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審決分類 審判 査定不服  意7条一意匠一出願 取り消して登録 A1
管理番号 1324928 
審判番号 不服2014-16810
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-25 
確定日 2017-01-30 
意匠に係る物品 容器付冷菓 
事件の表示 意願2013-5010号「容器付き冷菓」拒絶査定不服審判事件についてした平成27年11月20日付けの審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成28年(行ケ)第10034号,平成28年9月21日判決言渡)があったので,更に審理し,その結果,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようする,平成25年3月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「容器付冷菓」(出願当初は「冷菓」としていたところを,平成26年8月25日の手続補正書により補正した。)とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
具体的には,容器全体は,底面中央部分に略扁平円錐台状の凹みを形成した,略中空有底倒円錐台形状の本体部分の上方に,この本体部分より拡径し,上端部にフランジを形成した略扁平円筒形状の容器縁部を形成したものであって,その容器の中に,容器全高の約2/3の高さまで冷菓部材を充填し,その上面全体を容器全高の約1/10の厚みのあん部材で覆い,そこに略卵形状のもち部材を5つ,略等間隔にやや埋設して配設したものである。

第2 手続の経緯

1.審査において,本願は,平成25年(2013年)3月7日に意匠登録出願されたものであって,平成26年1月17日に意匠法第7条に規定する要件を満たしていないとして拒絶の理由が通知され,平成26年6月20日に拒絶をすべき旨の査定がなされている。

2.本件拒絶査定不服審判請求人(以下「請求人」という。)は,拒絶の査定を不服として,平成26年8月25日に拒絶査定不服審判の請求を行ったところ,審判において,この請求を不服2014-16810号拒絶査定不服審判事件として審理し,平成27年11月20日付けで本件審判の請求は成り立たない旨の審決がなされ,その謄本は,平成28年1月6日に送達されている。

3.上記審決に対し,請求人は,平成28年2月3日に,同審決の取消を求める訴えを知的財産高等裁判所に提起し,同裁判所は,平成28年(行ケ)第10034号審決取消請求事件としてこれを審理し,平成28年9月21日に同審決を取り消すとの判決を言い渡し,その後,同判決は確定している。

第3 原審の拒絶の理由について

原審における拒絶の理由は,要旨,本願意匠登録出願は,意匠法施行規則別表第1の下欄に掲げた物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされているものとは認められず,意匠法第7条に規定する要件を満たしていないので,意匠登録を受けることができない。
そして,本願意匠登録出願は,願書及び願書添付図面の記載を総合して判断すると,「冷菓」及び「包装用容器」の2つの異なる物品に係る意匠を含むものと認められる,としたものである。

第4 判決の理由の要旨

同判決の理由とするところは,大要以下のとおりである。

1.取消事由1(違法な審決判断基準)について
原告が違法であると主張した,意匠法7条の「意匠登録出願は,経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。」との規定の判断について,審決が適用した,「?意匠の要件として,意匠の創作としてのーつのまとまりという観点に立って考察されるべきもので,具体的には,意匠の創作において,その全体の創作に至る各対象部位の創作の内容が,必然的に相互に関連するよう考慮,調整されると共に,全体として総合的に設計,造形されているものであり,その各対象部位に対してなされたそれぞれの創作の内容が,まとまりのある一体のものとして捉えて評価ができるものであることが必要である。」との審決判断基準は,意匠法7条の規定の趣旨を実質的に明らかにしたものであり違法ではない。
よって,取消事由1には,理由がない。

2.取消事由2(本願意匠の一意匠性の判断の誤り)について
意匠登録出願が,意匠法7条の要件を満たすには,当該出願が,(1)一物品について,(2)一形態としてなされていることが必要とされる。
(1)物品の単一性
本願意匠登録出願に係る「意匠に係る物品の説明」には,「本物品は,参考断面図に示したように,容器部内に冷菓部材を充填し,次いで前記冷菓部材の上面全部をあん部材で覆い,次いで前記あん部材上にもち部材を点状に配設し,これらの全体を冷凍して容器部と一体に流通に付されるものである。」と記載されている。上記記載を参照すれば,本願意匠に係る「冷菓」は,容器部内に冷菓部材を充填し,その上部にあん部材にもち部材を順次配設した後,これらを冷やし固めることによって製造するものと認識される。そして,冷菓部材,あん部材及びもち部材からなる「冷菓」は,「容器」と共に流通に付されるものである。使用の場面においても,通常,「容器」に入ったままの「冷菓」をスターン等ですくって食することが想定される。よって,製造,流通,及び使用の各段階において,「冷菓」は,「容器」に充填され冷やし固められたままの一体的状態であると認められる。
さらに,上記製造方法からすれば,本願意匠に係る「冷菓」を,その形態を保ったまま「容器」から分離することは,容易ではないものと推認される。しかも,「冷菓」は,製造の段階から,流通,使用に至るまで「容器」から分離されることはないから,「冷菓」が「容器」から独立して通常の状態で取引の対象となるとはいえない。
また,「容器」が単体の形状として独立して創作されることがあるとしても,本願意匠に係る「冷菓」は,「容器」と独立しては製造,流通及び使用することが困難であり,しかも,「容器付冷菓」としての物品の主体は,「冷菓」であるから,付随する「容器」の独立性を理由として,二つの物品と認めることはできない。
これらを総合考慮すれば,本願意匠に係る物品である「容器付冷菓」は,社会通念上,一つの特定の用途及び機能を有する一物品であると認められ,「冷菓」の部分のみが「容器」の部分とは独立した用途及び機能を有する一物品とはいえない。

(2)形態の単一性
本願意匠の願書に添付された図面は,形式上,二以上の形態を併記したものではない。実質的にも,容器内に冷菓を入れた状態の図面であって,冷菓と容器とは隙間なく接しており,一塊になった状態のものであるから,二以上の形態を併記したとはいえない。
したがって,本願意匠に係る形態は,単一と認められる。
よって,本願は,意匠法7条の要件を満たしており,取消事由2には,理由がある。

3. 結論
以上のとおり,原告の請求には理由があるから,これを認容することとし,「特許庁が不服2014-16810号事件について平成27年11月20日にした審決を取り消す。」と判決する。

第5 当審の判断

上記判決は,行政事件訴訟法第33条第1項の規定により,当審の審決を拘束するものであることから,同判決の主文及び理由に基づき,本願は,意匠法第7条に規定する経済産業省令で定める物品の区分又はそれと同程度の区分により意匠ごとにされているものと認められ,意匠法第7条の要件を満たしているものであるから,その拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-14 
出願番号 意願2013-5010(D2013-5010) 
審決分類 D 1 8・ 52- WY (A1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 宏幸平田 哲也 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 温品 博康
江塚 尚弘
登録日 2017-02-17 
登録番号 意匠登録第1571832号(D1571832) 
代理人 後藤 憲秋 

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