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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5
管理番号 1330169 
審判番号 不服2017-4077
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-21 
確定日 2017-07-12 
意匠に係る物品 靴 
事件の表示 意願2015- 23894「靴」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,アメリカ合衆国への2015年6月26日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成27年(2015年)10月28日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「靴」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,米国特許商標公報に2015年3月10日に掲載された靴(登録番号US D723774S)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH27303935号)であり,その本願部分に相当する部分(以下,本願部分に相当する部分を「引用部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
いずれも,「靴」であるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,一致する。
(2)本願部分と引用部分(以下,「両部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,靴底底面の外周の輪郭線を除いた部分であって,引用部分は,本願部分に相当する同様の部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。
(3)両部分の形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(3-1)共通点
(A)部分全体を,靴底底面とし,靴底のつま先部と踵部に外周に沿って間隔を空けて小型略U字形状の扁平な凸部(以下,「扁平凸部」という。)を設け,それらの内側及び土踏まず部分に小型略短円柱状の凸部(以下,「短円柱状凸部」という。)を配している点,
(B)扁平凸部の上面内周寄りにさらに扁平な円形の凸部(以下,「円形凸部」という。)を設け,円形凸部をつま先部側に11個,踵部側に7個設け,それぞれ先端部に向かって小さな円形としている点,
(C)扁平凸部に囲まれた短円柱状凸部を,つま先部側には先端に1個と3個ずつを2列で計7個,踵部側には2個を1列に配している点,
において主に共通する。
(3-2)差異点
(ア)円形凸部及び扁平凸部の態様について,本願部分は,つま先部側の11個及び踵部側の7個の円形凸部全てに扁平凸部を設けているのに対して,引用部分は,つま先部側の9個及び踵部側の5個の円形凸部に扁平凸部を設け,土踏まず寄りのそれぞれ2個ずつの円形凸部が,側面視略倒J字状及び略逆倒J字状の凹状を呈する,つま先部側と踵部側が緩やかに連続する靴底の縁部分の上面に設けられている点,
(イ)土踏まず部の底面の態様について,本願部分は,土踏まず部が幅広の同一面であるのに対して,引用部分は,土踏まず部が幅狭で,縁部が側面視略倒J字状及び略逆倒J字状の凹状を呈し,つま先部側と踵部側が緩やかに連続する部分の面として両側に細帯状に表れている点,
(ウ)土踏まず部の短円柱状凸部の態様について,本願部分は,同じ大きさの大きめの短円柱状凸部を2列に計6個配しているのに対して,引用部分は,土踏まず部が細い面で底面中央に最も大きな短円柱状凸部を1個設け,つま先部側に大きな短円柱状凸部を2個設け,踵部側に大きな短円柱状凸部を1個設けている点,
(エ)踵部の2個の短円柱状凸部の形状について,本願部分は,上面が縮径した扁平な円錐台形状であるのに対して,引用部分は,短円柱形状である点,
(オ)つま先部の底面視した輪郭形状について,本願部分は,つま先部先端が丸く緩やかなカーブであるのに対して,引用部分は,先細でやや急なカーブである点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,一致している。
(2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通している。
(3)両部分の形態
以下,両部分の形態について検討する。
(3-1)共通点
まず,共通点(A)については,部分全体を,靴底底面とし,靴底のつま先部と踵部に外周に沿って間隔を空けて小型略U字形状の扁平凸部を設け,それらの内側及び土踏まず部分に小型略短円柱状の凸部を配している態様については,短円柱状凸部を多数配したものは,従来から普通に見られる態様といえるもので,特徴のないものといえ,小型略U字形状の扁平凸部を設けたものも既に見られ,両部分のみに見られる格別新規な特徴とはいえないものであるから,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
次に,共通点(B)についても,扁平凸部の上面内周寄りにさらに扁平な円形の凸部を設け,円形凸部をつま先部側に11個,踵部側に7個設け,それぞれ先端部に向かって小さな円形としている態様は,扁平凸部の態様が共通するものではあるが,この種の物品分野においては,靴底に多数の円形凸部を配した態様は,ありふれた態様といえるもので,円形凸部自体の態様が格別目立つ態様とはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
また,共通点(C)について,扁平凸部に囲まれた短円柱状凸部を,つま先部側には先端に1個と3個ずつを2列で計7個,踵部側には2個を1列に配した態様が共通するが,部分的な特徴といえるもので,目立つものとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにすぎない。
共通点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるものである。
(3-2)差異点
差異点(ア)の扁平凸部の数とつま先部側と踵部側が緩やかに連続する靴底の縁部分の有無については,本願部分のようにつま先部側の11個及び踵部側の7個の円形凸部全てに扁平凸部を設けている態様と,つま先部側の9個及び踵部側の5個の円形凸部に扁平凸部を設け,土踏まず寄りのそれぞれ2個ずつの円形凸部が,側面視略倒J字状及び略逆倒J字状の凹状を呈する,つま先部側と踵部側が緩やかに連続する靴底の縁部分の上面に設けられている引用部分の態様とは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の土踏まず部の底面の態様についても,土踏まず部が幅広の同一面である本願部分は,幅広でゆったりした印象を与えており,土踏まず部が幅狭で,縁部が側面視略倒J字状及び略逆倒J字状の凹状を呈し,つま先部側と踵部側が緩やかに連続する部分の面として両側に細帯状に表れている引用部分は,幅狭でシャープな印象を与えるもので,その視覚的印象が明らかに異なるもので,その差異は無視することができず,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の土踏まず部の短円柱状凸部の態様について,同じ大きさの大きめの短円柱状凸部を2列に計6個配している本願部分の態様は,平板でフラットな印象を与えるもので,土踏まず部が細い面で底面中央に最も大きな短円柱状凸部を1個設け,つま先部側に大きな短円柱状凸部を2個設け,踵部側に大きな短円柱状凸部を1個設けている引用部分は,変化に富んだ印象を与えるものといえ,差異点(イ)の底面の幅と相俟って,その視覚的印象が異なるもので,その差異が両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)の短円柱状凸部の形状については,部分的な細部の形状に係るものであり,ありふれた態様の中での差異であるが,短円柱状凸部の形状が扁平な円錐台形状である本願部分の態様は,周囲の短円柱状凸部が円柱形であることから,その違いが明確で,需要者の注意を惹く部分といえ,その視覚的印象が異なるもので,その差異が両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(オ)のつま先部の底面視した輪郭形状について,いずれもありふれた態様であるが,つま先部先端が丸く緩やかなカーブである本願部分の態様は,相対的に底面が広く,ゆったりした印象を与えており,先細でやや急なカーブである引用部分は,やや尖った形状でぴったりとした印象を与えるもので,その差異は無視することができず,両部分の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。

(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の形態における差異点が看者に与える意匠的効果が共通点のそれを凌駕し,両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-06-27 
出願番号 意願2015-23894(D2015-23894) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 斉藤 孝恵
正田 毅
登録日 2017-07-28 
登録番号 意匠登録第1584027号(D1584027) 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 弟子丸 健 
代理人 松下 満 
代理人 山本 泰史 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 鈴木 博子 

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