ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 B2 |
---|---|
管理番号 | 1330162 |
審判番号 | 不服2017-2505 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-21 |
確定日 | 2017-06-19 |
意匠に係る物品 | 腰用サポーター |
事件の表示 | 意願2016- 7136「腰用サポーター」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成28年(2016年)3月31日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「腰用サポーター」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成26年(2014年)10月3日に受け入れたカタログ「magico catalog」第7頁所載の骨盤サポーターの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC26014310号)(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同頁に掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「腰用サポーター」であり,引用意匠は,「骨盤サポーター」であるが,いずれも骨盤周囲に巻いて装着するためのサポーターであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 (1)共通点 (A)全体を,左右端部を隅丸状とした薄い帯状のベルト(以下,「帯状ベルト」という。)とし,上下辺の左右中央寄りをなだらかな山状に膨出させて左右中央をくびれさせ,左右対称に形成し,左右端部寄りに同幅の部分を設け,身体の前面側で重ね合わせ,着脱可能に留められるもので,外側に細幅の調節ベルト(以下,「調節ベルト」という。)を重ねて設け,外側中央の縦方向に細い縦長短冊状のベルト留め片(以下,「ベルト留め片」という。)を設けている点, (B)帯状ベルトの内側において,なだらかな山状に膨出させた部分より左右端部寄りの左右に倒台形状の区画(以下,「倒台形状区画」という。)を設けている点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)調節ベルトの態様について,本願意匠は,帯状ベルトをなだらかな山状に膨出させた部分付近に略倒台形状の調節用の環状の留め具(以下,「留め具」という。)を設け,その留め具を介して片方は中央のベルト留め片に向かって折り返し,もう一方は,左右端部寄りに向かって折り返して面ファスナーで帯状ベルトの外側に留められる部分を設けているのに対して,引用意匠は,留め具を設けず,調節ベルトが帯状ベルトの左右端部寄りの同幅の部分まで長く延伸し,面ファスナーの有無については不明である点, (イ)調節ベルトの長さについて,本願意匠は,正面視した帯状ベルト全体の長さに対する調節ベルトの長さの比率が約1:0.56で短いのに対して,引用意匠は,約1:0.68で長い点, (ウ)倒台形状区画の態様について,本願意匠は,左右端部寄りに向かって略倒V字状に窄まる線模様を呈しているのに対して,引用意匠は,模様が鮮明ではない点, (エ)全体の厚みについて,本願意匠は,調節ベルトが2重で,留め具を有しているため全体に厚みがあるのに対して,引用意匠は,調節ベルトが2重かどうか不明で,留め具がないため全体が薄い点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本構成ではあるが,全体を,左右端部を隅丸状とした薄い帯状のベルトとし,上下辺の左右中央寄りをなだらかな山状に膨出させて左右中央をくびれさせ,左右対称に形成し,左右端部寄りに同幅の部分を設け,身体の前面側で重ね合わせ,着脱可能に留められるもので,外側に細幅の調節ベルトを重ねて設け,外側中央の縦方向に細い縦長短冊状のベルト留め片を設けた態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,また,両意匠の調節ベルトには差異点が認められ,全体の基本構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)についても,帯状ベルトの内側において,なだらかな山状に膨出させた部分より左右端部寄りの左右に倒台形状区画を設けた態様が共通しているが,両意匠と同様に倒台形状区画を設けたサポーターは,他にも見られる態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の調節ベルトの態様については,帯状ベルトをなだらかな山状に膨出させた部分付近に略倒台形状の調節用の環状の留め具を設け,その留め具を介して片方は中央のベルト留め片に向かって折り返し,もう一方は,左右端部寄りに向かって折り返して面ファスナーで帯状ベルトの外側に留められる本願意匠は,調節ベルトが複雑な印象を与えるもので,留め具を設けず,調節ベルトが帯状ベルトの左右端部寄りの同幅の部分まで長く延伸し,面ファスナーの有無については不明である引用意匠は,単純でシンプルな印象を与えるもので,見た目の印象が明確に異なるものであり,また,留め具の存在によって,本願意匠は,使用時に調節しやすい印象を与えるものであるから,需要者の注意を強く惹く部分にかかる差異といえ,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の調節ベルトの長さについて,細部に係る態様ではあるが,本願意匠は,調節ベルトが短めで中央に寄った印象を与えるものといえ,調節ベルトが長めで左右に一続きである引用意匠とは,その印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)の倒台形状区画の態様について,部分的な特徴であり,線模様があるものもないものも,どちらの態様も既に見られる態様といえるものではあるが,左右端部寄りに向かって略倒V字状に窄まる線模様を呈している本願意匠の態様は,特徴的なものといえ,その使用時には,需要者が手にとって身近に観察する部分であるから,その差異を無視することができず,両意匠の使用時の印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(エ)の全体の厚みについては,厚みが厚いものも薄いものも,いずれもありふれた態様といえるものであるが,本願意匠は,調節ベルトが2重で,留め具を有しているため全体に厚みがあり,調節ベルトが2重かどうか不明で,留め具がないため全体が薄い引用意匠とは,視覚的な印象を異ならせるものといえ,その厚みについては,使用時に需要者の関心を惹く部分であるから,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。 (3)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2017-05-30 |
出願番号 | 意願2016-7136(D2016-7136) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(B2)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上島 靖範 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
正田 毅 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2017-07-21 |
登録番号 | 意匠登録第1583611号(D1583611) |
代理人 | 井澤 洵 |