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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 G2
管理番号 1334422 
審判番号 不服2017-7810
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-31 
確定日 2017-10-27 
意匠に係る物品 自動車用フロントコンビネーションランプ 
事件の表示 意願2016- 3754「自動車用フロントコンビネーションランプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,本意匠の出願番号を意願2016-3753号(意匠登録第1565052号)とする,平成28年(2016年)2月22日に出願された関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用フロントコンビネーションランプ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「参考図を除く図面において,薄く表現した部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書において本意匠の表示欄に記載された意匠(本願意匠の出願日と同日の平成28年2月22日に出願され,同年11月11日に意匠権の設定の登録がなされ,同年12月12日に意匠公報が発行された,出願番号を意願2016-3753号とする,意匠登録第1565052号(意匠に係る物品,自動車用フロントコンビネーションランプ)の意匠(以下「本意匠」という。),別紙第2参照)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。

第3 手続の経緯

原査定の拒絶の理由に対して,出願人は,平成28年11月9日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠である意願2016-3753号の意匠に類似するものであって,その関連意匠として意匠登録を受けることができるものであると主張したが,平成29年2月28日付けで拒絶査定がなされたため,請求人は,同年5月31日に審判請求書を提出し,原査定を取り消す,この出願の意匠は,これを登録すべきものとするとの審決を求めている。

第4 当審の判断

以下,本願意匠が本意匠とは類似し,意匠法第10条第1項の規定に該当するものか否かについて検討する。
なお,本願部分に相当する本意匠の部分を「本意匠部分」として対比を行う。

1.本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用フロントコンビネーションランプ」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

2.本願部分と本意匠部分の対比
(1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲について
本願部分と本意匠部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,自動車用のヘッドランプ,ターンシグナルランプ,及びクリアランスランプ等を1つにまとめて構成した自動車用フロントコンビネーションランプであって,その位置,大きさ及び範囲は,車体に取り付け後に車体に埋設しない正面,上面,及び左側面側の部分であるから,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(2)両意匠部分の形態について
次に,両意匠部分の形態について,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点として,
(A)両意匠部分全体は,車体取り付け後であっても車体外側に表れて観察可能な部分である自動車用フロントコンビネーションランプの本体部分(以下,「コンビネーションランプ本体部」という。)であり,正面視を略変形四角形状とし,左側面視を後方に向かって上方に傾斜した略長円形状とし,平面視を略鈍角三角形状の形態としたものであって,
(B)コンビネーションランプ本体部は,正面視において,その左側に大型のランプ(以下「メインランプ」という。)を配し,その右側下方部分に小型のランプ(以下「サブランプ」という。)を設け,コンビネーションランプ本体部の右辺中央部分から略水平方向に延びてサブランプの上側縁部分を通り,サブランプとメインランプの中間部分で左斜め上方に折曲し,メインランプの上側縁部分に沿ってコンビネーションランプ本体部の左側面上端部付近にまで延びている長い1条の凸状部材(以下「凸状長モール部」という。)を設け,この凸状長モール部の斜め上方に折曲する部分から左斜め下方に向かって,1条の短い凸状部材(以下「凸状短モール部」という。)を凸状長モール部前面部分より一段落ち込んだ配置態様で設け,これらのモール全体として略横Y字状になるように形成している点,
(C)サブランプは,コンビネーションランプ本体部の右下角部,凸状長モール部,及び凸状短モール部で囲まれた略台形状の区画の左側部分に配設された,正面視が略小等脚台形状で,その中央部分に円形のランプを配した凹面形状の反射板からなる点,
(D)メインランプの上面部分には,コンビネーションランプ本体部の上面部分を覆う略鈍角三角形状の部材(以下「上面部材」という。)を設けている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)メインランプの態様について,本願意匠は,その中央部分に略凸半球状の大きなレンズを設け,その周囲を右側が略逆「く」の字状に広がった略変形円筒状の部材で囲み,その更に左側外周部分を上下に分離した略半円筒状の2つの部材で覆っている略筒状のプロジェクタヘッドライトであるのに対して,本意匠は,正面視が右側に向かって広がり,下側は略水平に切り欠かれた略変形楕円形状で,その中央部分に円形のランプを配した凹面形状の反射板からなるマルチリフレクターヘッドライトであり,このライトの左側外周部分を左側面視が略三角形状の湾曲した部材で覆っている点,
(イ)サブランプ上部に設けられたランプの有無について,本願意匠は,サブランプ上部を板体からなる傾斜面としているのに対して,本意匠は,該部位に正面視が略平行四辺形状で,その中央部分に円形のランプを配した凹面形状の反射板からなる小ランプを配設している点,
(ウ)凸状長モール部及び凸状短モール部表面部分に埋設された部材の有無について,本願意匠は,凸状長モール部及び凸状短モール部表面部分に略細長長方形状の帯状部材を各モールに沿って1条ずつ埋設しているのに対して,本意匠には,そのようなものを埋設していない点,
(エ)上面部材表面部分に施された筋模様の有無について,本願意匠は,上面部材表面部分に略大円弧状の筋模様を6条形成しているのに対して,本意匠には,何も形成していない点,
が認められる。

