ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4 |
---|---|
管理番号 | 1322362 |
審判番号 | 不服2016-13000 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-30 |
確定日 | 2016-11-24 |
意匠に係る物品 | 梁固定吊り木金物 |
事件の表示 | 意願2015-18372「梁固定吊り木金物」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)8月21日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「梁固定吊り木金物」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「図面中,省略部分は願書添付図面上100mmである。実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載,意匠登録第1355871号(意匠に係る物品,天井下地用吊り具)の「使用状態を示す参考図」に表された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)における本願実線部分に相当する部分であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである(以下,引用意匠において,本願実線部分に相当する部分を「引用相当部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)両意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「梁固定吊り木金物」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「天井下地用吊り具」であるところ,いずれも,天井を構成する部材を吊り下げて支持する器具という点で共通する (2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分は,天井側を構成する部材を梁側から吊り支える用途及び機能を有するものであるのに対して,引用相当部分は,天井下地を天井スラブの吊りボルトに支持させる用途及び機能を有するところ,両意匠部分は,天井を構成する部材を吊り下げて支持する用途及び機能を有するといえるから共通する。 また,両意匠部分は,天井を構成する部材を吊り下げて支持する器具本体と,器具本体に設けられた防振材の全体を占めるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。 (3)両意匠部分の形態 両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。) <共通点> 両意匠部分は,基本的態様として, (A)長方形状の板を直角に折り曲げて,長さの短い水平板部と,長さの長い鉛直板部を設け,水平板部に略円筒状の防振材を設けた点, で共通し,具体的態様として, (B)防振材の一端部は,水平板部に挿通されて僅かに突出し,防振材の他端部には,ボルト穴を有する座金を設けた点, で共通する。 <相違点> 具体的態様として, (ア)本願実線部分は,水平板部の上に鉛直板部が延びる略L字状であり,防振材は水平板部の上に設けられているのに対して,引用相当部分は,水平板部の下に鉛直板部が延びる略逆L字状であり,防振材は水平板部の下に設けられている点, (イ)水平板部と鉛直板部の長さの比率が,本願実線部分は略5:9であるのに対して,引用相当部分は略7:9である点, (ウ)本願実線部分の鉛直板部上方には,略正三角形の頂点位置に丸穴が3つ配置されているのに対して,引用相当部分の鉛直板部下方には,斜め状に丸穴が2つ配置されている点 (エ)水平板部と鉛直板部の角に,本願実線部分は三角錐状のリブが2つ設けられているのに対して,引用相当部分はリブが設けられていない点, (オ)防振材の肉厚(防振材の外周の半径と内周の半径の差)と防振材の内径が,本願実線部分は肉厚よりも内径が大きいのに対して,引用相当部分は肉厚と内径が略同一である点, で相違する。 2.両意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能が共通し,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲が一致するところ,両意匠部分の形態については,以下のとおりである。 (1)両意匠部分の形態についての共通点の評価 基本的態様として示す共通点(A)は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた共通点であるが,天井を構成する部材を吊り下げて支持する器具(以下「この種の器具」という。)の分野において,両意匠部分のほかにも見られる形態であるから,この共通点(A)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 また,具体的態様として示す共通点(B)は,この種の器具の分野において,両意匠部分のほかには,あまり見られない形態ではあるものの,防振材が水平板部から突出している部分は僅かである上,座金の高さも小さいことから,注意して観察することでようやく気付く程度のものであり,この共通点(B)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまるものである。 そして,共通点全体としても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)両意匠部分の形態についての相違点の評価 これに対して,両意匠部分の具体的態様に係る各相違点(ア)ないし(ウ)は,いずれも非常に目に付き易い部位に係るものであるから,これらの相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響はそれぞれあるという他ない。 とりわけ,相違点(ア),すなわち本願実線部分は,水平板部の上に鉛直板部が延びる略L字状であり,防振材が水平板部の上に設けられているのに対して,引用相当部分は,水平板部の下に鉛直板部が延びる略逆L字状であり,防振材が水平板部の下に設けられている点は,一見して気付くものであり,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,支配的といえるほどに大きいというほかない。そして,引用相当部分が,天井スラブの吊りボルトに取り付けられることを考慮すると,この種の器具の分野の当業者ないしは需要者が,引用相当部分の形態について,上下を逆にして認識するなどということは,想定することができない。 次に,相違点(イ),すなわち水平板部と鉛直板部の長さの比率が,本願実線部分は略5:9であるのに対して,引用相当部分は略7:9である点や,相違点(ウ),すなわち本願実線部分の鉛直板部上方には,略正三角形の頂点位置に丸穴が3つ配置されているのに対して,引用相当部分の鉛直板部下方には,斜め状に丸穴が2つ配置されている点は,いずれも目に付きやすいものであるから,これらの相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。 他方,相違点(エ),すなわち水平板部と鉛直板部の角に,本願実線部分は三角錐状のリブが2つ設けられているのに対して,引用相当部分はリブが設けられていない点については,この種の器具の分野に限らず,金具等の角部にリブを設けることが,ありふれた形態であることから,相違点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 また,相違点(オ),すなわち防振材の肉厚と防振材の内径が,本願実線部分は肉厚よりも内径が大きいのに対して,引用相当部分は肉厚と内径が略同一である点は,両意匠部分の外観を観察しただけでは気付くことができないものであるから,相違点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。 そして,相違点(ア)ないし(オ)があいまった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠部分は,視覚的印象を異にするというべきである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能が共通し,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲が一致するものの,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2016-11-02 |
出願番号 | 意願2015-18372(D2015-18372) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L4)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 刈間 宏信 |
登録日 | 2016-12-22 |
登録番号 | 意匠登録第1567964号(D1567964) |
代理人 | 桑原 稔 |
代理人 | 桑原 稔 |
代理人 | 中村 信彦 |
代理人 | 中村 信彦 |