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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1323549 
審判番号 不服2016-8226
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-03 
確定日 2016-12-02 
意匠に係る物品 梯子付き消防自動車 
事件の表示 意願2015- 12152「梯子付き消防自動車」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成27年(2015年)6月1日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「梯子付き消防自動車」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2013年11月15日に受け入れた,株式会社モリタ発行の内国カタログ『SUPER GYRO LADDER はしご付消防車』第1頁所載の「消防車(製品名:SUPER GYRO LADDER)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC25020784号)であって,その形態は,同カタログに掲載された写真版により現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠の意匠に係る物品は,「梯子付き消防自動車」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,車体上部に梯子を積載した「消防車」であるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,両意匠の車体前方を前方又は前方側(本願意匠の図面では,「左側面図」として表れる。),車体後方を後方又は後方側(本願意匠の図面では,「右側面図」として表れる。),車体の右側を右側面側(本願意匠の図面では,「背面図」として表れる。),車体左側を左側面側(本願意匠の図面では,「正面図」として表れる。)として以下記載する。

まず,共通点として,
(A)全体は,車体前方からキャビン,機器収納部,回転台座載置部とし,回転台座載置部の中央やや後方部分に,上部に梯子を載せた回転台座を一つ設け,この梯子をキャビン上面に前後が水平な状態で渡した構成としている点,
(B)キャビンは,前面の上部及び下部を後方に傾斜して左側面側から見て略くの字状に形成し,その前面上半分部分に大型のフロントウィンドウ及び略横長長方形状で黒色の枠体部からなるグラスエリアを設け,この枠体部下辺部の左右端部付近にワイパーを設け,キャビン前面下端部にフロントバンパーを設け,このバンパーにヘッドライト,赤色灯及びウインカーを埋設し,キャビン側面は,上部に変形五角形状の窓部を配した前ドア及び略直角台形状の窓部を配した後ドアを接して配し,この前後ドアの窓部を囲んでフロントピラーからキャビン後端部付近まで変形四角形状で黒色の枠体部を配設し,前ドア下方部の前方部分に変形四角形状の安全窓を形成し,キャビン後方下端部から機器収納部前方下端部にかけて略等脚台形状に切り欠き部を形成し,そこに前輪を設けている点,
(C)機器収納部は,上面がキャビン後端部と同じ高さの略長方形状とし,その前端部から後端部にかけて略横長長方形状の前方シャッター扉及び略縦長長方形状の後方シャッター扉を配し,前方シャッター扉の下方部分に,略長円形状の切り欠き部及びその上方に左側面のみ略五角形状の切り欠き部を配し,その後方に縦長長方形板状体を取り付けた前方アウトリガーを配設している点,
(D)回転台座載置部は,左側面側から見て機器収納部の1/2弱の高さであり,その前方から後方にかけて,前方階段,前後に2つタイヤを配した略横長等脚台形状の切り欠き部,略縦長長方形状のシャッター扉,縦長長方形板状体を取り付けた後方アウトリガー,及び後方階段を形成し,回転台座載置部の上面は,フラットな面としている点
(E)回転台座は,略円板状の基台部の上面左右端部に,左側面から見て上辺が後方に向かって上に傾斜し,下辺が水平で,前方及び後方側の辺が後方に傾斜した形態の変形四角形状の板状枠体部を設け,この板状枠体部上方後端部に,上部に梯子を配したフレームを傾斜可能に取り付け,板状枠体左側面側に梯子に上がるための足場及び階段を配設している点,
(F)梯子は,伸縮可能な5段式の梯子であって,中央に配した梯子のみ他の4段より長いフレームとし,先端部分にバスケットを横に倒した配置で配設し,各フレームの側面側をトラス構造としている点,
(G)色彩について,グラスエリア,枠体部及び安全窓以外のキャビンの部分と,下方切り欠き部及び3つのシャッター扉以外の機器収納部の部分,並びに前後の階段以外の回転台座載置部側面側部分を赤色とし,車体前面のグラスエリア,及び車体側面側のキャビンの枠体部,安全窓,及び機器収納部下方の切り欠き部を黒色若しくは黒色に近い暗色とし,車体左右側面側の3つのシャッター扉の周囲枠部分,回転台座の基台部,梯子及びバスケットを銀色としている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)回転台座左側面側の足場及び階段の態様について,本願意匠は,側面部に白線を施した赤色で平面視変形くの字状の板状ステップの上面後端部に,側面部の上端部に白線を施した赤色で略台形柱状ステップを設け,それらのステップ上面部を薄緑色の縁部が施された黒色とした2段の足場を設け,その略台形柱状ステップの上面後端部に前方に黒色の段差部を形成した赤色で略斜角柱状の3段の階段を設け,足場から階段にかけて銀色の手摺を設け,この階段の側面後方から後面にかけて一段窪んだ部分を黒色にしているのに対して,引用意匠は,上面部の色彩及び形態が不明で側面部を赤色とした板状ステップの上面後端部に,複数のリブが格子状に形成された縞鋼板を表面部とした略台形柱状の段部を設け,その上面後端部に後方に向かって立設したフレームからなる銀色の階段を設けている点,
(イ)回転台座右側面側の梯子用操作席の態様について,本願意匠は,上面部を薄緑色の縁部が施された黒色とし,側面部に白線を施した赤色の平面視変形五角形板状のステップの上部に,略台形状の梯子操作部及び湾曲した高い背もたれ部を持つ赤色の梯子用操作席を配設し,この操作席の後方側下方部分から上端部分を右側面側から見て略逆ノの字状の黒色の化粧板で覆っているのに対して,引用意匠は,その形態が不明な点,
(ウ)梯子の左側面の化粧板の有無について,本願意匠は,1段目の梯子の左右両側面側後方部分に,1段目の梯子全長の約3/4の長さからなる赤色で略楔状の化粧板及びその赤色の化粧板の下側に1段目の梯子の全長の約1/4の長さからなる黒色で略楔状の化粧板を設けているのに対して,引用意匠には,そのような化粧板を設けていない点,
(エ)キャビン上部先端部分の左右端部にある赤色灯の態様について,本願意匠は,上面がキャビン上面と面一になるように赤色灯及び黄色の警告板を形成しているのに対して,引用意匠は,側面側から見てキャビン上面前方側部分から略等脚台形状に突出するように赤色灯及び黄色の警告板を配し,キャビン上面後方側部分をこの赤色灯及び黄色の警告板の高さの約1/2まで高くして形成している点,
(オ)車体左右側面側の3つのシャッター扉の色彩について,本願意匠は,銀色としているのに対して,引用意匠は,赤色としている点,
(カ)回転台座載置部の設置部上面部及び前方階段の色彩について,本願意匠は,各部の上面部を薄緑色の縁部が施された黒色とし,階段については,ステップ前端部のみを銀色,他の部分を黒色としているのに対して,引用意匠は,各部の表面部分を銀色としている点,
が認められる。
(キ)回転台座載置部後面の態様について,本願意匠は,赤色の略H字状のフレームとその中央横フレームの上下に黒色のエリアを配して,当該フレームの左右端部の縦フレーム部分にウインカー,ブレーキランプ,及びバックランプを縦一列に配設し,上部黒色エリア中央部分に液晶パネル,下部黒色エリア左右端部に2本一組のテールパイプ,その中間にナンバープレートを配設しているのに対して,引用意匠は,その形態が不明な点,

