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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2
管理番号 1313088 
審判番号 不服2015-15828
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-27 
確定日 2016-03-08 
意匠に係る物品 フラッシプレート 
事件の表示 意願2013-28624「フラッシプレート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)12月6日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「フラッシプレート」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における,平成27年2月3日付けの拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁普及支援課が2012年12月18日に受け入れた,大韓民国意匠商標公報(2012年11月6日発行)12-25号に記載された「照明機器制御用スイッチ」(登録番号30-0666766)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH24438632号。以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)に表されているフラッシュプレートにおいて,本願実線部分に相当する外周縁部分を含む前面部分の中央の凹んだ部分を除いた角丸長方形枠状の面の部分であって,その形態は,同公報に記載の図面に表されたとおりのものである(以下,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「フラッシプレート」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「照明機器制御用スイッチ」であるところ,この「照明機器制御用スイッチ」の引用相当部分は,スイッチ操作部を覆う化粧板,すなわちフラッシプレート(以下,単に「プレート」という。)の部分であるから,スイッチ操作部の有無はあるものの,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠部分の用途,機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,いずれも,スイッチ等の操作部を覆う化粧板の一部であることから,両意匠部分の用途及び機能が一致する。
また,両意匠部分は,屋内の壁面から僅かに突出して設けられたプレートの周面が,上下左右に湾曲して,プレートの正面面積が最も広がる位置(以下,この位置を「プレート最大幅位置」という。)から正面側を覆うものであるから,両意匠部分の位置も一致する。
さらに,両意匠部分は,スイッチ等が表れる部分を除く,プレートの正面側の全体を占めるものであるから,部分意匠としての大きさ及び範囲も一致する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,以下のとおり,主な共通点及び相違点がある。

<共通点>
基本的態様として,両意匠部分は以下の点で共通する。
(A)両意匠部分の全体は,正面視隅丸の縦長略長方形とし,その中央のスイッチ等が表れる縦長略長方形部分を除く,枠状のプレート正面部分であって,プレート正面部分中央の大部分をわずかに前方に突出させた平坦面とし,平坦面から外周にかけて,緩やかな傾斜曲面を設けた点。

具体的態様として,
(B)プレート正面部分の幅は,左右幅と上下幅がそれぞれ同一で,上下幅は,左右幅よりも大きく,上幅-中央部分の縦幅-下幅が,小-大-小の構成となっている点。

(C)プレート最大幅位置からの突出高さが,プレートの上下長さの約2%である点。

<相違点>
具体的態様として,両意匠部分は以下の点で相違する。
(ア)プレート正面部分の外周縁部が,本願意匠部分では,側面視で極小さなアールに形成され,このアールが最も外側に突出している位置,すなわちプレート最大幅位置に線模様が1条,周回して描かれているのに対して,引用相当部分では,極細く平たんな周帯が設けられて,周帯の短手方向の両端に形状線が周回して表れている点。
ここで,本願実線部分の「線模様」の認定について,補足して説明すると,本願の【C-C部分拡大図】には,プレート最大幅位置に,鉛直な実線が記載されているところ,プレート最大幅位置の上端表面形状は,滑らかな曲線として記載されており,エッジや溝等の形状を認めることはできない。また,プレートの断面を示す【A-A断面図】を見ると,プレートは一体の部材として表されており,プレート最大幅位置に,部材の接続面があるとも認められない。これらの記載からみて,プレート最大幅位置の実線は,線模様であると認定することが相当である。

(イ)傾斜曲面の占める長さが,本願意匠部分は,プレートの上下長さの約28%,左右長さの約30%の範囲であるのに対して,引用相当部分は,上下長さの約17%,左右長さの約15%である点。

(ウ)正面視での,プレート正面部分の左幅,中央部分の横幅,及びプレート正面部分の右幅の比率,並びにプレート正面部分の上幅,中央部分の縦幅,プレート正面部分の下幅の比率が,それぞれ,本願実線部分では,約1:3:1,及び約1:3:1であるのに対して,引用相当部分では,約1:5:1,及び約1:4:1である点。

(エ)中央部分の四隅が,本願実線部分は,極小さな隅丸であるのに対して,引用相当部分は,大きな隅丸である点。

2.両意匠部分の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)意匠に係る物品,両意匠部分の用途,機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途,機能,並びに位置,大きさ及び範囲がいずれも一致する。
とりわけ,両意匠部分の位置,すなわちプレート最大幅位置に両意匠部分が設けられていることは,この種物品において,あまり見られるものではないから,両意匠部分の位置が一致することによる,両意匠部分の類否判断に与える影響は,一定程度あるものといえる。

(2)共通点の評価
基本的態様に係る共通点(A)及び具体的態様に係る共通点(B)は,いずれも「フラッシプレート」の物品分野においてありふれた形態であるから,これらの共通点が両意匠部分の類否判断に与える影響は,微弱なものといえる。
他方,具体的態様に係る共通点(C),すなわちプレート最大幅位置からの突出高さが,プレートの上下長さの約2%であることは,両意匠部分が非常に薄いものであることを印象づけることになるから,両意匠部分の類否判断に与える影響は,一定程度あるものといえる。

(3)相違点の評価
具体的態様に係る相違点(ア)は,プレート正面部分の外周縁部に係るものである。この種物品は,目線より下方に設けられることが一般的であり,需要者は,斜め上方からプレートを視認することになるから,相違点(ア)に係るプレートの外周縁部は,比較的目に付きやすい部位といえる。
とりわけ,本願意匠部分は,プレート正面部分の外周縁部に周回して線模様が1条描かれているのに対して,引用相当部分は,そのような線模様がなく,単に,形状線が周回して表れているにすぎないことは,漫然とプレートを一べつしただけでも明確に認識できるものであるし,このような線模様をプレート正面部分の外周縁部に周回して描いた形態は,本願意匠部分だけに見られるものであるから,この線模様の有無が両意匠部分の類否判断に与える影響は,非常に大きいというべきである。
また,本願意匠部分は,外周縁に極小さなアールを設けているのに対して,引用相当部分は,そのようなアールを設けておらず,極細く平たんな周帯が設けられていることも,斜め上方からプレートを視認する際に容易に認識できるものであるから,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるといえる。
これに対して,相違点(イ),すなわち傾斜曲面の占める長さの比率の相違や,相違点(ウ),すなわち正面視での,プレート正面部分の枠と中央部分の縦横の幅の比率の相違は,需要者に別異の印象を与える程ではなく,これらの相違による印象は,共通点(B),すなわち両意匠部分共に,上幅-中央部分の縦幅-下幅が,小-大-小の構成となっていることにより生じる共通感に埋没されるものというべきであるから,両意匠部分の類否判断に与える影響は,それぞれ微弱なものといわざるを得ない。
また,相違点(エ),すなわち中央部分の隅丸についての相違は,「フラッシプレート」の物品分野において,中央部分の隅丸を極小さなものとすることがありふれた形態であることから,両意匠部分の類否判断に与える影響は微弱なものであるといえる。,
そして,相違点(ア)から(エ)が相まって生じる視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,視覚的印象を異にするというほかない。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途,機能,並びに位置,大きさ及び範囲がいずれも一致するが,形態においては,共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響が一定程度にとどまるか,微弱であるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいものであり,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点が生じさせている共通感を凌駕しており,意匠全体として観察した場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-02-23 
出願番号 意願2013-28624(D2013-28624) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
江塚 尚弘
登録日 2016-04-22 
登録番号 意匠登録第1550251号(D1550251) 
代理人 鎌田 健司 
代理人 前田 浩夫 
代理人 藤井 兼太郎 

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