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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1314370 
審判番号 不服2015-22464
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-22 
確定日 2016-04-12 
意匠に係る物品 床用コンセント本体カバー 
事件の表示 意願2015-201「床用コンセント本体カバー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成27年(2015年)1月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「床用コンセント本体カバー」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成24年(2012年)7月23日)に記載された意匠登録第1446509号(意匠に係る物品,床用コンセント)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)における本願実線部分に相当する部分であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠において,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「床用コンセント本体カバー」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「床用コンセント」であるところ,この「床用コンセント」の引用相当部分は,床用コンセント本体を覆うカバーの部分であるから,両意匠の意匠に係る物品は,共に床用コンセント本体カバーを含むという点において共通する。

(2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,床下に設けられたコンセントを覆い,コンセントを利用する際に,プラグの電線コードを床上に導く用途及び機能を有するから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。
また,両意匠部分は,コンセント本体を覆って床上に露出する部分であるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲も一致する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

<共通点>
両意匠部分は,基本的態様として,
(A)全体は,正面視四角形で,四辺に同じ幅の化粧枠を残して,中央に四角形の蓋部を設け,蓋部の内側に,蓋部の一辺と接する小さな長方形の通線蓋部を設けた点,
具体的態様として,
(B)蓋部は,正面視左辺側が中心軸となるように開閉可能に構成され,蓋部表面に,左向き三角形が表された略小矩形状のスライドボタンを設けている点,
で共通する。

<相違点>
両意匠部分は,具体的態様として,
(ア)化粧枠及び蓋部が,本願実線部分は縦長長方形であるのに対して,引用相当部分は正方形である点,
(イ)通線蓋部が,本願実線部分は,蓋部の右辺中央に接する縦長長方形であり,左辺側が中心軸となるように開閉可能に構成されているのに対して,引用相当部分は,蓋部の下辺中央に接する横長長方形であり,上辺側が中心軸となるように開閉可能に構成されている点,
(ウ)スライドボタンが,本願実線部分では,正面視通線蓋部の上方左寄り付近に配置されているのに対して,引用相当部分では,正面視通線蓋部の右斜め上付近に配置されている点,
で相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠の意匠に係る物品は,共に床用コンセント本体カバーを含むという点において共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は一致する。
しかし,床用コンセント本体カバーという物品自体は,例えば参考意匠1(別紙第3参照)や,参考意匠2(別紙第4参照)に示すように,本願の出願時,ごく普通に見られるから,両意匠の意匠に係る物品が共通し,また,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致しているとしても,それらが両意匠部分の類否判断に与える影響は,一定程度にとどまるものといえる。

(2)両意匠部分の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
また,共通点(B)は,左辺側を中心軸として開閉する蓋部に,左向き三角形が表された略小矩形状のスライドボタンが設けられているというものであるところ,床用コンセント本体カバーの物品分野において,開閉の中心軸となる側に向けてボタンをスライドさせることはありふれているし,方向を示す表示として三角形を採用することは,ごく普通に見られるものである。したがって,共通点(B)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も,大きなものとはいえない。

(3)両意匠部分の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)は,両意匠部分の正面視において,両意匠部分の全体にわたって観察されるものであるから,この相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものといわざるを得ない。とりわけ,相違点(ア),すなわち本願実線部分の蓋部が縦長長方形であることと,共通点(B),すなわち蓋部の左辺側が開閉の中心軸となることとが相乗することにより,本願実線部分の蓋部は,その長辺側が開閉の中心軸となるところ,床用コンセント本体カバーの物品分野において,蓋部が長方形である場合,例えば参考意匠1や参考意匠2に示すように,短辺側を開閉の中心軸とする形態が多く見られることから,この相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいといえる。
また,相違点(イ)及び共通点(B)が相乗することにより,本願実線部分は,蓋部及び通線蓋部が,いずれも左辺側を中心軸として開閉するのに対して,引用相当部分は,蓋部が左辺側を中心軸として開閉し,通線蓋部が上辺側を中心軸として開閉することになり,機能的に見ても形態的に見ても,両意匠部分が異なるという印象をもたらすものといえる。
さらに,相違点(ウ),すなわち通線蓋部に対するスライドボタンの配置に係る相違は,両意匠部分が異なるという印象を強くさせるといえる。
そして,相違点(ア)から(ウ)までを総合した視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するものの,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分を全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠部分は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-03-29 
出願番号 意願2015-201(D2015-201) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
江塚 尚弘
登録日 2016-05-27 
登録番号 意匠登録第1552669号(D1552669) 
代理人 前田 浩夫 
代理人 鎌田 健司 
代理人 藤井 兼太郎 

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