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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1317037 
審判番号 不服2015-3599
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-25 
確定日 2016-06-15 
意匠に係る物品 包装用外枠 
事件の表示 意願2013- 19252「包装用外枠」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)8月22日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品は,「包装用外枠」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものであって,「図面代用写真にて緑色に着色した部分を除く部分が,部分意匠として登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照)
具体的には,物品全体としては,(A)正面視,前後に開口した略正方筒状体であり,開口部の一辺に対し,奥行きが約2倍であって,板状段ボール材を概ね直角状に4箇所屈曲してコーナー部とし,正面視左上部で端部を筒体内側面で重ねて接合して成り,そのうち,本願意匠部分は,正面視右上コーナー部の筒状体外側及び内側を含む前後両端に渡る帯状領域であって,全体に薄茶色の色彩が現れているものである。本願意匠部分をより仔細に見ると,(B)外側部は,包装用外枠上面部と側面部に挟まれ傾斜した2つの細幅面が屈曲箇所を経て連なって,多角のコーナー部を形成し,(C)内側部は3つの凹溝と2つの凸条が交互に現れて形成しているものである。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,「本願意匠は包装用外枠に係るものであり,意匠登録を受けようとする部分は,スリーブ状の包装用外枠のコーナー部に相当しますが,この包装用外枠の分野においては,段ボールなどのシート材を所定の位置で正確に折り曲げられる罫線を入れることは,本願意匠出願前よりごく普通に行われています(例えば,下記の意匠1)。
そうすると,本願出願前に公然知られた正面視略矩形のスリーブ状の包装用外枠のコーナー部の形状を,下記の意匠2の,表裏それぞれに複数の山部と谷部を有する罫線部の形状に置きかえたに過ぎない本願の意匠は,当業者であれば容易に創作することができたものと認められます。

意匠1
特許庁発行の公開特許公報記載
平成22年特許出願公開第284866号
特開2010-284866 第4図において表された罫入れ部の意匠

意匠2
特許庁発行の公開特許公報記載
平成22年特許出願公開第284866号
特開2010-284866 第8図において表された罫入れ部の意匠」
としたものである。

