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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1320246 |
審判番号 | 不服2016-7486 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-23 |
確定日 | 2016-09-13 |
意匠に係る物品 | 自動車用車輪 |
事件の表示 | 意願2014- 8769「自動車用車輪」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2013年10月23日のドイツへの出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成26年(2014年)4月22日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用車輪」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成25年(2013年)7月29日)に掲載された,意匠登録第1475807号(意匠に係る物品,自動車用車輪)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも自動車用車輪であるので,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 なお,ホイールの正面側を前方側(前側)とし,背面側を後方側(後ろ側)として比較する。 まず,共通点として, (A)全体は,側面部中央部分を窪ませた略円筒形のホイールリム(以下,「リム部」という。)のリム部前側端部の内周部分(以下,「リム内周部」という。)に,略V字状のスポーク(以下,「Vスポーク部」という。)をホイール中央部分のハブ(以下,「ハブ部」という。)から放射線状に5本等間隔となるように配設した構成としたものであって, (B)リム部は,その前後両端部に,リムフランジ(以下,「フランジ部」という。)を形成し,リム内周部をラッパの口状に広がる形態としている点, (C)各Vスポーク部は,外側V字状部分(以下,「外側スポーク部」という。)の内側に,それよりやや小さな内側V字状部分(以下,「内側スポーク部」という。)を配し,V字が二重に重なった構成態様としたものであり,この外側スポーク部と内側スポーク部(以下,「内外スポーク部」という。)間のハブ部側の隙間部分には,これらの内外スポーク部を接合する部分(以下,「内外スポーク接合部」という。)をVスポーク部の前面部より一段低くなるようにして設け,内外スポーク部間のリム部側には,貫通孔(以下,「内外スポーク孔部」という。)を形成し,また,内外スポーク接合部のV字の頂角の位置には,小円孔を一つ配している点, (D)ハブ部は,中央部に大円孔部を形成し,その周辺部分の隣り合うVスポーク部間のハブ部前面部より一段低い位置に,ホイールナット用の円孔(以下,「ナットホール部」という。)を等間隔に5つ配設している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)内側スポーク部の態様について,本願意匠は,前面視略V字状に形成しているのに対して,引用意匠は,ハブ部側の約1/2の部分を外側に向けて傾斜させ,内側スポーク部前面部分を前面視略ペン先状に湾曲して形成している点, (イ)内外スポーク孔部の態様について,本願意匠は,Vスポーク部の長さの約1/3を占める略縦長等脚台形状の開口部としているのに対して,引用意匠は,同長さの約1/2を占める略縦長変形五角形状の開口部としている点, (ウ)内外スポーク接合部の態様について,本願意匠は,内外スポーク孔部からハブ部側に向かうに従って漸次幅が狭くなる形態であり,その前面部はVスポーク部前面部より深い位置にあるのに対して,引用意匠は,ハブ部側から内外スポーク孔部に向かって狭まり,ほとんど幅のない形態であり,その前面部はVスポーク部前面部より僅かに下がった位置にある点, が認められる。 2.両意匠の形態の評価 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。 まず,共通点(A)の全体の態様及び共通点(D)のハブ部の態様は,本願意匠の出願前に既に見られるもの(例えば,参考意匠:日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成25年(2013年)1月15日)に記載された,意匠登録第1459342号(意匠に係る物品,自動車用車輪)の意匠,別紙第3参照)でもあるので,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。 次に,共通点(B)のリム部の態様も,自動車用車輪の分野においては,特段特徴のない態様であるから,この共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱なものである。 一方,共通点(C)の各Vスポーク部の態様は,本願意匠及び引用意匠にのみ見られる特徴的なものであるから,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められるものである。 そして,これらの共通点(A)ないし(D)は,意匠を全体として見た場合,両意匠の類否判断をただちに決定付けるとまではいえないものである。 これに対し,相違点(ア)内側スポーク部の態様,及び相違点(イ)内外スポーク孔部の態様,及び相違点(ウ)内外スポーク接合部の態様については,内外スポーク部の前面部分が,V字が二重に重なった構成で表れ,内外スポーク孔部が小さく余り目立たないため,シンプルで幾何学的なV字状の形態のスポークで構成されたとの印象を与える本願意匠の態様と,内側スポーク部が曲面で構成され,内外スポーク孔部が目に付くことで,Vスポーク部の中央部分からリム部側部分に2つに別れたハサミのような形態が表れ,スポーク全体が有機的な花のような形態であるとの印象を与える引用意匠の態様とは,これらを自動車に装着した使用時には特に看者に別異な印象を与えるものであるから,内外スポーク接合部の形成された深さの相違も相まって,これらの相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。 そして,これらの相違点(ア)ないし(ウ)が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるということができる。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について一致し,形態については,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるとまでは至らないものであるのに対して,相違点が相俟って生じる視覚的効果は両意匠の類否判断に大きく影響を与えるものであり,意匠全体として見た場合には,これらの相違点は需要者に別異の印象を与え,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-08-30 |
出願番号 | 意願2014-8769(D2014-8769) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 江塚 尚弘 |
登録日 | 2016-10-21 |
登録番号 | 意匠登録第1563466号(D1563466) |
代理人 | 今井 秀樹 |
代理人 | 藤田 アキラ |