3.両意匠部分の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価し,次に,本願部分と本意匠部分が類似するか否か,すなわち両意匠部分の類似性について考察する。

(1)共通点の評価
まず,共通点(A)の両意匠部分全体の態様については,この自動車用フロントコンビネーションランプの分野において,車体取り付け後であっても車体外側に表れて観察可能な部分であるコンビネーションランプ本体部の形態は,それを取り付ける自動車の外観の形態とフィットし,かつ,それを取り付ける自動車の外観の形態と違和感なくマッチする必要があるところから,需要者が特に注視する部分であり,この形態が共通する両意匠部分は需要者に共通する印象を強く与えるものであるから,この共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
次に,共通点(B)のコンビネーションランプ本体部におけるメインランプ及びサブランプの配置態様,並びに凸状長モール部及び凸状短モール部の配置態様については,略横Y字状になるように形成されたモールの態様,及びこのモールの分岐した部分の左側にメインランプを配し,水平な部分の下側にサブランプを配した態様は,特徴的なものであって,需要者に共通の印象を与えるものであるから,この共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいものである。
また,共通点(C)のサブランプの形態,及び共通点(D)の上面部材の形態についても,上面及び正面下方部分の目に付く部位にあるものであるから,この共通点(C)及び共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度あるといえるものである。
そして,これらの共通点(A)ないし(D)が相まって生じる視覚的効果は,需要者に対して,車体取り付け後の車体外側に表れて観察可能な部分が共通し,コンビネーションランプ本体部の各ランプ及び各モールの配置態様も共通しているとの印象を与えるものであるから,上記の共通点(A)ないし(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。

(2)相違点の評価
これに対し,相違点(ア)のメインランプの態様については,本願意匠はプロジェクタヘッドライトであり,本意匠はマルチリフレクターヘッドライトであって相違するものであるが,いずれのヘッドライトもこの自動車用フロントコンビネーションランプの分野において採用されているありふれたものであって,需要者は主にコストの面からこのどちらかを採用するといった類いのものであるから,このヘッドライトの形式の違いやランプ周りの形態の僅かな相違が需要者に与える印象はそれほど大きいとはいえず,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度のものである。
次に,相違点(イ)のサブランプ上部に設けられたランプの有無については,この自動車用フロントコンビネーションランプの分野において,意匠上の要請に限らず,保安基準上の要請又は使用するランプの機能上の問題から,例えばハイビーム用やターンシグナル用のランプを追加して組み込むことは,普通に行われているところであるから,特徴のないサブランプが1つ追加した程度の相違では需要者に別異の印象を与えるものとはいえず,この相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
また,相違点(ウ)の凸状長モール部及び凸状短モール部表面部分に埋設された部材の有無,及び相違点(エ)の上面部材表面部分に施された筋模様の有無についても,言われて気付く程度の僅かな相違であって,この程度の相違では需要者に別異の印象を与えるものではないから,この相違点(ウ)及び相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さいものである。
そして,上記相違点(ア)ないし(エ)による視覚的効果は,意匠全体として見た場合でも,需要者に別異の印象を与えるほどのものではなく,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は軽微なものである。

(3)小括
したがって,両意匠部分の形態については,共通点が両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えているのに対して,相違点の類否判断に及ぼす影響はそれに比して軽微なものであり,相違点の与える印象は共通点のそれを上回るものではなく,共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから,本願部分は本意匠部分に類似するものと認められる。

4.両意匠の類否判断
上記1から3で示したとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲についても共通し,両意匠部分の形態についても類似するものと認められるため,本願意匠と本意匠とは類似するものであると認められる。

5.まとめ
まず,上記4のとおり本願意匠は,本意匠に類似するものであり,かつ,本意匠の意匠権者と本願意匠の出願人とは同一の者であるから,本意匠については,出願人の自己の登録意匠と認められ,なおかつ,本願意匠とその本意匠の出願日が同日であることから,本願意匠の出願日がその本意匠の意匠登録出願の日以後であって,その本意匠の意匠公報の発行の日前であるとする意匠法第10条第1項の要件を充足している。
また,本意匠の意匠権については,専用実施権が設定されておらず,意匠法第10条第1項の条件規定である同法同条第2項の要件も充足している。
したがって,本願意匠は,本意匠である意匠登録第1565052号の意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。

第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似し,意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるから,原査定の拒絶理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2017-10-11 
出願番号 意願2016-3754(D2016-3754) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大峰 勝士 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
神谷 由紀
登録日 2017-12-01 
登録番号 意匠登録第1593868号(D1593868) 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

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