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。
1 本願意匠は,“コーナー部の態様自体”が独自のデザイン上の特徴を有しており,このデザイン上の特徴は,引用意匠から容易に創作し得ない程の独自の形態となっている。また,このデザイン上の特徴は,斜視図1,斜視図2,正面図,背面図等において明確に現されている。
(1)デザイン上の特徴について
本願意匠の大きなデザイン上の特徴として,前後開放した四側方箱状のコーナー部(登録を受けようとする部分)において,
(1-1)“変形量(屈曲角)の異なる3つの角部
(1-2)“罫線部の形成態様”(内面側へ3本の罫を入れると共に外面側へ2本の罫を形成することで,中央部をより薄く形成した態様)”
(1-3)“複数の板面部の断面形状”中央へ向かって収束する2種類ずつの片扁平収束部の組み合わせ)
の3つの特徴があげられる。
(1-1)の3つの角部とは,中央角部1つとその両側近傍の側方角部2つである。
本願意匠のコーナー部(登録を受けようとする部分)においては,(1-1)“変形量(屈曲角)の異なる3つの角部”として特に,中央角部が最も屈曲角が大きく形成されると共に,平面又は底面寄りの側方角部は水平寄りの傾斜面による細板部で強調され,さらに側面寄りの側方角部は垂直寄りのわずかな傾斜面による細板部でわずかに強調されている。この態様は,(1-2)“罫線部の形成態様”,及び(1-3)“複数の板面部の断面形状”に基づいて形成される形態で,引用意匠(意匠1,2)のいずれにも表されておらず,また,単に引用意匠の罫の本数を変えただけでは創作されない。
すなわち,前記3つの角部は,
(1-2)と,これによる(1-3)のそれぞれが,独自のデザイン上の特徴を有することに基づくものである。特に(1-2)罫線部の形成態様は,中央部の圧潰部が現れた罫押しと,周囲の圧潰部が現れない半罫押しとの組み合わせからなり,これによって,複数の板面部の断面形状は,周りが太く,中心部が薄い可変厚さとなっている。これらの各特徴(1-2)及び(1-3)それぞれもまた,いずれの引用意匠にも表されておらず,また,単に引用意匠の罫の本数を変えただけでは創作されない。
そして,これらの各特徴(1-1),(1-2)及び(1-3)が相まって,本願意匠の登録を受けようとする部分は,コーナー中央と周囲とのそれぞれで厚さ及び折れ角度が異なった,独自のW型ラインの態様となっている。特に端面には独自の厚さと独自の折れ角度のW型ラインが露出することで,独自の態様を呈し,これら(1-1),(1-2)及び(1-3)は,いずれの引用意匠(意匠1,2)及び公知意匠にも見られない,本願のコーナー部の態様自体のデザイン上の特徴に基づくものであり,単に引用意匠の罫の本数を変えただけでは創作されない。これらの特徴は,引用意匠に基づいて本願意匠を容易に創作することができないことを表している。
(2)デザイン上の特徴の各図への明示について
また,前記デザイン上の特徴は,本出願時に添付した図面代用写真,特に斜視図1,斜視図2,正面図,背面図等において明確に現されている。
すなわち斜視図1では,中央角部が最大屈曲角で屈曲し,平面寄り(中央角部からみて左上方寄り)の一方の側方角部が最大屈曲角よりも小さい第二屈曲角で屈曲し,側面寄り(中央角部からみて右下方寄り)の他方の側方角部が最も小さい最小屈曲角でわずかに屈曲している。また中央角部寄りの細板面の端面が「中央の片扁平収束部」(すなわち湾曲変形した略三角形断面)として中央側へ収束形成され,さらに2つの細板面部分の両外方の四面板は,中央角部寄りへ若干薄くなった「側方の片扁平収束部」として形成される。
これらの屈曲態様,収束態様は,斜視図1における本物品の前端面のカット面として明確に現れており,また,斜視図1における本物品の側面の陰影及び角部の稜線の強さの違いとして明確に現れている。
また斜視図2でも前記斜視図1と同様に,屈曲態様,収束態様が本物品の前端面のカット面として明確に現れており,また本物品の側面の陰影及び角部の稜線の強さの違いとして明確に現れている。
また正面図,背面図でも前記斜視図1と同様に,屈曲態様,収束態様が本物品の前端面のカット面として明確に現れており,また本物品の側面においても内側の細板面の湾曲の強さの違いとして明確に現れている。
よって,出願当初の願書および願書添付図面において当該特徴は十分に開示されており,図面代用写真として提出した各図に基づいてこれらの特徴を明確に特定することができる。
2 さらに,本願意匠のコーナー部は罫入れ方法に特徴があり,特殊な罫入れ方法によってしか本願のコーナー部の態様を形成できないことから,この種物品を取り扱う“当業者”にとって,本願意匠を容易に創作することはできない。
すなわち本願の登録を受けようとする部分であるコーナー部には,外面に2本の押し罫が形成され,内面に前記押し罫を挟む3本の押し罫が形成されているが,本願の内面の3本の押し罫はすべて同時に形成することでは得られず,3本のうち真ん中の一本を逆方向への押し潰しによって形成するか,あるいは,3本のうち真ん中の一本を2回の罫入れ行程で罫入れ位置を重畳させる,という特殊な罫入れの本数及び入れ方ないし位置の調整によって形成することで得られるものである。このため,3本のうち真ん中の1本は,両側部の2本よりも,罫入れによる段ボール板の圧潰部が強調されるものとなっている。これは,引用意匠(意匠1,2)に示すように,表裏それぞれに複数の溝部と凸条を押し当てて形成するという,公知の複数の罫入れ方法とは明らかに異なる。つまり本願意匠は,罫線部の入れ方に特徴を有しており,本願意匠の登録を受けようとする部分は,他の公知の罫入れ方法によって形成されるものではない。
3 まとめ
以上のとおり,本願意匠は,当業者にとってありふれた手法によって創作されたものではなく,意匠法第3条第2項に該当しないと思料する。

