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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1315702 
審判番号 不服2016-2259
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-15 
確定日 2016-05-23 
意匠に係る物品 吸音性内装材 
事件の表示 意願2015-3241「吸音性内装材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)2月18日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「吸音性内装材」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。右側面図は左側面図と対称にあらわれるので省略する。図面中、省略部分は、願書添付図面上227.1cmである。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1303385号(意匠に係る物品,吸音パネルの構成枠材)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)の当該部分であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠において,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「吸音性内装材」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「吸音パネルの構成枠材」であって,表記は異なるが,本願意匠の願書及び願書に添付した図面の記載並びに引用意匠に係る公報の記載等を総合すれば,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも室内の壁等の表面に設けられる吸音材という点で共通する。

(2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,音を通過及び減衰させる機能を有し,室内の音の反響を低減させるために用いられるから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。
また,両意匠部分は,吸音材の接続フランジを除いた部分,すなわち内側が空洞となるように上下辺を略クランク状に折り曲げた板状の吸音材のほぼ全体を占める部分であるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲も一致する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
<共通点>
両意匠部分は,基本的態様として,
(A)多数の貫通小孔を一様に設けた,横長長方形の薄板の上下辺を略直角に折り曲げて縁部とし,側面視略縦長コ字状とした点,
で共通する。

<相違点>
両意匠部分は,具体的態様として,
(ア)正面視の縦横比が,本願実線部分は約1:40であるのに対して,引用相当部分は約1:2.3である点,
(イ)小孔の直径が,本願実線部分は1mmであるのに対して,引用相当部分は2mmである点,
(ウ)小孔の配置が,本願実線部分は上下左右に4mmの間隔をあけて碁盤目状に配置されているのに対して,引用相当部分は上下約2mm,左右約3mmの間隔をあけて千鳥状に配置されている点,
(エ)本願実線部分は,薄板表面に装飾樹脂シートの被覆があるのに対して,引用相当部分は,薄板表面に被覆がない点,
で相違する。

なお付言すると,引用意匠に係る公報には「正面図において,上下方向寸法は600mm,左右方向寸法は3000mmである。」との記載があり,これに基づけば,引用相当部分の正面視の縦横比は約1:5となるが,引用意匠に係る公報の正面図の記載に基づいて,上記(ア)のとおり認定した。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠部分は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態については,以下のとおりである。

(1)両意匠部分の形態についての共通点の評価
共通点(A)のうち,横長長方形の薄板の上下辺を略直角に折り曲げて縁部とし,側面視略縦長コ字状とした形態は,吸音材の物品分野(以下「この種物品分野」という。)において,他にも見られるものであり,この形態が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。
また,共通点(A)のうち,薄板に多数の貫通小孔を一様に設けたことにより,吸音材の正面部分と,縁部のいずれにも小孔が存在するところ,吸音材の正面部分に小孔を設ける形態は,この種物品分野ではありふれた形態であるし,吸音材を壁等に設置した後は,縁部の小孔をほとんど視認できないことから,薄板に多数の貫通小孔を一様に設けたことが,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。

(2)両意匠部分の形態についての相違点の評価
相違点(ア)は,正面視の縦横比が,本願実線部分は約1:40であるのに対して,引用相当部分は約1:2.3であるというものであり,一見しただけで,正面視で本願実線部分は,引用相当部分よりも17倍以上も横長な長方形として認識できるから,相違点(ア)による視覚的な印象が全く異なることは明白であり,相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,支配的といえるほどに大きいというべきである。
また,相違点(イ)及び相違点(ウ)は,音を通過及び減衰させる機能に関わる形態であって,防音材に関わる施主や施工者等の需要者であれば,当然に関心を示す部分の形態であるといえる。そして,相違点(イ)及び相違点(ウ)が相乗することにより,本願実線部分は,小さな孔が縦横に整列して配置されて,整然とした印象を与えるのに対して,引用相当部分は,より大きな孔が密接して配置されて,稠密な印象を与えるといえるから,相違点(イ)及び(ウ)による視覚的な印象は異なり,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
これに対して,相違点(エ)は,本願実線部分は,薄板表面に装飾樹脂シートの被覆があるのに対して,引用相当部分は,薄板表面に被覆がないというものであるが,本願実線部分の装飾樹脂シート自体に模様が表れているわけではないし,色彩が示されているわけでもないから,需要者が視覚を通じて装飾樹脂シートの有無を認識することは困難である。したがって,相違点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱といえる。
そして,相違点(ア)から(エ)までがあいまった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,両意匠部分全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠部分は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分全体として見た場合,相違点の印象は共通点の印象を凌駕し,両意匠部分は視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-05-11 
出願番号 意願2015-3241(D2015-3241) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 刈間 宏信
渡邉 久美
登録日 2016-06-03 
登録番号 意匠登録第1553076号(D1553076) 
代理人 齋藤 晴男 

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