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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1329161 |
審判番号 | 不服2017-2157 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-14 |
確定日 | 2017-06-06 |
意匠に係る物品 | 包装用容器の吐出ポンプ |
事件の表示 | 意願2015- 28710「包装用容器の吐出ポンプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)12月24日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器の吐出ポンプ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁意匠課が2011年7月29日に受け入れた,電気通信回線の種類:インターネット,掲載確認日(公知日):2011年7月25日,掲載者:ニュートロジーナ・コーポレイション,表題:「Neutrogena - NeutrogenaR Naturals Fresh Cleansing + Makeup Remover」,掲載ページのアドレス:http://www.neutrogena.com/product/neutrogena-+naturals+fresh+cleansing+-+makeup+remover.do?sortby=ourPicksに掲載された「包装用容器」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23015381号)であって,拒絶理由通知書の付記記載から,引用意匠として掲げた「包装用容器」の容器本体上部に取り付けられた吐出ノズル付きポンプの部分(なお,包装用容器に格納されたポンプ本体部の形状は不明であるとしている。)を,本願部分に対応する引用意匠の部分(以下「引用部分」という。)として引用したものであると認められる。そして,この引用意匠及び引用部分の形態は,上記の掲載ページに掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,包装用容器の吐出ポンプであり,引用意匠の意匠に係る物品は,包装用容器の容器本体上部に取り付けられた吐出ノズル付きポンプであると認められるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2.本願部分と引用部分の対比 (1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能については,いずれも包装用容器に取り付けられる吐出ポンプであって共通する。 また,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲については,本願部分は,ポンプ本体部の上端部に吐出ノズル軸部及び吐出ノズルヘッド部を設け,ポンプ本体部の上方部分に包装用容器に取り付けるための固定蓋を配し,ポンプ本体部の下端部に下方吸引パイプを設けた構成の吐出ポンプにおける下方吸引パイプを除いた部分であって,吐出ポンプ全長に占める本願部分の長さは約53%である。一方,引用部分は,ポンプ本体部の形態が下方吸引パイプの有無も含めて不明であって,引用部分の位置,大きさ及び範囲については確認できず,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲について判断をすることはできない。 (2)両意匠部分の具体的形態 両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。 まず,共通点として, (A)両意匠部分は,ポンプ本体部の上端部に略円筒形状の吐出ノズル軸部を立設し,その上端部に吐出ノズルヘッド部を一体的に形成し,ポンプ本体部の外周部上方部分に上面部に中空円板状の蓋部を設けた略有蓋円筒形状の固定蓋を設け,固定蓋上面部分の吐出ノズル軸部の周囲に固定蓋よりやや小径で扁平な円環状のリングを配設した構成としている点, (B)吐出ノズルヘッド部は,平面視を略円形状の押圧部から左側に向かって略倒等脚台形状のくちばし部を延伸させたように形成し,正面視を吐出ノズルヘッド部の上面部分が円弧状に湾曲した形状の扁平な略湾曲板状に形成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)吐出ノズルヘッド部の態様について,本願部分は,平面視において略円形状の押圧部と略倒等脚台形状のくちばし部の接合箇所を略円弧状になるようになだらかに形成し,正面視においてその底面部分も上面部分と同様に円弧状に湾曲させ,底面部の吐出ノズルの軸部外側部分のみを水平になるように形成しているのに対して,引用部分は,平面視において略円形状の押圧部と略倒等脚台形状のくちばし部の接合箇所を直線状に形成し,正面視においてくちばし部の底面部分のみを上面部分と同様に円弧状に湾曲させ,押圧部底面部分を水平になるように形成している点, (イ)吐出ノズル軸部の態様について,本願部分は,正面視の縦横比を約1:2とするやや扁平な円筒形状としているのに対して,引用部分は,同比を約1.5:1とする縦長の円筒形状としている点, (ウ)固定蓋の態様について,本願部分は,正面視の縦横比を約1:2とするやや扁平な略有蓋円筒形状とし,その外周面に縦方向の細かな筋模様を形成しているのに対して,引用部分は,同比を約1:1.5とするやや横長の略有蓋円筒形状としている点, (エ)ポンプ本体部の態様について,本願部分は,ポンプ本体部の下端から約2/5の位置に斜め段差部を設けてその下方部分を僅かに縮径し,下端から約1/8の位置にR状に面取りした段差部を設けて更に小径とした,下方に向かって2段階に縮径する略円筒形状に形成しているのに対して,引用部分は,その形態が不明である点, が認められる。 3.両意匠部分の形態の評価 まず,共通点(A)の両意匠部分の全体の形態は,吐出ポンプにおける各部の形態及びその配置態様を概略的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通点(A)の共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定することはできない。 また,共通点(B)の吐出ノズルヘッド部の形態も,この種物品分野において,本願意匠の出願前に既に見られるもの(例えば,参考意匠:大韓民国意匠商標公報(発行日:平成26年(2014年)12月16日)14-43号の登録番号:30-0775637号に表されている「包装用容器」の意匠,別紙第3参照)であって,両意匠部分のみに共通する特徴とはいえないものであるから,この共通点(B)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そして,これらの共通点(A)及び共通点(B)によって生じる視覚的効果は,これらを全体としてみても小さいものであるから,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,相違点(ア)の吐出ノズルヘッド部の態様,相違点(イ)の吐出ノズル軸部の態様,及び相違点(ウ)の固定蓋の態様については,やや扁平な略有蓋円筒形状の固定蓋の上に,やや扁平な円筒形状の吐出ノズル軸部を設け,その上部にリング部よりも大きな略円形状の押圧部を配し,そこから左側に向かってくちばし部を形成し,各部位の横幅が大きく全体に扁平な印象を与える本願部分の態様と,やや横長の略有蓋円筒形状の固定蓋の上に,縦長円筒形状の吐出ノズル軸部を設け,その上部に押圧部とくちばし部が一体的で幅の狭い吐出ノズルヘッド部を設けた,全体に縦長で細幅の印象を与える引用部分の態様では,吐出ノズルヘッド部の底面側の水平部分の態様も含めて看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)から相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,相違点(エ)のポンプ本体部の態様については,該部位は,使用時には容器本体に格納されて目に付かない部分であるとしても,吐出ポンプ同士を比較した場合には,一定の大きさを持つ主要な部位であるから,この相違点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものではない。 そして,これらの相違点(ア)から相違点(エ)によって生じる視覚的効果は大きく,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。 4.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品,及び両意匠部分の用途及び機能については,共通するものであるが,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲については,引用部分について確認できないため判断することはできず,両意匠部分の形態についても,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。 したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。 第4 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-05-24 |
出願番号 | 意願2015-28710(D2015-28710) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木本 直美、上島 靖範 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
神谷 由紀 江塚 尚弘 |
登録日 | 2017-06-23 |
登録番号 | 意匠登録第1581556号(D1581556) |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 村松 由布子 |