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。
1 引用意匠について
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠に係る物品は,「段ボール等のシート材」であり,全体形状は図に表されておらず不明であって,罫入れ部について,罫線形成具によって押圧側に2つの谷折り部と1つの山折り部を端面略W字状に形成したものである。
(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠に係る物品は,「段ボール等のシート材」であり,全体形状は図に表されておらず,不明であって,罫入れ部について,罫線形成具によって押圧側に3つの谷折り部と2つの山折り部とを端面略蛇行状に形成したものである。
2 本願意匠の創作容易
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,意匠に係る物品は「包装用外枠」であり,その形態は,前記第1のとおりのものである。
物品の部分の意匠における創作容易性の判断については,当該部分の形態が,当該部分の用途及び機能を考慮して,当該意匠登録出願前に公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に,「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において,その位置,大きさ及び範囲とすることが,当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うべきと解される。

本願意匠部分の位置,大きさ及び範囲について検討すると,本願意匠部分の位置及び大きさとして,構成態様(A)について,物品全体が,正面視,前後に開口した略正方筒状体であり,開口部の一辺に対して,奥行きが約2倍であって,板状段ボール材を概ね直角状に4箇所屈曲してコーナー部としたもののうち,本願意匠部分を,正面視右上コーナー部の位置で,筒状体外側及び内側を含む前後両端に渡る帯状領域とし,段ボール材の厚みから見て,両手で扱える程度の大きさとしたものは,「包装用外枠」の物品分野において,ありふれたものであるといえ,また,本願意匠部分の範囲においても,略正方筒状体の正面視右上コーナー部の筒体外側及び内側を含む前後両端に渡る帯状領域とすることは,「包装用外枠」をごく普通の略正方筒状体としたときに各コーナー部に現れる屈曲態様が正面視右上コーナー部に現れる範囲とした程度のものであって,ありふれている。
よって,本願意匠部分の当該物品の形態の中における位置,大きさ及び範囲とすることは,当業者にとってありふれた手法である。

次に本願意匠部分の形態について検討する。

構成態様(A)について,コーナー部を概ね直角状に形成し,全体に薄茶色の色彩が現れているものである態様は,「包装用外枠」の分野において,段ボール材を使用して形成した「包装用外枠」として,ともに例示するまでもなくありふれた態様であって,格別の創作を要したということはできない。
しかしながら,本願意匠部分の構成態様(B)及び構成態様(C)について検討すると,構成態様(B)は,「包装用外枠」のコーナー部の外側部の包装用外枠上面部と側面部に挟まれた傾斜した2つの細幅面が屈曲箇所を経て連なって,多角のコーナー部を形成したものであり,構成態様(C)については,内側部は3つの凹溝と2つの凸条が交互に現れたものであって,これらの構成態様は,原審で引用された意匠1及び意匠2には表れていない。すなわち,原審で引用された意匠1には,「包装用外枠」の物品分野において段ボールなどのシート材を所定の位置で正確に折り曲げるために複数の山部と谷部を有する罫線部を施すことがありふれた手法であること,原審で引用された意匠2には,罫入れ部として,押圧側に3つの谷(凹溝)部と2つの山(凸条)部を設けた意匠が公然知られた形状であることが示されているものの,上記,意匠1及び意匠2には,「包装用外枠」の屈曲部の筒状体外側部が多角のコーナー状に形成された態様は現されていないものであって,本願意匠部分の構成態様(B)及び(C)が,外側部は2つ細幅面が連なって多角のコーナー部となり,内側部は3つの凹溝と2つの凸条が交互に現れ,正面視,横幅約1に対し奥行き約2の略正方筒状体の「包装用外枠」の右上隅コーナー部に内外側で形成された態様は,上記,意匠1のありふれた手法に基づき単に意匠2の「表裏それぞれに複数の山部と谷部を有する罫線部の形状に置きかえて」容易に創作することができたということはできないものである。

したがって,構成態様(A)ないし(C)からなる本願意匠部分全体の形態は,引用意匠の存在を前提として,その形態から当業者が容易に導き出すことはできず,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当せず,原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2016-06-02 
出願番号 意願2013-19252(D2013-19252) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
清野 貴雄
登録日 2016-07-15 
登録番号 意匠登録第1556225号(D1556225) 
代理人 森田 拓生 

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