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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1318116 
審判番号 不服2016-5948
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-21 
確定日 2016-08-02 
意匠に係る物品 軒天井板材 
事件の表示 意願2015-3757「軒天井板材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成27年(2015年)2月24日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「軒天井板材」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち特許庁意匠課が平成22年(2010年)2月26日に受け入れ,その掲載日(公知日)を平成22年(2010年)2月22日と確認したところの,ニチハ株式会社がインターネットに掲載した,表題を「商品詳細」とするページ(掲載ページのアドレス http://www5.mediagalaxy.co.jp/CGI/nichiha/wallstreet/search/search.cgi?mode=detail&materials=wall&item_code=EF221)に所載の「外装用壁板」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ21065566号,以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であって,その形態は,同サイト掲載ページの写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「軒天井板材」であって,正面図において左右に連続するものであるのに対して,引用意匠の意匠に係る物品は「外装用壁板」であって,上記のインターネットに掲載されたページ(別紙第2の第3ページ)の記載によれば,縦455mm,横3030mmのものである点で,両意匠の意匠に係る物品には,一応の相違点が認められる。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)

<共通点>
両意匠は,基本的態様として,
(A)全体は,正面視左右方向に伸び,表面に茶色が配された帯状部が,細溝を介して上下に複数段並んだ横長長方形状である点,

具体的な態様として,
(B)帯状部の表面に,正面視左右方向の木目状の筋目が表れている点,
で共通する。

<相違点>
両意匠は,具体的態様として,
(ア)帯状部の段数が,本願意匠は20段であるのに対して,引用意匠は8段である点,
(イ)細溝の色彩について,本願意匠は黒色が配されているのに対して,引用意匠はそのような色が配されていない点,
(ウ)帯状部の筋目の色彩について,本願意匠の筋目の凹部には暗い茶色が配されているのに対して,引用意匠の筋目の凹部にはそのような色が配されていない点,
で相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品の評価
本願意匠の意匠に係る物品である「軒天井板材」は,建築物の外面である軒を木板材が並んだように装飾する用途で,軒を隙間無く覆う機能を有する物品である。これに対して,引用意匠の意匠に係る物品である「外装用壁板」は,建築物の外面である外壁を木板材が並んだように装飾する用途で,外壁を隙間無く覆う機能を有する物品である。そして,建築物において,外壁と軒天井は,外壁の上部が軒天井と隣接する関係にある。
また,本願意匠の意匠に係る物品は,正面図において左右に連続するとされているのに対して,引用意匠の意匠に係る物品は,横3030mmであるが,一般的な建築用資材の大きさや長さ,例えば一般的な柱は約3?4m程度であることを考慮すると,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品の長さは,建築用資材として,それ相応の長尺のものといえる。
以上を考慮すると,両意匠の意匠に係る物品は,建築物の外面を木板材が並んだように装飾する用途や,建築物の外面を隙間無く覆う機能において共通し,建築用資材として相応する程度に長尺のものといえるから,両意匠の意匠に係る物品は,実質的には共通する。

(2)両意匠の形態についての共通点の評価
基本的態様として示す共通点(A)及び(B)は,木板材を並べて建築物の外面を構成することを模している形態であるが,建築物の外面を木板材が並んだように装飾する物品の分野(以下「この種物品分野」という。)では,他にも見られる形態であるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできず,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)両意匠部分の形態についての相違点の評価
これに対して,具体的態様として示す相違点(ア)は,帯状部の段数が,本願意匠は20段であるのに対して,引用意匠は8段であるというものであり,本願意匠の段数は引用意匠のそれよりも2.5倍も多いことから,段数の相違は一見して明らかであり,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は,大きいといわざるを得ない。
また,相違点(イ)は,細溝の色彩について,本願意匠は黒色が配されているのに対して,引用意匠はそのような色が配されていないというものであり,これにより,本願意匠には,帯状部の立体感が強調される視覚的効果が生じるところ,細溝に黒色を配することは,軒天井板材の物品分野ではあまり見られる態様ではないから,相違点(イ)は,両意匠の類否判断に非常に大きな影響を与えるといえる。
そして,相違点(ウ)は,帯状部の筋目の色彩について,本願意匠の筋目の凹部には暗い茶色が配されているのに対して,引用意匠の筋目の凹部にはそのような色が配されていないものであり,これにより,本願意匠には,筋目の立体感が強調される視覚的効果が生じるから,相違点(ウ)は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるといえる。
そして,相違点(ア)ないし(ウ)があいまった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は実質的に共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-07-20 
出願番号 意願2015-3757(D2015-3757) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-08-12 
登録番号 意匠登録第1558485号(D1558485) 
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 

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