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)ないし(F)の各部の態様,及び共通点(G)の色彩は,両意匠の基調を形成し,需要者に共通の印象を与えるものであるが,これらは,本願出願前に公然知られた意匠において既に見られる形態であるから,上記の共通点(A)ないし(G)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,それらの共通点のみをもって,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)回転台座左側面側の足場及び階段の態様,及び相違点(ウ)梯子の左側面部に設けられた化粧板の有無については,この物品分野において,梯子の形態は使用時には特に注目される部位であるので,回転台座から1段目の梯子の側面部にかけて色彩を統一して,曲線的なデザイン処理がなされた本願意匠の態様と,従来からある角張った形態の引用意匠の態様とは,看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,相違点(エ)キャビン上部先端部分の左右端部にある赤色灯の態様については,車体前方上部にあってさほど目に付く部位ではないが,上面をキャビン上面と面一にすることでキャビンと一体となるようにデザイン処理を施した本願意匠の態様と,キャビン上面から突出している無骨な引用意匠の態様とは,看者に別異の印象を起こさせるものであるから,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
また,相違点(オ)車体左側面側の3つのシャッター扉の色彩については,この物品分野においては,赤色も銀色も極普通に施されているものではあるが,該部位はその占める面積も大きく,目に付く部位における差異であるため,この相違点(オ)も両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
更に,相違点(カ)回転台座載置部の設置部上面部及び前方階段の色彩については,各部位に黒色を施すことで車体の赤色が映える本願意匠の態様と,従来から極普通に見られる銀色の縞鋼板が施された引用意匠の態様とは,見た目が大きく異なり全く別異な印象を与えるものであるから,この相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,これらの相違点(ア),及び相違点(ウ)ないし(カ)が相まって生じる視覚的効果は,それぞれ大きく,両意匠の類否判断に大きく影響を与えるものである。
なお,相違点(ア),相違点(イ)及び相違点(キ)における本願意匠の形態は,本願意匠独自のものと認められるところ,相違点(ア)については,両意匠の類否判断に上記のとおり大きく影響し,相違点(イ)及び相違点(キ)については,引用意匠では確認できない箇所であるから,両意匠の類否判断において評価し得ないものである。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,形態においては,引用意匠で確認でき,両意匠の類否判断において評価し得る箇所をもって対比すると,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。


別掲
審決日 2016-11-16 
出願番号 意願2015-12152(D2015-12152) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小松 芳実加藤 真珠 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
江塚 尚弘
登録日 2017-01-06 
登録番号 意匠登録第1568540号(D1568540) 
代理人 清水 善廣 
代理人 辻田 幸史 
代理人 太田 貴章 
代理人 阿部 伸一 

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