ないし公知意匠4に見られるように本体ケース部とスパイク部の縦の長さ比率には様々のものがあるところ,この縦の長さ比率とすることに格別の創作を見いだすことはできない。 よって,(イ)の態様は,容易に想到することができたものといえる。 (ロ)の本体ケース部の上部に円板状の遮光カバー部を設けその直下で本体ケース部の約5分の1を透光カバーで覆われた発光部を内蔵する照光部とした態様のうち,上部に円板状の遮光カバー部を設けた態様は,公知意匠5にも見られるように,この種庭園灯の分野でよく見られる態様であり,また,略円柱形状の本体ケース部の約5分の1を照光部とする態様も,この種庭園灯の分野において,ごく普通に見られる態様であるから,この点についてもまた,容易に想到することができたものといえる。 しかしながら,(ハ)の底部が側方に略半円板状で縁寄りに小円を配した突出小片部を形成している態様は,公知意匠4が突出小片部を有しているものの,その具体的態様は明らかでなく,それに基づいて容易に想到することができたとはいえず,他の突出小片部を有さない公知意匠に基づいて,ありふれた改変を施して容易に想到することができた態様ともいえない。 また,(ニ)の底部中央に設けられたスパイク部が,底面視,十字状でその上部約4分の1は十字柱状でその余4分3は杭状に尖った先端部に向かって徐々に斜状になっている態様は,この種物品分野において見受けらないものであって,本願意匠に独自の特徴ある態様であるといえ,公知意匠1や公知意匠4に見られるような杭状のスパイク部が本願意匠出願前にあるとしても,それらをもとにして,容易に想到することができたものということはできない。 よって,本願意匠の上記(イ)及び(ロ)の態様については,当業者が公然知られた意匠に基づいて容易に想到することができたものであるとしても,(ハ)及び(ニ)の具体的態様については,独自の態様を創出したものというべきであるから,(イ),(ロ),(ハ)及び(ニ)からなる本願意匠は,意匠全体としては,公知意匠1ないし公知意匠5に基づいて容易に想到することができたものとはいえない。 したがって,本願意匠は,当業者であれば,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-02-29 |
出願番号 | 意願2014-24297(D2014-24297) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 翔平、越河 香苗 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 清野 貴雄 |
登録日 | 2016-03-25 |
登録番号 | 意匠登録第1548395号(D1548395) |
代理人 | 臼井 尚 |
代理人 | 土居 史明 |
代理人 | 鈴木 伸太郎 |
代理人 | 鈴木 泰光 |
代理人 | 吉田 稔 |
代理人 | 田中 達也 |
代理人 | 小淵 景太 |