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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1311909 |
審判番号 | 不服2015-18590 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-14 |
確定日 | 2016-03-22 |
意匠に係る物品 | 壁直付灯 |
事件の表示 | 意願2014- 24308「壁直付灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成26年(2014年)10月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば意匠に係る物品を「壁直付灯」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,願書の記載によれば,「本物品は,発光ダイオードを光源とするLED発光部を有し,壁面などに取り付けられる照明器具である。内部構造を省略したA-A参考断面図に示すように,LED発光部からの光が内透光カバーおよび透光カバーを透して出射される。ケースは,使用時において壁面や天井面に取り付けられる。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2011年10月24日 受入日 特許庁意匠課受入2011年10月28日 掲載者 ローム株式会社 表題 その他 | 製品情報 | アグレッド LED 照明 AGLED 掲載ページのアドレス http://www.agled.co.jp /product/others/ に掲載された「壁じか付け灯」の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。) (特許庁意匠課公知資料番号第HJ23040256号) 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,壁面などに取り付けられる照明器具であり,引用意匠の意匠に係る物品も「壁じか付け灯」であるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2 両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。すなわち,引用意匠の向きが,本願の願書に添付された図面中の「使用状態を示す参考斜視図」に表された本願意匠の向きに相当すると認定する。 (1)共通点 両意匠には,以下の共通点が認められる。 (A)全体の構成について 全体が,略短円柱状であって,前方の透光部と後方の基台部を一体にして形成したものである。 (B)透光部と基台部の接合態様について 透光部と基台部は,略面一致状に接合されている。 (2)差異点 一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。 (ア)透光部と基台部の構成について 右側面から見て,本願意匠の透光部と基台部の横幅の比は約5:6であるが,引用意匠のその比は約7:5である。 (イ)背面部の態様について 本願意匠の背面部には後方突出部が設けられており,右側面から見て,横幅が略短円柱状部の横幅の約1/13であり,背面から見ると,基台部背面よりも一回り小さい円形状に表されており,その中央に小円形部が配されて,上下には3重小円部が配されて,左右には略2重小円部が配されている。 これに対して,引用意匠の背面部の態様は不明である。 (ウ)全体の比率について 本願意匠の略短円柱状部の直径と奥行きの比は約3:2であるのに対して,引用意匠のその比は約8:3である。 (エ)透光部正面の形状について 本願意匠の透光部正面は平坦状であるが,引用意匠の透光部正面は,中央部が輝いているので,平坦状であるか否か不明である。 なお,「壁直付灯」の物品分野の意匠においては,下記のとおり,透光部正面に形成されている凹部が明瞭に現れていない事例がある。 (事例) Amazon.co.jpでの取り扱い開始日が「2011/10/18」である「アグレッド LEDポーチライト AA-60065 904016」の意匠(別紙第3参照)が,アグレッド株式会社のウェブサイトで紹介されており(別紙第4参照),同サイトでダウンロード可能な「スペック画像(JPEG)」(別紙第5参照)と「図面(PDF)」(別紙第6参照)によれば,後者の図面には透光部正面に凹部が表されているが,前者の写真にはその凹部が明瞭に現れていない。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 2 壁面に設置される照明器具の意匠の類否判断 主として壁面に設置される照明器具の通常の使用状態において,看者が照明器具を観察するに当たっては,その照明器具を主として正面方向又は正面斜め方向から眺めることとなり,発光部の態様,基台部の態様,両者の結合の態様について特に注意を払うことになる。したがって,壁面に設置される照明器具,すなわち「壁直付灯」の物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 3 形態の共通点の評価 全体が略短円柱状であって前方の透光部と後方の基台部を一体にして形成した構成である共通点(A)については,「壁直付灯」の物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられることから,看者の注意を特段惹くものとはいえないので,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また,透光部と基台部の境界が略面一致状に接合された意匠が,「壁直付灯」の物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,意匠登録第1426498号の意匠(参考意匠1。別紙第7参照。)及び上記事例で示した「AA-60065」の意匠(別紙第6参照)。)ことを踏まえると,両意匠の透光部と基台部の境界が略面一致状に接合されている共通点(B)に対して看者が特に注目するとはいえないので,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さい。 4 形態の差異点の評価 一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(ア)は,透光部と基台部の横幅の比が約5:6であるか約7:5であるかの差異であり,前者は基台部の比率が大きく,後者は透光部の比率が大きいので,看者は一見してその差異を把握できるというべきであり,壁面に設置される照明器具を観察する際に発光部と基台部の構成態様について看者が特に注意を払うことを踏まえると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,差異点(ウ)は,略短円柱状部の直径と奥行きの比が約3:2(本願意匠)であるか約8:3(引用意匠)であるかの差異であり,前者の直径/奥行きが約1.5,後者のそれが約2.7であって,看者の視覚的印象に変化を与えているというべきであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。 そして,差異点(エ)は,壁面に設置される照明器具において目立つ部位である透光部正面の形状についての差異であって,透光部正面が平坦状であるか否かの差異は看者に与える視覚的印象を異にするというべきであり,特に非発光時にその差異が顕現するというべきであるから,差異点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 他方,差異点(イ)は,後方突出部の有無に係る背面部の態様に関する差異であって,本願意匠に見られる後方突出部は右側面視横幅の略短円柱状部横幅に対する比率が小さくて目立たないこと,及び看者が壁面に設置された両意匠を観察する際には後方突出部の背面形状は見えないことから,本願意匠の後方突出部は,背面部の態様が不明である引用意匠に対して特に看者の注意を惹くということはできないので,差異点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,(ア),(ウ)及び(エ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(イ)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,両意匠の共通点を凌ぐものであるということができる。 5 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して,差異点を総合すると両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-03-07 |
出願番号 | 意願2014-24308(D2014-24308) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
正田 毅 小林 裕和 |
登録日 | 2016-04-01 |
登録番号 | 意匠登録第1548727号(D1548727) |
代理人 | 吉田 稔 |
代理人 | 土居 史明 |
代理人 | 田中 達也 |
代理人 | 小淵 景太 |
代理人 | 臼井 尚 |
代理人 | 鈴木 伸太郎 |
代理人 | 鈴木 泰光 |